2024.10.01
自社の社内情報を未来の“ゴミ”にしないための備え 「情報量が多すぎる」時代がもたらす課題とは?
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齋藤精一氏(以下、齋藤):こんばんは。2021年度グッドデザイン賞で審査副委員長を務めております齋藤です。今回は、この前決まりました2021年度グッドデザイン大賞の記念トークとして、ゲストにオリィ研究所の吉藤オリィさんをお迎えして、1時間たっぷりとお話をできればと思っております。
吉藤オリィ氏(以下、吉藤):こんばんは。よろしくお願いします。
齋藤:今回オリィさん率いる株式会社オリィ研究所は、遠隔勤務・来店が可能な「分身ロボットカフェDAWN ver.β」と分身ロボット「OriHime」で、グッドデザイン賞の栄えある大賞を受賞されました。あらためて、おめでとうございます。
吉藤:ありがとうございます。
齋藤:その後の反響などはどうですか?
吉藤:そうですね。コロナの緊急事態宣言が明けたタイミングもあって、ありがたいことに、毎日満席に近い状態です。予約をしなくても入れるカフェでして、たくさんの方に来ていただいていますね。
齋藤:ありがとうございます。この後、グッドデザイン賞ファイナリストの時の、4分ぐらいのプレゼンテーションを見ていただこうと思います。その前にお聞きしたいのですが、日本橋にカフェを開いたんですよね?
吉藤:そうですね。(スライドにある)こんな感じのカフェです。
齋藤:常設実験店ということで、本当に社会実装がされた状態ですもんね。
吉藤:そうですね。でも、まだ実験段階ですね。中(運営)のやり方とかロボット自体も変わったりしていますが、毎日営業しております。
齋藤:ありがとうございます。今日、ライブで見ている方は、質問があれば、ぜひどうぞ。また、グッドデザイン賞の事務局にもいくつかお問い合わせいただいていますが、この取り組みとコラボレーションしたい事業者の方、導入を検討している方、Q&Aのコメントから、ぜひご質問をいただければと思っております。
齋藤:実は、ファイナリストの1位と2位とで、オリィさんの時のように大差がつくということは今までなかったんですね。
吉藤:なるほど。
齋藤:僕が副委員長を拝命してから4年経ちますが、だいたい決選投票というものがあります。今回1位が5,197票でオリィさん。2位が熊本の神水公衆浴場で1,932票。なので、3,000票以上離れていて、文句なし、圧倒的に大賞として選ばれたということなんですね。
吉藤:ありがとうございます。
齋藤:我々審査委員長・副委員長で、今回挙げていたテーマは「希求と交動」です。僕は「交動と希求」と言っていたんですけれども。こんな世界になって欲しいと「希う(こいねがう)、希求」。交動という分野を交えながら、「みんなでアクションを起こしていく」。オリィさんの活動は、まさにこのテーマを体現していると思っています。
まずはせっかくなので、ファイナリストの時の4分のプレゼンテーションをプレイバックして、見ていただこうと思います。その後にいろいろ僕からも質問させていただいて、クロストークができればと思っております。
吉藤:はい。わかりました。
(動画再生)
齋藤:ありがとうございます。このプレゼンテーションの後に、投票が行われて大賞に決定したわけですが、大賞を取られた時どう思われました?
吉藤:ありがとうございます。うれしかったです。もともと「分身ロボットカフェ」というプロジェクトは、もう亡くなってしまった私の親友と2人で話していた妄想から始まっていまして。初めは誰にも理解してもらえなくて、少しずつ大きくしてきたものだったので、大賞を受賞した時のスピーチでは、その時の話をしたんです。
その親友は20年以上寝たきりで、もう4年前に亡くなっちゃったんですけど、彼にすごく見せたかったですね。彼がいたらすごく喜んだだろうなと思いながら、受賞の瞬間を迎えていましたね。
齋藤:ありがとうございます。今回は、2021年度として受賞されましたが、この「分身ロボットカフェ」の試み自体はけっこう長いことやられているじゃないですか。今回その概要だけ、口頭で良いのでご説明いただけますか?
吉藤:そうですね。今までも、体を動かすことができない人たちが遠隔で操作する「分身ロボット」というものを作ってきたんですね。先ほどのプレゼンにあったように、これによって外出できない人たちが旅行に行ったり、どこかに行ったりしてきたんです。でも、やっぱり「社会に参加したい」という欲求がけっこう強くって。体を動かすことができない人が、いきなり就職するってやっぱり難しいんですね。
社会人経験がない人たち、例えば高校生が「テレワークでどこかで働きなさい」と言われても、難しいと思うんですよ。実績があれば、コンサルをやったり、いろいろアドバイザーもできると思うんですけど。
齋藤:そうですよね。
吉藤:私たちが高校生の時にやっていた仕事って、肉体労働ですよね。「肉体労働ができるテレワークがないから、今外出ができない人たちは、社会に参加しにくいんじゃないだろうか」と仮説を立てました。
それで作ったのが、このでっかい「OriHime」です。これを使って古今東西の、入院している人たち、さまざまな事情や理由で外出ができない人たちがここ(分身ロボットカフェ)で働いて給料を得ている。
ここで働くことによって後輩が生まれたら、その後輩に対して教える側のマネージャーの立場になっていく。そうして徐々に知的労働に変わっていくと、OriHimeも要らなくなるかもしれない。一番初めのステップとしてOriHimeがあるんです。「肉体労働ができるテレワークで働きに行こうぜ」というのが、この「分身ロボットカフェプロジェクト」ですね。
齋藤:そうですよね。今は日本橋でやられていますが、何回かに分けて実証実験をやられていましたよね? 僕も何度か伺わせていただきましたが。
吉藤:そうですね。初めは常設を作るつもりもなくて。2018年に1回、2週間だけオープンしたんですね。
齋藤:秋葉原でやられた?
