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私たちの生活にメタバースはどう関わってくるのか メタバースの現在地と未来について、メタバースプラットフォーム「cluster」の開発者・加藤氏に訊く(全2記事)

実は日本が世界をリードできる“新領域” クラスターCEO加藤直人氏に聞く「メタバース」の現在地

最近いろいろなところで耳にする「メタバース」。メタバースが私たちの生活に入り込んでいる現状において、今後どうなっていくのでしょうか。その広がりにより、私たちの生活は大きく変化するのでしょうか。 今回、メタバースプラットフォーム「cluster」を開発しているクラスター株式会社CEOの加藤直人氏に、「cluster開発」と「メタバース」についてインタビュー。前半は、メタバースがなぜ今盛り上がっているのか、その理由と課題について聞きました。

業界全体が「メタバース」という1つの単語に向かっている

ーーまずは、メタバースの現在地についておうかがいしたいと思います。最近、メタバースという言葉が流行っていますよね。

加藤直人氏(以下、加藤):だいぶバズってますね(笑)。

ーーバズっています(笑)。一方でオンラインゲームという言葉はもっと前から一般的にあると思います。どうして今メタバースが注目されているのでしょうか?

加藤:2つ観点があると思っています。1つは、業界からの要請なんですよね。どういうことかというと、VR、ARとか、ゲームとかSNSとか、最近だとNFTだったり、このへんのマーケットが目指す世界があって、ここが1つの単語として括られたというのがあるんですよね。

大きいのはやはりゲームとSNSですね。ゲームとSNSはどれだけ滞在時間を長くしていくか、どれだけアテンションを引きつけるかをビジネスにおいて大事にしている業界です。

動画を見るのに対して、ゲームで遊びながら友達としゃべるというのがメチャメチャ伸びています。それこそ「Discord」をつなぎっぱなしで「APEX」をずっとやっているわけですね。

そういう時代になっている中で、ゲーム自体がソーシャルな場になっている。友達とリアルタイムにしゃべるための場になっているというのが1つ、すごく大きい要因だなと思っています。

そこに、新規のビジネスとしてVRだったりARだったりが、もちろん我々の技術使えますよねと。NFT、ブロックチェーンみたいなところが、我々の技術使えますよねと。

そんな感じで思惑が交差しているんですが、生活主体が、リアル世界から計算された世界、つまりコンピューターによって設計をされた世界の上に移っていくということ自体は、過去から語られていたわけですね。

ーーメタバースという単語自体は、けっこう前からありますよね。

加藤:メタバースという単語ができたのは、ニール・スティーヴンスンさんの『スノウ・クラッシュ』という作品からですが、デジタル世界や、SF作品はそれより前にあって、例えば『ニューロマンサー』は、コンピューターと身体をはじめてガッチャンコしたと言われている作品です。

ほかにも例えば映画では『トロン』という作品があります。トロンというのは、コンピューターのゲームの中に自分が入ってしまうという1980年代の作品で、メタバースという単語が盛り上がる前の作品なんですね。そんな前から描かれていたその世界観を目指して、あらためてそこをメタバースと呼んだというのが1つですね。

ここでけっこう重要なのが、メタバースという単語自体は、「Second Life」のせいと言ってもいいかもしれませんが、だいたい2000年代に盛り上がったということです。

ーーどうして、2000年代にSecond Lifeでメタバースという言葉が盛り上がったことが重要なのでしょうか。

加藤:Second Lifeの時代から15年が経って、メタバースという言葉があらためて使われているのですが、肌感として感じるのが、30代、40代くらいのSecond Life世代の人たちはけっこう、「メタバースってSecond Lifeだよね」「失敗したSecond Lifeのことですか?」と感じがち。一方、10代、20代を見ていると、案外そういうふうに感じていないっぽい。「cluster」も10代の若いユーザーがけっこう多いんですが、「Second Lifeって何?」っていう(笑)。

