2024.10.01
自社の社内情報を未来の“ゴミ”にしないための備え 「情報量が多すぎる」時代がもたらす課題とは?
定量×定性の補完的アプローチ maruhadakaPJ(全1記事)
リンクをコピー
記事をブックマーク
松薗美帆氏:「定量×定性の補完的アプローチ」ということで、メルペイで行っているmaruhadakaPJをちょっとご紹介したいなと思います。名前がちょっと破廉恥な感じで少し……社外向けに話すことになるとは思っていなかった名前なので、恥ずかしいんですけど、よろしくお願いします。
最初に自己紹介します。松薗美帆と申します。@mihozonoというアカウント名でTwitterやnoteで情報発信をしています。今は株式会社メルペイのデザインチームの中でUXリサーチャーという職種で働いています。私はもともと大学が文化人類学でエスノグラフィ調査とかをしていたので、ザ・定性調査というのをやっていました。
新卒でリクルートに入社して、始めはデジタルマーケティングの担当だったので、ほぼ定量のログ解析とかKPIモニタリングとかそういうところに配属されました。でもそこから定量だけでなくもう少し定性もやりたいというところでプロダクトマネージャー、UXデザイナーとジョブチェンジをして、最後はタウンワークという事業でUXリサーチチームの立ち上げをしていました。
2019年の1月からメルペイに2人目のUXリサーチャーとしてジョインしていまして、メルペイは、おそらく業界ではまだ珍しい専任のUXリサーチャーという職種が確立しているような職場になります。4月から私個人は大学院に進学して、もう少し定性調査のところを研究しようと思っていたりします。
最初は知っている方も知らない方もいらっしゃるかもしれないので、簡単にメルペイの紹介をします。私たちは株式会社メルカリの100パーセント子会社でして、決済とか売上金とか信用事業とかをやっています。ミッションは「信用を創造して、なめらかな社会を創る」ということでスマホ決済サービス、今大激戦の業界でやっております。
特徴としては、メルカリで売ったお金、売上金をそのままお店で使えますというところからスタートしています。よかったら使ってください。これもちょっと割愛しようと思います。資料は先ほどツイートしたので、削っているところはないのであとで見ていただければと思います。
今日の参加者は、あまり今まで自分が参加しているUX系のイベントにはいらっしゃらない方が多いなと思います。おそらくデータアナリストが多いのかなと思っているので、最初に簡単にUXリサーチって何? ということをご紹介したいと思います。これは私たちメルペイのジョブディスクリプションでUXリサーチャーとは? というところでご紹介している文章です。
「お客さまの豊かな体験を実現するために本質的な問いを立て、あらゆるリサーチ手法を使いこなし鋭い洞察を得ることで事業の意思決定にコミットします」と、私たちは定義をしています。
これをちょっと考えてみていただきたいんですけど、けっこうデータアナリストがやっていることに似ているんじゃないかなと、私は思っています。問いを立て仮説を立てて、それからリサーチ手法というところがもしかしたらSQLとかビッグクエリとかのもう少し違うやり方なだけで、事業の意思決定のためにコミットするというところは実は同じなんじゃないかなと、思ったりしています。
maruhadakaPJの事例のところに入っていきたいなと思います。ちょっといかがわしい名前なんですけど、何かと言いますと、「お客さまのインサイトをmaruhadakaにする」プロジェクトでmaruhadakaPJと呼ばれています。なので社内にもチャンネルがmaruhadakaという名前でありますし、「今週maruhadakaやってまーす」みたいな言葉が飛び交ったリしています。
どうやってやっているのかというと、ここが今日のお題になるところで、定量と定性を組み合わせて補完的に調査を進めているので、ちょっとこれをご紹介したいなと考えています。
ちなみにこのmaruhadakaPJは、今3までやっておりまして、1、2、3で、どんなことをやったかというと、まず1回目は初期で、リリースしたのが2019年なので、そのまま出てからすぐぐらいに、メルペイで初めて決済していただくところを増やすためにどうしたらいいのかというところで、お客さまを理解するために実施をしました。
これはもともと、データアナリストから声を掛けてもらって「こういうことをやりたいけどもう少しお客さまのことを知りたい。だから一緒にやりませんか?」というので始まりました。
2は「メルペイあと払い」という機能をメルペイスマート払いへのリブランディングとして2019年の後半に行ったんですけど、それが実際にどうだったんだっけ? という効果検証をするために行いました。
これはマーケも大きく関わっていたリブランディングだったので、マーケとかプロダクトマネージャーとかも含めてわりと大規模になった感じでやりました。このときに日記調査とか訪問調査みたいな、お客さまをかなり理解する手法も組み合わせたりしました。
3が今まさに進行中でして、今度はロイヤルなお客さま、ヘビーに使ってくださっている方はどんなんだっけ? じゃあ、増やしていくことはできるんだっけ? ということを今まさにリサーチしようとしていたりします。という感じで、maruhadakaという名前で定着しているものになります。
これをどう定量と定性を組み合わせてやっているかということを話していきたいと思います。
UXリサーチャーはどちらかというと定量もやるんですけど、定性がメインの仕事をしている身からするとこれに尽きます。どのようなn=1の対象者を選ぶかがすべてを決めると言っても過言でないくらい、どんな方を調査の対象者とするかで結果が変わってくるくらい重要だなと思っています。ここの精度をより上げるために、けっこう定量の力を借りているというのが現状です。
