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Sharing test cases of internet protocol with Go and OCI Artifacts (全2記事)

仕様に準拠したツールを作るのは“謎解き感”があって楽しい Goで作成したテストをコンテナイメージで共有する「OCI Artifacts」の仕組み

Go Conferenceは半年に1回行われるプログラミング言語Goに関するカンファレンスです。 石澤氏は、Goを使ったインターネットプロトコルのテストツール「protospec」の作成について発表しました。全2回。後半は「OCI Artifacts」の仕組みと「ORAS」の実装例について。前回はこちらから。

作成したテストケースはコンテナイメージとして他ユーザーに共有できる

石澤基氏(以下、石澤):作成したテストケースは、他のユーザーが利用できるようにコンテナイメージとして配布できます。dockerでコンテナイメージを扱ったことがある方はイメージがしやすいと思うのですが、dockerと同じように、protospec pushというコマンドで手元にあるテストケースをコンテナレジストリに保存して、protospec pullというコマンドでレジストリからダウンロードして使うことが可能になっています。これにはOCI Artifactsという仕組みを利用しています。

OCI Artifactsは、任意のファイルをコンテナイメージに保存するための仕組みです。これは、dockerなどのコンテナランタイムが使用するOCI ディストリビューションとOCIイメージというコンテナイメージに関する標準仕様のユースケースの1つとして定義されています。そのためOCI Artifactsそのものが仕様ではないことに注意してください。

ECRやGitHubのパッケージレジストリなど世の中にあるさまざまなレジストリたちは、すでにOCI Artifactsに対応しているので、protospecのテストケースを実際にpushして保存できます。このような仕組みは、「Helm」や「OPA」などのクラウドネイティブなツールでも利用されています。

Goのコードで「OCI Artifactsを活用したい」という場合は、「ORAS」というツールが非常に便利です。ORASはOCI Artifactsを利用して、任意のファイルをコンテナイメージにしてビルドするためのコマンドラインツールとして提供されていますが、ORAS自体はGoのパッケージとしても使用できます。

「ORAS」を使った実装例

ここからはORASを使った実装例を簡単に紹介していきたいと思います。まずはOCI Artifactsをレジストリにpushして保存する場合の実装例です。

最初にORASのパッケージをインポートします。ORAS以外にOCIイメージの仕様に準拠するためのパッケージが必要になるので、それもあわせてインポートします。

次に、インポートしたパッケージを使って、dockerクライアントを生成します。そこからさらに、Resolverを生成します。Resolverは、コンテナ名を与えるとそこからレジストリのドメインやコンテナ名などを抽出して解決してくれる機能をもつ、クライアントのようなものと考えるとわかりやすいかなと思います。

Resolverの準備ができたら、コンテナイメージの中身を定義していきます。ORASでは、コンテナイメージの中身を一時保存する領域としてStoreという名前を使っています。これは、メモリ上にStoreを作成して、そこにhello.txtという名前でファイルを追加して保存しているという簡単なサンプルです。

最後にコンテナ名を決めて、先ほど用意したStoreと共にORASのpushという関数を呼べば、レジストリにコンテナイメージをpushできます。push関数の戻り値には、レジストリに保存されたコンテナイメージを一意に特定するためのダイジェスト値などが含まれているので、その値を後続の処理で使うことも可能です。非常にシンプルなコードで、簡単にpushのコードが書けました。

pullの場合も、非常に似た使い方になります。例えばコンテナイメージをレジストリから取得して、その中身にあるファイルなどをspecというローカルディレクトリーに展開したい場合は、まずFileStoreというStoreを作ります。展開先としてこの場合ではspecというローカルディレクトリーのパスを指定しています。

pushと同様に、取得するコンテナイメージの名前と作成したFileStoreを指定して、ORASのpullという関数を呼び出せば、pullができるようになります。これでコンテナイメージの中身のファイルが、ローカルに指定したspecというディレクトリーに展開されて、ファイルを使えます。ここまでがORASを使った実装例の簡単な紹介でした。ORASを使えば非常に簡単にOCI Artifactsに対応できるので、要件がうまく合えば、非常におすすめです。

ここまで簡単に、protospecやOCI Artifactsについて紹介しました。最後にまとめです。今回は、仕様準拠のためのテストケースの共有を可能にするprotospecについて紹介しました。protospecはGoを使用して実装して、ORASというパッケージを使用してOCI Artifactsとしてテストケースの共有を可能にしています。今後もprotospecはさまざまなプロトコルなどの対応を実装していきたいと考えています。

発表は以上です。ご清聴ありがとうございました。

司会者:石澤さん、セッションありがとうございました。私はなかなか自分のユースケース以外に、丁寧にRFCなどの準拠したツールを作るのが得意ではないので、そういうのをやっている人を見ると「神なんじゃないかな」とすごく尊敬します。

石澤:いやいやいやいや(笑)。でも謎解き感があって楽しいなあと個人的には思うことが多いです。

司会者:なるほど。

石澤:RFCの文章を読んで、これはどういうことなんだろう? というのを確認しながら実装していくのが、けっこうおもしろいなと思います。

司会者:これからも人類のためにがんばっていただきたいと思います。

石澤:はっはっは(笑)。ありがとうございます。

司会者:それでは石澤さん、セッションありがとうございました。

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