2024.12.19
システムの穴を運用でカバーしようとしてミス多発… バグが大量発生、決算が合わない状態から業務効率化を実現するまで
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孫正義氏(以下、孫):次、Lenskart(レンズカート)。これまた、おもしろいんですね。従来、眼鏡が欲しいときはお店に行って、まず自分の視力をチェックしてもらうと。「右目がどうだ、左目がどうだ。乱視があるのかないのか」ということをチェックして、自分の顔にどのフレームが合うのかを確かめて。でも右目と左目で度数が違ったりしますし、フレームも(種類によって形が)違うので、ほとんどカスタムメイドになる場合が多いんですけれども。
これがAIを使って、事前にVRで自分の顔に眼鏡をかけた状況をチェックできて、しかも視力の診断までAIでできてしまう。顔を動かしている時の目からカメラまでの距離を自動的に測って、そしてリアルタイムで顔にかけた状況を見せて、顔にフィットしたかを教えてくれる。かつ顔の大きさやその人の輪郭に合わせて、レコメンドしてくれる。
今インドでは、これがオンラインでバンバン買われております。何百店舗というお店とオンラインでの販売。両方がセットになって、レンズの削り出しからフレームの作りまで、だいたい2日後には自宅に届きます。
しかも何万円じゃなくて数千円という安い値段で、カスタムメイドの自分の眼鏡が2日後には家に届く。もうじき、翌日には届くというところまで進化するそうであります。
レンズの削り出しのロボットまで含めて全部、この会社が生産から販売まで一気通貫で、オンラインまで含めてやっています。ちょっと動画を見てください。
(動画再生)
ナレーション:世界で45億人の人々が視力矯正を必要としていますが、25億人の人々はまだそれにアクセスできません。また、世界の視覚障がい者の40パーセントがインド人です。
AIとテクノロジーは、この巨大な課題を解決できないのでしょうか? もしベーシックな携帯電話カメラを用いて、完璧なバーチャル試着が行えたら?
高機能のコンピュータービジョンを用いて、機械学習とAIを活用し、虹彩検知をリアルタイムに行い、スクリーンから虹彩までの距離を測定し、顔の大きさや瞳孔間距離を正確に測ることができます。
AR(拡張現実)で、眼鏡を身近なものにできます。インテリジェントな眼鏡フレーム推奨機能は、顔のサイズに完璧に合わせ、3Dによる没入感とパーソナライズされた実体験を提供します。10秒で数千パターンが試せます。この理想的な眼鏡購入体験は、世界中のすべての人にとって真に身近なものにできるでしょう。
コンピュータービジョンを用いて、新時代の問題も解決できます。例えば、ソーシャルディスタンス。理想的なディスタンスが守れていない時にアラートを出したり、顧客と店舗のインテリジェントデータを収集したり、インテリジェントなオムニチャネル体験を構築できたりします。
テクノロジーとAIでLenskartは、世界の25億人の人々に手頃な価格の眼鏡へのアクセスを提供します。
孫:さらに進みたいと思います。AIが人の命を救うには薬だとか、病気だとかいろんなものがありましたけれども、交通事故で亡くなっている人もたくさんいますね。自動運転で、道路に走る車が事故を起こさない交通システムを提供してくれるならば、どれほど良いかということであります。
先ほどNVIDIA CEOのジェンスン・フアンとも、「自動運転についてどう思うか?」という話をしました。彼も私とまったく同じで「必ず自動運転の世界は来る」と。人間よりもより精度の高い事故の少ない自動運転の世界が必ず来ると、彼も私も100パーセント信じているわけですが。
順番としては人間よりも物を運ぶほうが先であると。このほうがより安全だし、より早く許認可もおりる。万が一ぶつかった時でも、乗っているのは人間ではなくて、例えば中華丼がひっくり返るといったことなら、まぁそんな大した事故じゃないね、ということで、食品や生鮮食品、あるいは配達物のデリバリーなどが始まるということであります。
動画を一緒に見ていただきたいと思いますが、アメリカでは、カリフォルニアとテキサスとアリゾナ。3つの州でもうすでに、一般の道路を自動運転でNuro(ニューロ)が走っております。
(動画再生)
ナレーション:2020年、NuroのR2はカリフォルニア、テキサス、アリゾナの街路を走り始めました。完全なる自動運転で。運転手も、乗員も、追跡する車も必要なく。
マウンテンビュー、カリフォルニア州。ヒューストン、テキサス州。
