
2025.02.12
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日本のエンジニアは世界で通用する?|厚切りジェイソン #3 (全1記事)
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池澤あやか氏(以下、池澤):今日のゲストは厚切りジェイソンさんです。よろしくお願いします。
厚切りジェイソン氏(以下、厚切りジェイソン):お願いしまーす!
菅澤英司氏(以下、菅澤):お願いします。
(会場拍手)
厚切りジェイソン:お願いします!
池澤:入りが芸人さんっぽいですよね、やっぱり。
厚切りジェイソン:本当ですか?
菅澤:テンション上がりますね(笑)。
厚切りジェイソン:すみません。
菅澤:アメリカの会社の代表をやられているんですか?
厚切りジェイソン:本社は日本なんですが、日本の会社のアメリカ法人を担当している感じです。正式に言うと社長ではないです。
菅澤:正式に言うとなんですか?
池澤:会社役員?
厚切りジェイソン:アメリカ法人の役員ではありますが、登記上、社長が日本本社の社長なんです。
菅澤:なるほど。日本の会社やエンジニアが世界で活躍できますかね?
厚切りジェイソン:まぁできるでしょ。できる・できないの理由はないと思うんですが、まずは「やりたいか」になると思うんですよね。やりたければやりたい気持ちが一番大事だと思います。とにかく動き出してみる。やってみる。いろいろな人と話してみるとか、間違いでもいいから躊躇なく一応話してみよう。
言いたいことが伝わるまでは、話し続ける自信が必要だと思うんですが、完璧じゃなくてもいいから思いを伝えるのが一番大事だと思うんですよね。プログラミングは基本言語として成立するじゃないですか。まったくコードみたいなものがない職業と比べて、コードを見せて、このコードはどうなのかみたいに、コミュニケーションが取りやすいと思うんですよ。
菅澤:共通言語はありますからね。アメリカで働いていた時はアメリカのエンジニアたちと、日本で働いていた時は日本のエンジニアたちとコミュニケーションを取っていたんですか?
厚切りジェイソン:アメリカで働いていた時は、アメリカ人ばかりというわけではないです。GE(ゼネラル・エレクトリック)で働いていたんですが、世界拠点がいろいろあって、日本、インド、ヨーロッパのチームがいて、毎週のようにそれぞれの拠点をネットでつないでみんな話し合うようなケースが多かったです。
菅澤:その時の働き方、働いている風景、仕事内容は、日本で日本のエンジニアが仕事をしているやり方とだいぶ違いますか?
厚切りジェイソン:どうですかね。僕のただの勘なんですが、やっていることは近いかもしれないですが、アメリカのほうが細かく定義すると思うんですよね。同じ社内であっても、「これをこういうふうにやってください」という要件とか。日本はお客さま向けには細かく要件定義をするけど、社内になると「あとはよろしくな」みたいに終わってしまうんですよね。
菅澤:確かに(笑)。
厚切りジェイソン:文化の違う人と話している時は、理解が一致するとは限らないので、社内であっても細かく紙ベースで何かを残すというのが、アメリカではあるんですよね。
菅澤:なるほど。
厚切りジェイソン:具体的にどうならないといけないのかとか、そういうのを紙で残す。あとで「違うよ!」と言われたらその紙を持って来て「one thought truth」と言うと伝わるのかな? 「真実は1つだけ」と、みんなが確認できる場所があるのは大事です。
池澤:bravesoftでも要件定義はきちんとしているんですか?
菅澤:「あとはよろしく!」と何回言ったかわからないぐらい(笑)。
池澤:え!?
