2024.10.21
お互い疑心暗鬼になりがちな、経営企画と事業部の壁 組織に「分断」が生まれる要因と打開策
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司会者:では、次に移らせていただきます。
天羽健介氏(以下、天羽):これは(NFT市場の)成長のキーファクター(の1つ)でもあるんですけども、冒頭の自己紹介で少しご説明させていただいたように、市場が成長していくためには、ユーザーにとってより多くの良いNFTが供給されている状態が必要と考えております。
今さまざまな業界団体がNFTの発行や、流通、取り扱いにかかわるルールを策定しようと動いています。
増田先生は複数の団体にも加入されていますが、私と増田先生はこの一番左側の「日本暗号資産ビジネス協会」というところに参加しています。100社ぐらいの会員がいて、40社ほどがNFT部会に加入して一緒にルールを作っています。
暗号資産取引所ですとか、日本の4大弁護士事務所、会計事務所、あとはLINEさんとメルカリさんとか、みなさんが知ってるような企業さまも入った上で一緒にルールを作っています。
先ほど少しご説明しましたが、2021年4月26日に「NFTビジネスに関するガイドライン」を公表しています。その概要を簡単にご説明しますが、もし可能であれば新規事業を検討する時に、1つの目安にしていただけたらと思います。
前提として(NFTビジネスにはまだ)答えがないので、あくまでOBラインを示すような位置づけと考えていただければと思います。「NFTを使ってどういうビジネスをするか」は、それぞれ細かい設計や仕様によって、弁護士事務所にご確認されることをおすすめします。
天羽:ガイドラインは大きく2つの構成になっていまして、1つが、今NFT自体に法的な定義がないので、「どのような考え方でビジネスをやるか」ということなんですけども。
右側は、関連する金融商品などに抵触しないかというフローチャートになってます。有価証券、株、「Suica」のような前払い式の支払い手段、ビットコインのような暗号資産。その他の為替取引の一部に、抵触しないかどうか。抵触すると、その金融商品に則った取り扱いが求められるので、そうならないように整理してくださいと書いています。
具体的には「利益の分配があるかどうか」と、「決済手段を有しているかどうか」が大きなポイントになります。これに関連する商品だったり、金融商品だったり、法律に抵触しないかが、1つのまとまりですね。
もう1つのポイントが、これも先ほどお話ししたとおり、NFT自体はいろんな産業、事業のカテゴリへの利用が期待されていて、監督官庁もさまざまだと言われています。
それぞれの監督官庁が、主に管理・監督している観点。金融庁、経産省、警察庁、総務省とさまざまあるんですけども。そこに書いている賭博や景表法、セキュリティ、著作権、所有権などをしっかり気にして整理してくださいねと、観点の網羅性を意識して記載しています。
新しいビジネスを検討される時には、ぜひ一度見ていただけたらと思います。増田先生、補足はありますか?
増田雅史氏(以下、増田):ありがとうございます。ここに表示している金融規制うんぬんというのは非常にテクニカルな話なので、おそらく専門家に聞くのが一番なんだと思いますけれども。
いかんせん、特に重要になってくるのが「NFTって法律上の定義がないよね」ってところだと思っています。特に事業者の方にお伝えしたいのは、何をするのにも型にはまったやり方がないので、ゼロからいろいろ考える必要がある。ある程度ビジネスプランを作ってから「実は地雷原に足を踏み込んでいました」ということになっちゃうことがけっこうあるんです。
詳しい方に早めにご相談されるのが一番良いと思っているところです。身も蓋もない言い方ですけれども、結果的にはそれが一番効率的で、世の中の流れについていきやすい方法なのかなと思う次第でございます。すみません、あまり補足になっていないかもしれない(笑)。
天羽:こちらが、そのガイドラインにかかるとこですね。法律やルールに近い部分です。
天羽:次のスライドは、通称FATF(ファトフ)と呼ばれる、国際的にマネー・ロンダリングを防止する、テロ資金供与防止に関わる活動団体があります。このFATFは、各国の金融庁と密接に連携しながら動いています。
その中の1つが、「マネー・ロンダリング」です。資金洗浄が行われないような体制になっているか。これは良くないことなので、そういうルールを策定すべきかどうかという議論が行われています。
例えば、75億円のBeepleの絵が売買されたんですけれども。(購買者は)本当にその絵に価値を感じて落札されているんですけども、例えばAさんとBさんが本来100円とか1,000円の価値しかないものを、意図的に10億円とか100億円の価値を付けて保有者の移転をした場合、マネー・ロンダリングが成立してしまうことになります。
こういう状況を受けて、誰から誰にその権利が移転しているのか、保有してる人が代わっているのかを、持っている人と受け取る人がしっかり把握したほうがいいんのではないか、という示唆が出てきています。
これは今後数年かけて、NFTに関わる各国のFSA(金融庁)だったり、関連する事業者が議論して定めていくものと思っています。増田先生、補足はありますか?