ーー若年層はそもそもSecond Lifeを知らないんですね(笑)。

加藤:若年層はSecond Lifeの失敗という悪いイメージを持っていないのもあって、Facebookがメタバースを打ち出していったというのがあります。

若年層ユーザーを取れていない「Facebook」は、そのまま高齢化していますし、「Messenger」も若年層の心をつかむメッセージングサービスになれていない。若い人たちはFacebook傘下の「Instagram」だけでなく「Discord」や「Snapchat」や「TikTok」を使っていますし、そのほかのSNSも強い。

ザッカーバーグは、スマートフォンというコンピューティングプラットフォームで取れなくて、すごく苦しい思いをしていたと公言しているので、次のコンピューティングプラットフォームとして、VRやARに興味を持っているというのは、ずっとわかっていたことではあるんですよね。

そんな中で、メタバースを目指そうと業界全体が1つの単語に向かって、お金だったり人だったりが流れ込んできているというのが、現状かなと思います。

今のメタバースは「自己組織化」を目指している

ーーもう1つの観点はなんでしょうか?

加藤:もう1つ、メタバースという単語においてけっこう重要な要素かなと思っているのが、先ほどおっしゃっていた、オンラインゲームだったり、MMORPGという言葉です。

僕「ドラクエX」をけっこうやるんですが、「ドラクエX」もMMORPG(Massively Multiplayer Online Role-Playing Game)ですよね。その中ですでに生活している人がメチャクチャいっぱいいる。「FF14」では麻雀ができるし、僕の知人に「ドラクエX」にメッチャはまっている人がいるんですが、何をやっているかというと、ずっと釣りしているんですね(笑)。

ハウジングで、部屋作って、部屋飾って、ずっと釣りをしているんですよ。「ドラクエX」や「FF14」や「PSO2(ファンタシースターオンライン2)」とかの上で結婚して、現実世界でも結婚するみたいなのは珍しくもなんともない。けっこうあります。

ーーそうですね。けっこう前からそれはあった気がします。

加藤:じゃあなんで今メタバースなのかと言われると、MMORPGの世界は、どこまでいっても開発者側がテーマや世界観を提示していて、開発者側が思う世界や発想を超えてこないんですね。

それに対して、今言われているメタバースは、一番重要なのが「自己組織化」だと思っています。自己組織化とは何かというと、構成する要素となる一人ひとりのプレイヤーが、全体を認識していないけれど、それぞれが思い思いの行動をしていると、全体の構造としては組織ができ上がっていって調和が取れているという意味です。

例えば地球とか社会とか、都市とかもそうですね。都市は別に全体像を誰かに見られるわけでもないですが、それぞれが動いていると勝手に調和が取れていく。ちょっと調和が取れていないから最近は地球の環境ヤバいんかなといった話にもなりますが(笑)。

メタバースの中で形成されつつある3DCGのクリエイターのエコシステム

メタバースが目指しているのは、そっちなんですよね。なので、MMORPGと比較するとすごく重要になった要素は、クリエイターなんですよ。3DCGのコンテンツを作るクリエイターがすごく重要な要素だと思っています。

世界でメタバースが盛り上がっている中で、VRが大事だとか、ゲームが大事だとか、アバターが大事だとか、いろいろ言われていますが、僕が一番大事な要素だと思っているのは、3DCGのコンテンツを作るクリエイターです。それは単に場を作るのもそうですし、アバターを作るというのもそうです。clusterでもすでに、自分で作った空間の上で、カフェやバーを運営したり、友達を集めてワチャワチャ遊んでいる人たちがたくさんいるんですよね。

そういうことができる時代になりました。なぜできるかいうと、3DCGのコンテンツを作るコストがどんどんどんどん下がってきているからです。それこそ、Autodeskという会社が提供している3DCGのツールの「Maya」や「Max」は有名ですが、そういうすごく高価なものでなくても「Blender」など無料のツールでけっこう作れてしまう。

とはいえBlenderも使いこなすのはメチャクチャ難しいのですが、ピクシブさんが提供している「VRoid」とかを使えば、簡単にアバターが作れます。

clusterでも最近「AvatarMaker」というclusterの上でアバターが作れる機能や、「World Craft」という機能を提供し始めたのですが、3DCGの知識がそんなになくてもアプリ内で簡単にコンテンツが作れてしまう時代がどんどんやってきています。

