2024.12.19
システムの穴を運用でカバーしようとしてミス多発… バグが大量発生、決算が合わない状態から業務効率化を実現するまで
どうしてAiboは生まれたの?|Aibo育ての親天貝佐登史(全1記事)
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菅澤英司氏(以下、菅澤):つよつよエンジニア社長の菅澤です。
池澤あやか氏(以下、池澤):エンジニア兼タレントの池澤あやかです。
菅澤:池澤さん、この間メッチャ「aibo」欲しいと言っていましたね。
池澤:ああ、そうなんですよ。
菅澤:急にaiboブームが来ているんですか。
池澤:aiboがメチャメチャかわいくて。本当に犬みたいなんですよ。
菅澤:結局買ったんですか?
池澤:引っ越しを控えているので、引っ越したらちょっと検討したいなと思っています。
菅澤:今日はですね、その「AIBO」の育ての親を呼んでいます。世界で初めて家庭用ロボットとして発売されたのは、もう20年前ぐらいなんですよね。
池澤:けっこう前ですね。
菅澤:今は最新版が出ていると思いますが、当時の話をたっぷり聞きたいなと思うので、今日も楽しみにしてください。
池澤:今日のゲストは、株式会社モフィリア代表取締役、そしてAIBOの育ての親、天貝佐登史さんです。
菅澤:よろしくお願いします。
天貝佐登史氏(以下、天貝):よろしくお願いします。
池澤:どうぞよろしくお願いします。
菅澤:まずお聞きしたいのですが、AIBOは誰が作ろうと言い出したのですか?
天貝:今はペンネームの天外伺朗さんのほうが有名ですが、ゴッドファーザーと呼ばれるのは、土井利忠さんです。1990年代初頭に最初に提唱されました。
池澤:家庭用のロボットは、当時まだまだ珍しかったと思いますが。
天貝:世界初ですからね。私も専門が人工知能なのでよくわかるのですが、ガシャガシャ動くとか、自分で動くとかがロボットの運動制御系だとすると、それと人工頭脳が合体して商品になったという意味では初めてなんですね。
脳の研究をする人と、メカトロみたいなところは案外別なので、それが一緒に組んで、完璧ではないけれども、脳で考えて動きを起こすという意味では、世界初ということですね。
菅澤:アイデアを最初に知った時には、売れると思いましたか?
天貝:ゴッドファーザー土井さんは、「ロボットを通してエンターテイメントをするんだ!」と言っていました。エンターテイメントはSONYの真骨頂なので。
自分で考えて動くのが、かわいらしいというところは、新たな市場を開拓する。市場を開拓するのはSONYの使命みたいなものなので、これで新たなマーケットができるぞと、初期から土井さんは思っていたらしいですね。
菅澤:天貝さんはいつからジョインされたんですか?
天貝:1993年ぐらいから開発を始めて、1999年に広報発表しました。「こういうのをSONYがテストマーケティングします」と言ったらものすごい反響でした。
テストマーケティングを結局3回やったのですが、3回とも、すぐに売れ切れました。サーバーが壊れてしまうぐらい、1999年にバンバンバンと売れました。
いよいよこれを本格的なSONYのビジネスとして、普通の会社でいう事業部みたいなものを作ってやろうとなった時に、私がたまたまSONYの小さなカンパニーのプレジデントで、「お前がやれ!」とゴッドファーザーから言われました。
研究所の中でAIBOをやっていた時に、私は研究開発の組織や人事を見る職場にいたので、開発途上はよく知っていました。SONYの中でも超優秀な人間が昼夜を問わず、今で言うとブラック企業のごとく、そういうのを開発しているのをよく知っていたので、「いよいよこれが来たか!」という感じでしたね。
菅澤:「燃える集団」と言っていたんですか?
天貝:そうですね。フロー状態と言うのですが、いわゆる「入っちゃう」と人一倍の能力が出て、そこですごい仕事をするという、そういう人が1人ではなくて、みんながそうなっていました。
池澤:えっ、みんなゾーン状態?
天貝:ゾーン状態で、ちょっと危ないですよね。
菅澤:(笑)。その人たちは何人くらいなんですか?
天貝:一番多い時は200人を超えていました。最初は本当に、数十人とかでしたが、それを「燃える集団」で、短い期間でこれだけのものを出したという。
菅澤:例えば、最初は2、30人ぐらいでプロトを作ったのでしょうか?
天貝:もっと少なかったです。
菅澤:もっと少ない。
天貝:はい。SONYの中に、自分で手を挙げて「ここに行きたいです!」と言うと、その職場の上司が止められないという、いい制度があって、「これが伸びるぞ」という時にその制度をやったら、各所から選りすぐりの人間が来ました。
なので、もともとやりたいと思う人がワクワクしながら、すごく大変なんだけど、ブラック作業をやっていました(笑)。
菅澤:すばらしいですね。
池澤:ちなみに、天貝さんは、その中でどういった役回りをされていたのですか?
