2024.12.19
システムの穴を運用でカバーしようとしてミス多発… バグが大量発生、決算が合わない状態から業務効率化を実現するまで
エンジニアからどうして芸人に?|厚切りジェイソン #2 (全1記事)
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池澤あやか氏(以下、池澤):今日のゲストは厚切りジェイソンさんです。
厚切りジェイソン氏(以下、厚切りジェイソン):WHYー?!
菅澤英司氏(菅澤):ここでWHYが来るんですね(笑)。ジェイソンさんがなぜこうなってきたのかというところで。
池澤:幼少期から振り返るんですよ、この番組。
厚切りジェイソン:お父さんが自動車の、例えば窓がボタンを押すとウイーンと自動的に上げ下げできるような仕組みのプログラミングをやっていたんですよ。ある日、急にクビになっちゃって。まあリストラですね。あまり業績が良くなかった会社だったみたいで、エンジニアを大量に追い出すことがあって。
じゃあどうするのかなというところで、お父さんは自分の会社を作って、家から仕事をするようになりました。家の中にプログラミングをやっているワークステーションみたいなものがあって、そこで使わなくなったものを僕にくれたりしました。インターネットの前の時代なんですが、小学生で僕は自分のパソコンを持っていました。
菅澤:1990年ぐらいですかね。
厚切りジェイソン:そうですね。その時、僕は4歳でした。
菅澤:いきなり遊んでいたってことですか?
厚切りジェイソン:もう使わなくなったから自由に触っていいんですよ、最悪、壊してもいいんです。
池澤:パソコンで何して遊んでいたんですか。
厚切りジェイソン:とにかくゲームを入れていたんじゃないですか。ゲームを入れたいんですけど、あまりストレージがないから、いろいろハードディスクを見て、分析して、OSのフォルダを見つけて「これなんなんですかね、大きいな」と削除したらもう起動しなくなって。
菅澤:(笑)。
池澤:あははは(笑)。
(会場笑)
厚切りジェイソン:お父さんも怒ることなく「実はこれはこういう理由で必要なんだよ」って教えてくれて「こうやって直すから自分で直しなさい」とやってくれたので、自分もそれでいろいろ体験できましたね。
菅澤:それでエンジニアの方向に行きたいと思ったんですか。
厚切りジェイソン:そうですね。楽しかったし、ゲームも魅力的だったのですが、パソコンを触っているとなんか落ち着くというか……エンジニアはずっといい仕事がきそうな雰囲気もありましたし。
菅澤:お金の匂いもちょっと。
厚切りジェイソン:そう、ありましたね。本当に大学行く直前にドットコムのバブルがありました。あまり大したことないサービスで、すごいお金持ちになった人ばかりいたんですよ。ペットフードを配達するちょっと有名なやつで、それを上場して、作った人は何十億も貰ったりして、すげえなぁと思いました。
菅澤:ビル・ゲイツみたいになりたいな、というのはあったんですか。
厚切りジェイソン:そうですね。大学に入って、自然とコンピューターサイエンスを勉強して、就職して、大学の途中で日本に1回来ました。iPhoneのSiriみたいな音声認識を研究していた研究所に入って、米国英語を専門としてやっていました。1年間やって、アメリカに戻って、学士を終わらせてGE(ゼネラル・エレクトリック)に入りました。
3年間働きながら修士号を取って、そこからクラウドコンピューティングの会社に入って、そのクラウドコンピューティングの日本法人を立ち上げるために再来日しました。
池澤:おお。
菅澤:ああ、そうなんですね。
厚切りジェイソン:1年ぐらいで今の会社に転職しました。
菅澤:日本に来たのは思い入れがあったわけではなく、流れですか。
厚切りジェイソン:流れというか、勝負できそうなところもありましたし、その時はもう日本語がある程度しゃべれていましたし。
菅澤:日本語は、そんな簡単に覚えられるものですか?
厚切りジェイソン:あのね、よく聞かれるんですが、結局日本語から英語の距離は、英語から日本語の距離と一緒だから、やればできると思いますよ。英語いけます?
菅澤:いやあ、ちょっとは。ちょっとですよ。
厚切りジェイソン:失礼しました。
池澤:(笑)。
菅澤:それの時点でもう十分すごいじゃないですか。珍しいエンジニアでもあるし。
厚切りジェイソン:もうちょっと褒めて。
(会場笑)
菅澤:(笑)、まあまあすごいじゃないですか。
厚切りジェイソン:ありがとうございます。
池澤:まあまあ?!
