2024.10.21
お互い疑心暗鬼になりがちな、経営企画と事業部の壁 組織に「分断」が生まれる要因と打開策
マネジメント支援システムの社内開発プロジェクト(全1記事)
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松野広志氏(以下、松野):情報システム部 HR Tech 開発グループ グループリーダーの松野広志です。よろしくお願いします。「マネジメント支援システムの社内開発プロジェクト」と題し、活動とプロダクトについて紹介します。社内ツールの開発プロジェクトが公開される事例は少ないと思うので、本日参加のみなさまに、社内開発の機会があった際、お役に立てれば幸いです。
目次です。はじめに私とチームの紹介、続いてHR Tech開発チーム発足の経緯を説明します。そのあと発足後の社内調査、プロダクトの紹介の順に話します。
自己紹介します。松野広志です。大学卒業後に大企業向けのERPパッケージソフトの人事システムコンサルタントとして約7年、システムの要件定義、設計開発、さらにプリセールス活動を行ってきました。その後、2010年にオンライン学習システムの企画・開発・販売を行う会社を設立し、延べ約200万人以上、累計学習回数1.1億回のサービスへと成長させました。その事業は現在も継続しています。
その後ご縁があり、2020年1月にDMMに入社しました。これまでの経験を活かしHR Tech系のシステムを開発すべく、2020年4月からHR Tech開発チームのリーダーを務めています。HR Tech、BtoB、SaaSのサービス開発が得意領域です。
続いてグループの紹介をします。HR Tech開発グループは2020年4月にHR Tech開発チームとして発足し、メンバーは6名、100パーセントリモートワークで業務や開発を行っています。余談ですが、メンバーと顔を合わせない100パーセントリモートワークの環境下でコミュニケーションに支障を出さないために、チャットツールの「Slack」を使っています。
ほかに、試験利用中の2次元仮想オフィス空間の「Gather」、タスク管理の「ZenHub」、オンラインホワイトボードの「miro」。開発している1on1ツールの「Workboon」のほか、デザインツールの「Figma」、通話システムの「Zoom」など。ほかにもたくさんありますが、さまざまなツールを駆使して業務を行っています。
チームのミッションは、マネジメント業務の改善を通じた組織のパフォーマンスの向上です。短期的なチームのビジョンは「Workboon」をDMMの社内標準ツールとして日常的に利用してもらうことです。中期的には、開発している1on1、Pulse Survey、その他の機能を取り揃え、外販を目指したいと思っています。
続いて、開発チームの発足の経緯について説明しますが、そのために弊社のDMM Tech Visionについて少しだけ触れます。“当たり前を作り続ける”。この言葉は、多種多様な事業を行うDMMが新しい技術に挑戦し続ける、テックカンパニーへと変わることを目指し、2018年に掲げられました。
このテックカンパニー化というミッションを達成するために、DMMのテックチームのあり方として定められました。
DMM Tech Visionにおいて重要なのが、スライドの4つのTECH VALUEです。DMMでは、この4点に焦点を当ててテックカンパニー化に取り組んでいます。例えば、私たち社員の目標管理にもこれらの項目が設定されています。
続いて4つの素養です。TECH VALUEを実践するために、DMMのTechメンバーには、課題解決、オープンコミュニケーション、コミュニティ貢献、技術・事業への好奇心という4つの素養を持ち合わせ、発揮することが求められています。詳細は割愛します。
続いて、テックカンパニー化に向けた各種戦略です。戦略には、技術戦略、データ戦略、コミュニティ戦略、広報・人事戦略があり、この中の人事戦略に1on1支援というものがあります。1on1とは、上司と部下が定期的に短時間話す場を設け、そこで部下の持ち寄ったテーマについて話し合い、部下に気づきを促すことで経験学習を促進させ、個人の能力を引き出すことを目的としたミーティングです。
