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日本における ICT & セキュリティ技術の生産手段確立と産業化の実現(全3記事)

登大遊氏が語る日本企業が取り組むべき“かぶれ”の必要性 1/10の効率を抜け出すためのおもしろ・いんちきICT開発手法

クラウドサービスプロバイダ(IaaS/PaaS/SaaS)、システムインテグレータ、ソリューションベンダーの多くが参加し、クラウド業界の “未来” について知見を深めるイベント、「JAIPA Cloud Conference2021」。ここで登大遊氏が登壇。続いて、日本に必要な学習について紹介します。前回はこちらから。

“いんちき”だけでは不足、学問も必要

登大遊氏:もう1つ、いんちきだけではだめで。サイバー技術はいろいろな複雑な装置や、複雑なソフトウェアのソースコードなどがグチャグチャグチャっと集まって、カオスにならずに、なんとか秩序を保って動いている魔法のような技術です。

これを生み出すのに必要なものは、先ほどのいんちきだけでは難しくて。もう1つはやはり勉強と、学問なのかなと思います。その根拠を示します。

(スライドを指して)一般的工業製品だと、左の炉のように原材料を投入すると、中で反応が起きて生成物と高炉ガスが出てきます。我々の頭脳は、この産業資本に相当する生産設備だと思いますが、この頭脳にはその原材料を入れなければなりません。我々の得意な、例えばソフトウェアやコンピュータ、クラウドなんかそういうふうなところは必要ですが、それは10分の1ぐらいなのではないかと思えて。

他にも経営とか工学、政治、哲学、法律、化学、物理。ぜんぜん無関係なところを、「これおもろいわ」みたいな感じで適当に勉強していくことが重要だと思っていて。それは仕事の一環としてやるべきで。

それはなぜかと言うと、それらの分野において、ぜんぜん関係ないように見えるいろいろな構造物がありますが、その構造物とコンピュータの中の、例えばセキュルティの仕組み、OSの仕組み。通信プロトコルスタックの仕組みやシステムやらコンテナやら仮想化やら、そのようなものが動いている構造と、政治とか法律とかの構造は、非常に相似関係があるのではないかと思うのです。

1960年代にアメリカ人たちはコンピュータの技術を発明しましたが、真空管とかから毛の生えたものの時代で、そういうふうなのものを1から思いつくわけはありません。

彼らはその知識をどこかからパクってきているんじゃないかとは思いますが、そのヒントは、恐らく彼らは他の分野をコソコソと勉強していったのではないかと思われるのです。

我々も先ほどのいんちきとこれをやれば、大変優秀な民族であると思うので。、すごいアメリカ人や、最近は日本を飛び越して中国はやっていますが、アメリカ、中国はすごいんですよ。

どれぐらいすごいかというと、えらいなんもない状況で国を作ったりなんとかやっていますから、限界まで努力して実現しているんです。

日本の場合はだいぶ余裕があって。仕事のうち9割ぐらいがボトルネックに費やして、1割だけが本当の仕事みたいな感じで、10分の1の効率でだらだらやってそれなりのものを今やっているわけですから。これをちゃんとやれば、アメリカや中国よりも、我々のほうがすごいのではないかと思うのであります。

頭脳を使う“かぶれ”、目を背けるアヘン

だからあんまり心配する必要はないと思いますが、病気がありまして。例えばけしからん電話会社とかに入ると、このアヘンを吸うことになる場合があって。頭脳を使うことが嫌だから楽な解決策、アヘンをやるんですが、これは1回やってしまったらだめで。

アヘンの対義語を“かぶれ”というふうに呼んでいます。頭脳を使うことが好きなのが“かぶれ”で、問題から目を背けるのがアヘン。アヘンの結果は、必ずおっさんか過労死のどちらかになるんじゃないかと思います。

“かぶれ”のほうはいい成長があるんではないかと思うので、我々は努めてこの“かぶれ”をやらないといけないし、先ほどのGAFAや中国の優秀な方々は、この“かぶれ”をやってるのではないかということだと思います。

“かぶれ”をやるのにじゃあ明日からどうすればいいのかということになりますが、これは生産性を積み重ねる、いろいろな小さいことを積み重ねなければならないと思うので、何か大きな1つのことをバーって実現すればできるというわけでもありません。

それと、複雑なものを作る思考を維持する必要があります。先ほどのICTの難しいシステムなどを作る方々は、大変多くのことを同時に重ね合わせて思考されるのだと思いますが、そこに日本企業特有のガバナンスおっさんみたいなのが出てきて「今どうなってるんかわかるように説明しろ!」「けしからんじゃないか!」みたいに言うと、考えてた人はパッと忘れてしまって。で、1個だけ取り出して言語化すると、他を消してしまう問題があるかと思います。

統制規則、明確な説明とかを求められると、外国人ができた高度なものを、せっかくいいところまでいってるのにパッと忘れてしまうんではないかと思うんです。

いんちき手法がメインストリーム

よく考えると、先ほどのUNIXもいんちきですし、Windowsも相当いんちきです。メールもWebも、プログラミング言語も、明確な統制をして計画的にうまいことできて普及しているものは、あまり見たことがないです。いんちきな感じの、けったいなものが生まれるのが、正しいやり方なんじゃないかと思うのです。

今日のそのスライドではいんちき手法と述べましたが、実はこのコンピュータやクラウドの世界においては、このいんちき手法がメインストリーム、本流で、おじさんみたいな統制規則、明確な計画でやるものはオマケ。ちょっとぐらい成果出るけど、まあ間違ったやり方だと。

(スライドを指して)このようないんちき手法を自分たちもやってきたということを、このスライドで(書いています)。だいぶいろいろな目的で作ってるので長いですが、時間があれば読んでください。

IPAのいんちきルームに置いてあるサーバーとか。

これはいんちきですが、シン・テレワークシステムや、自治体向けのLGWANのネットワークなんかも、全部これの中で動いてます。そこに入る時に必要ないんちき物が廊下にも置いてあります。

こういういんちき物がありますが、表向きはないようになっていて、大変立派なシステムであるような感じになっているんです。しかし、実はこのいんちきでやってるのであります

伝統的にいんちきをやっていて、IPAの元でいんちきサーバールームとか、いんちきVPNソフトとか。いんちき表彰ももらい、いんちきゴミ拾いも行いました。

いんちき先生みたいな、偉大な山口先生から説教も頂いて「もっといんちきちゃんとやれ」と。それでいんちきをしようということで、大学の中にいんちき部屋も作りました。

そうすると今度はIT担当大臣がきて、「もっとちゃんとやらんといかんじゃないか」ということで、部屋が広くなったりして。

それで、けしからん外国のグレートファイヤーウォールなんかを部屋のシステムを使ってやっつけようということで、いろいろ研究などをしていました。一時的に巨大国の中央の国のほうのファイヤーウォールもやっつけたりもして、論文も書いていました。

このような感じで、やはりりいんちきで、自作で何かやることは非常に重要なことだと思いました。我々はそういうふうなものを、これから日本のいろいろな企業や組織、役所の中で広めていこうと思っています。

これが日本がこれからICT先進国になるために、必須のおもしろ・いんちきICTの開発手法で、これによって日本はこれまでできてなかったことができるようになるので、日本はサイバー先進国になれるのではないかと思います。

以上で、今日の私の講演を終わります。どうもありがとうございました。おしまい。

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