2024.12.19
システムの穴を運用でカバーしようとしてミス多発… バグが大量発生、決算が合わない状態から業務効率化を実現するまで
創業秘話 / 資金調達… GROOVE X 創始者の林 要氏が語る!「家族型ロボット」という新しい産業でムーブメントを巻き起こせ!『LOVOT』を作ったプロフェッショナルたち #3【ものづくり2.0】(全4記事)
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林要氏(以下、林):起業のときの理念は「ロボットで人間のちからを引き出す」です。人間とロボットの信頼関係を築くことが、とても大事なビジョンだと考えています。信頼関係がないと人間のちからは引き出せないからですね。
(LOVOTが目指すポジションについて)、この図の左側がフィジカルコンディショニング、右側がメンタルコンディショニングという軸になっていますが、フィジカルコンディショニングって、どんどんテクノロジーが進化しているわけです。右側のメンタルコンディショニングは、実はあまり進化してきていなくて、ここにLOVOTがテクノロジーとして入ってきているというところです。
この事業の特徴は、お金を稼げるようになるまでにすごくお金を使うところですね。起業してから4年間はまったく稼がないですし、それ以降もなかなか稼ぐようになるまで時間がかかる。
今までに133億円を集めてきています。資金調達は当初から「何か日本でも米国のようなスタートアップのエコシステムを作れないだろうか」という思いから、コンバーティブル・エクイティという、やや特殊な資金調達手法でシードまでは集めたりもしました。
この時の狙いは、「私どものやり方に沿ってやっていただければ、みなさんもより楽にスタートアップが始められるよ」というメッセージを出したいなと。そんな思いから、このコンバーティブル・エクイティでの資金調達にチャレンジをしたところがございます。
私からのプレゼンはいったん以上になります。ありがとうございます。
司会者:林さん、ありがとうございます。LOVOTの開発秘話ということで資金調達にも触れていただきまして、ありがとうございました。では続きまして、トークセッションのほうに移っていければと思います。
青木奈々子氏(以下、青木):ありがとうございます。それではここから私、GROOVE Xで人事をやっております青木も入らせていただきまして、我々GROOVE Xの組織について、私と林とのトークセッションのかたちでお話しさせていただければと思います。
私はふだん、林のことを社内で「要さん」と呼んでいまして、今回も要さんと呼ばせていただきます。いくつか私のほうから質問を投げるかたちで進めさせていただければと思います。
まず、先ほど要さんからスクラムの手法で開発をしているという話がありましたが、実はこれまで2回行った、GROOVE Xのエンジニア、デザイナー、アニメーターに参加をしてもらったイベントでも、スクラムの話が出てきました。まず要さんにおうかがいしたいんですけれども、なぜこのスクラムの手法で開発をしようと思ったのか。また、どうしてそれに沿った組織に作っていこうと思ったのか。その点をおうかがいできればと思っています。
林:ありがとうございます。私は自動車業界にいた期間が長くて、ウォーターフォールと呼ばれる、日程をきっちり決めて開発をするという方法を、しっかりと身に付けてきました。
ウォーターフォールが駄目なわけではなくて、ウォーターフォールは解くべき問題が明確な時には非常によい手法です。ただ、解くべき問題が明確ではない時に、最初にスケジューリングをするのが非常に難しいんですね。
林:なぜかというと、一番最初は一番知らない時だからです。一番最初にもある程度知っているような、例えば経験のある大工さんが家を建てる時は、ウォーターフォールでいいわけです。どうやって作ればいいかわかっているので、何をいつまでに準備して、どういう日程でやって、何かがあった時にどういうオプションを作っておけばいいのか、全部最初に計画しておけばいい。
だけど、それでうまくいかないケースもあって、例えばロケット作りなんかはたぶんそうですね。どうやって作っていけばいいのかよくわからないような時には、実は一番最初に立てた計画って、一番稚拙な愚かな計画になりがちです。こういった場合はまずやってみることが大事になります。
では早く試して早く学ぶために必要なことはなんだろうというので世界を見た時に、スクラムという手法が注目されていました。そのスクラムで開発をするためには、自ずと組織体制もそれに沿ったもの、ややフラットな体制の組織になっていくというので、私どもは、今、スクラムで開発をしています。主に開発メンバーはフラットな組織形態になっていますね。
青木:ありがとうございます。フラットな組織を作っていく時に、大変なこともあったんじゃないかなと思うんですが、最初の頃はどういった苦労がありましたでしょうか。
