2024.12.19
システムの穴を運用でカバーしようとしてミス多発… バグが大量発生、決算が合わない状態から業務効率化を実現するまで
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藤門千明氏(以下、藤門):先ほど松本さんが「Tech Visionというかたちで、大きなビジョンをトップダウンで作って浸透させる」と話していて。メルカリの逆向きのパターンかもしれませんが、ビジョンを浸透させる上で、今一番気にしていることは何かありますか?
松本勇気氏(以下、松本):透明性はすごく大事にしています。透明性というのは、ただ公開されていることではないと僕は思っていて。ちゃんとした情報流通の経路があり、それがきちんとした浸透圧で浸透していくことが大事だと思っていて。そういった仕組みの中で、僕が最初に話をしたTech Vision。それに紐づく3年の戦略を作ったと。
この3年の戦略の中で、全クリエイター向けに今半期ごとに振り返りの会をやっています。開発者総会というのがあって、その総会の中で事業とはまた別で振り返りをやっています。この振り返りの中で、正直にすべて話す。嘘をつかないことも透明性で大事なことで、ダメだったことや間違っていたことは、ちゃんとそこでごめんなさいをする。
うまくいったことについては、「これはこういう考え方に基づいて、こういう結果だからうまくいったと思っている」と伝える。これをこまめにやる。内側に対しても、外側から伝えるのもやっている。僕はけっこう外で話をすることが多いですが、その理由は、僕が外から伝えるのも、中から伝えるのも、両方大事にしていて。外から伝えると、著名な方からのコメントもついて、社員の目に触れるようになる。
そうすると、そのコメントの中に「これはいいね」とか、「もっとこうしたほうがいいんじゃないか」などの公正な意見が入って来るので。この2つをもって、自分の中でTech Visionはこういうことで、こういうバリューが大事で、その結果この戦略をやっているんだよね、と腹落ちさせる。
あと、初期の頃は日報レベルで本当に細かく僕のやっていたことを公開する。僕はこういうことをやっているよ、今日これはうまくいった、これはちょっとごめんなさいでした、みたいなことも全部書くと、情報の信頼度も上がるし、浸透もしていく。経路もあるし、場もちゃんと理解しているから、みんなの頭の中にだんだんと戦略パッケージ、文化の変わっていく先が浸透していく。
それをひたすら丁寧にやってきた2年だったのかな。
藤門:すごいですね。さっきすごいワードがあって。「適切な浸透圧で」と言ったじゃないですか。これはどういう意味ですか? 「浸透圧で浸透させていく」って。
松本:人って、情報の受け取り方は、自分にとっての信頼度にけっこう依存するんですよ。
藤門:なるほど。
松本:これが浸透圧のメタファーだと思っていて、適切に浸透圧をかけていかないと、隅々まで浸透しない。そのため、適切に信頼できる人からちゃんと伝わっていくかはいろいろな経路で設計しないといけない。それは組織図上のレポートラインもあれば、社内のコミュニティもあるわけです。勉強会をよくやる人たちとか、よく飲みに行く人たちとか。あとは、外のどういう人を尊敬しているかとか。
そういったものを全部活用しながら、うまく浸透するような設計を丁寧にこなす。そんな意味での浸透圧と言っています。
藤門:使いたいですね、「浸透圧」。
(一同笑)
名村卓氏(以下、名村):そうですね。
藤門:「ビジョンの浸透圧」。会社でさっそく使おうかなと思います。ビジョンの浸透でいうと、我々の親会社はソフトバンクで、グループのトップが孫正義じゃないですか。
事業計画をものすごく大事にしているので、事業計画は全従業員にかなり浸透していて。ただ事業計画だけでいくとけっこうギスギスしていくというか、楽しくないじゃないですか。そのため、事業計画と対になるかたちで、技術戦略を実は用意していて。技術には、データとテクノロジー、セキュリティ、デザインなどが入ってくるんですけど。それを年1回、エンジニアとデザイナーを全員集めて、オールハンズをやっています。
3,000人集めるとけっこうな感じになりますが、我々はそれを2015年から年1回ずつやっていて。Developers&Designers Meetingで、DDMと呼んでいます。よく間違って「DMM」と言ってしまいますが。
(一同笑)
藤門:かなりの頻度で社長の川邊も「DMMはやってるの?」と。
(一同笑)
