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「みてね」のこれまでとプロダクト作り(全2記事)

好きなことをトコトン追求する「みてね」の開発スタイル 作り手が楽しみながら作れば、必ず使い手にも伝わる

「プロダクトマネージャーカンファレンス 2021」は、プロダクトマネジメントに携わる人たちが共に学び、切磋琢磨することを目的に開催されるイベントです。ここで登壇したのは、株式会社ミクシィの笠原氏。子どもの写真・動画を家族と共有できるアプリ「家族アルバム みてね(以下、みてね)/FamilyAlbum」の開発について発表しました。全2回。後半は、「みてね」の開発スタイルと、新規事業の見つけ方について。前半はこちら。

「みてね」の開発スタイル

笠原健治氏(以下、笠原):こんな「みてね」なのですが、開発スタイルについて少し触れたいなと思います。ざっくり言うと、ユーザーの声をしっかりとベースにしながら作っているチームかなと思っています。

初期は、自分でもCSを行っていました。実質1年半ぐらい、私がメインで行っていて、もちろん来た問い合わせについては、いろいろチームでも共有しながらやっていました。そこで、電話でお叱りを受けたり、実際に訪問したりして、こういう家族が使っているんだなと実感しました。

「みてね」を使っている方たちが、全体としてどういう雰囲気なのかをつかんでいく、横断的にユーザーをつかむという意味において、すごく大事な経験だったと思っています。

いくら思い入れがあっても、全員のペルソナを知ることはできないですし、どれぐらい濃淡があるのか、その濃淡を実感しながら、濃いところから改善していくわけですが、そこをつかむうえで、すごく役に立った面があると思っています。

実際、同じ問い合わせにしても、すごく背景から書いてくださったり、熱量込めて書いてくださるケースもあって、その熱量に動かされて、自分もその要望に対して、こういう背景があるんだなと理解したうえで開発に進んでいくこともできたので、すごく大事かなと思っています。

今でもその文化は大事にしていきたいと思っていて、CSの人たちから問い合わせについて気になったことがあれば、随時「Slack」のチャンネルで共有してもらいながら、みんなでああだこうだ言いながらやっています。

また、よくあるとは思いますが、レビューなどダーッと流れてくるチャンネルや、SNSの声が流れてくるチャンネルがあって、そういうのをみんなで見ながら開発を進めています。

開発体制は、デザイナー、エンジニア、CS、マーケティングと、みんなで一体となって進めていくことが多くて、チーム間で、CSとして思ってもない機能ができるとか、エンジニアとして思ってもない仕様が出来上がるとか、そういうことはなく、しっかりとコミュニケーションしながら進めています。

社内にもたくさんユーザーがいるので、開発途中の段階でも、より気軽に聞きたい時には、社内のユーザーに機能を試してもらって、感想やフィードバックを貰いながらやっているのもよく見かける光景かなと思っています。

ユーザーの声から出ない機能も自分たちが発案

一方で、ユーザーの声から出ない機能もあると思っていて、そこはそこですごく大事というか、より満足度を上げていくうえで大事な機能であることが多いのではないかなと思っています。

例えば「みてね」にアップロードした写真や動画から何秒間かを切り抜いて、コンピレーションの動画を新たに作って、3ヶ月に1回とか、1年に1回とか、ユーザーにお届けする一秒動画という機能があるのですが、この機能はユーザーからしたら「みてね」に動画を上げていった結果、急にまとまった動画が届いて、成長を振り返ることができてうれしい機能です。

そこは自分たちが発案したもので、ほかにも、「みてね」にアップロードすると、写真・動画が月別のアルバムのUIで整理されていくのですが、そこも自分たちで考えたからこそ出てきた機能なのではないかと思います。

また、最近は「みてねのウィジェット」という機能をiPhoneやAndroidでやっているのですが、これはスマートフォンを開くと、何年前の今日というのがスマートフォンのホーム画面に出てきて、そこから「みてね」に飛ぶと、その周辺の写真・動画を見られるという機能です。

