2024.10.01
自社の社内情報を未来の“ゴミ”にしないための備え 「情報量が多すぎる」時代がもたらす課題とは?
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藤門千明氏(以下、藤門):さて、2020年の話になります。25周年直前の2020年は新型コロナウイルス感染症がちょうど拡大していた時期です。この時期のヤフーがどんな取り組みをしてきたかを伝えたいと思います。
1年前、新型コロナウイルスが日本で多く知られるようになって、徐々にいろいろな情報が入ってきて。そして、日本でもこの感染症が拡大しています。このコロナ禍で、日本も世界も刻々と変化していく。そんな状況の中で、インターネットが提供しなきゃいけない課題も、刻々と変化していきました。
そのため、私たちはこの1年間で90以上の機能やコンテンツを、矢継ぎ早にリリースしてきました。新型コロナウイルス感染症に関する、さまざまなコンテンツや機能の提供をとにかく続けてきたのが、2020年の1年間でした。
大きく分けて、だいたい6つぐらいのカテゴリに分かれるところを、まずコンテンツや機能の提供でがんばってきました。まず一番左側。おそらくみなさんどこかで一度は見たことがあるのではないかと思います。
いち早く正確なコロナの情報を知りたい場合はどうしたらよいか。そのときはヤフー見ようと思ってもらいたいということで、今世界で、日本で何が起きているのか、どれぐらい感染者がいるのか、どらぐらい深刻度が高まっているのかをリアルタイムで伝える特設サイトを開いて。
それからだんだん時が経って、コロナに関する不安。例えば、実際にコロナに感染してしまったらどうしよう。もしくは、感染しないようにするにはどうしよう。それを伝えるコンテンツを提供したり。あとは2020年4月に、緊急事態宣言が日本で初めて発令され、外出自粛の要請が政府からありましたが、そのときに外出ができなくても充実して過ごすにはどうしたらよいか、という面でステイホームを特集したり。
外出が自粛されている中でも、どうしても外出しなきゃいけないケースはたくさんあります。例えばお買い物をしなきゃいけないとき、どうしても病院に行かなければいけないとき。いっぱいありますよね。こういうときに、安心・安全に外出するために混雑しているところを避けたい。そのためにはどうしたらいいかということで、私たちは「混雑レーダー」というサービスを提供しています。
加えて、医療の最前線でがんばっている医療従事者に、感謝の気持ちを送りたい。このコロナによって大きな打撃を受けた産業はたくさんあります。困っている産業をインターネットのちからで応援したい。そのためにはどうしたらよいかを日々考えて、90以上のサービス開発にチャレンジしてきました。
加えてサービス提供ではありませんが、Yahoo! JAPANはユーザーのみなさんに使ってもらうことで、たくさんのデータをもらっています。プライバシーに配慮しながらこのデータを使って、新型コロナウイルス感染拡大防止に貢献できるんじゃないか、というチャレンジも今回しています。
例えば、新型コロナウイルス感染拡大を防ぐために政府と連携したり、自治体と災害協定を結んだり。自治体との連携も今回高めているし、実際にデータを使って新型コロナウイルス環境下で人々の動きがどうなったのか、我々は何をしなければいけないかを、データを使っていろいろな分析レポートを公開しました。新型コロナウイルス感染拡大防止に向けて、データのちからが成し遂げられるのではと期待して、データの活用を一生懸命やっています。
今日の一番のお題はここなんです。なぜYahoo! JAPANは、この1年間で90以上のサービスがリリースできたのか。これにはいくつかファクターがありますが、私のほうで3つにまとめました。まず1つ目が社員の意識の話。ふだんから社員の心にあるDNAやモチベーションの話。そして2つ目が、東日本大震災からの学びの話。そして最後が技術への投資、テクノロジーの投資の話。この3つに集約されるのではと考えています。今日は上から順に伝えられればと思っています。
まず1つ目、社員の意識の話です。今回この90以上のリリースができたのは、Yahoo! JAPANに従事する従業員のがんばりがあったからこそだと思っています。ただがんばっただけでは、この90以上のリリースはできなかったと思っています。社員にどういうモチベーションがあったからできたのかをお伝えられればと思っています。
