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メルペイCTO & COOによる Fintech Talk vol.2|現在のトレンドと未来予測(全3記事)

独自の与信で社会を“なめらか”に メルペイがFintechで目指す資本主義の平等性

Fintech事業との関わりが長く知見豊富な出演者による、Fintechをテーマにした対談イベント「Fintech Talk vol.2」。ここで、メルペイCTOの曾川氏とメルペイCOOの山本氏が、2020年に起きたFintech業界の変化と、2021年以降の動きについてディスカッションを行いました。まずは既存の金融機関との付き合い方と、FinTechを通して生まれる格差について話し合います。

アップデートしたCOOとCTO

司会者:始まりました! Fintech Talk第2回です。こんにちは。メルペイのEngineering OfficeチームのKikoです。全体の運営をやっています。今日もよろしくお願いします。最初に出演者の紹介をしていきましょう。今回初めて見る方もいると思いますので。まず1人目は、本日対話パートでモデレータを務める、メルペイ取締役COOの山本さんです。

(一同拍手)

山本真人氏(以下、山本):こんにちは。メルペイのCOOの山本です。よろしくお願いします。今回2回目で、前回も時間は守れないだろうなと思っていたんですが、システムトラブルで落ちることがあったので、せめて今日はないように務めたいと思っています。よろしくお願いします。

司会者:よろしくお願いします。そして本日、対話パートでパネラーを務めるCTOの曾川さんです。

曾川景介氏(以下、曾川):曾川です。よろしくお願いします。今、マークさん(山本のこと)と一緒にやっている、メルペイのCTOです。前回はいろいろ徒然なるまま話をしていたら、時間が過ぎてしまって、最後にパソコンの電池が切れて終わったんですけど。

その続きや、質問もけっこうもらっていたのでそれに答えたり。あとはすごい遠くから聞きに来てくれている人もいるので、ぜひ何か言ってもらってもうれしいです。東京とすごく時差があるから、深夜に聞いてくれているんじゃないかなと思うので。そういう人もいるのですごいうれしいです。

あとはマークさんが最近COOになって、僕は最近メルカリのCISOというセキュリティのお仕事もやっているので、ちょっと2人ともアップグレードしていますが。その辺はおもしろくない話なので、また今度にしましょう。

(一同笑)

曾川:戻します。

司会者:ありがとうございます。そうですね。マークさんは前回CBOだったんですが、なんと今はCOOになっていて、イベントページの肩書きもちょっと変わっていたりします。

前回は、FinTechの歴史について主に触れました。前回のイベントは限定公開で、申し込みした人のみ見れるものだったので、何を話したのか気になる方は、メルカリでイベントレポートを公開しているので、そちらをご覧ください。出してもいい情報だけを、ちょっと修正して出しています。

今日お話するのは、今FinTech関連で話題に上がっているサービスについてです。FinTech、キャッシュレス決済などに詳しい2人なので、「CTOとCOOの2人が今気になること」をピックアップして、やいのやいの話をしてもらうと。

オンラインイベントなので、真剣に聞いてコメントや質問をバンバン投げてもらってもいいですし、別のことをしながらBGM的に聞いても大丈夫です。前回のイベントでもらった質問も、最初に回答しますね。本日のイベントも前回同様、イベント中に質問を受け付けます。

今日のイベントの流れは、今オープニング、出演者紹介がちょうど終わったところで、そのあと前回の質問で答えていないものが2つあるので、それを回答します。それが終わったら、今日のメインテーマ。最後、エンディングをちょっとやって終わりです。

というわけで、まずは前回いただいた質問に移っていきたいと思いますが、モデレータのマークさん、準備はよろしいでしょうか。

山本:はい、大丈夫です。

司会者:ではいきます。よろしくお願いします。

エコシステムと金融機関とのかかわり

山本:お願いします。前回は、今言ってくれたように、比較的FinTechの歴史のような話をしたんですよね。

ペイパルができた辺りぐらいから、おサイフケータイの話をしながら比較的西海岸のサービスの話をしつつ、中国の話をして、現代というか最近のところまで追いついたぐらいで時間がなくなった感じだったので。今日は、今起きていることと、未来的な話を可能な限りできればと思っていますので、よろしくお願いします。

今画面に映っていますが、前回いただいた質問で答えていないものが2つあったので、こちらを話せればと思います。1個目です。「自社のこともそうなのですが、StripeやShopifyの話にもあるように、エコシステムについてどう考えているのか。そして、既存の大きな金融機関とどう付き合っていくかなど、話してもらえればと思います」。

前回のStripe Treasuryですね。Banking as a Service(Banking as a service for platform)のようなものと、それを使ってるShopifyの話を曾川さんにしてもらったところもあるので、それに付随しての質問ですね。これはどうでしょう?

