2024.10.01
自社の社内情報を未来の“ゴミ”にしないための備え 「情報量が多すぎる」時代がもたらす課題とは?
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小野和俊氏:クレディセゾンの小野です。今日は「DX時代を勝ち抜くエンジニア成長戦略」というテーマで、すごくきれいで正論な話だけではなく、私自身の過去の失敗談というか、反省したことも最初のほうに少し紹介します。この時代にエンジニアとしてどうやっていくのがいいか、3つくらい話そうと思っています。よろしくお願いします。
まず自己紹介をします。今はクレディセゾンにいますが、ずっとというわけではなく、いろいろな会社で、いろいろな場所で仕事してきたと思っています。最初、大学を出た後に、サン・マイクロシステムズというJavaを作った会社に入りました。今はOracleという会社になっていますが、やはり今も昔も「シリコンバレーが5年進んでいる」みたいなことを言われるわけです。
私は小学校からプログラミングをやっていました。小学4年生の時に、2つ上の6年生の先輩の家で遊んでいたら、その人がPC−8801(当時のN88−Basic)でプログラミングをしていました。「画面を魔法使いみたいに自由に動かしている! なんだこの人は」とすごく興味を持って、電波新聞社の「ベーマガ(マイコンBASICマガジン)」を買ってきて、独学で家で写経というか、写して動かしてみることから始めました。
昔から趣味で、見よう見まねの独学でやっていたプログラミングの世界。その後もいろいろ作ったり、大学の時にはいろいろなプロジェクトをやったりして、その分野に未来のような場所があるなら、ぜひそこで仕事をしてみたい。外資系の会社ならそういう機会があるかもしれないと思い、サン・マイクロシステムズに入りました。
新卒の研修が半年くらいあり、それが終わった頃、私はもともと希望を周囲に言っていたこともあり「ちょうど小野君にピッタリで、君の希望にもかなうし、特性としても君がやっていたことと合うから行ってごらん」と言われ、アメリカのイースト・パロ・アルトにあるサン・マイクロシステムズの本社に行き、半年弱開発の仕事をしました。
実は、そのままアメリカにいようと思っていましたが、今でいうエンジェル投資家の方から「技術で社長を張ってくれる人を探している」とサン・マイクロシステムズの同僚経由で声がかかりました。何人かに声かけていたようですが、打ち合わせで日本に帰ってきた時に、3回くらい会いました。
そうしたらわりと気が合ったというか、気に入られて「君はすごくいい、気に入った。個人資産で10億円まで用意したから会社をやっていくれないか」と言われました。
当時は23歳の後半で、社会人になって1年と少ししか仕事していないし、研修が終わってほとんどアメリカで仕事をしていたので、日本のこともぜんぜんわからない。向こうできちんといろいろな技術を身につけたいと思っていましたが、「そこまで言ってもらえるなら、何ができるかわからないけれどやってみよう」と思い、24歳になったばかりの時にアプレッソという会社の社長としてジョインしたというか、立ち上げました。
そこからずっとアプレッソの代表として、DataSpider Servistaというデータ連携の製品を作っていました。こちらは今8年連続だったかな? 日経BPの調査でお客さま満足度ナンバーワンになっています。「データ連携なら触ったことがある」「検討したことがある」という方がいるかもしれませんが、そういうことをずっとやってきました。
そうこうしているうちにアプレッソ自体はすごくうまくいきました。セゾン情報システムズという、HULFTを持っている会社があり、そこがDataSpider Servistaの代理店をやってくれていましたが、「いち代理店にとどまらず、より踏み込んだ提携を」と、アプレッソを買いたいという申し出がありました。
資本業務提携という言い方でしたが、要するに会社ごと買いたいと提案されました。我々もベンチャーキャピタリストなどからもお金を入れてもらっているので、どこかでイグジットしなければならない。「IPOイグジットか、M&Aイグジットのどちらかだね」と話していたのです。
