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15歳に多様な選択肢を 〜人間の未来を変える神山まるごと高専の挑戦〜(全2記事)

育てたいのは「モノが作れる起業家精神を持った人」 CRAZY WEDDINGの創設者・山川氏が「神山まるごと高専」を里山に作ろうと思った理由

クラウドサービスプロバイダ(IaaS/PaaS/SaaS)、システムインテグレータ、ソリューションベンダーの多くが参加し、クラウド業界の “未来” について知見を深めるイベント、「JAIPA Cloud Conference2021」。ここで「神山まるごと高専」(仮称・設置構想中) クリエイティブディレクターの山川氏が登壇。まずは「神山まるごと高専」で目指しているところと、運営メンバーについて紹介します。

自己紹介

山川咲氏(以下、山川):みなさま、こんにちは。「神山まるごと高専」のクリエイティブディレクターをしている、山川咲です。どうぞよろしくお願いします。

今、この「神山まるごと高専」という学校を2023年に向けて立ち上げているのですが、高専ということもあり、さくらインターネットの田中(邦裕)さんにも支援してもらっています。なにかといろいろ話をしている中でお声がけがあり、こうやってお話できることを大変うれしく思っています。

簡単に、私の自己紹介をしたいと思います。この神山まるごと高専のクリエイティブディレクターという肩書は、2021年になってからなので、まだ7ヶ月です。

私の人生のキャリアにおける大半の肩書は、“CRAZY WEDDINGの創設者”でした。CRAZYという会社で、自分自身でオーダーメイドの結婚式を作るという、業界的には不可能と言われていた事業を27、8歳の時に立ち上げました。

たった4人から始めて、もう一気に100人ぐらいの社員を抱えるところまで、20代、30代を駆け抜けていきました。本当にもう全力疾走の中で、夢にまで見た「情熱大陸」にも出ることができました。私自身、このCRAZYという会社もそうだし、CRAZY WEDDINGというこのオーダーメイドの事業でも、1人の人生がすごく大事だという価値観で、経営や事業をしてきました。

27、8歳の時に始め、意志を持って生きる人を増やしたいという思いは変わることなく、ずっと持ち続けていました。そのため、常に社員にも「会社のためにではなくあなたの人生のために、自分が理想と思う生き方、働き方をしてね」みたいな話をしていました。

自分の人生を考えた時に、2020年は夫婦経営もしていて子どもも生まれ、いろいろなタイミングがありました。その中で自分の人生を中心に考えた時に、今はこの会社を離れるべきだと思って独立しました。

旦那が社長をやっていたので、「あとは任せた!」ということで、「夫婦は一緒にやろう、経営は離れよう」みたいなかたちで独立をしました。そこでこの学校に出会い、今はクリエイティブディレクターという職で仕事をしている状況です。

これとは別に、「SANU」というセカンドホームのサブスクリプションサービスの、スタートアップの取締役もしています。

「神山まるごと高専」とは何か

今日は、「神山まるごと高専とはいったい何なの?」ということを、ぜひみなさんにお伝えしたいと思っています。そして、「私たちが取り組むD&Iと選択肢の拡張」もあわせてお話できればと思っています。どうぞよろしくお願いします。

まず「神山まるごと高専はどんな学校なの?」ということですが、この高専は、この発表を見てくれている方は、知っている方も多いんじゃないかと思います。

今までの高等専門学校は、15歳から20歳までの5年間で専門スキルを身につけ、工場で働く人を育てていくという場所でした。戦後日本が発展していく中で、それを底支えしたと言われている、日本独特の機関です。

高専の話自体は、Sansanの寺田(親弘)さんに「一緒にやらないか?」というオファーを2020年に初めて受け、2ヶ月間いろいろ考えました。そして今のフォーメーションでやっているのですが、その時に、私は高専にすごく可能性を感じたんです。

今は、高校3年間と大学4年間の7年間で勉強するけれども、高校に入れば大学受験の準備をせっせとして、大学に入ればそこから解放される。そうこうしているうちに就職活動が始まり、1年ぐらいかけて就職活動をする。そして就職することを、みんな一様に同じタイミングでやっています。

その7年間をぎゅっと5年間に凝縮して、社会に直結したことを集中的に学べる環境を作れたとするならば、それはすごく可能性があると思いました。

テクノロジーの発達によって、世界がこれだけ同時に同じスマホやツールを見ながら、同じ情報に接続して、同じ行動様式を取っている。そういうはじめての時代になった時に、漠然と自分の中に、「人間が、みんな同じ人間になっちゃうんじゃないか」みたいな危機感がありました。

