CLOSE

SUZURI CREチーム結成1年目のふりかえりとこれから(全1記事)

サービスと顧客の接点の信頼性を上げるCRE CREチームメンバーが語るチーム結成の歴史と取り組み

オリジナルグッズ作成・販売サービス「SUZURI byGMOペパボ」(以下、SUZURI)に関わるエンジニアメンバーや事業部長が登壇し、SUZURIの開発の今や、現在の課題・今後の取り組みについて話す「43万人超のクリエイターの表現活動を支える!ECプラットフォームSUZURIの開発の裏側」。ここでエンジニアリングリードの田中氏が登壇。CREチームを立ち上げた背景から具体的な取り組みをを紹介します。

自己紹介とセッションのアジェンダ

田中健太郎氏:では、「CREチーム結成1年目のふりかえりとこれから」というタイトルで、たなけんが発表します。自己紹介をします。犬を飼っているという強みがあります。2020年から飼い始めたんですが、今も横でハァハァ言っているので、もしかしたら吠えたりハァハァ言うのが聞こえるかもしれませんが、ご了承ください。

今日の目標としては、「CREって何なの?」という方もいると思うので、それをお伝えすることと、「SUZURIのCREチームは何をしているの?」ということを知っていただきたい。さらに「SUZURIのCREチームで働きたい」という方を増やしたいと思っています。

アジェンダとしては、SUZURIのCREチームについてと、1年経ってのふりかえりと、これからというかたちで進めていきます。

CREとは何か

まずは「SUZURIのCREチームとは」です。そもそもCREとは何なのかという話です。Googleが2016年に発表したもので、Customer Reliability Engineerという専門職です。サイトではなく、カスタマーのReliabilityをEngineeringするぞという職種です。考え方はSRE(Site Reliability Engineering)とちょっと近しいものがありますが、独特な部分もあります。

さらにGoogleでは、おそらくGoogle Cloud Platformというサービスにおける職種として定義しています。Googleの定義の中で、僕が特に重要だと感じているのは、お客さまと運命共同体になるというところと、お客さまがそのサービスに委ねている情報や期待していることをより高めて、価値を高めて一緒に向き合っていくところ。そのような、ユーザーと相対するというよりはユーザーと同じ方向を向いて一緒にやっていくぞ、というポジションのかたちです。

自分なりにCREに関するGoogleの定義や、さまざまな企業や個人の方が書いているブログなどを読みあさっていた時期があり、(スライドを指して)それを自分なりに解釈したものがこちらです。「顧客の不安をゼロに限りなく近づけるために、課題を把握・計測して技術的なアプローチで、その課題の解決に役立つものを実現していくこと」が、Customer Reliability Engineeringなんじゃないかなと考えています。詳細はブログをご覧ください。

CREチーム結成までの歴史

では、「そのSUZURIでCREチームをやるぞ」となった流れというか、歴史についてお話しします。2019年なのでもう1年半くらい前、自分はけっこうユーザーさんからのお問い合わせ対応などが好きでした。というより、そういうことをわりとすぐに気にしてやってしまうタイプのエンジニアでした。

当然、ほかにも新しいアイテムの追加や、サーバーのパフォーマンスチューニングや、クエリのチューニングなど、やることがたくさんあるんですが、そういうやりたいことに並行してお問い合わせが来ます。そして、それにきちんと対応することも、やはり大事な業務としてあるわけです。ただそういうことに素早く対応したいと思って、ゴリゴリ問い合わせ対応を率先してやっている時期がありました。

必要なことだからと思ってゴリゴリやっていたんですが、なんとなく「ほかにもやりたいことはあるのにできないな」と思っていました。しかし、人によっては問い合わせ対応よりももっともっと機能開発に集中したいというタイプのエンジニアメンバーも、もちろんいるのです。そういう中で、どうすればよりユーザーにとって楽しいSUZURIである状態を作れるのかといった面で、ちょっとモヤモヤする時期もありました。

そういう中で、CREというものを知り、ユーザーが実現したいことに一緒に向き合うような職種があると知って、けっこうモチベーション的に高まっていた時期があります。

そして、2020年の6月に「SUZURIでCREをやります」と勝手に発表しました。勝手にというか、すでにほかのサービスにはCREチームがあったので、その中でSUZURIでもやりたいと思って。SUZURIでもCREというものがあるんだよ、と社内で言い始めました。

長らく3ヶ月以上、1人でCREをやるぞと言っていたんですが、なかなか進まない。というかほかにもやることがたくさんあったので、どうやったら進むかを考えたりしていました。そんなとき、9月か10月くらいに、2名が新メンバーとして加入しました。エンジニア1名とカスタマーサクセス(CS)のチームメンバーから1名に参加していただいて、CREチームとしてやっていくぞとなりました。

