2024.10.01
自社の社内情報を未来の“ゴミ”にしないための備え 「情報量が多すぎる」時代がもたらす課題とは?
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村上臣氏(以下、村上):みなさん、こんにちは。「LinkedIn News編集部LIVE!」も、今日は記念すべき20回目。いつもご視聴ありがとうございます。
今日は、AIスタートアップの株式会社シナモン 代表取締役社長CEOである平野さんをお招きして「AI時代の自分の価値とは何か?」というお話を進めていきたいと思います。よろしくお願いします。
LIVEを始める前に、少しリンクトインの紹介をさせてください。リンクトインは世界で働くすべての人に経済的な機会、チャンスを作り出すというビジョンのもと、日本でもがんばっております。世界では7億2,000万人以上の方が使っておりまして、日本でも非常に伸びています。
リンクトインというと「転職サイトかな?」と思う方もいらっしゃると思いますが、最近は「それだけではないんです」と言っています。それはなぜかというと、いわゆるビジネスコミュニティとして大きく成長しているからなんです。
このLIVEもその一環でして、みなさんが日々の仕事で役立つ情報を提供していくプラットフォームを目指しています。仕事をしているといろんな悩みが生じますが、そういう課題をお互いの知見を出し合って解決していけるビジネス専用のソーシャルネットワークサービスに変貌しつつあります。
さて、今日のゲストはシナモンAI CEOの平野さんです。ご存知の方も多いと思いますが、シリアルアントレプレナー(連続起業家)としても有名です。東京大学大学院在学中に、株式会社ネイキッドテクノロジーというプラットフォームサービスを起業。その後、株式会社ミクシィにM&Aされました。さらにその後立ち上げたのが、シナモンというAIスタートアップです。
平野さんは2児の母でもあるので、コロナ禍で仕事と育児のバランスをどう取っているのか? といった点についてもお話を聞ければと思います。ではさっそく平野さんをお呼びして、お話をしたいと思います。
平野未来氏(以下、平野):初めまして、シナモンAIの平野です。今日はどうぞよろしくお願いいたします。
村上:よろしくお願いします。すごいですね、今日はコメントがかなり多い! みなさん、ありがとうございます。どんどん拾っていきますので、質問はコメント欄に投稿いただければと思います。
改めて、なぜ平野さんはシナモンAIというスタートアップを創業したのか? あたりからお話をいただければ。
平野:実は創業当初、AI事業は手掛けていなくて、「写真アプリ事業」をシンガポール本社でやっていました。
学生時代に作った会社は、すべて日本で完結するビジネスモデルでしたが、当時から「海外でがんばりたい」という想いが強かったんです。シリコンバレーに何回か訪れたりして機会を探していたんですけれど、なかなかきっかけがなくて。そんな状況だったので、まずは海外で始めようと考えて創業しました。
当時はスマ―トフォンが登場して、多くのサービスがスマホへのシフトを進めていた時代でした。そんな中で、コミュニケーションもスマホでビジュアル重視なものになるだろうと思い、今でいうInstagramだとかSnapchatのようなアプリを開発していました。
残念ながらその事業はうまくいかなくなって、途中で人工知能の事業に転換しました。私自身、学生時代に人工知能の研究をしていたのが理由としてあるのですが、それ以上に自身の考え方の変化も大きかったです。当時、妊娠・出産を経験したことで、次の世代のことを真剣に考えるようになって。妊娠する前はもう、完全に自分中心な人間だったと思うんですけれども(笑)。
村上:いえいえ(笑)。
平野:それが「次の世代に対して何かしないといけない」と思うきっかけとなり、特に「今の日本人の働き方を変えるようなビジネスを始めよう」と考えるようになりました。
当時、過労死などの悲しい事件が報道されたこともあり、これは次の世代に残してはならない課題だと思うようになりました。日本人の働き方をAIがサポートすれば、圧倒的に楽しく効率的に働けるようになると考え、AI事業への転換を決断いたしました。
村上:確か最初はベトナムでカメラアプリを手掛けていましたよね。
平野:そうですね。
村上:当時のニュースは覚えています。起業されて「お~!」と思いました。
平野:もう、ぜんぜん使われなかったんです(笑)。
村上:質問が一つ来ていまして「社名のシナモンというのは、何か特別な理由があるんですか?」と。
平野:実は最初は、正直、適当に付けたんですよ(笑)。アプリをリリースして、それが成功したら社名にすればいいと思っていました。
AI事業に転換して、社名を変更すべきか悩みましたが、結果的にシナモンという名前を残しました。というのも、AIというと当時は若干「負のイメージ」がメディアでクローズアップされていたんです。「人の仕事が奪われるんじゃないか?」みたいな論調が目立ったんですね。
AIの会社さんは、当時からカタカナの長い名前の会社が多くて、カッコイイ感じではあるのですが、そうすることで人工知能の負の部分を想起されてしまうのではないか? と懸念して。あまりにも、実社会とかけ離れてしまうので。
それは違うんだと。「シナモンは働き方を幸せにしていく会社なんだ」というメッセージを込めたかったという思いがあります。付け加えると、シナモンはスパイスの王様と言われているので「人生にスパイスを」という感じで、いいかなと思ったのでそのまま残しました。
村上:確かにあんまりテックっぽいと、ターミネーターではないけれども「強いヤツが奪いにくる」みたいな印象を与える懸念はありますよね(笑)。「人間を助ける、共生する」という意味合いと「スパイスを加えて人生のアクセントにする」というイメージは非常にいいですね。
村上:ちょうどAIの話になったので、次はこの話に移りたいと思います。日本でもいろいろなAIスタートアップが出てきて、RPAのような業務の自動化が現場に広がっています。その状況を鑑みて、今の日本のAIの利活用・社会実装は、どの程度まで来ているのでしょうか?