菅澤:ドキュメントというのをしっかりと残していく……。
厚切りジェイソン:ドキュメントの話もそうかもしれませんが、ドキュメントじゃなくてもメールや日当みたいな感じですかね。日当じゃないや日報ね。日当は経費のほうだね(笑)。何が必要なのかを、そのドキュメントももちろん大事なんですけど、どちらかと言うと日々のコミュニケーションです。
菅澤:きちんと日報に残して残るかたちに。
厚切りジェイソン:特に文化を跨ると、それを口頭でも細かく説明する感じですよね。
菅澤:確かに。
厚切りジェイソン:インドと、ヨーロッパと、アメリカのチームに共通意識を持たせるにはひと工夫が必要。
菅澤:エンジニア同士で話していても、優秀な人は話した内容を「チャットでも送っておくね!」と言って残るようにしますよね。
厚切りジェイソン:聞いた話だと、日本は97パーセントが日本人なんですよね。ほとんどが日本に生まれ育った日本人。
菅澤:そうですね。
厚切りジェイソン:似たような教育を受けて、同じような環境の中で育っている人たちは、同じような考え方を持つようになるんですよね。
なので、言わなくてもわかることが多いんですが、グローバルになると同じ意識を持っている人はほとんど1人もいないです。隣の人はまったく違う国で、まったく違う育ち方かもしれません。
すべてが違うという想定から入ると就労じゃないですが、全部細かくする必要が出てくるんですよね。グローバルはそういうことも必要で、それはもちろん良し悪しがあるんですよ。みんなが同じような意識を持つと効率良くできるはずですよ。伝わらなくてもできることが多くて、それをそのままできちゃうようなことが多いんですけど。
菅澤:僕なんかは「いい感じでやっておいて!」とよく言うんですが、それでできている場合とできていない場合があります(笑)。できている場合はすごく楽なんですが、できていないと自分がやらないといけないみたいなことがあるんですよね。
厚切りジェイソン:そうなんですよね。あともう1つの違いは、たぶんアメリカは専門的なことが必要とされているんですよ。データベース専門とか、ここだけをすごく深く理解している人とか、特定の分野に対して何でもやるような人たちが多いイメージなんですよね。
日本では大学で何を勉強したのかはほとんど関係ないように感じます。日本ではプログラミングやコンピューターサイエンスを勉強していない人でもエンジニアになれるじゃないですか。
アメリカだとほぼありえないんですよ。専門外は大学を出直す必要があるぐらいです。それも良し悪しはあるんですが、プログラマーをやりたい人はコンピューターサイエンスを勉強して、大学を出てからすぐに即戦力でプログラミングをやるんですが、日本のやり方は、会社ごとのやり方があるから一から教え直す。
菅澤:なるほど。
厚切りジェイソン:それがあるから、経験がそんなにない人でも一人前になれる感じがあるんですよ。
池澤:アメリカの会社だと、ここのポジションが空いたから求人を出すことがすごく多くて、専門的な知識が求められることが多いと思うのですが、日本だと新卒採用がすごく強くて、そこで教育を行ったうえで、会社に適した仕事ができる人をどんどん育てていく文化が強いですよね。
菅澤:大学もちょっと違うと思っています。僕もコンピューター系の大学に行っていて、僕はプログラミングはできたのですが、できない人が8割みたいな感じでした。
厚切りジェイソン:みんなサボってノートを借りてただけでしょ。
菅澤:そうなんですよ。アメリカの場合は?
厚切りジェイソン:大学を出てコンピューターサイエンスの学士を持って会社に入って、プログラミングできなかったら半年でクビ。
(一同笑)
池澤:厳しい!
