
2025.02.12
職員一人あたり52時間の残業削減に成功 kintone導入がもたらした富士吉田市の自治体DX“変革”ハウツー
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藤門千明氏(以下、藤門):先に進みますね。いろいろな取り組みをされている中で、狙いのところ。たぶん、これを聞いているエンジニアやデザイナーのみなさんも聞きたいだろうし、例えば僕らと同じような技術マネジメントをやっている人もたぶん聞きたい内容だと思うので、ぜひ。今まで話した内容でもいいし、それ以外でもいいけど、取り組みとその狙いでぜひ何かあれば話してもらえたらと思います。次は松本さんからいきますか。
松本勇気氏(以下、松本):さっきお話した中にも出てきていますが、僕らは今カルチャーを変えるタイミングで、その刺激を社内にどんどん作っていく必要があると思っていて。その1つが新卒採用だと思って、新卒採用だけは今とにかくエネルギーをかけてやっています。
入社してだいたいどれくらいかな? もともと外の業者さんにお願いしていたものを、いったん中で全部真っさらから作り直す話をして、3ヶ月半分のカリキュラムを作りました。3ヶ月半の中で何をやっているかというと、発想として、僕の考え方をとりあえずクローンしようみたいなことを言い出して。
(一同笑)
松本:とりあえずインフラ領域。インフラも各ベンダーや、うちはオンプレもけっこうあるので、オンプレのところ。その上でGoでAPIを書いてみて、その上のiOS、Android、シングルページアプリケーション。UXデザインなど、そういったいろいろな領域。フルスタックと呼べるようなレイヤーの開発カリキュラムも全部詰め込んで、最後に2週間ぐらいハッカソンを組み込む。
その中でプロダクトのスタート時から、実際どうやって作かまで。あとは、グロースのしかたや計画の作り方。そこまでを全部3ヶ月半で詰め込む、ちょっとヘビーな新卒研修を組み込んでいて。これをやると、カリキュラムが終わって数ヶ月後には、例えばマネージャーになっているとか。そういうレベルで活躍してくれる。
やっぱりそういう姿を見て、新卒教育カリキュラムがパフォーマンスを出せることにいろいろな人が気づき始めて。今は、それをさらに今いるメンバー全員に広げられないかを議論していて。教育でさっきのTech Vision的なところの達成を目指そうとしているところが、一番大きいところですかね。
藤門:その研修見たいですよね? 見たくないですか?
名村卓氏(以下、名村):受けたい。
藤門:受けたい!?
松本:けっこう楽しいですよ。
(一同笑)
藤門:3ヶ月半行けば受けさせてもらえるんですよね?
松本:そうですね。3ヶ月半クリアするとGoでサーバを書けて、それをDockerで。今回はAWSのECSを使っていますが、ECS上でインフラ構築をして、Terraformも記述して、全部管理して。モダンなアーキテクチャでiOSとAndroidアプリが書けて。Reactだったかな? それでSPAを書いて、というところまでできるようになるので。
全部をマスターしなくても「どうやったらこのプロダクトをかたちにできるか」の、なんとなくの頭の中の地図ができるので。僕がエンジニアを始めた頃だったら受けたいですね。
藤門:スタートアップのCEO兼CTOみたいになれそうです。
(一同笑)
藤門:完璧なものって、スタートアップでは作らないじゃないですか。スピードがすべてなので。そのため、「何を作ったらまずユーザーのフィードバックを受けれるか」のようなところまで一気に。たくさん作られると、我々は困りますが。
(一同笑)
松本:タネを作って、それをだんだん自分のやりたい方向に肉付けしていけるようにするという。
藤門:なるほど。新卒や中途社員の研修の面で、メルカリで何か工夫していることはありますか?
名村:研修は外部に出した時期もあって。今は内製でやっていますが、主にはメルカリのシステム理解。メルカリはわりと少ないプロダクトに開発が集中しているので、プロダクトの技術スタックや開発の方針や考え方を早期に理解してもらうのがすごく大事で。比較的、今のメルカリのシステムに特化した、オンボーディングプログラムになっています。
その中で、Goの作り方など。メルカリも、1つの技術に特化した職種をあまりエンカレッジしたくないというか、フォーカスすること自体は悪くないけれど、ソフトウェアエンジニアとして、クリエイターとして、より広い範囲の視野をもって取り組んでほしいという考え方があるので。インフラからバックエンド、モバイルからフロントエンドまで、極力幅広い範囲を最初に学習してもらえるコンテンツ構成にはなっています。
でもオンボーディングはすごく大事だと思います。
藤門:そうですね。ヤフーは創業してから長いのもあり、研修プログラムを内製したり外製したりを繰り返して、今はハイブリッドのようになっていて。例えばLinuxの知識やJavaのように、標準的にみんなが書きそうな言語の知識は、従業員が教えるよりは外部にお願いをして、「モノをどうやって作るか」「チームとしてモノを作るにはどうしていくべきだ」というのを、なるべく従業員が教えるように。ハイブリッドにしています。
でも新卒の研修はすごく大事で。学生も、時代を経てきて、自分たちが入社した頃よりも、遥かに賢くなっているじゃないですか。そのため、研修のプログラムをいくつか変えていきますが、毎年正解がない戦いをずっとしていて。「大変だなこれ、きついな」と思いながらやっています。