増田:役所はよく研究会をやっているんですけど、金融庁で「デジタル・分散型金融への対応のあり方等に関する研究会」が行われまして。その第1回事務局資料を見ると、コンテンツ分野に使われてるブロックチェーン上のトークンで、「実態としてマネロンなどに 用いられる懸念」とさらりと書かれていたり。
当局としても、この分野に関しては一定の懸念があるとすでに理解はしているし、興味・関心があることもすでに公に示している。今後のNFT取引に関して、「マネー・ロンダリングに関する規制が導入されるべきだ」という議論が持ち上がる可能性はもちろんある。
そこがもし出てくるようであれば広く影響がある話ですので、私どももこの議論は非常に高い目線で定点観測しているところです。
天羽:先ほどのキーファクターの話やガイドラインの話、FATFガイダンスの話も含めてなんですけども。市場を盛り上げていくには、やはり事業者の参入があってこそだと思っています。参入が進んでいく中で、コストや時間を過剰にかけることなく、なるべく効率的に事業を検討いただきたいという思いから、事例をご紹介させていただきました。
司会者:ありがとうございます。ご講演は以上になるかと思いますけれども、よろしければ最後に天羽さま、増田さまから一言ずついただけますか?
天羽:先ほど申し上げたとおりではあるんですけども、NFT自体は、インターネットの上にのっかる技術として、ビジネス上の期待がなされています。事業上のパラダイムシフトが起こるということで、大きなビジネスチャンスがあるんじゃないかなと考えております。コンテンツ、権利ビジネス、IPホルダーの事業者の方々は、ぜひ一度前向きにご検討していただければと思います。
ガイドラインや書籍で、実際どういうユースケースがあるのかを紹介していますので、ぜひ一度、ご興味のある方はそういう事例に触れていただいて、理解を深めていただけたらと思います。以上です。
増田:本日は、本書(『NFTの教科書』)含めて興味を持っていただき、誠にありがとうございました。お聞きいただいたらわかると思うんですけど、極めて幅の広い話である上に、論点もすごく多くて、とてもじゃないですが1時間では語り尽くせないです。
まず基礎知識から勉強したいと思われた方は、ぜひこの本を読んでいただきたいと思います。議論もオンゴーイングでどんどん新しくなってますので、例えばTwitterでいろんな方をフォローするとか、そういったかたちで情報収集されると良いんじゃないかなと思います。
増田:ただ、一般の方に普及するには、ユーザーのリテラシーがほぼ関係ない水準にまで、ちゃんとサービスを洗練しなきゃいけないと思っています。つまり、ブロックチェーンとかNFTとかを知らなくても使える、一般の方が使いたくなるようなサービスが出てきてからが、本番だろうなと思います。
そうなった時に、こういうイロハを知っている人は、ビジネス面でもいろいろとできるようになるんだろうなと。インターネットが発展してきた時とまったく同じようなことだと思っているので。
この業界にアーリーアダプターとしてずっと関わり続けて、いろいろと詳しくなっていきたいという方は、大変だとは思いますけれども、いろいろと情報発信しているところがあるので、ぜひいろいろご覧になっていただければと思います。私からは以上です。
天羽:補足で、こちらの書籍は1年前から書いていたわけではなく。2021年の6月ぐらいに、「本をこういうかたちで出したほうがいいんじゃないか」という話がありまして。実際に執筆開始したのは8月ぐらいからです。
なるべく情報の鮮度を担保して届けていこうという思いの下28人で手分けをして、実質約2ヶ月で書きました。情報の鮮度としても最新の内容が盛り込まれていますので、ぜひお手に取ってご覧いただければと思います。
司会者:天羽さま、増田さま、本日はすばらしいご講演を誠にありがとうございました。ぜひ、著書の『NFTの教科書』のほうもお手に取っていただければと思います。
それでは質疑応答の時間にまいりたいと思います。今回、だいたい60から70件ほどの非常にたくさんのご質問をいただいておりまして、やはり注目度が高いテーマなんだなと認識いたしました。
さっそく1問目にまいりたいと思います。「NFTはまだ富裕層の方やアーリーアダプターの方が目をつけ、活用を始めている分野だと思うのですが、一般の生活者に広まるのはどのくらいになりそうですか。また、一般の生活者にも広がっていくと思いますか。自分自身はデジタルのものに投資するメリットがなかなかわかりません。そのへんのメリットも教えていただきたいです」というご質問いただいております。
天羽:そうですね、実際に数ヶ月後か1年後か5年後か、いつぐらいに普及するのかは、明確にはお伝えできない部分があるんですが。このブロックチェーン、NFTビジネスをやっている中での感覚値で言いますと、我々コインチェックがNFTの事業をやろうとした時は、まだ当時ブームは来ていませんでした。
「だいたい3年ぐらいで来るんじゃないか」という話もあったんですけど、実際には参入する直前に、2週間でブームが来ました。そういう状況が連続しているので、感覚的には思ったより早くくるんだろうなと考えてます。
NFTのブームも去年の3月から始まって、まだ1年も経ってない状況の中でいろんな事例が出てきて、メタバースの話も出てきて、もう目まぐるしく変わっていってます。
先ほどのキーファクターなどいろんな取り組みが、2022年もすごいスピードで進むと思ってます。近い将来というか、あまり遠すぎない期間で来るんじゃないかと言われています。
天羽:最後の質問はなんでしたっけ?