「AvatarMaker」

「World Craft」

ーーツールの進化により、コンテンツを作るという意味でのハードルが以前と比べて下がっているのですね。

加藤:今までのゲーム産業が、数億円から数十億円の開発費と、数十億円のマーケティング費用をかけて運用・運営をやっていたコンテンツよりも、クラスの友達が作った「コンテンツと呼べるのか、これ?」みたいな(笑)、コンテンツの体を成していない謎の空間にどっと人が集まって、みんなでぎゃあぎゃあ騒いでいるほうが楽しいという世界になってきているというのが、今のメタバースの時代の重要な要素なのだと思っています。

だから僕は、メタバースの中で3DCGのクリエイターのエコシステムが形成されつつあるというところが、今回一番のみそになっているなと思います。それによって、運営側が意図しなかった発展をするし、そのクリエイターたちが次の時代を作る。

しかもその次の時代は、ただの動画的なコンテンツというより、場自体を作ることになると思います。それを作るのは誰かというと、10代とか20代の若いクリエイターですね。そういうクリエイターが、それぞれの場を作るというのが、3DCGのメタバースの世界の特徴ですね。

「Minecraft」で遊んでいる小学生は自分が3DCGコンテンツを作っているとは思っていない

ーーユーザーでもあり、クリエイターという人がこれからどんどん増えてくるのでしょうか?

加藤:そうですね。もっと言うと、自分がクリエイターであることを認識しないと思います。僕の考えですが、動画のマーケットではそれが起こったんですよ。

どういうことかというと、例えば数億円、数十億円、100億円かけて作られたハリウッド映画や、テレビ局によって作られたコンテンツをみんながテレビで観ていた時代から「YouTube」に変わりました。

個人が撮って動画を上げて、たくさんのビューを稼ぐという世界。さらに今や、TikTokでさっと動画を撮って、友達が撮った動画をTikTokで見られる。TikTokをやっている女子高生はたぶん、自分が動画クリエイターという肌感がないんですよ(笑)。

ーー確かにそうですね。クリエイターだと意識している人は多くないと思います。

加藤:たぶん動画クリエイターと言われてもピンとこないと思うんですよ。ただただ遊んでいるだけ。そういう時代になっていると思っていて、3DCGもそうなってくるんですよ。

ーー3DCGにおいても同じことが起こるのですね。

加藤:今すでに起こっている例でいうと、「Minecraft」がまさにそれですね。Minecraftで遊んでいる小学生たちは、自分が3DCGコンテンツを作っているなんてつゆとも思っていない。あの人たちは遊んでいるんですよ。遊んでいるんですが、作っているものは3DCGコンテンツなんですよ。

そのようなかたちで、バーチャル空間上で友達と遊んだり、好きな格好をするために着替えたりしている。それ自体が3DCGの空間を作っているし、環境を作っているというのが、今のメタバースの流れですね。そうなっていくし、そうなりつつあるというのが、今の時代ですね。

Facebook社の社名変更で感じたこと

ーー先ほど、お話の中で、Facebookという単語も出てきました。Facebook社が「今後はメタバースに注力していくぞ」と大々的に発表しましたが、そのニュースを見た時はどう思われましたか?

加藤:結論から言うと、既定路線なんですね。Facebookが、20億ドルを投じてVRの「Oculus」を買ったのが2014年の3月とかですね、当時からやはり、次世代のコンピューティングプラットフォームは何なのかというところをザッカーバーグは意識していました。

若年層の取り込みにも苦戦しているのがFacebookの状態で、GAFAMの中でも、やはりFacebookが一番おくれをとっていますね。

売上の構成比を見ても、ほかのところはけっこうバランスよくいろいろなところに張っていて、Google、Microsoft、Amazonはそれこそクラウドにすごく投資をしています。それぞれGCP(Google Cloud Platform)、Azure、AWSだったりの売り上げが、すごく大きくなっていて、次のクラウドというところをがんばっています。

Appleはスマートフォン中心ですが、すごくバランスよいかたちで売っています。その中でFacebookは、SNSと広告の一本足打法の状態です。

次の一手がちょっと見えていない中で、次世代のコンピューティングだったり、ビジネスのかたちとしてメタバースを打ち出していくのは、けっこう既定路線だったなと思いました。

ーーFacebookが「Meta」という言葉で打ち出したことについてはどう思われますか?