自分たち自身のユーザー体験をもとに、もっとこういうのがあったらおもしろいよね。こうなったらみんな驚くよね、うれしいよねと、潜在的に何が大事かを考えていきながら作っていくことも大事だと思っています。

なので、顕在化しているニーズと潜在的なニーズと、やはり両方のバランスを取りながらやっていくことで、地道にうまく行きつつも、時々ジャンプアップするようなサービスを作っていけるのではないかなと思っています。その両方をやっていくのを、今後もやっていきたいなと思っています。

世界中の家族の「こころのインフラ」を作っていきたい

今後の展望・目標としては、世界中の家族の「こころのインフラ」、安心となる場所を作っていきたいなと思っています。その家族の絆をより深めていったり、子どもへの愛情を注ぐ場だと「みてね」は思っています。

親からの子どもへの愛情、あるいは、おじいちゃん、おばあちゃんとか、ひいおじいちゃん、ひいおばあちゃんとか、世代を超えて子どもへの愛情がしっかり伝わっていく、そういう場所になっていけばいいなと思っています。

規模的にも、今の10倍を目指したいなと思っています。今はユーザー数が1,000万人ですが、世界中で使われることによって、1億人規模を目指していきたいなと思います。

また、子どもの成長に合わせて必要となるサービスをさまざま展開していきたいと思っています。自分も子どもがだんだん大きくなってくる中、ああいうのがあればいいな、こういうのがあればいいな、このへんイケているのがないなと思うことが多々ありました。

もちろんすべてはできないと思いますが、「みてね」の中にあっても違和感がないというか、ユーザーにとっても自然と使うことができるサービス、新たな課題解決となるものを出していきたいなと思っています。

この下に書いているのがその一環ではあるのですが、こういった機能を提供していきながら、その子どもの成長に合わせて、家族の人たちが喜んでくれるようなサービスを展開していきたい。

単なる広告ビジネスとか、単なるストレージで課金するというよりは、こういう付加価値というか、あってうれしいサービスを追加することで売上も増えていくといいなと思っています。

売上の規模も、2,000億円と書いていますが、国内で200億円以上、海外で今展開している国だけで、日本の10倍ぐらい子どもの数があるので、理論的にはこれぐらいいけるのではないか、というところで、2,000億円ぐらいを目指せたらいいなと思っています。

また、「みてね基金」という取り組みを、2020年4月から取り組んでいます。「みてね」自体が、子育てにおける課題を解決している部分もあるとは思うのですが、世の中には子育てをしていくうえで、もしくは子どもと家族が抱える課題がたくさんあると思っています。

いろいろなNPOの方たちが、そこに対して活動されていると思うのですが、そういう方たちと組んで、あるいは後方支援させていただいて、一緒に取り組んでいく。たくさんの社会的な課題も解決していけるといいなと思っています。

大きな社会変化は新規事業の最大のチャンス

新規事業の見つけ方というところで、「みてね」から一歩離れて、大枠の話もしていければなと思います。

新規事業を見つけるのはすごく大変だと思っています。ぶっちゃけ、そこでのコンセプト次第で、6割、7割ぐらいそのサービスの成功・失敗が決まる気がしていて、すごく大事な話だと思いますし、簡単ではない話だと思っています。

私が大事かなと思ったことを2つ書いているのですが、実際、これ以外もいっぱい見方はあると思いますし、そういうのをぜひシェアしてもらえるとうれしいなと思っています。

私が特に大事だと思うのは、この2つです。

1つは、新しい技術とか、新しいプラットフォームの出現だったり、あるいは大きな社会変化。今だとコロナも大きな社会変化だと思うのですが、コロナの場合、ピンチではあるのですが、ただ、変化が起きている以上、最大のチャンスでもあると思っています。要は、大きく変わる時というのは、すごくチャンスだと思っています。

