2024.12.19
システムの穴を運用でカバーしようとしてミス多発… バグが大量発生、決算が合わない状態から業務効率化を実現するまで
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村田賢一氏(以下、村田):トヨタ自動車の村田と申します。みなさんよろしくお願いいたします。今日は『トヨタの車はソフトウェアエンジニアが作る』……なんか偉そうなことを言っていて、たぶん明日会社に出るとハードウェア作っている人たちから怒られそうですね。
ソフトウェアエンジニアがトヨタというハード、つまり車を作っている会社でどれだけ活躍しているのか、どういうことを考えて何をやっているのかを紹介したいと思います。
サブタイトルに『Why Simple is So Complex』とありますが、我々がやりたいことはすごくシンプルです。お客様が見えているところでも、きっとシンプルだと思います。ただそれを作るためには、ものすごく努力が必要で、難しいことをいっぱいやっています。
トヨタはそういうのをしゃべるのが上手じゃなかったと思います。私は外からトヨタに入ってきた目線で、どういうことをやっているのかを少し紹介して、トヨタのソフトウェアっぽいソフトな部分をお見せできればなと思っています。よろしくお願いいたします。
自己紹介から始めます。私は村田賢一と申します。トヨタ自動車のコネクティッドカンパニーの中のBR-OTA推進室で室長をやっています。BRは、トヨタの中では「Business Reform」という意味で、大きな会社や事業を変革していかなくてはいけないときに必要な人材をバッと集めて作るテンポラルな組織です。
OTA、これは「Over The Air」という意味で、今日の最後のほうで説明しますが、無線を使って車のソフトウェアをどんどん更新していこうみたいな感じですね。そういったことをどうやってやっていくのか、技術的なところと非技術的なところも併せて推進をしています。
慶應義塾大学の大学院で計算機科学専攻です。今はもうなくなっちゃった学部ですけどね。計算機科学にいました。修士まではちゃんと届いたんですけど、博士課程に関しては単位取得満了で退学しています。
というのは、学生の間にカナダのビクトリア大学に訪問研究員として行っていて、帰ってきてすぐにソニーのコンピュータサイエンス研究所に入ってしまって、ちょっと忙しくなってしまったことが原因です。
ものづくりが大好きで……。いや、ものづくりというか、ソフトウェアづくりが大好きなので、そっちに没頭してしまいました。それで、ソニーに移っていろいろやっていました。
そのときにトヨタに声をかけてもらいました。トヨタも情報化、ソフトウェア化してくるよっていう話になりまして、日本の産業を支えている自動車業界、その中でもトヨタ自動車が、この波に乗り遅れていくわけにはいかないだろうと思ったわけです。そこに貢献できるのはいいかなと飛び込みました。
(当時)ITに近い家電業界、家電業界の中でも電機とか機械というよりは、電子とかソフトウェアのところをやっていましたが、そこから自動車という一見メカメカしているところにソフトウェアエンジニアとして入りました。ここで車の情報化、電子化になにか貢献できないかなと飛び込んできました。
じゃあ今なんで自動車業界でそういったソフトウェアエンジニアが注目されているのかというと、自動車業界では「CASE」、今これが非常に大きくクローズアップされている課題なんです。フューチャートレンドとしてこういう言葉が言われています。
これはConnected Autonomous Shared Electricの頭文字を取っています。これは実はクルマ会社がモビリティカンパニーに変革するときに、非常に重要なキーワードになっています。これについても、あとで説明していきたいと思います。
そういうのを支えるのは実はソフトウェア領域です。もちろんElectricみたいなところはハードウェアの領域もあると思いますが、ソフトウェアもそこを支えている意味で言うと、これ全部にソフトウェアが関わってきます。
ということで、ソフトウェアとしてやらなきゃいけないところの中で特に今Connected、Cの部分ですね、ここが私が属しているトヨタ自動車の中のカンパニーになっています。今日はこのあたりのことを中心に私が見ている範囲の中でのソフトウェアが関わるコネクティッド技術といったようなところをご説明したいと思っています。
最初にお伝えしておきたいのは、Autonomous、自動運転のことを知りたいなと思って入って来られる方も今日来ていただいている方もいるかもしれないと思います。しかし、そこは触りとしてちょっと、ConnectedもAutonomousをサポートしていますので触りとしてはお話できますが、自動運転そのものの技術に関しては今日は取り上げていませんので、あらかじめご了承ください。
トヨタ自動車がコネクティッド、CASEを使ってどこを目指しているのかを説明します。最近よく取り沙汰されているのは、今年の1月、コロナ前ギリギリにアメリカラスベガスのCESで、WovenCityといったスマートシティをトヨタはしっかりやっていくんだというお話をしました。
また2年前のCESのときには、e-paletteと呼ばれているモビリティサービスのサービスに注目した車を発表しました。将来的に自動運転、電子化を進んでいく車で、どうやってコネクティビティを使いながらSharedしていくかが大事になってきます。e-paletteは、CASEを全部詰め込んだようなものなのですが、そういったものに取り組むアナウンスをしています。