加藤:ザッカーバーグがメタバースという単語を使って発表したのは今年の7月くらいだったんですよ。10月の末にそれこそ「Meta」という名前に変えて、あらためてメタバースを打ち出したんですが、「メタバース会社を目指すよ」と言ったのは今年の7月くらいで、その時にどう感じたかというと、「あっ、メタバースっていう単語にするのか」(笑)。

ーーそこは少し思うところがあったのですね。

加藤:単語問題はあったんですよ。僕らもclusterというプラットフォームをやっていますが、この領域自体を何と言っていくのか、ネーミング問題がありました。

ネーミングで「○○業界」となったり、「○○市場」となったり、名前が1つ決まると認知のコストがすごく下がるし、正確には理解していなかったとしても、理解も進んだ気になれる(笑)。

1つそこの目標値みたいな、旗の立て方みたいな感じですよね。ラベリングがあることによって、人の流入だったり、投資だったりがわかりやすくなるというところで、この業界としても、何かか名前をつけていかないといけない。

もともとザッカーバーグが「Facebookをメタバース会社にしていくぞ」と言った2021年4月の前に、世界的にはRobloxという会社が2021年3月に上場して、時価総額も5兆円ぐらい、すごく高い価格がついているんですね。そこはゲーム会社なんですが、ユーザージェネレイテッド・コンテンツを上げている、ゲームの会社です。すごくSNS的な場所で、そこもメタバースという言葉をすごく発信しています。

『Fortnite』を提供しているEpic社も時価総額10兆円くらい付きそうと噂されていて、そろそろ上場しそうと言われていますが、ここの社長のティム・スウィーニーもすごくメタバースという単語が好きで、2017年にFortniteが正式にリリースされて、一気にユーザー数を獲得したあとぐらいから、メタバースと言い始めたんですね。

2017年の末か2018年ぐらいからメタバースと言い始めたという流れで、そのぐらいの頃からメタバースという単語がよく使われるようになりました。

ユーザージェネレイテッドな3DCGのクリエイターを取り込んで、ゲームの世界を作っていくプラットフォームとしてメタバースという単語を使って、業界を形成していこうという動きがあった中で、ザッカーバーグが動いたというのが今ですね。

どうやってメタバースは発展していくのか、その議論が足りない

ーーそれがメタバースの現在地なのですね。メタバースがどんどん広がる中で、今後課題になることは何だと思われますか?

加藤:一番大きいなと思っているのが、どういう社会になっていくのかという絵がまだバラバラ。技術よりもそっちなんですよ。

ーー技術よりもそっちですか。

加藤:そうなんです。技術よりもそっちのほうが大きくて、すでにメタバースを構成する要素はなんとなくみんな認識していて、やはり技術はゲームの技術がベースになってくる。空間を構成するものが存在し、アバターが存在し、その中にユーザージェネレイテッドにコンテンツを作るという仕組みが存在している中で、コミュニケーションが行われる。経済活動がそこで行われる。

それが、リアル空間も含め、生活に馴染んでいるというような、描いている世界観と必要なものはだいたいわかっているし、技術的にも必要なものがだいたいわかっている。

そういうような状態になっていて、必要な技術もだいたい出揃ってきている。別にメタバースの社会には、VRデバイスが必須ではないんですよ。全員が全員、VRの奇妙なゴーグル被るのかと言われると、僕はそういう世界観ではなくて、生活の周りにCGがあふれているという世界がメタバースだと思っています。