司会者:「自分自身はデジタルのものに投資するメリットがなかなかわかりません。メリットも教えていただきたいです」ということです。
天羽:おっしゃっていることはすごく理解できます。インターネットが普及した時代と、このブロックチェーンが出てきた時代の決定的な違いが、このブロックチェーンというハンコのような技術を使うことによって、デジタルコンテンツの価値が限定化されたり、可視化されたりして、証明されるということなんですね。そこが明らかに違う点です。
今までのようにリアルなものを所有したほうが安心する感覚はわかるんですけども。この技術が出てきたことによって、デジタル上で完結する、所有することが当たり前になると、私はこのNFTを知っていく中で感じています。
司会者:ありがとうございます。続いての質問は増田先生におうかがいしてもよろしいでしょうか? 「国内のオタク系コンテンツとNFTの親和性、今後の発展はあると思いますか?」というご質問なのですが、こちらはいかがでしょうか?
増田:ありがとうございます。オタク系コンテンツとかそういった切り口は、まさに私がさっきからずっと申し上げているユースケースのような話と結びつきやすいのかなと思っていて。コンテンツを消費する側にとって旺盛な需要があるかどうかがすごく重要だと思っているんですよね。
特に熱心なファンがついてるアニメ作品や漫画作品は、ユーザーが新しいものも含めてどんどん利用して、「そのサービスにずっとついていきたい」と思う気持ちが強くなるものです。いわゆる、スポーツとかアイドルとかのファンビジネスと同じようなかたちで、広がりを持ちやすいのかなと。
とりわけ、「オタク系」と言ってはあれですけど、漫画とかアニメとかはデジタルコンテンツにしやすいんですよね。個々のキャラクターしかり、作品そのものもそうですけれども。
いろんなデジタルコンテンツを生みやすいということは、それに応じたかたちでいろんな商品を展開しやすいことでもあります。ユーザーの心をつかむサービスがどんどん生まれてくれば、NFTの需要をけん引するエンジンになるのかなと思います。
司会者:ありがとうございます。親和性が高いということで、承知したしました。
司会者:質問を多数いただいている中恐縮ですけど、お時間がだいぶ迫ってきておりまして。もしよろしければ、天羽さまと増田さまそれぞれ、追加で1問ずつおうかがいできればと思いますが、よろしいでしょうか?
まず天羽さまに。「2021年はNFTの過剰な加熱化がありましたが、今年はどうなると予想されますか? もう去年ほどの加熱もなくなり、今は落ち着いてると思うのですが、まだビジネスとしての可能性はあると思われますか? 私はブロックチェーンゲームなどのメタバース関連でどうなるかだと思っています」。こちらはいかがでしょうか?
天羽:ブームが来る時というのは、一時期の熱狂的な盛り上がりがあるかなと思っています。それが去年だったのかなと思いますが、いろんな事例が出てきたことによって、このNFTが良いとか悪いとか、NFTでやる必要がないとか、そういう議論も出ました。
なので今年2022年に関しては、本当にNFTでやる必要があるのかとか、「本質的な価値」について議論が出てくるんじゃないかなと思っています。事例もそういうものがより多く出てくるんじゃないかなと。そうじゃないNFTに関しては、淘汰されていくんじゃないかなと思います。
加えて質問者の方も書いていたように、NFTが使われる場所の1つとして、視覚的にわかりやすいメタバースがより注目されていくんじゃないかなと私も考えております。
司会者:ありがとうございます。
司会者:では、続いて増田先生にご質問をさせていただきます。
「現在、複数のNFTプラットフォームが出現しており、今後も出てくると思います。その際に、少しだけイラストが違うもの(色味などの変更)を複数プラットフォームで展開してしまうこともできてしまうと思いますが、微差な作品が展開されると、価値そのものが下がってきてしまうと思います。取り締まる方法や取り締まり方などはあるのでしょうか?」というご質問ですが、いかがでしょうか?
増田:いろんな論点があると思うんですけれども、まず自分の著作物をいろいろなバリエーションを変えてNFT化する話だとすると、それは売る人の完全な自己責任の話です。価値が下がったら「それはあなたが作りすぎたからですね」という話に帰着すると思うんですよね。
他方で、他人が勝手にそういったことをやるという話だとすると、通常はデジタルアートを売る時は、当然サムネイルをプラットフォーム上にのせて売ることになるので、その時点で著作権侵害になるんですよね。だからそもそもやってはいけません。なので現状あまりそういった問題が起きていないのだろうなと思っています。
司会者:ご回答いただきましてありがとうございます。それでは、時間が来てしまいましたので、質疑応答を以上とさせていただければと思います。増田先生、リアルタイムでいただいたご質問にもご回答いただきましてありがとうございました。
それでは、本日のセミナーは以上で締めさせていただければと思います。天羽さま、増田さま、本日は誠にありがとうございました。
天羽:ありがとうございました。
増田:ありがとうございました。
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