孫:もうすでに許認可を政府から得て、このように一般の公道で走っております。時速40キロメートルで走ります。自動車の4分の1ぐらいの大きさですね。小さいので万が一ぶつかっても、人身事故に遭うような相手方のリスクは、より小さいわけです。
もちろん中に乗っているのは、人間じゃなくて物ですから、より許認可を得やすいんですね。いくら技術があっても、許認可を得て一般道でこのようにどんどん実績を積み上げていかないと、前に進まないんですけれども。Nuroはさっそくこのように工事中のところを避けたり、あるいは人間や犬が途中で道にばっと出てくるといった状況もすべて認知して、安全に運転をする。運転手を乗せない完全に無人の運転で、このように一般道で、しかも3つの州にまたがってというのは、Nuroが世界初になります。
ソフトバンクグループのビジョン・ファンドが筆頭株主の会社ですけれども。このように人間がちょっと横に出てきたというようなことがあっても安全に、すでに一般道で動いています。
トラックの陰から人が出てきたり、あるいは曲がっていくというような時。万一、車が止まって運転手がなぜか横に出てきているといった、イレギュラーな状況が発生しても、ちゃんとそれを認識しながら安全に運転を止めたり避けたりできるということであります。
もうすでに、ピザや日用雑貨を送り始めております。もう1つ、さらにこのNuroの動画を見ていただきたいんですけれども。先ほど、実際に公道を走っているということでした。公道を走る中で、実験的な試験的な運用とはいえ事故を起こすわけにはいきませんので。さまざまな例外のケースを、Nuroがシミュレーションの世界で「あ、歩道に今人が出てきたな」とか「反対車線からダブルイエローラインを乗り越えてこっちに来ちゃった」とか。
「夜になってほとんど見えないな」と。「犬が急に飛び出してきた」と。人間でも日が暮れた直後の薄明かりの時は、一番事故が起きやすいんですけれども。横からお客さんが物を受け取るところに駐車するとか、こういうシミュレーションがどんどん行われていて、さまざまな例外ケースまで出してくれると。それで、ものすごい数の実験ができるということであります。さっそくピザや生鮮食品のデリバリーに、Nuroが業務提携の契約をしまして、運用がこれから続々と始まるということです。
もうじき量産が始まる。もう完全に、その時代が来たということであります。
孫:次、世界中の人が注目しているByteDance(バイトダンス)であります。TikTokを開発した会社ですね。従来、ショートビデオはいっぱいあったんですけれども。ロングビデオ、ショートビデオがあってもいちいち検索したり、何かを入力することが面倒だったんですけれども。これを完璧にAIの力で、その人の好み、見ている最中にどのくらいのスピードでスクロールするのか。どこを熱心にリピートして見ているか、ユーザーの振る舞いによって、ユーザー好みのコンテンツをどんどんAIが探し出してレコメンドしていく。
15秒ずつスクロールしているうちに、どんどん自分好みの動画が出てくると。私も休みの時ちょっと3分、5分と時間が空いた時に、ちゃっちゃちゃっちゃと(見ている)。
(動画再生)
孫:3分空いたからって見出すと、ついつい30分、1時間見てしまうと。寝る前にそんなことがたびたびありますが、すごいですね。
孫:次に住宅。こちらは同じ買い物でも、金額がデカいですね。従来は町の不動産屋さんに行って、どんなアパートだとか家を、借りたらいいのか、買ったらいいのかと。そういったことで、もう大変でした。まさにこれはオフラインの世界なんですけれども。
これをBeike(ベイク)がAIを使って、中国のほとんどの不動産代理店がこちらに登録し、アクセスし、お互いに活用すると。すでにデータベースとして、2億3,000万軒の家が入っている。しかも月間のアクティブな利用者が3,900万人。毎月3,900万人もの人が家を探しているという数だけで、やっぱりさすが中国。数がデカいですね。
仲介事業者も46万人。取引の件数も、去年だけで年間220万回。今年はもっと増えました。今年上場のものすごく急成長した会社で、すでに利益も莫大にあげているというところでございます。AIを使って物件のやり取りをするだけではなくて、内覧ですね。内覧会がバーチャルリアリティを使ってやれて、自分好みの内装に変えていくというようなこともできます。動画を見てください。
(動画再生)
ナレーション:物件を探す時にまだ写真や動画を閲覧していますか? Beikeのバーチャルツアーは、物件の見方を再考させてくれるでしょう。その秘密はグループ企業「Realsee」が開発したカメラにあります。
