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他言語経験者が0から始めるScala ~block式とfor式と型クラス~(全3記事)

制約表現が柔軟で直列化も安全 言語機構を活用したScalaの型クラス

アジア最大級の国際Scalaカンファレンスである「ScalaMatsuri2020」がオンラインで開催されました。ここで中村氏が「他言語経験者が0から始めるScala ~block式とfor式と型クラス~」をテーマに登壇。最後は型クラスについて紹介します。前回の記事はこちら。

Scalaは言語機構を使って型クラスを利用

中村学氏(以下、中村):ScalaではHaskell等から輸入された型クラスが使われています。専用の構文が用意されているわけではなく、implicit parameterという言語機構を使って実現しています。

これはちょっと語弊ありますね。implicit parameterそのものが型クラスを実現するために作られた言語機構でもあるので、専用の言語機構があるという言い方も、できると言えばできますが、型クラス以外にもimplicit parameterは使えるので、そういう表現をしています。

implicit parameterとは何か

そもそもimplicit parameterって何なのよという話ですが、メソッドの引数グループのところにimplicitという修飾子を付けると、そのメソッドを呼び出すところで、スコープ中に型が一致するimplicitな値が存在していれば、呼び出しのときに明示的に書かなくてもコンパイラが補ってくれる仕組みです。

逆に、スコープ中に型が一致する値が存在しなかったり、複数あってどれを選んでいいかわからないときには、コンパイルエラーになります。ではそのimplicitな値とは何なのか。これも単純で、定義時にimplicitという修飾子を付けた値です。val foo: Fooなどで定義したときにimplicitと付けられるられますし、Singletonオブジェクトを宣言するときも、implicitは付けられます。

逆に、値だけじゃなくてdef、メソッド定義でもimplicitは付けられます。これは、その評価結果がimplicitな値になるという感じです。

そもそも型クラスは何に使う?

じゃあ、そもそも型クラスは何に使うの? というと、合成可能性のある制約を型に提供できますよ、と。ちょっと意味がわからないですね。

型への制約というと、通常のtraitのmixinのようなものでも表現できます。Javaでもよくありますが、Comparableのようなものです。値を比較することができる制約を表したいときに、traitを使います。クラスを定義するときにそのtraitをmixinすることで、そのクラスは比較可能なんだよ、と表せる感じです。型への制約という意味だと、通常のtraitのmixinでも表せます。

通常のtraitのmixinだと、そのジェネリックなクラスに対して十分な制約をかけられません。例えば、さっきのようなIntを持っているFooというクラスだったら、Foo同士を比較したいときにはそのIntの値を比較してあげればよいですが、逆にジェネリックなBarというクラスの定義をしたいと。

ただこれを比較可能にしたいとなったときに、Aが比較可能じゃないと、そもそも比較ができなくなってしまいます。どうしたものか。そもそも型引数A自体にComparableの制約を設けてしまえばいいんじゃないか。これも1つ成り立ちますよね。しかし、そのBarが比較可能な型のみしか使えないクラスになってしまって、これはこれで不便になってしまいます。

それを解決するために、型クラスが使われます。制約自体をクラスの定義と分離して書けるようにする感じです。ComparableではなくComparator[A]というのを用意して、compareメソッドとしては、値を2つ取って比較するtraitを用意しますと。

クラス自体は普通に何もmixinせずに定義します。implicitな値として、Comparator[Foo]のようなもの用意してあげる。Foo同士を受け取って比較するような定義ができます。Comparableのパターンと、Comparatorを使うパターンが同じような感じで書けます。

上がComparableを使ったときのパターン。それをFooに直接mixinしているケースです。下がComparatorを使っていて、implicitな値としてComparatorを用意している感じになります。おもしろいのは、ある型引数が特定の型クラスインスタンスを持っているときに限って、型クラスインスタンスを提供するような定義が可能です。

さっき言っていたような、クラスBarが型引数Aを持っているようなときに、implicit valueとしてComparator[Bar]を用意したいとなります。最初にimplicit valueを定義するときにvalとかobject以外にもdefで定義できることを最初に伝えたと思いますが、そのときの定義に、さらにimplicit parameterを自分自身で受け取ることもできます。

そのため、BarのComparatorを定義するときにimplicit parameterとしてAのComparatorを受け取るような書き方をすると、Aが比較可能なときだけ、Barが比較可能になるようなComparatorを定義できる。使う側としては、mixinと変わらない使い方ができます。

sortメソッドでは、AがComparableなときに、Traversable[A]とmixinで型の制約を表現できますが、同じようにimplicit parameterでsort[A]を表現するときTraversable[A]を受け取ってimplicit parameterとしてComparatorを受け取るようなかたちで定義しておくと、実際に使うときは同じようにsortにfoosを渡してあげればいいだけになります。

使う側としてはmixinでも型クラスでもそんなに変わりませんが、その「比較可能な」というのが、Aが再帰的に比較可能かどうかというのを見てチェックできる感じです。

Scalaの型制約と型クラス要点まとめ

まとめると、Scalaだと型の制約を表現するときに、型クラスを使えます。型クラスはそのimplicit parameterを使って実現でき、型クラスを使うと、より柔軟な制約を表現できます。

さっきみたいにジェネリックな型だと単純にComparableのようなものをmixinできませんが、Comparatorのような型クラスにしてあげることで、より再帰的に制約を表現できます。いわゆる「型クラス」とよく言われますが、ある種のデザインパターンの1つだと思ってもらえればいいかなという感じです。

よくあるのが、JavaだとSerializableというインタフェースがあって、オブジェクトの状態をバイト配列に書き出して、バイト配列からまたオブジェクトに戻すような仕組みがあります。Javaのリストだと中身がSerializableでないとシリアライズにリストが失敗してしまうような状況がありますが、そこを普通のインタフェースで表現しているので、中身がシリアライズかどうかをコンパイラがチェックできません。

実際に、実行時に直列化が失敗するようなことがよくありますが、Scalaの場合はこの型クラスを使って表現することで、あくまで中でもっている型が直列化可能であれば、そのリスト全体も直列化可能な指定ができるので、その辺はだいぶ安全に実現ができる仕組みになっています。という感じで、型クラスの説明です。

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という感じで以上です。ご清聴ありがとうございました。

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