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​今あえてのスクラム(全2記事)

たまに「うっ」と思う環境に飛び込まないとダメ アジャイルをやることはフワフワすることに慣れること

スクラムの初心者からエキスパート、ユーザー企業から開発企業、立場の異なるさまざまな人々が集まる学びの場でもあるスクラムフェス大阪2020。「今あえてのスクラム」のテーマで登壇するのが、株式会社アトラクタのFounder兼CBOでもある永瀬美穂氏。前半となる今回は、永瀬氏が今までの経験で得てきた、苦手だと感じる環境でも飛び込んでいく重要性。アジャイルで最近よく言及されているCynefin Frameworkの4つの分類などについて話します。関連資料はこちら。

株式会社アトラクタの創業者の一人

永瀬美穂氏(以下、永瀬):こんにちは、永瀬です。

開原隆弘実行委員(以下、開原):こんにちは。

秋元利春実行委員(以下、秋元):イエイ!

永瀬:合いの手入るのいいですね。よろしくお願いしますね。

秋元:いいですか?

永瀬:はい、ぜんぜんいいですよ。いろいろな人がいると思うんですが、私は資料を作っていたら、発表の順番も最後のほうに変更になっていて、練習しているうちに昂ってしまって。だから資料も荒ぶりながら作りました(笑)。なので今回、とりとめのない話もします。

秋元:ここから喋れるだけ喋ってもらっていいかなと思っていて、撤収時間がないので。

永瀬:私ちょっと飲みに行きたいんですけど(笑)。

(会場笑)

秋元:じゃあ飲みに行きたくなるまで。

永瀬:一応45分だと思っているので、ここから45分しゃべる用意をしてきました。

秋元:ここから45分でお願いします。

永瀬:適当な流れで。今日は金曜日なので、みなさん聞いてくださっている方も疲れていると思います。ちなみに私のZoomの背景は、ビールを想起するものになっているので、飲みたい人は飲んでもらってかまわないです。

(会場笑)

永瀬:私もダラダラ喋ります。飲んでいませんけど。

最初にお断りしておくと、今回はZoomの背景を使ってプレゼンテーションをするので、一部の環境では背景が切れるかもしれない。その場合は、PDFか何かで資料を渡そうと思いますので、それを見てください。では本題に入っていきます。

まずは、自己紹介から。突然ですが、ここ数年悩みがあって、Wikipediaの私のページが充実しているというちょっと怖いことでして(笑)。あれって「自分で書いているんじゃないの?」なんて周りから言われていて、それが笑い話ならいいんですが。そうじゃなくて、まあまあ正しい情報とたまに間違っている情報が記載されていて。情報は充実しているので、Wikipediaを見てもらったらいいかなと思います。

ちゃんと説明をすると、改めまして永瀬美穂です。@miholovesqというアカウントでやっているので、ミホラブさんと呼ばれることもあります。株式会社アトラクタを原田騎郎とRyuzee(吉羽龍太郎)の2人と一緒に起こしました。起業して4年ぐらい立つ、吹けば飛ぶような零細企業ですが、そこでアジャイルコーチの仕事をやらせてもらっています。

その前は2013年から、独立したアジャイルコーチをやっていました。さらにその前はというと300人規模かな? SIerで受託開発に関わっていたソフトウェア開発者でもあります。90年代はゴリゴリのウォーターフォールですね。ウォーターフォールというか、ウォーターフォールがあるのか、プロセスがあるのかないのか。

2000年代に突入してから、たまたま仕事で関わったプロジェクトがRUP、Rational Unified Processでした。それが、ソフトウェア開発プロセスを知ったきっかけです。その当時は、XPに飛びついた人たちのほうがかっこいいなと私は思っていて、見様見真似でRUPをやっていました。

2000年代の後半ぐらいからは、スクラムやXPなどを試行しだしました。その中で、チームのマネージャーやスクラムで言えばスクラムマスターとかコーチ見習いなことをしていました。

誰に見習うかというと、一緒に会社を興すことになる原田やRyuzeeなどです。今では、Scrum Fest Osakaやスクラムギャザリングなどがあるように、当時もいろいろな勉強会が活発でした。そこで、アジャイルコミュニティの先人からいろいろ教えてもらっていたら、いつの間にかこんなことをやっている立場になっていました。