菅澤:仕事に入って半年でクビなんですね。
池澤:インターンシップに行く文化も強いですよね。
厚切りジェイソン:そうですね。インターンシップがほとんど不可欠で、履歴書を出して、なんでこういう仕事ができるのか、自分から証明しないといけないんですが、インターンシップをやっていなければ採用されることは難しいです。新卒であってもある程度の経験が必要になるんです。けっこう競争が激しくて、僕は一番やりたかったインターンシップには選ばれなくて、そのあとに日本語を足しました。
菅澤:アメリカの法人は本当にできなかったらすぐにクビというか、けっこうバンバン転職していくじゃないですか。
厚切りジェイソン:そうですね。契約書に書いている条件を満たしていなければ、すぐにクビにできます。それはその人はこの仕事ができなくて、他の仕事のほうが向いているんじゃないかという考えで、どっちもハッピーになれる。もっとできる人にその仕事をやらせるし、その人ももっとできる仕事をやれるから、そのほうがwin-winだと僕は思うんです。
社員は守られていると安心して、仲間と一緒に会社のためにがんばろうと思えるんですが、アメリカは会社がダメになりそうになったら、みんなすぐに辞めるんですよ。自分の次の仕事を探し出すから「会社のためにがんばろう!」と残るのは珍しいかもしれない。
菅澤:これから個人の時代で、個で発信したり、個で考えたりするじゃないですか。日本の考え方だと、クビにもされないし自分も組織に尽くすから「好きに自分を使ってくれ!」みたいな感じですよね。僕はずっと社長なので「ダメならすぐにクビ!」ぐらいな感じで言われるほうががんばるんじゃないかと思ったりもします。
厚切りジェイソン:ただ、今のコロナ禍の中で個人の時代だとけっこう大変だと思うんですよ。今の時代だからこそ会社の良さもわかってくると思うんですよね。
菅澤:池澤さんはハイブリッドですよね。みんなフリーランスだけど会社にいるという。
池澤:そうですね。私のいる会社は日本では珍しくて、社長以外全員フリーランスで、自分が働ける日数だけ貢献するというかたちで働いています。
菅澤:いつ切られるかはわからない。
池澤:確かに。会社の調子が悪くなったら切られそう。
(一同笑)
菅澤:「切られそう」とか思っているんですか?
池澤:今のところは特に思っていないですけどね。
菅澤:ジェイソンさんは、会社の良さもあるとおっしゃっていましたね。
厚切りジェイソン:会社の良さもあると思いますが、自分をずっと磨いていこうというのはアメリカだと僕は思います。給料をもらえるために、人ができないことをできるようにしていこうという思いが強くあると思うんですけど。
池澤:キャリアをメチャクチャ変えたい時にけっこう増えそう。
厚切りジェイソン:そう! アメリカは難しいですよ。アメリカはキャリアを変えられないんですよ。プログラミングをやり出したら死ぬまではプログラマー。
菅澤:芸人をやっているじゃないですか。
(一同笑)
菅澤:変えましたね、キャリア。
厚切りジェイソン:これは日本だから。
菅澤:日本だからか(笑)。
(一同笑)
菅澤:日本だから変えられたんですね。
厚切りジェイソン:姉が1人いて、重機とかを作っている会社でプログラマーじゃないエンジニアをやっていたんですが、途中で嫌になって「看護師になりたいです」と。病院の検査をやるような技術士みたいなことをやりたくて、一から大学をやり直したんですよ。
菅澤:えー!? 大学からやり直し?
厚切りジェイソン:そう。
菅澤:それも大変だな。
厚切りジェイソン:アメリカは大学の費用が高いから借金して。
池澤:借金して(笑)。
菅澤:大変だな(笑)。
厚切りジェイソン:アメリカでは笑いごとじゃないんですよ。けっこう社会問題なんです。
菅澤:いくらぐらいなんですか?
厚切りジェイソン:僕の場合はたぶん2,000万円近くです。
菅澤:大学4年間?
厚切りジェイソン:4年間です。その分アメリカの給料のほうが高いんですけどね。これもたぶん日本との違いの1つなんですが、日本はやる気で評価するケースが多いんですよね。
菅澤:やる気があったら評価が高いみたいな。
厚切りジェイソン:やる気はどうでもいいんですよ。できるかどうかがすべてですから。
池澤:成果主義。
厚切りジェイソン:そう、やる気があるのはいいんだけど、それが結果につながるかどうかはわからないから。やる気ばかりの人は、そのままわいわいやっているんだけど「動いてないじゃん」。ちょっと自分も疲れるよね。
池澤:文化によって違いがあるんですね。
(次回へつづく)
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