2024.12.19
システムの穴を運用でカバーしようとしてミス多発… バグが大量発生、決算が合わない状態から業務効率化を実現するまで
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河野奈保氏(以下、河野):(前記事の「クリエイティブは新しい視点を提示して、これからも少しでも社会を良い方向にもっていけることをやれたらなとは思っている」という話を受けて)その辺もぜひお聞きしたいなと思います。18年の歴史の中で、楽天がどんどん変わっていきます。弊社はいろんな戦略が新しく生まれて、事業も増えていく中で、可士和さんはそれに合わせて一緒にクリエイティブを作っていただく。
その中で、どういう戦略で動いていくのかは、やっぱりキャッチアップしたり、お二人がシンクロしないとうまくまとまっていかないかなと思うんです。それを18年続けられる秘訣として、普段どんな会話をされているのか、少しお聞きできますか?
佐藤可士和氏(以下、佐藤):やっぱり1on1というか、雑談が大事です。そこでミッキー(三木谷氏)の具体的な案件というよりも「どこの先を見ているか」を常にキャッチできていれば、僕はズレないなと思っているんですよ。
河野:可士和さんはいつも「この事業はどういう目的なのか」とか「事業戦略をしっかりと聞きたい」とおっしゃられるので。やっぱり、クリエイティブの根本になるところをキャッチアップされることに尽きるんだろうなとは思いますね。
佐藤:そうですね。あとはだいたい、ミッキーが見ている先を共有できていれば、そんなに判断もズレないかなと思っていて。いろんなクリエイティブを見ていても「ミッキーだったらどう思うかな」と判断して。そんなに……ほとんどズレてないですよね?
三木谷浩史氏(以下、三木谷):ズレてないというのと、キャッチボールをしているから、なんとなくおぼろげに思っている自分の未来像が、より可視化できて具体化されていく。僕にとっては逆に、自分のアイデアなり発想をキャッチボールさせてもらうことでまとまっていくから、すごくいい相手なんですよ。
佐藤:でも本当、スピードが速いからさ。
(一同笑)
毎週会うたびに「今度これやろうと思うんだけど」って(笑)。それをこの規模でやってるから、河野さんも大変だろうなと思うんですけど(笑)。
河野:はい(笑)。可士和さんからもよく「今週は何があった? 何か動きあった? どんな感じだった?」というのは(聞かれます)。
佐藤:そう。「今週のミッキーどう?」って。
三木谷:今週のミッキー(笑)。
河野:「今週はこんな感じでした」とお伝えし、逆にお伝えすることでそのあとのクリエイティブに全部活かしていただけるので。いつもすべてをお伝えしたいなと思って、お仕事をさせていただいております。
佐藤:楽天モバイルが始まってから、(そのやりとりが)1日単位ぐらいになってますけど(笑)。
河野:そうですね(笑)。
三木谷:モバイルね(笑)。みなさん、「Rakuten UN-LIMIT」よろしくお願いします(笑)。
河野:お話が尽きないところなんですが、いくつか質問をいただいておりまして。お時間が許す限り、読み上げたいと思います。まず1つ目、今日のテーマでもありましたが「テクノロジーとデザイン」。「この2つの融合がビジネスにどんな価値を生み出すか」というところで、少し可士和さんにお話をいただければ。
佐藤:さっきちょっとお話ししちゃいましたが、やっぱりテクノロジーは本当に、未来を豊かにしていくものだと思うんです。そこにデザインが入ることによって、よりみなさんに伝えやすいかたちにしたり、わかりやすいかたちにしたり。テクノロジーを可視化していくことが、デザインの役割なのかなと僕は思っています。
三木谷:そうですね。サイバー空間においては、本当になんでもできてしまうので。そこにおいて、アイデンティティやユーザーエクスペリエンスも含めた統一性を出すことによって「そこのサービスを使ってるんだ」「そのサービスを使おう」とか、あるいは「モノを買おう」というような。
情報もモノも溢れている時代になってくるので、ますますデザインの統一性、それから前から言っていますけれど「洗練されているけど優しい」ということが、すごく大切になってくるのかなと思います。
河野:干物からビットコインまで、優しさ・愛情あふれるクリエイティブを作ることで、統一性と多様性を両方ともやっていく。
三木谷:楽天ファッションも作っていただいて。
河野:そうですね。今回のこの「可士和展」で、そういった楽天のテクノロジーのイメージも、ぜひみなさんに知っていただければなと思います。その一方で、温かみ、楽天らしさも引き続き追求したいなと思います。
河野:もう1つ、最後の質問をさせていただければと思います。「今後お二人が一緒に取り組みたいこと」。たぶんこれからも無限にアイデアは出てくると思うんですが、もし今日のお話を通して「今後こんなことやりたいな」というものが見つかっているようであれば、ぜひ共有いただければなと思います。じゃあ可士和さん、お願いします。
佐藤:今後も、ものすごくいろいろやっていますよね(笑)。
三木谷:今後も何も(笑)。本当、申し訳ございません。
佐藤:いやいや(笑)。だから僕は18年間驚きの連続だったんだけど、ミッキーが「次これやろうと思うんだけどどう?」という話を毎回楽しみにしていて(笑)。
三木谷:(笑)。飽きないね。
佐藤:飽きない。もうやることがいっぱいなので。取り組みたいものというか「三木谷浩史がまた次にどこに行くのか?」を、僕はすごく楽しみにしてるんです。