でも、やっぱりオンボーディングはけっこう大事だと思っていて、特に新卒で入ってくる子は、“最初で最後”は変ですが、自分が社会人になった時の同期って、一生に1回しかいないので。一生に1回しかいないそのつながりを、どれぐらい早く作ってあげて、将来会社を背負っていく人材になって何か困ったときに、新卒で一緒だった子たちで、何か一緒にモノを作ったり事業を考えたり。苦楽をともにしてくれればいいな、なんて思いながらやっていますが、とにかく正解がないですね。
名村:確かに。そうですよね。
藤門:そしてすぐに答えが出ないから。彼らが成長して、2、3年後ぐらいにものすごいパフォーマンスを出してくれることを祈りながらやるので。お母さん・お父さんのような感じじゃないですか(笑)。育つといいな、みたいな。あんな感じでヤフーもいつもやっていますね。
松本:僕らの新卒研修は、その前の新卒に作ってもらいます。
藤門:なるほど。
松本:一応カリキュラムは引き継ぎますが、その改修は基本的に新卒の子たち、19年の子たちが20年の子たちのカリキュラムを一緒に作っていくかたち。その時感じたことや、改善すべきことを一つひとつフィードバックしてもらって、そこから改善して、教える側に回ってもらう。教える側に回って、そこで復習して初めて研修完了と。
藤門:なるほど。それは確かにいいですね。
松本:そうすると、年齢の変化に対して、ある程度漸進的に追いついていけると思っていて。そういう発想でカリキュラムを作っています。「カリキュラムは3ヶ月半だけど、実はみんなの研修は1年3ヶ月まであるよ」のような感じにしています。
藤門:なるほど。ちょっと研修から話が外れますが、全エンジニア、デザイナーに、例えば全社の戦略や技術戦略を伝えるプロセスは各社ありますか?
名村:あまり大したことはやっていないのが正直なところ。言語化はすごく大事なことだと思うので、もろもろ整理して「こういうものがあります」「こういうかたちでやっています」「こういうことを大事にします」というのは、ドキュメントにしていますが。
新卒・中途関係なく、オンボーディングの最初のミーティングのようなセッションで、メルカリのエンジニアから今の状況と、これから目指すところの共有は一応して。なんとなく雰囲気を伝えることはやっていますが、それ以上のことは特にしていません。
藤門:最初が肝心なんですね。
名村:最初が肝心かとは思います。あとは各メンバーがどういう行動を取っているかに大きく依存するので。どれぐらい組織の向いている方向にこうした人を増やせるかは大事だと思いますが、その浸透もなかなか難しいです。新しい人が多いと、特に。
藤門:特にメルカリさんみたいに、事業を伸ばして人数がものすごく増えた場合に、ビジョンや会社のカルチャーの浸透をさせるのはやっぱりすごく大変だと思っているんですけど。そのビジョンを伝えていけるような現場のエンジニア、デザイナーや従業員が、自ら現場に一生懸命伝えている感じですか。
名村:そこもできているかというと、各々の価値観に強く紐づいているケースもまだ多くみられるのが正直なところで。とはいえ、何か同じことをみんな言っているという流れ、信じるものを作っておかないといけないので、それは一応CTOとして、目指している世界観、こんな感じの会社になるといいね、みたいな世界観を最初に作って。
それがどういう世界観かというと、さっき言ったように、エンジニアが自分で考えて行動して、結果を学んで改変できるサイクル。例えば、自分がアプリを使って、「ここがなんかダメだ」と思ったときに、ちょっと直してみよう、もしくは変えてみよう、と実際に変えられる。
何かしたいと思ったときに、ブロッカーがない状態と、あとは実際にそれを実行できる状態を作ってあげて、実際にやってみたら、結果よかった、ダメだったとわかるようなこと。例えば、数字に出て、そういうのでわかって、自分の考えが間違っていたのか、正しかったのかを学んでいける。
そういう環境ができると、1,000人、2,000人、1万人とエンジニアを増やしても、いろいろなところで、いろいろな人たちがさまざまなトライをして、結果としてプロダクトがどんどんよくなっていく。そういう世界観を作れると、クリエイターを増やす意味があるのと、あとは大事にしている、ダイバーシティというか、いろいろな価値観を持った人を入れることの意味が出てくるなと。
世界観を定義して、「その世界観を作るためにはこういうカルチャーが必要だ」「こういう人たちが必要だ」のような定義をするのは一応やってはいるので。そういう、話の起点を作っておくようにはしていますが、それでもやっぱり浸透はなかなか難しい。
それでも「なんでデータドリブンにするんだろう」など、そういうのも全部こういう話で解決するので、少しずつですが、なんとなく理解している人が出てきている気はします。
藤門:あるカルチャーを基に、同時多発的にいろいろな場所でさまざまなトライが行われていた結果が、メルカリという1つの大きな重要なプロダクトになっているとしたら、それはエンジニア、デザイナーとしてすごくハッピーですよね。そういうモノづくりができて。
名村:そういう世界観ができると、エンジニアは本当に楽しいだろうなと。僕もそういうところで働きたい気持ちがあります。
(一同笑)
名村:今はそれが完全にできているわけではないので、なかなか。やりたいと思っても、いろいろな道を通らないとできないですけど、それができるようになるといいなと思うんですよね。
(次回につづく)
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