
2025.02.06
ポンコツ期、孤独期、成果独り占め期を経て… サイボウズのプロマネが振り返る、マネージャーの成長の「4フェーズ」
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池澤あやか氏(以下、池澤):本日はゲストは世界最高齢のiPhoneアプリ開発者、若宮正子さんです。よろしくお願いします。
菅澤英司氏(以下、菅澤):お願いします。「hinadan」をリリースしたわけですよね。その時はどんな気持ちですか?
若宮正子氏(以下、若宮):仲のいいお友達と「電脳雛祭り」という、ささやかなものをやっていたんですが。その時にお友達に披露できればいいなぐらいに思っていました。
菅澤:友達にまず「これ出したぜ」って(笑)。
若宮:日本の新聞にも1回出たんですが、そのあとCNNというアメリカの放送局から取材が入りまして。
菅澤:もういきなり来たんですか?
若宮:英語できたんですけど。私、英語も苦手なんですが、翻訳のソフトがすごく進歩していると聞いたので、全部べたっと貼りつけて読んで。英訳して返事を書いて送ったら、2、3個追加の質問がきて。「これ全部やってくれれば、今晩配信するから」って。
次の日に、動画の入ったなかなか立派な記事で配信されたら、よほどその日は大事件がなかったらしく、世界中の40ぐらいの通信社がそれを全部拡散して。気がついたら、海外で有名人になっちゃって。
菅澤:いきなり有名人(笑)。それをリリースする前は、ちょっと話題になったらいいなとか、そんなことはぜんぜん思っていなかったですか?
若宮:ぜんぜんそんなこと思ってもいませんでした。「何ごと?」みたいな気がして。
菅澤:ダウンロード数とか、どれぐらい行ったんですか?
若宮:11万。
菅澤:1発目のアプリで10万ダウンロード突破。
池澤:これはどうですか?
菅澤:すばらしいですね。
若宮:それでApple社からCEOが「お会いしたい」と。最初は断っちゃったんですよね。
菅澤:断っちゃったんですか(笑)。
若宮:友達にはみんな「そんなのは気をつけたほうがいい」なんて言われちゃって。
菅澤:確かに。いきなり「アメリカに来い!」って言われて。
若宮:CEOといろいろお話ができて。CEOは女性であることと、高齢であることと、地域の伝統があるわけじゃない。そういうものをアプリにしたということで、すごくおもしろく感じた。
菅澤:確かに。CEOになったティム・クックさんですね。どんな感じでした?
若宮:もう本当に優しい方で。興味を持って聞いてくれて。7分ぐらい話したようです。
菅澤:その時はどういう気持ちでしたか?
若宮:当時はコロナじゃないから握手して。「Nice to meet you」と言って、だいたいそれで終わるものだとばっかり思っていて。iPhone見ながら実際にそういうお話をするなんて思ってもみなかったので、ずいぶんビックリしました。
菅澤:じっくり話せたという。
池澤:AppleのWWDCに招待されて、そのあとも日本の内閣府だったり、あとは新しいデジタル庁の取り組みにも携わっているんですよね。
若宮:日本もITをしっかりやらなきゃいけない。よその国に遅れてしまっているからということで、一生懸命取り組みましょうという国の方針で。
デジタル改革というんですか? デジタル庁を作るとか、そういうことについての意見を取りまとめるからと。構成員ということで、たった8人のうちの1人になっちゃったんです。
池澤:すごい!