三木谷:(笑)。でもやっぱり本当に、佐藤可士和あっての楽天だと。
佐藤:いやいや(笑)。
三木谷:いや、真面目な話でそう思っていて。単なるクリエイターとかデザイナーじゃないんですよね。やっぱりデザインするからには表現することもいるけど、ある程度、切り捨てることも必要なワケじゃないですか。普通の人って、なかなかこの切り捨て作業ができないんだと僕は思ってるんですよね。
切り捨てるためには、その物事の本質をズバッと見抜ける力があって。「結局、切り捨てても大丈夫だったよね」というところもあるし、あるいは増えたり幅を出したり。楽天カードマンしかり、FCバルセロナやお買いものパンダとか、そういうことを具現化してくれているので。本当に、これからもよろしくお願いします(笑)。
佐藤:(笑)。こちらこそ、よろしくお願いします。
河野:ありがとうございます。というところで、今日はお話をお聞きさせていただきました。ふだんのお二人の会話が少し垣間見れて、大変おもしろかったなと正直に思っています。
ここからはせっかくなのでちょっと感想と、付け加えて1つお話をしていただきたいんですが。「可士和さんにとって三木谷浩史とは?」「三木谷浩史にとって佐藤可士和とは?」。ぜひそこのお話をお聞きできればなと思います。じゃあ可士和さん、お願いします。
佐藤:そうですね……ミッキーはやっぱり、同い年なので。タメじゃないですか(笑)。
三木谷:タメ、タメ(笑)。
佐藤:もちろんクライアントなんですけど、友達だし。「タメの友達がこんな世界でがんばってるんだ。がんばれるんだ」ということがすごくうれしいし、勇気をもらえる。僕もそこにくっついて、一緒に仕事を(笑)。
三木谷:(笑)。
佐藤:お手伝いして、新しい世界を見たいなと思ってるんですけど、やっぱりなかなかいないですよね、こんな……。
河野:ほかにはこんなタメはいませんか(笑)。
佐藤:いや、いないですよ。というか普通できないよ。
三木谷:(笑)。そんなことはないけど。
河野:じゃあぜひ、三木谷さんから見た佐藤可士和とは?
三木谷:いや本当ね、僕は高校時代は美術は10段階で2だったし、なんとなく(デザインの)イメージはあるんだけど。結局、ユーザーエクスペリエンスというのは、デザインだけじゃないんですよね。
車でいえばトータルデザインだし、家では居住空間だし。それと同じようなものが、実はインターネットの世界ではすごく重要で。(会社を)作った頃の楽天では、最初はそれがバラバラだったワケですよ。バラバラだけどいろんなものがいるから「楽市楽座みたいでおもしろいね」というところから、サイバーが中心になってきた世界ではそれではダメだと。
うちの場合は、銀行もあれば証券会社もあれば、旅行会社もあればショッピングモールもあれば、保険会社もある。ほとんどすべてあるじゃないですか。これが有機的に結びついて初めて世界と勝負ができるし、地方の出店者さんやホテルも助けられるし、日本のエンドユーザーにも安心して使ってもらえるようにできると思っています。
その中の具体的なデザインという“屋台骨”を作ってもらっているので。これから世界で勝負していく上には、これからも二人三脚で……なんか結婚のプロポーズみたいになってますけども(笑)。
佐藤:(笑)。
河野:公開プロポーズですね(笑)。
三木谷:よろしくお願いします、と(笑)。
河野:というところで、本日は本当にありがとうございました。最後に、ぜひこの「佐藤可士和展」をご紹介いただければと思います。
佐藤:ちょうどコロナの緊急事態宣言中というタイミングではありますが、開幕させていただいただけでも本当に感謝しています。オファーをいただいたのが3年前で、そこからずっと準備していたんですよ。それこそ楽天も、ミッキーに相談したのがたぶん2年前ぐらいで。
三木谷:2年ぐらいだね。
佐藤:「UNLIMITED SPACE」も1年ぐらいかけて作っているので、本当に開幕させていただいて、関わっていただいたあらゆるみなさんに感謝しています。ちょうどこれから緊急事態宣言も明けて、5月10日までやっています。まさに楽天の「UNLIMITED SPACE」は“体験するもの”なので、ぜひみなさん来てください。
河野:先ほどから「テクノロジー」「データ」、そして「日本」「世界」といろんなキーワードが飛び出したんですが、それを一堂に会して体験できるのが、この「佐藤可士和展」かなと思います。コロナ禍ではあるものの、対策もしっかりされていらっしゃいますし。
私も久しぶりにこういった展覧会に来させていただいて、すごく脳に刺激やいい栄養をもらえる場だったなと思っています。ぜひみなさんにも足を運んでいただければなと思っております。今日は「佐藤可士和展」を記念した対談ということで、お二人にお越しいただきました。本当にありがとうございました。
三木谷:ありがとうございました。
佐藤:ありがとうございました。
国立新美術館では、日本を代表するクリエイティブディレクター、佐藤可士和氏の過去最大規模となる個展が開催されています。株式会社博報堂でアートディレクターとして広告プロジェクトを手がけてきた佐藤氏は、独立後も幅広い業種・業界のブランド戦略で注目を集めてきました。今回の展示構成は佐藤氏が自らキュレーションを行い、約30年に及ぶ活動を紹介する内容となっています。
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