独立と同時に大学で仕事を始めて、さっき紹介がありましたが、「enPiT」という文部科学省のプログラムがあります。それの縁でコンピュータサイエンスを専攻している学生のプロジェクトベースドラーニングにアジャイル開発を導入して、アジャイルなやり方をやってもらう仕事に関わっています。あとはスクラムギャザリング東京の初回から実行委員として参加してます。

宣伝なんですけど、こんな本があるので。

秋元:すごいですね(笑)。

永瀬:新刊はこれですね。『SCRUM BOOT CAMP THE BOOK』という本が最近出ましたので、ぜひ手に取って見てください。最新のスクラムガイドに準拠しています。アトラクタとかRSGTとか、今言った宣伝すべてこのスライドに書いてありましたね。あ、買いました? ありがとうございます!

さまざまな本に関わってます。『エラスティックリーダーシップ』はちょっと寄稿しているだけなんですけど、自分で書いた本というよりは、原稿が載っている感じです。

「うっ」と思う環境に飛び込む

それで! SCRUM FEST OSAKAオンライン開催おめでとうということで。まずはさっき言ったように、スクラムギャザリングの運営をやっていることもあって大変だろうなと思います。スクラムギャザリングは2020年1月に開催しましたが、タイミング的にやり逃げたという感じですね。感染症の問題とかがシビアになる直前に開催できて、海外の人も、そのときは来れていたので、ギリギリ運がよかったなと思っています。

さらに言うと、めちゃくちゃネガティブなんですけど、まずDiscordが立ち上がってそこに異常にたくさん人がいて、ノリもわからないので、何だろうなと思いながら正直引いていましたと(笑)。オンライン開催になる前に「基調講演をしてください」という依頼があったので、「やったるで!」と。

去年実際に大阪に行っていますので、あそこでしゃべるのはいいと思いました。去年きょん君(@kyon_mm)とか及部君(@takaking22)とかがやった基調"公演"ですね。あれもすごくよかったので、光栄なことだなと考えています。今回オンライン開催になって、まず自分がどう反応したかと言うと「うっ」と思いました。

今はなんとも思っていないというか、思っているほどに緊張しないで普通に喋っています。でも、「基調講演オンラインかー。やだなぁ」とか思っていました。なので「そっかー」と思って、そこで2、3秒ぐらい「うっ」と思っていました。それから「やりましょう」と腹をくくり、今に至ります。

なぜかと言うと、自分の過去の経験から、「うっ」とか「苦手だな」と思ったものに挑戦して、結果から無意味だったなと思った感想がなくて。苦手なことを克服もできなくてもいいし、もちろん失敗してもいい。失敗したことを後で思い出して、ジタバタしたりするんですけど、それでもただでは起きなくて、自分にとって価値がなかったことがまったくありません。

仕事をやっていたりでいろいろ経験が上がっていく中で、苦手で「うっ」と思うことは減ってきます。若いころはたくさんあったんですけど。だんだん器用にうまくできるようになっていたんだけど、久々にちょっと「うっ」と思うことだったので、「これはやるしかない」と思いました。

そういうパターンの際に、よく私が思い浮かべるのが尾藤武という人です。誰かと言うと「あの人の力を借りればどうにかなる」という、これご存知の方いるかな?『リチャードホール』という2000年代の中盤にフジテレビでやってたバラエティー番組がありまして。

劇団ひとりがサラリーマンに扮している、ちょっと弱々しい感じ? のキャラクターです。例えばヤクザにコテンパンにされそうになったりとか、お店でトラブルに巻き込まれたりします。追い詰められると尾藤武はビートたけしが大好きなので、「ふだんの自分ではできないけど、あの人の力を借りればできる」って言って、たけしのマネをしながら、例えばそのヤクザをやり込めたりするわけです。

ふだん自分ではできないことをする際に、ちょっと誰かの仮面を借りる。私は勝手に「尾藤タケシメソッド」と言っているんですけど、それをやろうと思っています。

なぜかと言うと、困難な状況とかに対する苦手は恐れなんですよね。先が見えなくて不安だから、先が見えないことに対して恐れてしまって「うっ」と思う。だけど、アジャイルをやっている私たちは、不安や不透明だったり、見通しが手元しか見えなかったりとかフワフワしていることに慣れているはずなんですよね。