天貝:私は「燃える集団」のプレジデントでした。私もそこの中に入っちゃうとまずいので、ある程度マネジメントとしては冷静に作業する人たちのモチベーションをキープしながら、SONYの1つのビジネスとして成長させたり、世界的に展開したりという役割をやっていました。
菅澤:どちらかというと、マネジメント寄りなんですが、東工大で人工知能を勉強されていたエンジニアではあるんですよね。
天貝:だからやっていることはよくわかっていて、苦労しているところもわかるし、お客さんのリクエストもわかったんです。
菅澤:AIBOのアイデアは最初にパッと思いついたんですかね?
天貝:犬と猫、両方かなり研究したそうです。結果的には犬にしたのですが、猫はいっぱい動くメカトロ的なところと、頭脳のところの両方ともロボットにするのが難しいんです。
猫は、ヒョッと上へ上がって、上から宙返りとかして落ちますよね。あれをロボットでやるのは難しいですよね。
あと、犬は案外コミュニケーションできますが、猫はしらーっとしていて、何考えているかわからなかったり、期待を裏切ったりしますよね。そういう意味では、犬のほうがある意味シンプルで開発しやすいというところもあって、犬にして、会社の中で飼って観察したりしていました。
菅澤:犬を飼っていたんですね(笑)。
菅澤:会社として見ても、今までにない市場だし、プロダクトをいい感じにできるかも誰もわからないじゃないですか。仮にGOを出せたとしても、それなりにお金かかるじゃないですか。それができる空気が当時はあったんでしょうか?
天貝:やはり1つは、SONYという会社のコーポレートカルチャーで、「おもしろいからやってみな!」ですね。これをやれると、日本で初、世界初というところに対して、すごく優先権を与えてくれるところなので。もちろん赤字をずっと垂れ流していてはだめですけど。
AIBOの開発によって、SONYのブランドイメージがすごく上がりました。その頃は、メカトロニクスという意味で、機械系の優秀な大学生が応募してくれました。私も採用面接をやりましたが、落とすのがもったいない人ばっかりでした。
それでも「採用人数は何人にしてください」と言われて、うれしい悲鳴もありました。学生がSONYに入ってロボットをやりたいとか、そういうモチベーションになるという面でも貢献したし、実際の売上げを占めるのがテレビとかビデオとかであっても、「SONYというのはAIBOをやっているところだよね」というブランドイメージがついたので、広報戦略的にもすごく貢献したんじゃないですかね。
池澤:今もaiboをやっているイメージが強いですもんね。
菅澤:aiboを作る時に特に大変なところはどこですか?
天貝:ビジネスの時もそうですが、お客さまの期待に合うものを出すのは大変ですよ。1発目が売れた場合に、次、また次と、お客さまの期待は急上昇していきます。「これだけできたから、次はいつ走れるの?」とか。
aiboはかなり最新のものを入れていて、かなり早くから顔認証ができたり、今のルンバのように、バッテリーがなくなっていくと自分で充電したり、一つひとつ技術を入れていったのですが、お客さんの期待はもっと上でした。
池澤:開発の優先順位や、どういう機能を盛り込もうという戦略は、どう立てていたのでしょうか?
天貝:例えば、お客さんの期待のリストがバッとありますよね。それをやる難易度と、今のエンジニアの数やリソースを総合的にみんなで検討するんですね。
音声認識が早いほうがいいのか、宙返りするほうがいいのかとか。あとは、もっと犬に似せたほうがいいのかとか、その時の工数とコストを毎回検討をしながらやっています。それはもう試行錯誤ですよね。
菅澤:aiboのコピーがけっこういろいろ出てきたという話も聞きますが……。
天貝:今もそうですが、外側は真似されますよね、ポイントは中側です。例えばアルゴリズムや、ソフトウェアは、外からは見えないので、そういう意味では逆に、一見aiboそっくりのミニチュアみたいなのがあって、9,800円なんだけど、やれることはすごく限られているので、買ったけど1ヶ月で飽きちゃったとか聞きます。
摩訶不思議な動きを自分で考えて、だんだん成長していくところは、かなりの投資というか、エンジニアのインプットが多いからですね。
菅澤:コピーが9,800円で、本物はいくらなんでしたっけ?
天貝:確か25万円です。
菅澤:25万円(笑)。
天貝:今の流行りの、サブスクリプションがあるので、相対的に相当高いですよ。サービスパッケージを入れて、サブスクリプションでクラウドから改良のプログラムが来る、という感じで40万ぐらいかかっちゃいます。
菅澤:前半は、AIBOの始まりの話が聞けたので、後半は、どう売れていったのか、そのへんの話も聞きたいなと思います。
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