そもそも新規事業では、新しいユーザー体験を提供できるかどうかが一番大事だと思っています。その新しいユーザー体験を自分たちで作りだすこともできるとは思うのですが、ただ、平時に作り出していくのは限界があると思っていて、外部的に大きく変わっていく、そして、変わっていく流れの中から新しいユーザー体験を作り出していくほうが、より大きなインパクトを与えやすいと思っています。なので、このへんは大事かなと思っています。

サービスの成熟化に伴って生まれる次のサービスの存在意義

もう1つは、あるサービスが出現して、成熟化してくることで次のサービスの存在意義や存在理由が生まれることもあるのではないかなと思っています。

SNS「mixi」でいうと、ブログとか2chとか。2chは数年前からそういう文化があって、mixiが始まる1年前、2年前ぐらいからブログを使う人がけっこう増えていたので、情報発信という意味で、慣れ始めてきた人たちがいたからこそ、mixiは入りやすかった面があったなと思っています。

なので、大きくブレイクしていくサービスがあった時は、この先に何を実現できるかなと考えられるでしょうし、もしくは、少し前に出現して大きくブレイクして成熟化したサービスがあった時には、その先に、今だからこそ生み出せるものが生まれ出るチャンスがあるのではないかなと思っています。

そういう中、「ヒットするコミュニケーションサービスとは」。これも簡単にはできない話ではありますが、少しだけ触れさせてもらうと、コミュニケーションサービスというのは、因数分解すると、共有したいコンテンツ、かける、共有したい相手でできていると思うんですね。

大事なのは、このどちらか、あるいはどちらにも、新しい発明や新しい価値など新しいユーザー体験を作れるかどうかです。それが十分に魅力的だった場合、あるいは十分に差別化されていて、すごくユーザーに刺さった時に、コミュニケーションサービスとして大きく跳ねていくのではないかなと思っています。

「みてね」でいうと、共有したいコンテンツは、子どもの写真・動画です。共有したい相手は、誘った家族です。両方ともけっこう狭い概念だと思うのですが、ただ、家族とだけ共有できるからこそ、安心してアップロードできるし、誘われた家族が100パーセント視聴率のユーザーということもあるのですが、熱心に喜んで見てくれる人たちだからこそ、アップロードするほうも、よりストレスなく上げることができるという循環があると思っています。

共有したい相手が広いと、わりと総合型のSNSのようになっていって、狭いとよりクローズドで分散的な空間になっていくと思うのですが、その分、熱量としては生み出しやすい面もあると思っています。どちらがいい、悪いという話ではなくて、いろいろなかたちのコミュニケーションサービスがあるなと思っています。

今後もそういう意味では、まだまだインターネットのサービスの中に生まれていく可能性はあるのではないかなと思っています。

サービス改善のポイント

続けて、新規事業として何をやっていくのかという話が決まっていく中で、サービス改善を何を見て行うのかというところも少し話せればと思います。

一番大事なのは、自分だったりチームメンバーだったりが粘って、プロダクトに向き合うことができるかだと思います。粘りさえあれば、だいたいの事業はうまくいくのではないかなと思っているのですが、ただやはり、がんばる場所を間違えると、いくらがんばってもうまくいかないということがあると思っています。

自分の中では、まず1つ目として、プロダクトを離れた場所から見てみて、一番の課題は何かを見極めていく。今起きている状況の中で、一番大事なことは何だろうか。その大事なことに対してしっかりリソースを割いて、その課題の解決を図っていく。残ったリソースで周辺を固めていくのが、まずは大事かなと思っています。

次に、やり過ぎないというか、完璧はやはりできないので、一定大事だと思う課題に対して、ユサユサと改善していったら、一歩次の課題に移っていくことだと思っています。

次の課題に移っていく中で、最初やった結果がどうだったのか、時間軸が経過しながらどうなっていくのかを観察していって、2番目の課題に対してもしっかり向き合って解決していく中で、3つ目の課題に移りながら、同じく2番目がその後どうなっているのかを見極めていく。