菅澤:そこから芸人というのは、またすごいですね。
厚切りジェイソン:そうなのかな。日本の考え方で仕事は1つみたいな、仕事=人生みたいな考え方は1度もなかったです。もしかしたらアメリカ全体ではそういうのがあるかもしれませんが、やりたいことがあれば、自由な時間を使う、「できない理由はない」と思っています。
働きながら、週末とか空いてる夜とかを使って、楽しそうだから、芸人やろうかなと、適当にやりだしたんですよ。仕事を辞めて、これだけをやるつもりは1滴もなくて、楽しいことを趣味程度でやってみようかなみたいな感じでやりだしたらこうなりました。
菅澤:売れるまでけっこう時間がかかったんですか。
厚切りジェイソン:養成所は1年間でした。1年やってみて、エピソードトークをいくつか作るだけだろうなと思いながらも、その養成所が終わる前にはもうテレビ出ていて、ちょっと売れる気配がありました。
菅澤:(笑)。
池澤:(笑)。
厚切りジェイソン:本当はやめるつもりだったんですよ。とりあえずやってみて「ああ、こういうもんなんだなあ」って分かったら、次のことを探すだけだったんですが、こうなっちゃったんだよね。
池澤:趣味だったんですね。本当に。
厚切りジェイソン:やりだすと、なんかいろいろな新しい機会が次から次へ出てきて、ふだん会えない人に会えるようになって、ふだんできないようなことができるようになりました。
池澤:良かったことはありますか。
厚切りジェイソン:良かったことは1つもないわ。
池澤:え、ないの?
(会場笑)
厚切りジェイソン:(笑)。いや、あるだろ普通! うう〜ん、どうだろうね。例えば糸井重里さんと対談できたりかな。僕は『MOTHER』シリーズが好きなので。
菅澤:『MOTHER2』とかですね。
厚切りジェイソン:『MOTHER2』とかをやって、日本語を勉強していたので、それをいくつかの所で言っていたら、糸井さんに呼んでいただいて、それで対談できたり。
その後もいくつかのドラマに出たり、歌番組で歌ったり。深海魚を引っ張って直で食うとかもありました。
(会場笑)
池澤:ええ?!
菅澤:ジェイソンが食う。
厚切りジェイソン:そう。
厚切りジェイソン:ちょっと嫌だったけどな。
菅澤:そもそも芸人をやってみようかなの時点ですごいですよね。
厚切りジェイソン:すごいかな。そんなにすごくはないですよ。誰でもできるんですよ。やればいいじゃん。
菅澤:そこに興味持っていたというのは、お笑いが好きだったんですか。
厚切りジェイソン:お笑いが好きで。楽しいことが好きで。楽しい環境にいるのは好きですよ。
池澤:日本のお笑いとアメリカのスタンダップコメディは、けっこう違う印象があるんですが、そこに違和感は感じなかったですか。
厚切りジェイソン:だいぶ違いますけど、純粋に楽しんでいるのは日本のほうだと思うんですよね。アメリカのスタンダップコメディは、ちょっとエッジを効きすぎているというか、基本1人でなんかキツいことを言う印象があります。日本はコントや漫才で、ただ馬鹿なことを言い合ってるような印象。
アメリカの40年代ぐらいのラジオのお笑いは、日本の漫才に近いんですよ。アメリカは車社会で、とんでもなく長いドライブがあって。例えば、お父さんと、自分のパソコンを作るための部品を買うまでの道は、お笑いを一緒に聞きながらドライブすることが多かったです。
池澤:部品を車で買いに行くんですね。アメリカはすごく広くて、部品屋はすごくニッチだから、町から町への移動ですね。
厚切りジェイソン:だって一番近いコンビニは砂利道20分だよ。スーパーは40分だよ。
池澤:部品屋は果てしなく遠い?