曾川:そうですね。「僕らがどう考えているか」の質問なので、とりあえず「日本はどうなるんだろう」という話をすると、既存の金融機関と昔ながらの仕組みをつかって接続しているのでそれをアップデートしたいというのはありますよね。

たぶん今は、例えばKYC(Know Your Customer)をして、本人確認をして、お客さまと持っている口座が一致をするかなどを見ながら対応しているんだけど、本当はちゃんと一つひとつの金融機関自体が、認証や認可を提供して、それらをアプリケーションが認可するしくみが必要というか。

例えば、TwitterやFacebookのアカウントを使うためのOAauthのAPIのようなものをサードパーティとして利用したり、各金融機関がそういったSNSが提供しているようなAPIのような機能を提供して、それが使えたら一番いいんですけど。たぶん急激にそこまでいかないし、前回もBank APIの話をしてくれた人がいたけど、それもたぶんここ数年ずっと同じ話が出ている。

実態として、ちゃんといいものができて、その更新系が動いているとか、なかなか聞かないので。Stripe Treasuryなどを出しているところと比べるとかなり遅れているので、日本でも進むとは思うけど、たぶん1サイクル以上遅れるのではと思ってます。マークさんはこの辺、BDとしてもいろいろなパートナーと関わっているので、ちょっとコメントしてもらいましょう。

プラットフォームたちのためのプラットフォームになる

山本:そうですね。この辺りはある意味仕組みであったり、概念としてできるようになるっていうのと、本当にちゃんとできるようになるまでとでは、やっぱり差がすごくある分野だと思っていて。エグゼキューションのしやすさが犠牲にならないように作らないと、やっぱりなかなかうまくいかないな、というのがけっこうあります。

曾川:ありますね。

山本:前回の歴史のようなところでも、今はEmbedded Financeがトレンドのワードになって、いっぱい出ていますが、例えば大きい会社はもともと自分たちで力技でやってきたところがあると思っていて。良い例だったら、ペイパルのようなものを買収して、一体でやっていくようにして、自分でやっていったり。アントフィナンシャルも、そういうのがあると思うんです。

だけど、そういう力技で大きいところだけがやれる状態から、そのパーツとして提供しているものを、シームレスにちゃんとつないでいけるような世の中になれるかが、けっこうEmbedded FinanceやBanking as a Serviceの肝になるかなとは思っています。

曾川:そうですね。これができるようになったら、もっといろいろなスタートアップが、誰かが言っていたプラットフォームonプラットフォームというか、プラットフォームたちのためのプラットフォームによって。もっとそのエコシステムが発展して、より新しいサービスが生まれやすくなったり、エコシステムにプラットフォームの金融機能がくっついて、よく言う“〇〇 as a Service”じゃないけど、いろいろなものがFinTechになれる。

TikTokが決済のサービスを始めた、と今日のニュースでやっていたけど、そういったいろいろなサービスにくっついていける。毎日使うアプリにパーツが追加されることで新しい機能が拡張されるようなことは、もっと増えてもいいと思います。

誰でもECを始められる「Shopify」も、いろいろなサービスでも使われていて、例えば今はどうかわからないけど、GitHubでGitHubのグッズとかを売るみたいなことができていて、昔はShopifyで動いたりしていたので、こういう風に全く別のサービスにくっつけて使うようなことも、やりやすくなると思います。

山本:僕とか、経歴上で言うと外資系の会社にいたことが多かった部分もあるんですけど。日本の会社の大企業やスタートアップ、全部含めて、すごくいいものを作っていると思っているので。そこがもっと融合していけるはず、と思うところは実はちょっとあって。

例えば、銀行に関しても、ちょっと語弊があるかもしれないですけど、「日本の銀行は動きが遅くてちゃんとできない」といったようなパーセプションがあるかもしれないと思っていて。そういうところも中の人と話すと、ぜんぜん考えてないことはなかったりするので。そこがちゃんと進んでいくといいなというのは、実はちょっと思いますね。

みんなの銀行や福岡銀行が作られているものとかを、noteやYouTubeで、いろいろ紹介し始めたりしてて(笑)。

曾川:僕らと似てるじゃん(笑)。

山本:具体的な中身がどうとかはまだ出てきていないものの、やっぱりBanking as a Serviceとか、そういうものをベースとした考え方でやりたいんですとか、ああいう動きがあること自体は、何か期待を持ちたいなと思います。

曾川:そうですね。気付いたら私たちも銀行のようなものが、そういったものでできていたりしたらおもしろいんじゃないかと思います。

山本:そうですね。

『富める者が更に富んでいく』構造

曾川:じゃあ、次の話しもしましょうかね。「ここ最近のQR決済を含めたFinTechウェーブは、事業者側の思いとは裏腹に、実体として『富める者が更に富んでいく』構造になっているのでは? (知識がある人に集中、セグメントが広がらない?)と感じる部分もあると思いますが、そういう点についてお二人は」。