吉藤:それは霞が関でやりました。日本財団さんでやらせていただいたのが第1回目でしたね。その時は、10人のメンバーたちで働く実験をやりました。「別にそれ、人が動かさなくても良いじゃないか」「人工知能がやれば良いじゃないか」など、いろいろ言われていたんですよ。ドリンクを運んでくるだけだとしたら、別に回転寿司でも良いわけですよね。
「別に障がい者の雇用のためにそんなことをしなくても」という意見が強かったんです。「お客さんが喜んでくれるかどうか」「そもそも働いている側が楽しいかどうか」「仲間意識を得られるかどうか」など、いくつか仮説を立てて、2週間実験してみたんです。
そうしたら、働いているメンバーたちもすごく前向きに捉えてくださって。また、関わりたいと言ってくださる方々もとても多く、第2回をやろうという時にはいろんな企業スポンサーさんがついてくださいました。
それで、2019年に第2回目を大手町で、第3回、第4回を渋谷でやりました。その後、いろんな企業さん、スポンサーさんたちと本格的に常設店をやろうとしていたところでコロナが来て、一気にプロジェクトが白紙化しました。もうダメかなと思ったんですけど。
それからも、いろんな方々からぜひこれをやったほうが良い、続けたほうが良いとご意見をいただきまして。1年間準備をしてきて、今年の6月にオープンすることができました。
齋藤:ありがとうございます。先ほどご紹介いただいた、身長120センチのバージョンについて、僕が実際に行かせていただいて感じたことをお話しします。
一番最初は、まずなんて言うか、ちょっと言い方があれですが、ロボットに接客されるという感じで行くんですけど。その奥には今、寝たきりになっている方がいらっしゃる。大賞を受賞された時にもおつなぎいただいて、実際にリアクションや会話ができる状態にしてくださいましたよね。
そして、2回目はもうそれがわかっているから、会話をしに行くんですよね。さっきおっしゃっていたように、ロボットは別に自動運転で良いという話もあったそうですが、今回受賞されたロボットはそこ(奥に人がいて会話できるところ)が、今までのカテゴリのいわゆるロボットとは違うような気がしました。それについて、何かお考えがあればお聞かせ願えますか?
吉藤:そうですね。たぶんロボットを見に来た人って、1回来たら「もういいや」ってなる気がするんですよね。珍しいロボットの体験をして、「なるほど。こういうカフェもできたんだな」で終わってしまうと思うんです。でも、我々のカフェはリピーターの方がとても多いんですね。
うまくコミュニティになっていたり、お得意さんがいたりするんです。先ほどおっしゃってくださいましたが、どちらかというと店員との会話を楽しむために来てくださるんです。ご飯を食べに来る、コーヒーを飲みに来る、休憩しに来るのがカフェのイメージでしたけど。
我々のカフェでは、働いているパイロットのメンバーたちとお客さんが、接したり会話したりしているうちに関係性が生まれてくる。そうすると、またこの人に会いに行きたいとなる。例えば、普通のカフェではオーダーを取った後に、「かしこまりました」って、スッと帰ると思うんですが、ここではちょっとだけ雑談の時間があるんですよ。
この雑談というのは必要があるからそこに行って、必要があるからいる所における、ちょっとした不必要な時間なんですね。学校でいうと休み時間みたいなもので、会社でいうと、一服する時とかランチタイム。理由があってそこにいるんだけど、いるからしゃべろうとする。その雑談によって何が生まれるかというと、きっと「関係性」なんですよ。
これを作りたかったんです。そうすると、この彼に会うために、しゃべるために、お客さんがここに来てくれたりってことが起こるんですよね。
吉藤:実はこれ、美容院なんかもそうです。
齋藤:そうなんですね。
吉藤:髪を切る時って、別に安さだけならQBハウスで良いし、近くの美容院でも良いんだけど、私たちは10年世話になった美容院があったら、遠かったとしても必ずそこに通うじゃないですか。
齋藤:はい。
吉藤:それはその美容師さんの腕も理由の1つかもしれないけど、やっぱりこの人に何かしてもらいたいというのがありますよね。たぶんこれ美容院やカフェだけじゃなくて、あらゆる世界で「この人にお願いしたい」というのがあると思うんですよね。
だからきっとそれがリレーション、関係性の価値で。私たちが解決したいと思っているのは「孤独の解消」なんです。我々は、必要だからあなたに依頼したいという、機能だけの世界で戦っていると、すごく厳しいんですよ。
我々もいつかは能力が低下していくので。つまり「ロボットが作れるから吉藤さんと付き合っている」という状態になると、私がロボットを作れなくなったら、周りに誰もいない状態になってしまう。
でも昔、ロボットを作っていた時代に、一緒に働いていた仲間たちなら、10年ぐらい働いたメンバーたちなら、たまに会いに来てくれる気がするじゃないですか。
たぶん老後に我々が蓄積すべきは、いつまでも必要とされ続ける「機能」とか「お金」ではなくて、むしろ「どういう人との関係性を維持できるか」ということである気がしているんですね。
齋藤:ありがとうございます。もうおっしゃるとおりだなと思っていて。今回、試み自体が大賞になって、しかもけっこうな大差でというのは、新しいですよね。コロナ禍になって、僕なんかもテレワークをしています。今日もそうですけど、リモートで人との関係をつなぎ続けている状態です。
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