まずはじめに、どんなお客さまに対してインタビューして理解しようかと思ったときに、「どういう行動をしている人を呼びますか?」というのが1つ目の問いとしてあると思います。サイト上ですごくヘビーに動いている方なのか、ぜんぜん使っていないライトな方なのかみたいなグラデーションがある中で、どの群を取りますか? というところがまず1つ目になります。
2つ目、例えば一番左のヘビーな人を呼びましょうとなったとしても、じゃあその人はどういう思考だったり認知をしている方なのかということが2つ目の問いとして出てきます。ここは例えば、すごく使っているけど、実はサービスが好きじゃないとか、逆にめちゃくちゃ好きですとか、プロモーションを見ていて使いましたとか、見てなくても使っていますとか、そういうところは2つ目にあります。
それはなんでなの? サービスはすごく好きでいてくれるのはどうして? というのが3つ目です。4つ目はそこから得たインサイトをインパクトにつなげるにはどうしたらいいんだっけ? というところは大きくいうとこんな感じでアクションを進めていくようなことが多いですと。
じゃあ、これはそれぞれどこが定量・定性が関わっているかというと、1はほぼ定量で特定することが多いです。2が定量と定性を組み合わせて行い、3のところで定性、4で定量と定性のどちらもという感じで一緒に共同しているかなと思います。
この4ステップをもう少し整理してお伝えすると、まず、どのような行動をしていますか? というところに関しては行動ログで解析するというのがけっこう鉄板で、やっています。
ここは私の分析力が足りないので、わりとデータアナリストの方にゴリゴリ一緒にやってもらうようなことが多いです。「こういう傾向がデータ上で見られるね」とか、「どういう人を呼ぶとよさそうだね」という当たりをつけてもらう。このときの切り口が、すごく大事だなと思っています。
2つ目のどのような思考をしているかなんですけど、これが行動ログではわからないこと。どんな思考なのかとか、認知なのかみたいなところをアンケートで取るということが2です。なので1で特定した、例えば何回以上決済しているすごいヘビーなお客さまグループの中でも、どういう思考をしていてそういう行動に至っているのかというのを、さらに深掘るということを2回目に挟んでいます。
ここはアンケートを作ることが多いので、アンケートの設計は私、定性側が行ったりします。結果としては量的なものが返ってくる。という感じになります。
3つ目のそれはなぜか。ここが私の本番と言いますか、力量を発揮するところなんですけど、そのn=1の方を決めたあとで「なんで?」というのを深く深く理解していきます。ここでデプスインタビューですとか、先ほど少し触れた日記調査とか、他にも訪問調査みたいなものを組み合わせながらお客さまのことをもっともっと深く理解するという感じでdeep diveしていきます。
そこから深く理解したものを、じゃあどうやってこれを事業に還元していきますか? というところで、ただ聞いて「すごいおもしろかったね」で終わりではなくて、しっかり質的な分析をします。
こことここの構造は実は似ているとか、共通点があるよねみたいな感じで分析をして、さらにときには市場調査とかアンケート調査みたいなものをかけた上で、どれくらい再現性があってインパクトにつながりそうかみたいなところを、ガッチリ検証した上で施策していくということもあります。
なので、ここは質的な分析もしますし、定量的なアンケートとか調査とかも行ったりしますという感じで行います。ただ、これは直線的に全部1、2、3、4をしっかり踏んでいくわけではなくて、戻ることもあるし、3だけやるとか、4だけやるとか、その課題に応じて使い分けます。必ず4つ全部やってくださいというわけではないんですけど、こういう感じでやることが最近は多いなと思っております。
少し触れたように、私は定性でできることには限界があると日々すごく感じているので、定量でできることや定性でできることのそれぞれの特性がわかった上で、ちゃんと使い分けられることというのはすごく大事だと思います。
こういうInsight Tokyoとかで、もう少し定量を主にやっている人とか、定性を主にやっている人とかで、「こういう限界があるんだね」とか、「こういう得意があるんだね」ということが、もっと理解が進んでコラボレーションが進むといいなと思っています。
以上になります。
関連タグ:
2024.10.29
5〜10万円の低単価案件の受注をやめたら労働生産性が劇的に向上 相見積もり案件には提案書を出さないことで見えた“意外な効果”
2024.10.24
パワポ資料の「手戻り」が多すぎる問題の解消法 資料作成のプロが語る、修正の無限ループから抜け出す4つのコツ
2024.10.28
スキル重視の採用を続けた結果、早期離職が増え社員が1人に… 下半期の退職者ゼロを達成した「関係の質」向上の取り組み
2024.10.22
気づかぬうちに評価を下げる「ダメな口癖」3選 デキる人はやっている、上司の指摘に対する上手な返し方
2024.10.24
リスクを取らない人が多い日本は、むしろ稼ぐチャンス? 日本のGDP4位転落の今、個人に必要なマインドとは
2024.10.23
「初任給40万円時代」が、比較的早いうちにやってくる? これから淘汰される会社・生き残る会社の分かれ目
2024.10.23
「どうしてもあなたから買いたい」と言われる営業になるには 『無敗営業』著者が教える、納得感を高める商談の進め方
2024.10.28
“力を抜くこと”がリーダーにとって重要な理由 「人間の達人」タモリさんから学んだ自然体の大切さ
2024.10.29
「テスラの何がすごいのか」がわからない学生たち 起業率2年連続日本一の大学で「Appleのフレームワーク」を教えるわけ
2024.10.30
職場にいる「困った部下」への対処法 上司・部下間で生まれる“常識のズレ”を解消するには