DMMの社内において、この1on1の促進に取り組もうというのが、私たちHR Tech開発チームの発足のきっかけです。その際、既存システムの利用も検討されましたが、より高いレベルの1on1ミーティングの実施サポートと定着化を実現すべく、社内開発を行うようになりました。Tech Visionの詳細は、スライドのQRコードやURLから見られます。
続いて、社内調査です。1on1の促進に取り組むにあたり、チーム発足前の私たちは社内調査を実施し、はじめに社内で1on1ミーティングの実施状況についてアンケート調査を行いました。アンケートを実施した当時、回答者のうち、1on1ミーティングを月に1回以上実施する人は66.2パーセントで、まだまだ社内での実施率は高くないことがわかりました。さらに、同じ質問に「No」と答えている方々は、2~3ヶ月に一度、半年に一度、もしくは実施しないという結果でした。
この実施状況から、1on1ミーティングの実施率による傾向の違いを分析しました。その中でおもしろい傾向が出たポイントとして、「1on1ミーティングで行った上司に対する相談や報告内容に対して的確なコメントがもらえている」に対して「はい」と答えた人は、「1on1ミーティングを月に1回以上実施する」に「はい」と答えている方のうち96パーセントだったのに対して、1on1ミーティングをあまり実施していない方は70パーセントという結果でした。
また、「1on1ミーティングを通じて業務改善されたことがある」に関して「はい」と答えた方は、やはり「1on1ミーティングを月に1回以上実施する」方のうち62パーセントと高いのに対して、実施していない方は32パーセントしかいないという違いが見られました。
また、アンケートの中で1on1ミーティングに対する課題についても調査を行ったところ、実施方法の課題としては、メンバーの1on1に対する取り組み方や上司から部下へのフィードバッグの方法、日程調整の難しさが挙がりました。当時はコロナ前だったので、数多くの社員が出社するリモートワークではない状況でした。そのため、会議室の取りづらさも日程調整の難しさの大きなポイントになっていました。
また、遠方の社員とのミーティングの実施方法については、双方の会議室を確保しつつ、相手とのオンラインミーティングを実施するのが非常に難しいという声が上がっていました。さらに、上司と部下それぞれのスキルアップの課題としては、1on1ミーティングそのものに対する理解不足やメンターとしての上司側のスキルアップなどが挙がっていました。
このようなアンケート調査から1on1の促進がTech Visionに効果をもたらすことを確認し、当時は1on1ツールのα版の開発に着手しました。
1on1ツールのリリースから半年ほど経過した後、私たちは社内のマネージャーを部門長、スペシャリストマネージャー、グループマネージャー、現場リーダーと分類し、マネジメント業務のどこに業務負荷と心理負荷が高いかについてヒアリングを行いました。(スライドを指して)資料が非常に細かくて見づらいですが。それにより全体を通して業務負荷が高い傾向にあるものは、目標管理、1on1、メンタルケア、採用、調整業務であることがわかりました。
また、評価月は通常業務に評価面談業務が加わるため、特に業務負荷が高くなることもわかりました。全体を通して心理的負荷が高い傾向にあるものは、コミュニケーションを要する業務全般でした。特にメンバーの退職につながるような問題に直面した際には、それを是正・予防すべく、サーベイの数値を参照しながらメンバーの状態を把握することに気を配りつつ日々のコミュニケーションを続けるため、心理的な負荷が非常に高まることがわかりました。
続いて、開発したプロダクトを紹介します。先に説明したアンケートとヒアリングの結果を受け、2020年6月に1on1の支援ツールを社内でリリースしました。次に、1日1問の質問に回答するだけで組織の健康状態を量れる「Pulse Survey」、さらに組織ごとの状況をダッシュボードで閲覧できる組織管理の機能を2020年9 月にリリースしました。
未定ですが、今後はスライドにあるようなその他のツールも、順次リリースできるよう検討を行っています。
以上が、現在までに開発できた1on1とPulse Surveyと組織管理の機能に関する紹介です。
システムの概要です。プロダクトは「Workboon」という、WebシステムとSlack用のチャットボットで構成されたシステムです。みなさんはご存じかと思いますが、Slackは基本的に社員同士がメッセージとチャットでやり取りするシステムで、社内専用のLINEのようなものです。弊社では大半の社員間コミュニケーションがSlack上で行われており、メールによる通知は認識されにくいため、WebシステムだけでなくSlack上で動くチャットボットも併せて開発を行いました。