HULFTはユーザーがすごくたくさんいます。HULFTと組んでやっていくことで、今まで踏み込めなかった領域まで行ける実感があったので、セゾン情報システムズのグループに入りました。ここからすごくものの見方が変わり、それまでは外資、スタートアップ、エンジニアのように自由でスピード重視だったのが、日本のSIで、ウォーターフォールのような歴史ある会社に入って、最初はスピードを課題に感じたこともありましたが、良さもすごく感じたんです。
日本式のやり方とスタートアップ的な感覚が融合して、両方の良さを組み合わせるようなやり方ができるのではないかというのが、この数年の私のテーマです。セゾン情報システムズにいた時は、SIにおいては従来の伝統的なやり方もできるし、デジタルの領域にも強い。両方できるという、“バイモーダルインテグレーター”を経営理念に掲げていました。
HULFTは、もともとメインフレームというUnixのデータ転送ソフトでした。実は今、IoTのロボットアームなど自動車業界のいろいろなマイクロチップにHULFTが入っているような、サブセット「HULFT IoT」を出しています。
クラウドの領域でも広くHULFTが使われているなど、既存のものの良さを認めてリスペクトしつつ、デジタルにも強いという経営政策をずっと取ってきました。それがわりとうまくいき「今度クレディセゾン本体のほうでも同じことをやってほしい」と言われ、2019年からクレディセゾンに来ました。今は専務CTO兼CIOとして、全セクション、全事業のデジタル化の旗振り役も兼ねています。
今日はエンジニアの方が多いと思うので、エンジニア的な自己紹介をします。未踏ソフトを2000年初頭に。今は1回制限というものがありますが、当時はありませんでした。スマートニュース代表の鈴木健さんなどがやっていた「PICSY」という、伝播貨幣のシミュレーターのクライアント設計・実装をやりました。
当時まだビットコインはなく、走りとして似たような側面はありました。また、自分も名前を出してGalapagosという会議のツールを作ったり、日経ソフトなどで連載をしたり、九州大学で非常勤講師をやったりしました。今、CTO協会の理事もやっています。Web系の方が多い中で、エンタープライズ系の理事は私1人だけだと思います。
クレディセゾンは金融の会社で、クレジットカードや住宅ローンなどの金融の商品を扱っています。クレジットカード会員は今3,700万人で、日本の人口が1億2,700万人程度なので、この中にもセゾンカードを持っている方がたくさんいると思います。
住宅ローンも、フラット35は国内2位で、わりと歴史もある大きな金融の会社です。スタートアップとか外資とかアメリカとか言っていた私が今、思いっきり日本の会社でやっているのが、ちょっとおもしろいと思っています。実はかなりグローバルな展開もしていますが、オリジンでいうと日本の会社でやっています。
最初はよく「ぜんぜん違う会社だから合わないのではないか」と言われますが、まったくそうではありません。日々楽しく仕事をしています。今日はそのあたりの「なぜそこがポイントなのか」についても話そうと思っています。
クレディセゾンでは、だいたい半年でやることが増えています。おもしろいことに、最初の2年間は、採用を人事ではなく私の個人ブログで全部行っていました。今は一応36人のチームにまでなり、今年からは人事も含めて行っています。
2019年3月にこの会社にきて、ブログでメンバーを集めて、第1弾はスピード感的にチームを作りました。仮に私1人しかいなかったとしても、半年後に大型のサービスがリリースできなければさすがに遅すぎると個人的には思うので、その約束どおりというか、目標どおりの9月1日、ちょうど半年後に『お月玉』という、かなり大型のサービスをリリースしました。後で簡単に紹介しますが、これがけっこう当たったんです。
2019年の10月には新規のプロダクトチーム全体を担当することになり、その半年後にはデジタルイノベーション事業部という、デジタルのお客さまとの接点全体を担当することになり、またその半年後には新規のサービスだけでなく、既存のシステムや業務について「こういうやり方のほうがいいのでは?」という全社全セクションのDXの責任者をやることになりました。2021年の3月からは、守りもやるべしということでCIOを兼務しています。
(次回につづく)
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