菅澤:すごい。いきなり(笑)。
池澤:インターネットの父と呼ばれている村井純さんと肩を並べている。
菅澤:同じ立場、すごいですね(笑)。
若宮:モットーとするところが、誰も置いてけぼりにしない。置いてけぼりにされそうなのは、やはり高齢者や障害がある方ということで、そういう人たちと一緒にみんながデジタル列車に乗っていけるように。
菅澤:確かに政府の組織で、デジタル庁はけっこう今期待が高いですし、若宮さんがそういうところに入られているというのは、心強いですよね。
若宮:高齢の方もインターネットなどが使えるか使えないかは、すごく違うんですよね。コロナの時だって、私たちはいろいろなLINEやZoomなどを使って、家族やお友達と交流ができますし。お買い物とか、そういう実務的なものでも、通販が頼めたりしますよね。そういうことができないってすごく不便ですし、これからもっともっとインターネットが便利になれば。
例えば、緊急避難速報なんかもただ単に出すだけじゃなくて、「あなたはどうしますか? ここの避難所に行きますか? うちにとどまりますか? どうしますか?」って。
「避難所に行きます」というところにチェック入れると、「スマートフォンはちゃんと持ちましたか? 位置情報がオンになっていますか? もしもなにかあったらここに電話をください」とか出て、それを持って避難所に行くような。そうすると避難所にも「誰々さんが行きます」と通知がいくとか。いずれ近い将来できるようになるわけです。それで一番恩恵を受けるのは高齢者ですから。
菅澤:そこでやはり高齢者が、勉強するのが大変と思うのではなく、「楽しい! 機械を使うが楽しい」と思わせるような。
若宮:そうです。そういう時にやはり楽しいものもなくちゃいけないので、楽しめるアプリもいろいろあったりしたら、ますます孤独感も少なく、独りの人が特に寂しくないように暮らせると思いました。
菅澤:たぶんなによりアプリが楽しいのもあると思うんですが、若宮さんが楽しそうに、いろいろなコンピューターを使いこなして、人生を豊かにしている感じが伝わって一番説得力があるなと。
池澤:そうしたことをまとめた書籍が、1万年堂出版さんから『老いてこそデジタルを。』というタイトルで本を出されて。
若宮:はい、おかげさまでよく売れているそうです。
池澤:こちらはどういった内容なんですか?
若宮:今までもそういう本はたくさん出ていますが、もともとデジタルネイティブの人が書いた本で。私たちアナログ世代をずっと過ごしてきて、デジタルと鬼に金棒で。ますます元気でがんばりましょうということを書きました。
菅澤:もともと携帯とかって「みんな使えないよ」って言っていたけど、iPhoneが出たら「けっこう使えるね」となったように、ほかのこともいろいろとできるはずですもんね。
若宮:そうなんです。
菅澤:最後にちょっと質問ですが、おいくつまでものづくりをされていくのですか?
若宮:いくつまでかわからないですけど。ただ、こういう時代でしょ?だから例えば、足腰が弱ったって、講演会に出掛けていかなくたって、Zoomみたいなオンラインアプリを使って話せますし。例えば、脳梗塞の後遺症で口がうまくきけなくなったとしても、テキストを音声で出ものも出てきますし。
私がなにかみなさんに聞いてもらいたいことがあれば、それを伝える手段は、どんどん新しいものができてくるので、自分の体力が衰えても補ってくれると思うんです。
なので、予想しているよりももうちょっと長くできるかなと思っています。
池澤:私たちも、将来たぶん見たことない技術が、たくさんこれから出てくると思うんですけど。ちゃんとついていくと、新しい世界が開けるんだなと、若宮さんの後ろ姿を見ていて思いました。
菅澤:どんどん技術が高齢化しても問題ないようにしていくという。我々もいろいろやっていくので、ぜひこれからもよろしくお願いします。「NANAKUSA」アプリ、楽しみにしています。
池澤:これからリファクタリング、がんばってください。
菅澤:ではどうもありがとうございました。ということで、若宮さんに話を聞いたんですがいかがでしょうか?
池澤:35歳プログラマ定年説はやはり嘘だったんですね(笑)。
菅澤:ぜんぜん定年じゃないよね(笑)。
池澤:まだまだ現役で、むしろ一生現役でものづくりに携わっていけるというポジティブなお話を聞けて、心強いなと思いました。
菅澤:すごい説得力でしたね。話してすごく思ったのが、楽しくてやっているのがすごく伝わってきていて。アプリを出して、世界中に広まったり、今は本を出したりして。それでこの場にも出てもらっているんですが。
知られていなくても幸せというか、作っている日々や、周りの人がそれを使ってくれる日々が、もう楽しくてしょうがない。
ある意味、その時点で成功というか、すばらしい生き方をしているということなので。楽しいものを作ったとか、それがどれだけ使われたかは置いておいて、ぜひみなさんも「いい物作れたな」「周りの人が楽しんでくれたな」というところを目指して、いい物を作ってもらえたらなと思いました。今日はこのへんで終わりにしたいと思います。
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