それはすごい重要なテーマで、そもそもマークさんにはあとで話してもらうんだけど。その格差的なものとか、資本主義がそもそももっている特性のようなものが、FinTechはお金のサービスなので、同じように効いていて。その情報格差などが、そのまま貧富の差につながるようなころはあると思います。それを事業者として望んでいるのかといったら、もちろん望んではないけど、そういう効用があるのは、確かにそうだろうとは思います。

前回これは年末にやったんですね。年末の振り返りコンテンツとしてみんなと話をしたんだけど、なんで2回目をやっているかは前回終わらなかったからだけど。

その間に1個見た番組があって、お正月にNHKで『欲望の資本主義』を毎年やっていて。資本主義自体が抱えている問題や、今のグローバルエコノミクスが抱えている問題を掘り下げて、有名な、ノーベル経済学賞を取っている人とか著名な学者を取材して、コメントを集めていくようなことをやっていて。

わりとおもしろくて毎年見ているんだけど、そこでも今回はこの問題。その格差のことをすごく言っていて。コロナを経て、実は何が起こったかというと、さらに格差が広がっているんです。なんでだろうと考えたときに、実体経済と労働で結びついている人たちは、自分自身の有限なリソースが労働だけなので、基本的にはそこだけに囚われてしまって。例えば今回だと、自分が飲食店をやっていたら、コロナがあるとやれなくなってしまうので難しい。

ただ、キャピタルというか、どちらかというと資本からお金を得ている人たちって、コロナで影響がある部分というのはポートフォリオの中の一部でしかないので、小売全体で見ればオンラインのコマースやShopifyが伸びたりもして、わりと全体で見れば大丈夫だったりもして。そういう意味では、相変わらずこの構図はあるし、例えばFinTechだけじゃなくて、そもそもグローバル資本主義というか、グローバル経済の課題なのかなと思います。

なので、僕らがそれをそのまま焼き直していくのかというと、そうじゃなくて。できればいろいろな人たちが、よりメルペイの中でミッションというか、信用を創造する理由や、なめらかな社会を作りたいと思っている理由は、今お金がなかったり、やりたいことやほしいものもある人たちが、より新しいことを始めたり、自分にとっていらないものを価値に変えていくようなことを、メルカリを通じてやってもらいたいという思いがあります。

必ずしもそれを焼き直そうというよりは、基本的にはこの課題と向き合いたいです。別に自分たちだけで解決することは難しいと思うんですが、ちゃんと向き合いたい思いがあると思っています。マークさんはどうですか?

一極集中だけど加速装置ではない

山本:そうですね。僕、この部分は両側面あるかなと思っていて。富める人が富んでいくこと自体は別に悪いことじゃないと思っていて、新しいものがいろいろできるようになるときに、もっている方々がさらにそれを活用して、より豊かになるのは別によいかなと思っています。

それ以外にも、それまでできなかった人たちができるようになる分野、裾野自体が広がることも必ずあると思っていて、その部分も含めて見れば、一極集中にどんどんなっていくものの、加速装置になっているわけではないのかなと僕は思っています。

例えば、今僕らがメルペイとしてやっているスマート払いは、金融機関でもやっている、いわゆる与信のようなもので。これはどちらかというと、メルカリの中での行動情報のようななものに立脚をして与信などをしていて、場合によってはこれまで与信を受けられなかった人にも受けられるようにしたり、そういうのをやっていますと。

最近Affirmもそうだし、バイナウ・ペイレイターのサービスなどがけっこう出ていて。あれも僕は不思議で。去年か一昨年ぐらいにAffirmやKlarnaなどがバッと伸びていた時に、クレジットカードは使える社会だし、そんなにニーズ高いのかなと思っていたら、与信の面で、今までのクレカとは違うことをやっている。

与信が足りなかったり、使えなかったりする人たちが、ちゃんと使えるみたいな。そういうところでニーズがあって、爆発的に伸びてるのを聞いて、持っていなかった人たちに、テクノロジーやAIを通じてサービスが受けられるようにできるところも、FinTechの側面としてはすごく大きいかなと思っている。富める人だけじゃなくて、いろいろな人が伸びるところに、ちゃんとサービスとしてカバーしていくことが大事かなと思います。

曾川:この問いは本当に大事だし、僕らもよく会社の中でこういった話が出たり、逆にさっき言った「お金をもつサービス自体をもっている危険性」ということも、よく議論に出るんですよね。常に答えがある問いではないけども、きちんと向き合っていきたいし、マークさんが言ってたようないいこともある。もちろん豊かになるのは悪ではないので、いろいろな人がお金を得てそれを使えるようになれば。

例えば、ビットコインが爆伸びしているときに、いろいろなところに使えるようにしたいとか。そういうのもぜんぜんありだと思うし、もちろんちゃんとKYCとかAMLとかした上で、僕たちがEnablerというか、いろいろなものを使える場所を増やしてあげたり、決済できる場所を増やようなことが、今後もできるんじゃないかなと思っています。

じゃあ質問はこれぐらいにして、本題に入っていきますかね。

山本:そうですね。

(次回につづく)

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