どんどん移っていくのだけれども、気づいたら全体としてサービスがよくなっているというか、螺旋階段を上がっていくようによくなっていくことが大事かなと思っています。

また、数字を見ていく中では、だいたい上がっているか下がっているかのどっちかだと思うんですね。やはり上がっているのがすごく大事な指標だと思っています。

下がっている局面もあると思うのですが、改善をしていく中、なにかの指標がポコッと上がり出すことはあると思っていて、大事なのは、上がった指標をしっかりつかむ。よく観察して、なぜ上がったのかを理解しながら、その指標をフォーカスして、より大げさにそこを盛り上げていく。

その結果、大事な指標が連鎖して上がることもあるのではないかなと思っています。なんとか改善していきながら、上がっていくところを大事に育てることが、大事なのではないかなと思っています。

あとは、網羅的にユーザー像をつかむこと。今日何度かそういう話をしたかと思うのですが、やはりユーザーは多様で、本当に思いもよらない行動をされる方もいるのですが、そこが引き出しに入っていることが大事なのかなと思います。

断片的にわかってると、断片的に言われたことをまずやってしまって、それに対して不満を持つ人を逆に増やしてしまうこともあると思います。網羅的につかんでいれば、ある一定の反作用はあることを理解しながら施策を進めていけるのではないかなと思っています。

もしくは、よくある話として、ヘビーユーザーと初心者ユーザーですかね。ヘビーユーザーの声をあまりにも聞き過ぎると、サービスが難しくなりすぎてしまって、初心者ユーザーには難しいサービスになってしまうということがよくあるかと思います。そのへんは俯瞰してユーザー像を全体的につかめていると、防ぎやすい話なのではないかなと思っています。

ユーザー像をつかむのは大事なのですが、やはり最終的には自分自身がヘビーユーザーであることも大事だなと思っています。

すごく判断が難しい案件や、決断しづらいことは多々あるのですが、そういう時に、自分がヘビーユーザーだと、決断しやすいなと思っています。

あるいは、やった時にちょっと失敗だったという時にも気づきやすいと思っています。ヘビーに使うというか、作っているプロダクトをすごく愛するというか、そこはやはり大事な点なのかなと思っています。

好きなことをトコトン追求してワクワクしながら作る

ということで、最後にですが、サービスを作っていく中で、好きなことをトコトン追求していけるといいなと思います。好きなことをプロダクトとしてやっていくのもありでしょうし、やっているプロダクトをトコトン好きになっていくのもありだと思っています。

これだけ作り手が増えてくる中で、SNSでの発信者も含めれば、たくさんの人が発信したり作ったりできる時代になってきている中、勝ち切るため、あるいは付加価値を出して世の中に感動を届けていくためには、やはり好きなことをトコトンやっていくしかないと思います。

やっていく過程でも、夢中になりながら、ワクワクしながら作っていくことができたらいいし、大事だと思っています。作り手がすごく楽しみながら、ワクワクしながら、「これがおもしろいんじゃない? いいんじゃない?」と思って作ったサービスは、必ず使い手にも、伝わるのではないかなと思います。

逆に、特に楽しまずに作っているものは、やはりそこまで伝わり切らないと思っていて、自分だったりチームだったりがワクワクしながら作れる状態になることも大事なことかなと思っています。

3つ目に書いたのですが、「みてね」の場合、やはりちょっと特殊かもしれないのが、子どもや家族への愛情をダイレクトに投影できるサービスというところで、非常によかった点かなと思っています。

自分だったり、自分のチームメンバーだったり、子どもや家族への愛情は底抜けにあって、そこのためでもあるんですね。

子どもためでもあるし、家族のためでもあるというサービスは、トコトン愛情を注ぐことができる対象で、それはすごく強い部分でもあるなと思いますし、ある意味幸せなプロダクト作りでもあるなと思っています。

ということで、以上になります。ありがとうございます。

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