Slackが、ユーザーに対する各種通知とユーザーがシステムにアクセスするための導線の入口となるように開発を行いました。
これらを踏まえた1つ目の特徴として、このシステムは2クリックで導入が完了する仕組みになっています。Slackにチャットボットを連携するだけで完了するため導入が非常に簡単です。
2つ目の特徴は、ユーザーデータの登録と削除が不要な点です。通常はシステムを導入すると、人事マスターからユーザーデータを持ってきて新しいシステムに投入する作業が必要ですが、こちらに関してはSlackにチャットボットを導入しているので、導入されたチャットボットはSlack内の許可された範囲内の権限を持つことができます。
このチャットボットに付与された権限により、Slackのユーザー情報を参照して利用できるので、ユーザーの登録が不要です。例えば、新入社員のユーザーデータの登録や退職者のユーザー削除なども、Workboonのシステムでは作業を一切行わずに運用できます。
3つ目は、ログイン用のIDとパスワードが不要です。ユーザーはSlack上にあるチャットボットが発行するボタンをクリックしてシステムにアクセスするため、ユーザーから「パスワードを忘れました」などの問い合わせが生じることもありません。以上のような特徴があります。
開発中のシステムのデザインに関しては、社内でよく使われているSlackおよびGoogle Workspaceを意識しています。また、1,000を超える組織と4,000を超える社員のユーザーデータを取り扱うため、各種情報をダッシュボードで表示してマネジメントに役立つデータを提供することを目指して、ダッシュボードの開発なども行っています。
続いて、個別の機能です。まずは1on1ツールです。このツールは先に説明したとおり、上司と部下の1on1ミーティングをサポートします。ミーティング用のアジェンダの作成を行うことができるほか、ミーティングの日程調整もサポートします。
日程調整時にはGoogle Calendarと連携したり、ZoomミーティングのURLを発行したりもできます。また、1on1ミーティング後には、上司から部下に対してフィードバックの記入が行えます。部下から上司へのアジェンダやフィードバックの提出時には、チャットボットが参加者に通知を行います。
機能開発で工夫している点について紹介します。実務では1on1のミーティングだけでなく、例えば新卒者へのオンボーディングなどでは1対2、1対3などのミーティングが行われます。そのようなシーンにもシステムを利用できるよう、N対Nのミーティングを実施できるようにしています。
続いて、Pulse Surveyです。こちらも非常におもしろいシステムで、1日1問のチャットボットの質問にSlack1クリックで回答するだけで組織の健康状態を量れるツールです。質問の内容は毎日変わり、継続して回答することで、例えば職務や体調、人間関係などに対するサーベイのデータを収集することができます。いかに社員の通常業務の支障にならずに回答してもらえるかを、人事部の担当者と模索しながら開発を進めています。
この1クリックで回答できる効果は非常に大きく、リマインド通知を行わなくても、Webサイトに移行してから回答するGoogleフォームなどのアンケートシステムより10パーセント以上高い回答率の維持に成功しています。
続いて、組織管理とダッシュボードです。1on1ミーティングの実施状況やPulse Surveyの回答率などのデータを組織ごとに集計するために、組織管理の機能と集計されたデータを閲覧するためのダッシュボードの開発を行っています。苦労した点は、所属の履歴情報や兼務している情報の取り扱いです。これらの管理を可能にすることにより、過去から現在にかけての数値の変化を追えるようになります。
最後に、時期は未定ですが、β版について社内だけでなく外部への公開を目指したいと考えています。その際、試しに使ってみたいという方は、私まで連絡をもらえれば幸いです。
以上でHR Tech開発グループの発表を終わります。ご清聴ありがとうございました。
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