藤門:「違います。DDMです」みたいな。社長がそう言うぐらいイベントを毎年やっていて。その中で技術戦略は3年先を見たときにこういう世界になっていて、こういう世界を作りたいよね。ヤフーはこうなっていたいよね。エンジニアやデザイナーとしてはこういう人物でありたいよね。その上で直近1年間で僕らがこうしようね、という技術戦略を立てて、全従業員に伝えています。
どうしてやっているかというと、基本、事業単位でモノを作っていくため、PLや事業の戦略にどんどん染まっていくので。技術的に大事にしたいとか、デザイン的に大事にしたいものはここだよ、と必ず浸透させた上で、各事業でがんばってねとメッセージを伝えています。
今それが成功しているかどうかはともかく、ヤフーとしては全員集まって話をして。話のあとにアンケートをもらいますが、辛辣に「お前の考えは浅はかだ」なんて書いてあって。
(一同笑)
藤門:全部受け止めて、例えば「こういうメッセージの仕方が悪かったのか」とか、「確かにこういう面でまだCTOをして思慮が浅かったのかもしれない」とか。このコメントをくれた人に実際にどう思ったかを聞いてみて、ビジョンや戦略の刷り直しを毎年やっています。
それが功を奏して、今はなんとか外に向けてこういうカンファレンスを開いたり、いろいろなところで話すことを始めましたけど。なかなかビジョンを浸透させるのには各社それぞれ違った課題があると思うので、ぜひ、またこういう意見交換をしたいです。
名村:そうですね。
藤門:本当は居酒屋でやりたい話なんですけど、なかなか飲みに行けないので、今日はこういう場でさせてもらってすごく楽しかったです。そろそろ締めていきたいなと思いますが、最後に「現状の課題と今後の展望」ということで、挨拶も兼ねて一人ずつ話してもらえればと思います。
名村:現状の課題でいうと、さっきの話にも出てきましたが、エンジニアが意思決定したり、より事業の根幹に関わって、「事業の一員としてこう思う」というようなカルチャーに変えていきたいものの、“PMが決めてエンジニアが作る”文化が根づいているので、そこをいかに変革していくかが今の課題です。
1つの手としては、コンテキストをちゃんと伝えて、エンジニアをもっと巻き込んで。やっているものの、なかなかちょっと今の課題で。でもその方向性には合意しているので、今後もその方向性でいきたいと思っています。
もう1つは、外国籍の方が非常に多いので、僕としては「なんだこいつは」みたいなエンジニアをたくさん抱えても大丈夫な組織にしておきたいのはあります。
いろいろな価値観や、とんでもない考え方をもっている人たちを生かせるような仕組みなどをちゃんと組織として用意して、野放しにしても事業は壊れないし、おもしろいものがどんどん出てくるような基盤を作っていきたい。そういうのを今後やっていけるといいなというのはあって。地道に下地から順に整えていきたいな、というところが今後の展望ですかね。
藤門:ありがとうございます。最後、松本さんお願いします。
松本:この2年ぐらいずっと、「トップダウン」というキーワードを途中で出しましたけど、中央で戦略を作って、みんなを振り回すようなやり方をしてしまっていたのは1つ課題かなと思っていて。ただその結果、DMM Tech Visionからバリューまで考え方のメンタルモデルが共有されるところまでは、今来てるなと思っています。
ここから挑戦しなきゃいけない課題は、一人ひとりが輝いていけるような会社にしていくこと。一人ひとりちゃんと輝くために、自分たちが考えて動いていく、それを支援していく。実際にそれが可能な土壌づくりというところ。そのために、僕がトップダウンで降ろしていくんじゃなく、もう少しいろいろなマネージャーと分散していく、意思決定を分散していくほうに、これから振っていかないと思っていて。この体制づくりが、今一番の課題だと思っています。
それをすることで、この50以上の事業を抱える会社が、一つひとつの事業でエンジニアも輝く、事業も伸びていくことにつながっていくのではと思っています。DMMという会社はすごくやっぱりおもしろい、こんな何でもやれる会社はなかなかないので、その中でもエンジニア一人ひとりがちゃんと輝けるようにしていくことが、次の挑戦なのかな。ちょうど3年のTech Visionで掲げていた戦略があと半年ほどなので、その次をこれから見ていくタイミングなのかなと思っています。
藤門:ありがとうございます。では時間がきたので最後、総括です。居酒屋で話そう感はあるんですけど、3社でいろいろなクリエイターカルチャーについてだけに特化して聞けることはあまりないので、貴重な話が聞けたとすごく思いました。
今日は参加していただきありがとうございました。以上でこちらのセッションを終了します。ご視聴ありがとうございました。
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