歴代CEOが、常に私たち従業員に向けて繰り返し言い続けている“ユーザーファースト”という言葉です。初代CEOの井上さん(※故・井上雅博氏)や、前CEOで今は東京都の副都知事の宮坂さん(※宮坂学氏)、現CEOの川邊(※川邊健太郎氏)も。私たち従業員に対して「ユーザーファーストにサービスを作れているか」「それはユーザーファーストな行動なのか」と、常に問い続けてくれたのが、この“ユーザーファースト”という言葉です。
ではこのYahoo! JAPAN流の“ユーザーファースト”が何かというと、ユーザーを第一に考え、ユーザーが欲する情報をユーザーが欲するタイミングで確実に届けること。これがYahoo! JAPANの“ユーザーファースト”だと、私は理解しています。いろいろなかたちのユーザーファースト出方かつ仕方がありますが、非常にわかりやすい例として、今日は災害の事例を伝えられればと思っています。
2004年の新潟中越地震です。非常に大きな被害が出てしまった、痛ましい災害でした。この災害を期に、Yahoo! JAPANでは大きめの地震が起きたときに、すべてのYahoo! JAPANのページで「どこで地震が起きたのか」「震度はどれくらいで、次に何に注意をしなければいけないのか」を伝える「災害速報バナー」を提供しています。
今日視聴しているほとんどの方は、必ずどこかで見たことがあるんじゃないかと思うし、仮に今地震が起きた場合に、みなさん何をしますか? テレビをつける方もいると思いますが、とりあえずインターネットです。ブラウザアプリを開いて、Yahoo! JAPANに地震の情報出ていないかみんな調べませんか?
この流れを作ったのが、2004年のこの時です。この時に、地震が起きたときには今どういう行動を取るべきかをいち早く伝えるべきだと。「ユーザーファーストをやろう」と言った結果、できたものがこの災害速報バナーです。
続いて2011年の東日本大震災です。10年前の話ですが、記憶はあると思います。当時、原発に事故があり、特に関東で電力が不足する事態が起きました。関東の一部エリアで順番に停電させていく計画停電があったり、電力の不足がすごく深刻になって、区域を上げて電力を抑えよう、省エネをしていく動きがあったと思っています。
具体的に今どれくらい日本の電気、特に関東の電気がひっ迫しているかを伝ることで、みなさん一人ひとりが、「省エネしたほうがいいよね」と思ってもらえるように、この「電力メーター」をYahoo! JAPANのトップページに数ヶ月間表示していました。
加えて、大きな地震や災害があったときに大きな停電があって、公共機関だっや自治体のサイトがダウンしてしまうことも、今回この東日本大震災でわかりました。我々Yahoo! JAPANとしては、ユーザーのみなさんが何か調べたいときに、停電であったり災害で調べられないのは非常に悲しいことだと。
そのため、Yahoo! JAPANでは公共サイトのデータをYahoo! JAPAN上でキャッシュして、いつでも見られるようにしています。これが「ユーザーファーストといえば何か」がわかりやすく伝えられる例かと思っています。
2020年度4月、年初のスタートCEOの川邊からの挨拶で、全従業員に向けてこういうメッセージがありました。「私たち、Yahoo! JAPANの大切なユーザーに必要とされるように、サービス提供をがんばろう」と。「このコロナ感染という社会課題の解決に貢献してこそ、Yahoo! JAPANの存在意義がある」と彼は言っています。
加えて「Yahoo! JAPANを中核とするZホールディングスグループ全体として、これまで以上にインターネットのサービスが必要とされる時代が必ず来る1年になる」と。「だから、ユーザーファーストの精神でやりきろうよ」と、強いメッセージがありました。結果、この言葉に我々は背中を後押しされて、より一層のユーザーファーストな取り組みに全従業員が邁進でき、90以上のサービスのローンチにつながったのだと私は思っています。
この“ユーザーファースト”は、25年かけて、Yahoo! JAPANのある意味DNAになっている大事な言葉だと思っています。
90以上のサービスがリリースできた理由の2つ目。東日本大震災からの学びがあります。いろいろな学びがありましたが、今日は2つほどお伝えできればと思っています。まずはこういう状況下、緊急事態下における開発体制の話です。
感染者が増え始め、4月に緊急事態宣言が発令された時に、とにかくユーザーが欲する情報が増えていきました。「自分が住んでいるところは今どういう状況なのか」「感染している人はどれぐらいいるのか」「病院はひっ迫していないのか」「実際に感染したらどこにどう連絡をしたらよいのか」「給付金はどうしたら受け取れるのか」。いろいろな情報を提供しなければいけない。しかも、これらをスピーディーに取り組まないと意味がない。