その頃から、「自分を含め3人でもまだまだ足りんなあ」「手を動かすメンバーが足りんなあ」と思い、部長に相談しました。CREとしてやるべきことや、もっともっとユーザー体験を上げていきたいんですという話をしました。メンバーを増やしたい、GMOインターネットグループでは社員のことをパートナーと呼んでいますが、業務委託のパートナーを増やしたいということで、専属のパートナーをアサインしてもらいました。さらにデザイナーのメンバーも加わり、2020年12月からはけっこう加速的にチームが大きくなって、やれることが増えていった状態です。

SUZURI CREチームのミッションは、僕が2020年の6月に勝手に発表した時に言っていたものをそのまま持ってきているんですが、「安心して気持ちよく使えるSUZURIにする」というのが、当初からのミッションだと思っています。

今も、安心して気持ちよく使える組合みたいなものが、実はチームとしてあります。そのチームなどの話は別途、またちょっとかたちを変えてアップデートしているので、おいおい公開できればいいなと思っています。そういう“安心して気持ちよく使えるチーム”というかたちでも、活きてきているミッションです。

具体的なCREの活動

ではミッションのもと、「CREの活動って具体的に何をするんだい」という話をしておきます。前のページでいくつか、「顧客の不安を限りなくゼロに近づける」という話をしました。そのため、「CREというのは、顧客の不安が発生するシーンに対してアプローチをしている」と考えることができるのではないか、と考えました。

じゃあ、それってどういうシーンなんだろうかというと、さまざまなサービスに対して顧客との接点があって、プロダクトそのもの、SUZURIで言うとsuzuri.jpだったり、モバイル、iOSアプリ、Androidアプリなどのプロダクトそのものもそうだし、ユーザーに届いたTシャツだったり、グッズ、アイテムなどもプロダクトになるかな、と思っています。

そして、そういうものやこと、そのサービスや、営業活動、新しいクリエイターさんに「SUZURIで活動してもらえませんか」と誘うような活動や、ほかにお問い合わせをもらっているものへの対応だったり、広告、SNSなど、さまざまな接点があります。

それを支える運営組織として、我々メンバーがいます。こういうイベントなどではあるかもしれませんが、運営組織が直接顧客と関わることは、直接は見えません。我々はメンバーですが、間接的でも顧客との関係性があるので、(スライドを指して)今点線で囲っているこの大きな枠の中の信頼性を上げていくことが、CREの活動なんだと思っています。

そして、それぞれのブロックで、やることを分類しながら、アプローチできるんじゃないかということがCREの活動だととらえています。それに関してもブログに書いているので、見てください。

SUZURIの中で特に注力しているのは(スライドを指して)この赤く書いたところで、運営組織の部分は、SUZURIがここ数年で急成長しています。すごく小さいチームだった時と比べると、今は数十名、100名はいきませんが、60、70名くらいの規模のチームでやっているので、いろいろ整えるべきところがあります。会社もフェーズが変わって、市場変更などもあったので、組織としてもっと強くしていくことも必要だということで、注力しています。

ほかに、プロダクト自体をもっと使いやすく、気持ちよく使えるようにすることもそうですし、どんどんクリエイターさんの活動を支援していきたい。あるいは、問い合わせ対応もよりスムーズに、問い合わせなくても済むような、そういうサービスにしていきたいし、問い合わせが来たらなるべく早く回答できるような、そういうチームにしていきたいと思っているので、この赤線の部分に注力しています。

営業活動については、実は今CREチームというか、別途「クリエイターを支援するぞ」というチームが社内にあります。今のSUZURIのCREチームでいうと、特にプロダクトとお問い合わせと運営組織の3つをやっている感じです。

チーム結成1年目の振り返り

ここからは、ふりかえりです。まず実績ですが、解決したお問い合わせを1年間集計すると366件あります。このお問い合わせは、ユーザーからの問い合わせメールの件数などではなく、直接CSさんからエンジニアに調査依頼が来たものです。ユーザーからの問い合わせはもう、もっとたくさん山ほどあるんですが、その中でCSさんでは解決できず、技術的に解決しなければならないお問い合わせです。

例えば、「データが予期せぬ操作でおかしな状態になってしまいました」というものを直すとか、不具合などもそうです。それに対して解決した件数が366件。1年間なので1日1件、営業日で言うともっと、1日2、3件以上やっているかなという感じです。

解決した課題は、その問い合わせを解決するだけではなく、問い合わせに共通して、「これってつまりこれが課題だからこういう問い合わせが来るんだよね」といったものを、社内のメンバーで検討し直します。その結果、GitHub Enterprise上のissueとして上がったものを解決した件数が138件、さらにそれを機能としてプルリクエストでリリースしたものが128件、という件数になっています。

これを多いと感じるか少ないと感じるかは人それぞれかもしれませんが、こういう実績がありますよということです。

リリースした機能たちを細かく説明したいのですが、時間がないだろうと思ったので並べています。もし何か具体的に、これを聞きたいということがあれば、Twitterなりカジュアル面談なりで聞いていただければと思います(笑)。

