2024.10.21
お互い疑心暗鬼になりがちな、経営企画と事業部の壁 組織に「分断」が生まれる要因と打開策
現場の事例からみる共創するデザイン(全1記事)
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河合紘子氏:株式会社ニジボックスの河合です。本日は「―現場の事例から見る―共創するデザイン」というテーマで話します。最初に軽く自己紹介をします。経歴は、大学を卒業してITの会社に入り、モバイルゲーム事業に携わった後、ワーキングホリデーで少し海外に行きました。老舗旅館に転職した後、東京に戻ってニジボックスにデザイナー職として中途入社しました。
2019年にリクルートの業務・経営支援サービス「Air ビジネスツールズ」の1つ、「Airリザーブ」に参画しました。2021年には、リクルートのSaaS系新規サービスに参画しました。本日は、私が今までかかわってきたAir ビジネスツールズについて話します。(スライドを指して)以下、目次です。
サービスの概要です。(スライドを指して)Air ビジネスツールズはこのようなサービスを展開していますが、見たことがありますか?
どこかで見かけたことがあればうれしいです。Air ビジネスツールズは、「Airレジ」「Airペイ」「Airシフト」をはじめとしたリクルートの業務・経営支援サービスです。
このようなさまざまなサービスがあり、事業運営のアナログな業務にかかる手間、時間、コストを軽減できます。全国各地でアカウント数や加盟店が拡大を続けており、幅広い業種で、10代から80代まで年齢問わず、さまざまな方が使いこなしています。
1つのAirIDですべてのアプリやWebサービスを使えるので、まるで1つのサービスのようにスムーズです。
複数のサービスを同時に使うことで、日々の業務を飛躍的に効率化することにより、みなさまが思い描く事業運営や、自分らしいお店作りを支援し続けています。(スライドを指して)Airの理念を、このブランドステートメント「ビジョン・ミッション・バリュー」で端的に表しています。
Airのブランドビジョンは「商うを、自由に。」、ブランドミッションは「事業をとり巻く煩わしさを減らす。」です。ブランドバリューは機能的価値には「シンプル」「カンタン」「スマート」、情緒的価値には「誰にでも手が届く」「信頼」がそれぞれ定義されています。
私は、予約管理の「Airリザーブ」というところで2年間、デザイナーとしてUIデザインや販促物のデザインを担当していました。
本日はAir ビジネスツールズのいちプロダクトデザイナーとして、現場目線で私の体験を交えながら紹介します。
ブランドを守るための取り組みについて。(スライドを指して)「インナーブランディングが大事にされている」「デザイナーがプロダクト横断で連携している」の2点が、主に社内で行われている取り組みです。
1つ目の、インナーブランディングについて。(スライドを指して)右側にある「ブランドブック」というものが社内で共有されています。Airブランドが、私たちが望むかたちでカスタマーや世の中に浸透していくためには、ブランドビジョン・ミッション・バリューに基づいて一貫したコミュニケーション活動を行い、ブランドイメージを継続してストックしていくことが大切です。職種を問わず横断で幅広く連携され、これを見て「Airってこういうブランドなんだ」という共通の認識を持って、それぞれの業務に取り組んでいます。
2つ目は、「デザイナーがプロダクト横断で連携している」。要件定義や開発は、基本的にプロダクトごと(「Airレジ」、「Airペイ」、「Airリザーブ」ごと)に動いていますが、ブランドの一貫性担保や品質を担保するために、プロダクトをまたいでデザイナー間で連携しています。デザイナーだけでなく、他職種も同様に連携しています。
本日はデザイナーの取り組みを、プロダクトUIと販促物に分けて紹介します。まずプロダクトUIは、クライアント向け、あるいはカスタマー向けの画面ですが、この取り組みの1つ目にデザインガイドラインがあります。誰でも見られるようになっているほか、Sketchのデザインデータが共有されて使えるようになっています。
2つ目は、いつでもガイドライン専門チームに相談できます。自分のプロダクトで「このUIって、こんな使い方してもいいのかな?」とか「今までガイドラインがなかったかもしれない」と思う時に相談できるようになっています。
3つ目は、月1回の「よかったもの共有」。すべてのプロダクトから、毎月作っている制作物をガイドラインチームが集め、その中から特によいUIなどをピックアップして、デザイナー全員と共有してくれます。「このUIは、この使い方がよかった」と教えてくれるので、それぞれのプロダクトに自分たちで取り入れることができます。
(スライドを指して)販促物です。フライヤーや営業ツール、プロモーションサイトなどが含まれています。取り組みの1つ目は、「ドキュメントと過去事例がある」。デザインのTipsがまとまるなど、いつでも事例を見られるようになっています。
2つ目は、クリエイティブ専門のチームがあるので、いつでも相談ができます。一緒にデザインの伴走をしてもらうこともあれば、レビューしてもらうこともあります。