我々がこういったもので何をやりたいかと言うと、車を使って移動する、ないしは車を使って物を運ぶとか、そういったもので便利で安心安全なモノ・人を移動する、運ぶといったことによって、リアルな社会の能力をどんどん広げていくことです。そこは当然、事故ゼロを目指します。これが最終的な目標になっています。
私どもの社長も「すべての人に幸せを」「ヒューマンコネクティッド」というような言葉を言っています。これはあくまでもコネクティッドというのはメカとメカとか、コンピュータとコンピュータがつながるのではなくて、中心になるのはやっぱり人がいます。
人がさまざまなモノ・コトとつながることによって便利とか安心とか安全を実感できる。そういった社会を実現していくことを宣言しています。
これはどういうことかと言うと、車やモノとかを動かすのはリアルな世界の話です。かたや情報化社会と言われている中で、メールとかWebサイトとか、あるいはそこで行われるお金のトランザクションとか、もちろんその中にはビデオとかそういうのも入ってくると思うのですが、そういったものはすべて電子情報になっているバーチャルな世界です。
でもここ(バーチャルな世界)はやっぱり人はそれぞれにアクセスして、それぞれに情報が電子情報もあれば、電子じゃない情報も含めて、人はその中で生活しています。こういうふうにリアルな世界とバーチャルな世界の間に人間がいながら、そこでリアルにモノ、コトを動かしていくと。そういった仕組みがConnectedだと位置づけています。
ちょっと難しいのですが、実はリアルな世界は絶対、車とかモノっていうハードウェアがあります。そこが長年品質を作り込んできたトヨタとしての強みがあるからこそ、モノをどうやってバーチャルの世界に橋渡しをしていけばいいのかを考えています。
その間に、人々の生活をよくしていくことができるのかに取り組めると思っていますので、トヨタ自動車だからこそ、そういうところをやっていかなければいけないと思っています。
ハードとソフトという言葉をずっと今説明してきたと思います。ハードはだいたいいつもモノだと言われるんですね。一方、ソフトはコトだと言われると。これね、よく間違えるんですよ。間違えるというか、間違いじゃないですよ。これは正しいことを言ってはいるんですが。
ソフトウェアって車の中で動いていること、それはそうなんですよ。そうなんですが、ソフトっていうときには、コトを指すことが多いです。車が使われるシーンとか、そこで生活しているライフスタイルを指すことがあります。
やっぱりソフト、いわゆるコトっていうのを主眼にモビリティを考えていって、そういったところはいろいろな100人100様のライフスタイルがあるし、どんどん時代によって進化して変わっていくと。
そういったものをどんどん実現して支援していこうとすると、モノもハードウェアだけじゃなくてソフトウェアで実現して、コトであるソフトを動かしていく、サポートしていくと。そういったことがすごく重要になってきます。
なので実は「ハード」と「ソフト」という言葉と、「ハードウェア」と「ソフトウェア」という言葉は、ちょっとずれて使われるんですけれど、実は同じことを言っているんだと思ってもらえるとありがたいと思います。
ハードウェアは車で言うとエンジンとか、アクチュエーターとか、ブレーキとかもそうですね。ミッションとかも。そういったものを言っているのですが、そういうのを動かすためには半導体があって、かつ最近はコネクティビティでつながってクラウドにもつながるようになっています。
当然そういうのを、実際にモノとかを動かすのも、半導体の中で動いているソフトウェアで、それが制御していますし、クラウドの中でサービスをする。例えば、車の位置情報を管理したりとか、行きたいお店の情報とかを提供したりとかですね。あるいは渋滞情報を提供したりというようなナビを1つとったとしても、それだけクラウドから情報を今取る時代になってきています。
そういったようにコトを実現するのは、モノの中のソフトウェアと、モノの外のソフトウェア、こちらを両方組み合わせていくことが必要になってきます。そういった意味ではソフトウェアの重要性はますます大きくなっていくし、コトづくりにもソフトウェアでより早く、よりアダプティブにそういったことの進化に寄り添っていくのが重要になってきています。
ここからはコネクティッドカーの話をします。コネクティッドカーって何だろうってよく言われます。単純にシステムの見方で言うと、車の無線通信機のことです。我々の場合はData Communication Module、DCMと言っています。
そういったものを車の中に入れると、テレコム系の通信事業者さんのネットワークを通じてクラウドにつながって、そこのデータセンターにつながるよねと。これはシステムの見方で言うとそうなります。
ただその中にはもっともっといろいろなものがつながっていきます。コールセンターがあったり、スマートハウスがあったり、当然スマートシティもその中に入ってくるでしょう。
こういったつながるといった中でいろいろな技術が登場してきますので、今日はその技術、つながる中でどういったソフトウェア技術に今我々が取り組んでいるのかを順番に説明していきたいと思います。
(次回につづく)
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