林:最初はリーダーを決めて、「君に任せた」とやっていたんですよね。そうすると、わずか十数人の時でも縦割りの壁ができていて、大企業病みたいになったんですよね。それを見て、「なるほど。大企業病は大企業だからなるんじゃなくて、各領域の責任感でそうなるんだな」と気づいて、そこから大きく舵を切りました。
青木:そこからは要さんは、どのようにフラットな組織・スクラムがやりやすい適した組織を定着させていったんでしょうか。
林:いやぁ、定着するの、大変でしたよね。
青木:(笑)。
林:そもそも、スクラムとかフラットな組織で働いた経験のある人が少ないので、みんなやり方がわからないし、不安だし、成功体験がない。そうすると、過去に成功体験のある方法をやろうとするんですよね。
正直うまく回りだしたのは、メンバーにスクラム研修へ行ってもらい出してからですかね。1チームの中にスクラム信者が2人以上いると、急にスクラムって回りだすんですよね。でも1人だと、その人がむしろ門外漢になってしまう。
なので、スクラムでの小さい成功体験でもいいので、それを持った人が各チームに2人以上になる状態を早く作るというのがコツでした。逆に言えば、未だに2人以上成功体験を持っていないチームは、スクラムになりきっていないところもあると思います。
青木:そうですね。まずスクラムが我々の組織のかなり大きな特徴かなと、私もすごく思います。
青木:次に、先ほど「ミッション」と「ビジョン」の紹介が少しありましたけれども、我々はもう1つ、「スピリッツ」というものも持っています。こちらは数年前に有志のメンバーが集まって、自分たちが働くにあたって大切にしたい共通の価値観、行動指針を6つにまとめたものになります。
先ほどあった「3.早く試して、早く学ぼう」という言葉や「4.個人の強みを見つけてチームの強みにしよう」というところも、すごく私たちの働き方や考え方の特徴が出ているのかなと思います。要さんはこのスピリッツをご覧になって、どうお感じになりますか?
林:有志のメンバーはよくまとめてくれたなと思います。私もこれを決める時にその場に出ていましたけど、「5つまとめよう」と言って、最後どうにもまとまらなくて6つになったという経験がありました。
どうしても新しいことをやるのは、基本的には非常に大きな不安を伴うので、それに対して忘れないでいること、大事にしていくことを、しっかりと絞り込んでいこうと。大事なことはもっとたくさんあるんだけど、この6つだけは常に忘れないようにしようねというので、この6つを残した記憶があります。
青木:そうですね。この言葉が会社の入り口に貼ってあって、会社に来た時に目に入るような工夫を今でもしております。
青木:先ほどからもキーワードとして「フラット組織」が出てきました。実は私も入社する前に会社のことを調べている中で、フラットな組織って本当に一人ひとりが当事者意識を持たなければならないというか、一人ひとりがきちんと責任を持ってやらなきゃいけないのって、かなり大変な面もあるだろうなという印象をものすごく受けました。
フラットであるからこそ、お互いがマネジメントしなきゃいけない。なのでお互いがフィードバックをするということも、我々はすごく大事にしています。まだまだ出来ていないところもあるかなと肌感覚で思うんですが、要さんはその点をどうお感じになりますか?
林:やはり「お互いのフィードバック」は海外でも難しいと言われています。まず組織内に階層がある最大のメリットって、フィードバックが少なくとも上から下という一方向ではできることなんですよね。
階層を作らないと何が起きるかというと、お互いのフィードバックすらしないんですよね。言って恨まれるのが嫌じゃないですか。フィードバックが起きなくなるから、フラット組織ってすごく危ないんですよね。
階層を作ると、少なくとも上の人は自分の仕事だと思って、下の人へのフィードバックができるようになる。これが進歩の1歩目とも言えますね。逆にフィードバックをちゃんとできないマネージャーは、まったくいる意味がないとも言えます。
ただ、この階層の場合、下から上のフィードバックが極めて難しい。フィードバックして評価されるかというと、なかなか「あいつは俺のことをわかっていない」「目線が低い」とかになりがちなので。
でも双方向フィードバックを作ることはなかなか難しいのですが、本当はそれをやれば階層があろうがフラットであろうが関係ないんです。どっちでも組織はうまくいく。
ただ、階層があるほうがよりハードルが上がるということは、1周回ってフラットで双方向フィードバックができれば、最強の組織になるわけですね。正直、日本人は文化としてそもそもフィードバックを言い慣れていないので、弊社でもまだまだ強化していかなきゃいけない部分かなと思っています。
青木:そうですね。そういったところを乗り越えていく、強化していくためには、どういったことが必要だと考えられますか?