例えば今インタビューを受けているこの部屋で、コンピューターグラフィックスで構成しているものって、このディスプレイくらいなんですよね。

それも、おかしいと思っていて。名刺なんかも、テクスチャでいいじゃないですか。デンっと出てきて、こうやって名刺を渡すのは古いと思っています。そっちのほうがビジネス的には正しいんですけどね。

わざわざ移動してもらって、こうやって出会わないといけないというのが、まだ不完全ですよね。まだこの先の生活スタイルが、人類には存在しているはずだということはわかっていて、そこを構成する必要なものもだいたいわかってはきているけれども、どうやって発展していくのか。どういうプレイヤーが必要で、そこでビジネスがどう行われて、何がどう広がっていくのかみたいなところはまだですね。

ーーメタバースが広がってはいるものの、今度どうしていくかというところが描けていないのでしょうか。

加藤:描いて発信している人たちはいるけど、なんとなくまだ、みんなのコンセンサスが取れていない。Facebookのような時価総額数十兆みたいな会社が殴り込んでいるという時点で、動くのは動くんですよ。動くのは動くんですが、入り方がわからないというのがあると思っています。

僕は例えば、日本の市場だけでいうと、メタバースに入ってきている投資マネーも事業会社も少ないと思っていて、clusterみたいなサービス提供している会社は、cluster以外正直そんなにいない(笑)。

アバターで配信が売りみたいな感じでやっているのがあったりしますが、プラットフォームだと、cluster以外そんなにないんですよね。単発のコンテンツとして、バーチャル上でイベントをやるものはチラホラはあるけど、もっとあってもいい(笑)。

ーーもっと増えたほうがいいんですね。

加藤:もっとあっていいし、世界的にももっとあっていいはずなんですよ。増えてはきていますが、まだ両手で数え足りるくらいの感じ。

それはたぶん、入り方がわからないから。必要なものがたくさんあることはわかっている。基本的に総合格闘技なので、技術はゲームで、バーチャル空間に入って、経済活動が回るくらいなんですよね。

どういう切り口で入ろうかみたいな、まだまだディスカッションが足りていないのが1つ発展のハードルになるなと思います。技術よりも、一番のハードルはそこなんだろうなと思っているんですよね。

経済的なみんなの認識について、もっともっとディスカッションが行われないといけないし、もっともっとリスクを取るスタートアップが増えていかないといけないですね。

ーーみんなで議論したり、スタートアップが参入したりというお話ですが、どのくらいでそれは解決するんでしょうか?

加藤:本当に1年とかのスパンだと思いますよ。おそらく、というか確実に、来年度はメタバース領域に参入する事業者が、今よりももっと増えるし、投資マネーももっと増えるはずなんですよ。

プレイヤーがもっと増えれば、自然に解像度が上がってくるので、何がどうなっているのかとか、だいたいの市場の最終着地点みたいなものが見えてくるはずです。

見えてきさえすれば、投資もしやすい。さらに投資がしやすいとお金が流れ込んでくるので、起業もしやすい、参入しやすいとなると思うんですね。

もっと言うと、日本という国は、メタバースとの相性がメチャクチャいい国だと思っています。

文化と産業の面で相性がメチャクチャいい日本とメタバース

ーーどういうところ相性がいいのでしょうか?

加藤:2つあって、1つは単純にカルチャー。アニメだとか、漫画カルチャーはアバターとの相性もメチャクチャいいですよね。

バーチャルYouTuberが日本で盛り上がっていますが、バーチャルYouTuberという存在自体が、日本を中心に盛り上がったというのはすごいことですよね。

別に中国で盛り上がってもよかったし、韓国で盛り上がってもよかった。北米とか欧米で盛り上がってもおかしくはなかった。

だって、ただ単にアバターで作られた体でYouTubeのストリーミング配信をする、動画を作るというだけで、それはどこで作られてもおかしくないことなんです。それがカルチャーとマッチしてビジネスになっている。

これが生まれたのが日本というのが、本当にカルチャーとかヒストリーの賜物だと思っています。日本という文化の、アニメを見て漫画を読んで育つというところがすごく大きいなと思います。