3つ目は、名前が好きでそのまま持ってきた月1回の「Airらしさワーク」です。これも毎月、各プロダクトが持っている制作物を集めて、Airらしいかクオリティが高いかという2つの観点でマッピングしていきます。どこがAirらしいか。つまり、ガイドラインに沿っているか、ブランドバリューがきちんと体現できているかということです。それが合っているかを、相互レビューを通して、お互いにいいところを取り入れるようにしています。
デザイナーとして働いていると、ルールや環境が整備されているのはすごくありがたいと思っています。ただ、世の中の多くのデザインガイドラインが常にアップデートされているように完璧ではないし、課題解決の手段も1つではないので、ルールに則ればいいというわけではありません。この環境を活用しながら、常に状況に合わせて最適な表現を検討しています。
事例を紹介します。主に私が所属していたAirリザーブですが、(スライドを指して)これがクライアント向けの管理画面です。直感的にカレンダー画面を操作できます。
(デモ開始)
これが実際の管理画面で、横が日付で縦が時間軸です。
入っている予約をワンタップで見たり、新しい予約をクリックしたら新しく登録できたりと直感的にできるようなUIを作っています。
(デモ終了)
もう1つ、Airリザーブのタグラインをリニューアルした事例を紹介します。タグラインは、サービス名の上についている一文です。いわゆる、サービスの名刺になるものです。
今まで使っていたのは、「予約管理をシンプルにするWebサービス」でした。新しいものは、「毎日の業務が簡単になる予約システム」です。
変更した背景というか目的は、今の世の中に合わせて、よりクライアントに伝わりやすい言葉に変えていくことでした。前のタグラインは5年前に決められたもので、当時は世の中に予約システムが浸透していなかったので、予約システムの価値が伝わるように言語化していました。現在はすでに予約システムが浸透しているので、Airリザーブ独自の価値を伝えられるように変えていくことになりました。
新しいタグラインに込めた思いについて。(スライドを指して)「毎日の業務」は、予約管理(予約の受付、キャンセル、変更の対応)と、予約周りの業務(電話応対、事前ヒアリング、予約のリマインド)を示しています。
「業務がカンタンになる」は、システム導入により業務負荷が減ることと、Airリザーブの画面と機能はシンプルなので操作が簡単という意味が込められています。「カンタンになる」は、今までの管理方法と比べてよくなるという意味です。
(スライドを指して)検討プロセスは、次の3つに沿って作成しました。1つ目は「サービスカテゴリの定義」です。予約システムがAirリザーブのサービスカテゴリに当たりますが、以前はWebサービスでした。これは、予約システムが世の中に浸透しているということを数値化したものです。プロモーションサイトの流入クエリを参照したり、ツールを使って認知度が高く世の中に知られていることを数値化したりしました。
2つ目は「顧客ベネフィットの定義」です。「毎日の業務がカンタンになる」という部分ですが、Airリザーブの強みを言語化しました。競合優位性というものを検討し始めました。競合優位性は複数ありましたが、タグラインとして、最初に名刺としてお客さんに見てもらうのに一番推すものは何かについてチームで議論しました。
(スライドを)少しぼかしてありますが、複数の文言を並べて検討しました。さらに、タグラインから想起してほしいシチュエーションを5W1Hで設定しました。(スライドを指して)これがクライアントの時間軸で、どの時間軸を表現するのかなど、実際に5W1Hを言語化したものです。
最後は言葉選び。言い回しを取捨選択しました。意図が一番伝わる言葉やクライアントにとって、身近な日頃から使っている言葉、魅力のありそうな言葉を選びました。例えば、毎日の業務の「業務」を表す言葉にはいろいろありますが、どれが一番適しているかを定性評価して、最終的に「業務」に決めました。
ここで少し、クライアントにとって身近で日頃から使っている言葉の話をします。Airでは日々「クライアントを主語にして考える」ことを行っています。「クライアントに想いを馳せる会(通称おもはせ会)」、このフレーズが好きでそのまま持ってきました。「おもはせ会」をはじめ、日頃からクライアントの声を聞く文化があります。Airリザーブのクライアントの声もこのように、生の声を聞くと、実際どのように使われているのかがイメージしやすいです。
今までAirの理念などについて話しましたが、私がAirのデザイナーでよかったと思うことを3つ挙げます。この3つがモチベーションになっていると思っています。まず、「商うを、自由に。」というビジョンに共感できることと、世の中にこの価値を伝えていきたいと思えること、それを表現するためにチーム横断で協力し合えるデザイナーがいることが、すごく良かったと思っています。
AirにUIデザイナーとして育ててもらったという気持ちがあるので、これからもいろいろなAirの価値を世の中に広めていくために、がんばりたいと思っています。
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