平野:技術的にはいろいろ出揃っていると思います。でも焦点は、それらをどう活用していくか? という点だと思うんですね。残念ながら、現状はAIと聞くと「単なるコスト削減」と思われることが多いんです。この考えを改めて、成長戦略と位置づけると、ぜんぜん違うんですけれど。
例えば当社のお客様に、アニメ制作会社さんがいます。30分のアニメ制作の場合、だいたい5,000枚のセル画を描く必要があるのですが、1枚1枚キャラクターを描き、色を塗っていく。これを5,000枚繰り返すわけです。
そこでわたしたちは、色を塗る部分にAIの技術を活用しました。色を塗る作業をAIに任せると、単純に会社に必要だったアニメーターを50人から半分にできるようになるわけです。
それはそれでインパクトはあるのですが、これをさらに成長戦略として捉えるとおもしろいんです。先程の着色する仕事は、現状はすべて中国に流れているんです。新海誠さんの『君の名は。』とかあるじゃないですか。
村上:はい。
平野:ああいった、難度の高いものはまだ日本人が担っているのですが、難度が低いものの多くは、中国の安い人件費で作られていることが多いんです。ところがAIを利用すると、中国よりも安く、しかも圧倒的に早く制作できます、
通常、人間の作業ではコストとスピードって相反しますよね。「早く仕上げないといけないんだったら、特急料金もらいますよ」となるのが通常ですが、AIは2つが同時に実現できるんです。
すると、中国に流れている仕事を取り返せる可能性があるわけです。こう考えると「25人の削減」とするのか「数十億円のインパクト」にするのかで、まったく見え方が違うじゃないですか。
成長戦略として捉えると、AIのパワーはまったく違って見えるのですが、今はそう考えている人は残念ながら多くありません。その発想転換ができるかで、社会実装の進み方はかなり変わってくると思います。
村上:非常にいいポイントを突いていただいたなと思うんですけれど。やっぱり企業である以上は、営利を追求するというところで「トップラインを上げて、利益の総量を増やす」もしくは「コストカットをして、利益の幅を増やす」という、2つのアプローチを考える必要があるわけですよね。
IT化やDXは、現状はどちらかというと、人員コストの削減を目的にしている傾向がありますが、成長戦略として事業を成長させるために導入する、という視点は大事ですね。
平野:あとは、ユーザーエクスペリエンス(顧客体験)という点でも、ぜんぜん変わって来ると考えています。例えばアメリカのLemonadeという保険の会社があるんですが、彼らがやったことというのは「保険のAI化」なんです。
具体的にはチャットボットを作って、それとテキストメッセージをやり取りするだけで90秒で保険に入れるようにしました。事故があって、保険金を請求すると、数分でお金が支払われる。そんなユーザーエクスペリエンスを実現しています。こうした対応は、人間だと不可能なわけですよね。
私も保険に入ってますけれども、書類を書いて、出してとかやってると、だいたいお金が振り込まれるのは数ヶ月後です。それがLemonadeだと数分で済むと。5年ほど前に設立したスタートアップですが、数ヶ月前に上場したんですよね。すでに時価総額は4,000億を超えていて(注:対談当時)、ものすごく成長しています。
日本では「新型コロナ対策の給付金として10万円配布します」と政府が宣言して、実際に行き渡るまでにものすごく時間がかかりましたけれど、Lemonadeとの開きはすごいですよね。こういうエクスペリエンスを、政府も企業も追求していくといいのではないかと思っています。
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