そのカメラは撮影しながら空間の奥行情報を捉えることができ、内装についての何百万もの微細な空間の詳細情報を収集し、家の仮想レプリカを再現します。
Beike独自のアルゴリズムを活用し、バーチャルな内覧をしながら、ユーザーは物件のサイズや方向といった情報を見ることができます。
Beikeは2020年6月までに3Dで再構築された500万件超の物件情報を持ち、ユーザーは3D酔いを起こすことなく、バーチャルスペースの中を没入感を持って歩くことを楽しめます。
ユーザーは3Dツアーによる双方向のサービスを得られ、簡単にその場で会話をしながら、不動産エージェントの説明とともに物件を精査することができます。
またユーザーは、他の人にワンクリックで3Dツアーに参加してもらうリンクを共有できます。しかし、これがすべてではありません。BeikeはAIホームデザイン機能も提供し、ユーザーは将来住む家を視覚化することができます。これは始まりに過ぎません。
BeikeのVRはより多くのシーンに関連付けられ、ユーザーの生活向上を目指しているのです。
孫:すごいですね。自分好みの内装、ちゃっちゃと和風だとかイタリアンだとか中国風のデザインだとか。モダンだとかちょっと学生向けだとか、自分の好みをタッチすると瞬時に・リアルタイムでAIが家具をレコメンドしてくれるということでしたね。本当に便利な世界がやってまいりました。
孫:次にEコマース。Eコマースも、ビジョン・ファンドが筆頭株主になっているCoupang(クーパン)。韓国で圧倒的ナンバーワンになりました。このCoupangは、我々のグループ会社としてAIを需要予測に使っていますし、在庫の最適化・配送の効率化・最速のルート設計。もうAIをすべての工程に活用しているという状況であります。こちらも動画を見てください。日本より進んでいますね。
(動画再生)
ナレーション:たくさんの商品をより早く、便利に届けることで一人でも多くのお客さまに満足していただくためにはどうしたら良いか。
どうすれば社員がより効率的に仕事をして、より楽しく仕事をすることができるのか? そんな疑問に答えを求めていました。その答えがAIでした。機械学習によって、顧客が注文する前に需要を予測して在庫を確保。倉庫内で商品の発注を行います。
注文品をピッキングするための最適なルートを見つけるなど、すべての決定はAIによって駆動されています。従業員の歩行距離を減らし、効率化を実現しています。
Coupangの革新はこれらにとどまりません。出荷準備が完了した商品は、その時点で配送トラック内の積載位置が指定されています。さらに、AIが配送ドライバーに最適な走行ルートを見つけてくれます。
注文から配送までのそのすべての工程をAIが担っており、“ロケットデリバリー”の商品は、安全かつ確実にお客さまの元に届きます。年間数億件にも及ぶ圧倒的な注文量。全国規模での翌日・明け方・当日配送サービス。AIによる驚異的なイノベーション。それはCoupangだからこそ可能なのです。
孫:いよいよ最後に。先ほどジェンスンと対談をいたしましたけれども、我々のArmをNVIDIAに売却することに合意しました。
ArmはNVIDIAの買収で一本化されるわけですが、許認可はもちろん必要ですけれども、我々は非常に楽しみにしてます。両方のエコシステムですね。開発事業者が業界の中で、ものすごくたくさんいます。AIの革命を一気に加速していくと。
従来は人々が単に計算をするとか検索をするというものだったのが、AIを使ってコンピューティングの世界が「理解をする」「ものを考える」。そして最後にはいよいよ「クリエイトする」というところまでいくと僕は思っておりますが。
このAIによる情報革命は人々を幸せにするために。人々が交通事故や急な伝染病や不治の病、心臓病やがんなどの病で亡くならない。そのためにAIを使うんだと。
人々がエンターテイメントをもっと楽しむために、人々が買い物をもっと楽しむために。AIは決して人々を不幸せにするためではなくて、人々をもっと快適で豊かで愉快に暮らせる世界をもたらしてくれるためにあると。そのためにこれから、この革命は進むと。私は非常にポジティブに捉えております。
ぜひこのエキサイティングな時代に生まれたことを幸せだと思い、この革命に貢献をしていきたい。心からそう思っております。日本の多くのビジネスパーソンのみなさまも、ぜひぜひ世界のAIの革命の潮流に遅れないように、一緒にがんばっていきましょう。よろしくお願いいたします。
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