じゃあこれをどうやっていくか。Yahoo! JAPANの、特にメディアを中心とするサービスのチームが一生懸命がんばってくれましたが、通常のメンバーだけでは当然足りませんでした。じゃあどうしたか。これを、東日本大震災の時の対応に習う。当時何をしていたのかというと、電力メーターや防災速報のアプリ、計画停電のマップ、こういうのを全部提供する必要性がありました。
この時も同じようにメディアチームを中心としただけでは到底できないということで、当時のCEOの井上さんが震災タスクフォースチームを作り、サービスのエンジニア、当時は数十名の集団でしたが、このエンジニアがタスクフォースと一緒になって、とにかく素早く情報提供するサービス群を立ち上げようと当時はやっていました。
今回これに習って緊急事態宣言が出た直後、2020年4月にマネジメントで意思決定しましたが、コロナウイルスタスクフォースチームを組成して、同じように体制を整えました。
メンバーは、全社から今回の対応に必要であろうスキルをもつプロフェッショナル人材を数十名任命して、コロナウイルスタスクフォースチームを組成。たくさんの案件に対して、特にメディアチームと一緒になって、90以上のサービスローンチにつなげていったのが今回の振り返りです。
そしてもう1つの学びが、従業員の働き方の話です。この東日本大震災の時に痛烈に思ったことがあります。電気が足りなくなり、計画停電があって交通機関が麻痺して、従業員がサービスを開発する上で出社できないことが1週間、2週間続きました。Yahoo! JAPANはたくさんのユーザーのために、常日頃からサービスを落とさずコンテンツを提供することが我々の使命なので、事業を継続することがもっとも重要。
ただ、そのときに従業員がどうやって業務を継続できるか。通勤できないような状況になっても継続できなければいけない。当時、働き方の多様化が必要だと我々も思っていて、“どこでもオフィス”という社内制度をこのタイミングで作って、リモートワークができるようにしています。
このリモートワークは“どこでもオフィス”という名前がミソで、“在宅ワーク”とは言っていません。家からでもいいし、カフェからでもいいし、なんなら海や山からでもいい。とにかく働ける場所であったらどこでもいい。その代わり、ユーザーのために一生懸命働ける環境の中で働こうよと。ユーザーのために価値を提供しようというのが、この“どこでもオフィス”制度です。
実際に2014年4月に本格的に制度化して、だいたい月1回から2回程度、この制度を始めていました。その間ずっとのっぺりとやってきたわけではなく、リモートワークを推進するために、多くの従業員が丸1日リモートワークをしてみようと。“どこでもオフィスDay”をやったり、1日だけではなくて、1週間まるまる会社に来ずに仕事をしてみる“どこでもオフィスWeek”をやってみたりしています。
なぜしていたかというと、しかるべき時のためにヤフーの社内ツールや社内の働く環境が、たくさんの従業員がリモートワークをしても動いて、従業員が業務ができるようにしなければいけないと。それを確かめるために、このリモートワークの推進のプログラムを走らせていました。
そして、制度を作ってからちょうど6年ぐらい。新型コロナウイルス感染拡大環境下において、全従業員に向けて在宅勤務を強く推奨する指示が一発で出せたことも、このリモートワーク推進ができていたからだと思っています。これも、東日本大震災から学んだ1つの働き方だと思っています。
結果として、この90以上のサービスのほとんどは、実は従業員が会社から仕事をしたわけではなく、ほとんどの従業員が在宅、家から勤務をして、このサービス開発を成し遂げてもらっています。
ただ、東日本大震災で苦労した点もありました。刻々と情報提供するためにいろいろな機能開発、機能提供をしていきますが、どうしてもその提供するための物理サーバーが足りない。そのために、この物理サーバーの緊急確保に奔走していたこともすごく思い出します。
Yahoo! JAPANのサービス提供環境は、いつ何時でもサーバーを立ち上げることができ、今すぐにサービスを開発しなければいけなくてもぐにサーバーを確保できる。そういう仮想環境を作らなきゃいけないと、このタイミングで思い、ここから技術の投資の話につながっていきます。
次回につづく
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