それを乗りこなすために、私はよく「筋トレ」という話をするんですが、乗りこなす練習をしてきているはずなんです。私もそうで、「誰かそういうことを言っていたよな」というのを思い返して見ると、言っていたのが2014年の上海のRegional Scrum GatheringのDave Thomasでした。

Dave Thomasは、みなさんご存知だと思いますが、アジャイルマニフェストにもサインしている1人です。『達人プログラマー』や『プログラミングRuby』『プログラミングElixir』とかの本を書いている人でもあります。

それからPragmatic Bookshelfの運営もしているので、みなさんとてもお世話になっている人なのではないでしょうか。私はとても大好きで、彼が「Agile Is Dead」という講演の中で言っていた言葉を日本語にすると「自分が置かれた環境で自分の経験を活かしてどう反応するかがアジャイルなんだ、アジリティなんだ」。それがものすごく印象に残っていて、私はとても好きです。

ということは、今日のオープニングの偽ミルクボーイのネタにもありましたけど。

(会場笑)

永瀬:「何がスクラムか」という話の定義とはまた別です。「自分にとってのアジャイルな態度ってどういうものかな」が、Dave Thomasの言葉を聞いて整理されたところがあって、それが腑に落ちてよく使っています。

なのでさっきの話をすると、ちょっとした「うっ」と思うことは、みなさんのふだんの生活や仕事の中でもあると思うんですね。ないのなら、それはもったいないので、たまに「うっ」と思う環境に飛び込まないとダメだと私は考えています。ということで「吐きそうだけどやるぞ」となって今ここにいるということで、長くなりましたが、これが今回の話の大前段ですね。

意思決定のための4つのドメイン分類

ここから本題です。アジャイルなやり方は、イノベーションにつながる。つながらないこともありますが、用意されて整ったところで「はいはい」と予見できる場所でやるのではありません。先が見えなかったりコロコロ変わったり、その資源がなかったり何かに困窮したりもする。人やリソースがないところで、苦肉の策で当たるのがけっこう大きいんじゃないかなと思っています。

とは言っても闇雲にいろいろな経験に照らしたりとか、いろいろなやり方をしてもしょうがないんですけど。最近はよく言及されることも多くて紹介しておきたいのがCynefin Framework(クネビンフレームワーク)です。一部では「カネヴィンフレームワーク」と書いてある資料もありますが。Dave Snowdenという博士が提唱した、意思決定のための問題ドメイン分類です。

今回参加されている多くの方はご存知だと思いますが、復習も兼ねて説明したいと思います。要は物事のドメインで、問題は4つのドメインに分けられることです。その4つがシンプル、煩雑、複雑、カオス。本当はもう1個Disorderというものもあるんですけど、この4つに分けられますと。

シンプルとは何かというと、物事の理解ができて、問題が起きたらそれを理解して問題を分類して、それに対して反応すればよい。それはベストプラクティスみたいなものがすでにあります。物事の理解をして分類して反応する。次の煩雑は、理解して分類ではなく分析をしてみて反応する。

複雑はまず理解ができないので、探索的なアプローチが必要になってきます。探索と理解をして、それに対しての反応を決める。カオスというのはまず行動。血が出ているのにお腹が痛いとか言っている場合ではなく、まずは血を止める行動をする。それから理解して反応するというやり方です。

いろいろ扱う問題というのは、この4つのドメインに分けられることができて、その理論だと、シンプルと煩雑を秩序系。複雑とカオスを非秩序系に分けます。問題はこのいずれかの領域に属するのがこの理論で、秩序系は観察や調査、分析することが可能で、正解を見つけることができる。

非秩序系は因果関係がわからないので、先を見通すことができません。そのため、試行錯誤が鍵になってきます。アジャイルやスクラムが得意のするのが、この非秩序系です。私はアジャイルやスクラムが好きなので、予見ができようとできまいとアジャイルなやり方でやります。

(会場笑)

容易に手段を目的とする人間ですが(笑)。乗りこなせていない状態で、難しいとことに直面したとき、さらにその利益を受益できると言ったらいいのかな? そのときに効果を発揮するわけですね。

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