私の生い立ちですが、けっこう独特な環境下に生まれていて。フジテレビのアナウンサーの娘として生まれました。2歳の時に父親がフジテレビを辞め、そこから2年間、日本1周放浪の旅にワゴンカーで出ました。4歳手前ぐらいで、千葉の片田舎、「えっ、千葉にこんな場所があるんだ」みたいな、本当にすごく大自然の中で、中3まで薪でお風呂を焚いて過ごしていました。

そんな価値観の親のもと、独特な育ち方をしました。私は本当に嫌でした。本当に嫌だったけれど、そのことが自分の強いアイデンティティになっているし、自分が起業した理由や、自分が信じているものに向かえる姿勢など、いろいろなものを育ててくれたのは、やはりそういう独特の環境なんじゃないかなと思っています。

こうやって今、私を含めてみんなが同じようなものになっていって、そこで同じように高校受験をして、同じように大学受験もして、同じように就職する選択肢だけではないものを提供できることが、私はとても価値があると思っています。

私たちは、「テクノロジー×デザインで人間の未来を変える学校」というものを目指しています。

「神山まるごと高専」はどんな人を育てるか

「どんな人を育てるのか?」ですが、「モノを作る力で、コトを起こす人」。物を作るということは高専のアイデンティティなので、そこを磨いていきます。その上で、今まではワーカーとしてどこかのもとで働くことが多かったと思います。

一方で、世界を変えている起業家やいろいろな人たちが「コトを起こせる」ということまで踏み込んだ時に、やはり物事が変わっていく。その時に、人間の未来が変わっていく可能性が非常に高まっていくんじゃないかなと思い、この「モノを作る力で、コトを起こす人」を育てていきたいと思っています。

「実際に何やるの? 何教えるの?」というところですが、テクノロジーとデザイン、そして起業家精神を教えていきます。高専の中でも、起業家精神までを教えていくことが、今までにはない部分だと思っています。

私はまだ半年間しかこの学校作りに携わっていません。今のコアメンバーは、もう発足して1年弱ですが、その中で本当に、素人の私たちだから作れる学校を作っているとすごく思うのです。

今までの常識の中で、「こんなことだったらできるよね」ではなく、「今求められている理想の学びは何なのか?」ということから考えて、学校を作っています。そのスキームとして高専があるよね、ということでした。

「じゃあ、どんなものを学べたらいいんだろうね」ということを今考えていますが、テクノロジーとデザイン、起業家精神の3つを教えることは本当にハードです。理系の学校、美大、MBAを一挙に教えていくような取り組みなので、たぶん18歳からだったら逆に難しいんじゃないかと思っています。

この15歳の、柔らかい頭と人間性の中に届けていくことをやっていきたいと思っているのが、この学校の全容です。

「神山まるごと高専」の運営メンバー

やっているメンバーは、みなさんご存じかと思います。今までにない業界を作り上げて、あそこまでの事業にしている、Sansanの寺田さんが理事長になっています。そして創業期から1、2年前までZOZOのCTOをされていた、大蔵(峰樹)さんが学校長です。ものづくりがすごく大好きな人なのですが、校長先生をしています。

私がクリエイティブディレクターをしていて、カリキュラムディレクターに伊藤(直樹)さんが携わっています。バディの伊藤さんは、世界でも有名な賞をクリエイティブ部門で取っている人でもあります。私はすごく奇跡のチームだと思っていて、昨日も寺田さんとその話をしていました。

「このメンバーじゃなかったら絶対実現しないよね」というものを、今作っていると思っています。私たちは先ほど話したとおり素人なので、学校作りをしたことがあるメンバーはいません。カリキュラムディレクターの伊藤さんは京都芸術大学で教えていて、教育にすごく傾倒しています。

この4人のメンバーでやっていく中で、「この教育が正しいんだ」ということを私たちは伝えたいわけではありません。この多様な時代において、正解がない世の中じゃないですか。だから「これが学校教育のあるべき姿だ」ということではなく、「学校教育でここまでのことができるんだ」ということを伝えることも仕事なんじゃないかと思っています。この学校でやっていたことが、「ここまで手を打っていいんだ」とわかった時に、既存の学校も変化していくかなと思っています。

私もCRAZY WEDDINGという自分の事業をやっていた時に、自分がやっていることは業界全体からしたら小さな規模だけれども、やはりCRAZY WEDDINGが生まれて、この5年で業界は本当にガラッと変わったと言ってもらえています。

それは、結婚式の業界で「ここまでできるんだ」ということを事例として見たとき、お客さまの反応を見て、「私たちは変わらなきゃいけない」「変われるんだ」「こんなことをしてみたい」ということが、やはりみなさんの中に溢れていたので、業界自体が変わっていったと思います。

教育業界でも同じようなことを起こしたい。そういうクレイジーな事例をここでも作っていきたいという野望を持っています。

(次回につづく)

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