林:フィードバックしないでも回るのであれば、穏便に済ませたいと思う人がほとんどですよね。会社の業績よりも、自分が穏便に済ませられることのほうが大事ですから。なのでちゃんとフィードバックすることが評価される会社にしていかなきゃいけないと思います。
青木:そうですね。先ほどから出ているスクラム開発のところで、もう少しお話しできればと思っています。スクラムの手法での開発は、1スプリント、つまり1つの期間の中でプランニングをして、実際に開発をして、最後に振り返りをして、確認をして……というサイクルを回していきます。
現在は、1つのスプリントを2週間として、その中で開発するかたちを取っています。ここの中でやはり「プランニング」と「振り返り」が、非常に大事なイベントになっています。要さんもこのイベントには今も参加していますよね。
林:そうですね。特にスプリントレビューと呼ばれる、1スプリントが終わってから成果物を披露し合う場が一番おもしろいですよね。
青木:(笑)。そうですね。
青木:その成果物の披露ということで、我々は仕組みとして、全社員、全メンバーが開発のフィードバックをできるような場を設けています。「バザール」と呼んでいますけれども、この中で、開発途中でもいいので見せて、誰もがそれに対してフィードバックをできる。そういうった場になっています。
私もこの会社に入ってこういったものを初めてやりました。私は開発の人間ではないんですけれども、こういうもの(成果物)を一緒に見て、「ここ、すごいですね」とか「これはおもしろかったです」と言えると、私も少しながら参加したような気分になります。そうやって、みんなで一緒に1つのプロダクトに向かってやれていることが、けっこうおもしろいかなと思っています。
林:そうですね。バザールはけっこう大事な場で、「完成させる前に見せること」が大事なんですよね。これも日本の文化的に、磨き込んだものを見せたくなる人が多い。文句を言われたくないんですよね。生煮えで見せていろいろ言われると、自分に駄目出しされた気がしてしまう。だけど、本当は磨き込んでから「実は違うよ」ということに気づくほうが、会社としての損失が大きいんですよね。
だから、生煮えのまんまで見せて、いっぱいいろんなことを言ってもらってから、磨き込んでいく。このプロセスが本当は大事なんだけど、やはりプライドが邪魔をするんですよね。なかなかそれが難しいので、強制的に2週間と区切って「ここまでやろう」と。その場で見せあって次のことを決めていこう。これがアジャイル開発手法の大事な根幹ですかね。
青木:そうですね。けっこう社内の情報もオープンにして、いろんなところで議論することも多いですよね。まだ固まっていない段階からいろいろな人の目や意見が入って、それでできあがっていくことも多いなという印象を持っています。
青木:チームで開発をしていくにあたって、これまでの2回のイベントの中でも出てきた話題ではありますが、透明性を持って、ペアワークやモブワークで連携しながら開発をしていくところも、我々の特徴の1つかなと思っています。
要さんはどうですか? こういったペアワーク、モブワークをうまく進めていくにあたってのコツやポイントはどういうところだと思いますか?
林:ペアワークとかモブワークも、最初はすごく抵抗が大きいんですね。1人で進めたほうが速いのに、なぜ他の人と組まなきゃいけないのか。ものすごい忙しいのに、なぜ2人で1人分の仕事をするんだとなるんですけれども。
ペアやモブワークの大事なポイントは、まずペアでやることによって、知識レベルにギャップがある時に、高い知識レベルの人のノウハウを、低い知識レベルの人に移転することができる。そういったトレーニングプロセスを含んでいることが、1つ大きなポイントですね。
それからもう1つは、何か問題に行き当たった時に、1人で考え込むとびっくりするくらい時間をかけちゃうんですけれども、2人、3人で考えるとその問題解決が速いんです。1人で仕事をしていてうまく行っている時はめちゃくちゃ速いんだけど、止まった時は、それをあっという間に食い潰すくらい遅いんです。
それをペアとかモブでやると、2人でやっているからうまくいっている時にアウトプットが2倍以上になるかというと、それはなかなか難しいかもしれないけど、何かの壁に当たった時は発想の幅が広がるとか、トータルでいくと圧倒的に2人のほうがいいんですよね。
ペアやモブで働くのは、本当はすごく大事な観点なんですが、これも成功体験がないと基本は1人で仕事したくなるので、なかなか難しいチャレンジですね。
青木:これもやはり、最初はメンバーにやってもらうのは苦労されたんじゃないですか?
林:先ほどのチームに2人ぐらい成功体験者がいないかぎりは進まないパターンの1個ですね。
青木:どうやって浸透させていったんですか?
林:あれですね。フラット組織の定着と同じように、ペアワークやモブワークのトレーニングに行く人を増やしましたね。
青木:そうですよね。違う専門性を持ったメンバーが一緒に仕事をすることでLOVOTの開発が進んでいる部分もすごく多くて、ここもLOVOTを作っていくにあたっての本当に重要なポイントの1つなのかなと思っています。
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