ーー日本の文化はメタバースの要素であるアバターと相性がいいのですね。

加藤:最近、マイクロソフトがメタバースを作ると言っていて、「Teams」でアバターを使ってコミュニケーションをとる、というのを発表したんですよね。

北米だとアバターで仕事をするなんてみたいな、反発の意見がけっこう出ていたのですが、日本だとそういう反発がぜんぜんなかった(笑)。やはりこれはカルチャーの違いで、日本との相性の良さというのが1つ。

ーーなるほど。もう1つはなんでしょうか?

加藤:もう1つが、産業なんですよ。どういう産業かというと、ゲーム産業。ゲーム産業の中の、特にソシャゲ(ソーシャルゲーム)産業。

2012年に、完全にスマートフォン産業が、ITの中心になったと思っていて、そのITの中心になったスマートフォン産業でグローバルに勝てた会社は、日本からはゼロでした。

今なおメルカリさんやスマートニュースさんが戦っていますが、みんなのスマートフォンに入っていて、スマートフォン時代を代表するような日本発のサービスはないんですよね。

そんな中で、日本のITは何をやっていたかというと、けっこうな人やけっこうな額が、ソシャゲに流れていったんです。優秀な人たちがソシャゲ産業に行って、2010年代の日本のITと言えば、ソシャゲだったんですね。

世界的に見たら、別にソシャゲはグローバルに大きくなれる産業でもなかったし、サイズ感でいうとそんなに大きくないところで留まってしまっているのが現状です。

逆を言うと、今選ばれているメタバースという未来に必要な技術アセットって、単純にソシャゲで使われている技術なんですよ。

ゲームエンジンがあって、アバターがあって、キャラクターのクリエイティブがあって、デザインがある、という観点から言うと、ソシャゲで使っていたアセットがそのまま完全にメタバースに転用できる。

ーー2010年代に日本のITの代名詞となっていたソシャゲの技術が、そのままメタバースに使えるのですね。

加藤:逆に、北米が勝っていたスマートフォンのいわゆるツール的なアプリケーションが、メタバースに役立ちやすいかというと、そんなに役立ちません。

例えば「Uber」とか「Airbnb」とか、世界を獲ったユニコーンやデカコーンみたいな何兆円と時価総額ついたスマートフォン時代のスタートアップで積まれていた技術が、メタバース時代にはそんな使われるかというと、使われないんですよね。転用しづらい。

そうなった時に、日本はメタバースとの相性メチャクチャいいというところがあって、今メタバースをやるのであれば、国家レベル戦略としてメタバースをやったほうがいいんじゃないかなと個人的には思います(笑)。

国全体でメタバースを盛り上げていかない理由はない

ーー世界的に見ても、日本がリードしていけるところなのでしょうか?

加藤:リードしていけるような稀有な領域ですよね。アバターという身体性を持ってコミュニケーションをする。コンテンツにおいても、アニメだったりゲームのIPだったりとメチャクチャ相性がいい。

clusterも、直近ではハロウィンの時に、ディズニーさんと「ディズニーツイステッドワンダーランド」というコンテンツとコラボしていて、2020年はポケモンさんとコラボしたりしていたんですよ。

『ディズニー ツイステッドワンダーランド』バーチャル ハロウィーンイベント2021

それができたのは、ひとえに、clusterがバーチャルイベントだけでいうと随一のシステムを誇っているからなのですが、それ以上に、clusterが日本の会社だからというのがメチャクチャ大きいんですね。

話が早いんです。日本の会社なので、言語もそうだし、カルチャーもそう。ユーザーとのかかわり方だったりも明確に話が早い。

だからいち早く、そういうポケモンさんのバーチャルテーマパークとか、ディズニーさんと一緒にイベントをやったりできた。

日本発でメタバース領域なので、メタバース業界を全世界展開していくのは、メチャクチャ有利なはずで、それを利用して国全体でメタバースを盛り上げていかない理由がない。

(次回へつづく)

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