CREチームの取り組み

いくつか取り組みをしているので、それを紹介します。まずCSチームとの情報共有として、毎日夕会をやっています。Scrapboxというドキュメントツールにガンガン書いてもらって、その場ですぐに解決したり、解決できないものはissueを作ってもらったり、そういう情報共有とやりとりをしています。

ほかに、もっと使いやすくしてほしいといった意見を集めたりもしています。adminという社内向けの管理画面にもっとこういう機能をつけてほしいとか、ここは直してほしいといった意見を集めて解決したりしています。

さらに、事業部内への共有として『月間SUZURI CRE』というissueを立てて、毎月の様子を報告しています。これによって、どんなことをやっているのか、「どういう機能ができました」といったことを伝えて、CREのことを知ってもらうほか、CREを介してユーザーにどういう変化があったのかを知ってもらう目的でやっています。

さらに、事業部外のCREと情報交換をしています。社内にはSUZURI以外にもCREチームがいくつかあるのですが、そのCREチームをまたいで情報共有することで、ほかの事業部がチームでやっていることを自分たちのチームで活かせるんじゃないか、自分たちのチームでやったことをほかでより発展的に活用してもらえるんじゃないかという目的で、共有しています。

ふりかえりとしてよかったのは、月10件以上のペースでリリースできていることです。リリースした機能が128件なので、12ヶ月で割ると10件以上のペースでリリースできています。あとは、課題を解決するための情報の流れを整えられていることが、けっこうよかったと思っています。

(スライドを指して)一番右のCS室と真ん中のSUZURIは、いちおう事業部として分かれてはいるんですが、毎日おしゃべりをして情報共有しているので、すぐに情報はキャッチアップできるし、何か問題があれば発見できます。それを月に1回まとめて事業部内に共有できているし、そこで得た知見などをほかの事業部にも共有するというかたちができていて、このあたりがすごくよかったと思っています。

もっとよくできそうなこととして、今は実際にユーザーの体験がどう変わったのかを実績としてバーンと示せるものがないということ。個別の課題ごとに、例えばある機能をリリースしたらどう変わったとか、どういう問い合わせが減ったみたいな計測できるものは計測しているんですが、今は「じゃあ、CREチーム全体として一貫性のあるこの指標を追いかけよう」みたいなものがありません。

結局この1年間で何がどう変わったかを、まだ「いろいろやりました」みたいなかたちでしかお伝えできない。それをもっとよくできそうだなと思います。

ほかに実行するタスクの優先度として、現状は手当たり次第に、これ直したほうがいいとか、これやったらもっとよくなるみたいなことを、もうガンガンとにかくやってきた1年でした。本当はもっと先にやるべきものがあったかもしれないし、時間をかけて細かいものをいくつもやるよりも、時間をかけて進める大きなものや課題などがあったのかもしれないという思いがあります。

これからは定量的に、計画的に

これから取り組むことについて話します。キーワードとしては、定性的なものを定量的にしていこうということです。計測できていないものを計測する、あるいはユーザーの作業やCSさんの社内向けの画面の使い方を観察して、もっとよくできるところを探したり記録したりしていく。

あとは、一貫した指標を作って、それに対して目標を設定してやっていく。場当たり的なものを計画的にやっていくというのもキーワードとしてあって、今までは手当たり次第にやっていたんですが、重要度や緊急度を加味してどういう順番にするかなど、計画的にやっていこうと思っています。

いくつか取り組みの足掛かりとして、すでに始めているのが、カスタマージャーニーマップを作ることです。ユーザーを想定して、どんなアクションをしそうかなっていう全体の流れを組み立てて、じゃあどこでどれくらいの割合でユーザーがつまずいているかを定量化していけるといいね、という話をしています。

直近では、今までメールでの問い合わせだったものが、問い合わせフォームに変わっています。今まではメールの自由記述だったので集計しにくい情報などもありましたが、これで集計しやすくなって、分類ができるし、計測もしやすくなると思っています。

あとは、目標的な指標や目標値を設定できれば、そういうダッシュボードを作って定期的に声かけていくことができるようになると思っています。

最後に、今日の目標はCREのことをわかっていただくことだったので、CREのことやSUZURIのCREチームのこと、そして働きたいと思っていただけましたら嬉しいです。ペパボでは新しい仲間を募集していますので、ぜひぜひ応募いただければと思っています。ありがとうございました。

続きを読むには会員登録
(無料)が必要です。

会員登録していただくと、すべての記事が制限なく閲覧でき、
著者フォローや記事の保存機能など、便利な機能がご利用いただけます。

無料会員登録

会員の方はこちら

関連タグ:

この記事のスピーカー

同じログの記事

コミュニティ情報

Brand Topics

Brand Topics

  • 孫正義氏が「ノーベル賞もの」と評価する最新の生成AIとは “考える力”を初めて身につけた、博士号レベルを超えるAIの能力

人気の記事

新着イベント

ログミーBusinessに
記事掲載しませんか?

イベント・インタビュー・対談 etc.

“編集しない編集”で、
スピーカーの「意図をそのまま」お届け!