厚切りジェイソン:部品になると、まあまあ遠いよ。
菅澤:「WHY? JAPANESE」というネタ。漢字がなんかあれだみたいな。
厚切りジェイソン:ちょっとあまり聞き覚えがないですね。なんかありましたっけ。
菅澤:はっはっは(笑)。
池澤:(笑)。
(会場笑)
菅澤:YouTubeで見ましたよ。「一、二、三までは簡単なのに、四が難しい」みたいな。あるじゃないですか。あれはどこから出てきたんですか。
厚切りジェイソン:それは別にネタでもなんでもないんですけどね。ただ勉強してる時にちょっと矛盾を気づいて。「これおかしいよね」と言っていたら、それがなんかウケたみたい。テレビでやっているネタは、自分が勉強してる間におかしいと思ったメモ帳です。練習していると「わあ、これ矛盾してんじゃん」と。だからネタを、ネタっぽく作っていたというよりも、ただ自分が勉強してる間に苦労してたところです。
動物っていう意味の、けものへん(犭)あるんだけど、「けもの(犭)」を「守る」で「狩る」って、おかしいよ。
池澤:ああ、確かに。逆ですね。
厚切りジェイソン:守ってねえよ。
菅澤:あっはっはっはっは(笑)。
(会場笑)
厚切りジェイソン:そのお陰で覚えやすかったりするんだけど。「歩く」とかね。少し止まると書いて。
菅澤:ああ、少し。
厚切りジェイソン:進まねえや。
(会場笑)
厚切りジェイソン:今、娘が小3で、漢字を勉強しているんですが「これが覚えられない」と相談にくるんですよ。例えば鉄。
菅澤:鉄。
厚切りジェイソン:そう、金を失ったら鉄しかなくなる。おもしろくないよ。おもしろくはないけど、部首を使ってストーリーを作って覚える。ストーリーを作った時に、矛盾があったらそれはネタに回すという感じです。
菅澤:なるほど。
池澤:すごい。勉強の過程でネタも生み出していたんですね。
厚切りジェイソン:アメリカの大学で、勧められた本の中に覚え方として書かれているんですよ。部首の意味を使って、ストーリーを作ったら、想像力にある程度任せるから覚えやすい。
菅澤:それをネタにして、いきなり売れたわけですもんね。
厚切りジェイソン:R1の決勝が2回目のテレビ局だったんですよ。
池澤:すごい。
厚切りジェイソン:とりあえずなんかやってみて、わあ、すげえな。わあ、どうなっているのか。気づかないうちにもう終わってました。
菅澤:芸人もちょっとやってみようかと思ってやってみたじゃないですか。これからやってみたいことは何かあるんですか。
厚切りジェイソン:やってみたいことは、基本やっているんですよ、すでに。
菅澤:じゃあ常に新しいことをやってる?
厚切りジェイソン:でももうもうだいぶ、だいぶ幅広くやっちゃったんですよ。
菅澤:だいぶやりましたよね。
厚切りジェイソン:けっこうやったほうだと思います。あちこち新しい分野にさ、挑戦してさ。「次のことはなんですか」って毎回聞かれるけど、まだ足りないんですか?!
菅澤:いやいや、そんなことない、そんなことない。
厚切りジェイソン:けっこうやった。
菅澤:けっこうやりましたよね。
池澤:役員として今、会社経営をされているじゃないですか。そこのジョブチェンジはいつ頃の話だったんですか。
厚切りジェイソン:日本法人を立ち上げるために日本に来た時ですね。
菅澤:経営もしたかったんですね?
厚切りジェイソン:経営がやりたいというよりも、出世願望が強かったんです。今から思えば、なんでそんなに出世したかったのかは、わかんないんですよね。
池澤:(笑)。
厚切りジェイソン:もしかしたら一番幸せだったのは、仲間とわいわいプログラミングをしていた時期かもしれない。
池澤:ああ〜。
菅澤:ああ〜。そのわいわい楽しい時期がけっこうあったんですね。
厚切りジェイソン:ありましたありました。
菅澤:どんなのを作っていたんですか。
厚切りジェイソン:例えば隣のプログラマーが間違っているコードを動かしていて「これなんで動かないのかなー」ってほっぺたをくっつけてきて、「どれどれ」って一緒に探したり。
僕はその時から筋トレをやっていて「チームを大きくしましょう」とみんなに言っていたんですが、僕は人数を増やすではなくて、それぞれの人を大きくしようという捉え方で、全員をかなり大きくしました。
池澤:(笑)。
菅澤:あっはっはっは。全員を大きくしてチームを大きくした。
厚切りジェイソン:だからその会社のプログラミング部門は、ゴリゴリのマッチョが多かったです。
菅澤:(笑)。
池澤:(笑)。筋肉があるとプログラミングもできるようになるんですか。
厚切りジェイソン:いや、逆。
池澤:逆?!
厚切りジェイソン:本当にキーボードが使えないほど筋肉痛がくると、けっこう影響されるんですよね。これも日本だとやりづらいかもしれないんですが、アメリカでは、お昼休憩に「軽くジム行ってくるわ」みたいなのをチーム全員でやっていて。それで、午後はもう誰も腕が上がんないみたいな。「ああっ……」。
池澤:効率落ちてる。
厚切りジェイソン:そう、自分もシャンプーできないほどの疲れ。
菅澤:はっはっは(笑)。
(次回へつづく)
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