2024.10.01
自社の社内情報を未来の“ゴミ”にしないための備え 「情報量が多すぎる」時代がもたらす課題とは?
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土屋尚史氏(以下、土屋):成田さんって、これまでずっとクックパッドってインフラ側だったじゃないですか。キャリアの中で、そのままフロントに行くことはなかったんですか。
成田一生氏(以下、成田):クックパッドに転職したときに「サービス開発エンジニア」というタイトルで入ったんですよ。なので最初の半年ぐらいは、Webサービスの開発をしてて。フロントも作ってたし、ユーザーベーシックな部分の開発をしていたんですよね。
だけどちょっと転機があって。というのは、当時ちょっとしたリニューアルプロジェクトみたいなものが走っていたんです。それでみんなが大急ぎで開発しているんだけど、開発効率が悪い作業をいろいろやってたりするんです。そんなに技術的にとがった人ばっかじゃなくて、どっちかというとサービス側の人たちで、コードを覚えながら書いたりしていたので。
この人たちを支援する側に回ったほうが、全体の生産性が上がるんじゃないかと思ったのがそのときです。自分の動き方を変えて、僕はバックエンドやインフラに回るので、みなさんの仕事を最大化できるようにそっちに移りました。
土屋:なるほど。僕のデザインの道の話も軽くしておきます。僕の場合は、最初に就職した会社がなんと営業の会社なんですよ。なので今はデザイン会社を経営していますけれども、ファーストキャリアは営業なんです。
当時、別にデザインにもともと興味があったわけではなくて。30歳までに起業家になることが決まってはいたんですけれども。何もスキルも技術もなかったので、まず自分に自信の持てるものを作らないといけないなと思って。当時、それこそエンジニアやデザイナーは、その専門の領域に行ってないとできなかったですし、僕らの世代は美大を出ていないとデザイナーになれなかった時代なので。
今はちょっと違っていますけれども、そういう時代だったので。普通に、必然的にナチュラルに、文系の仕事だと営業職になっていく感じだったんですよね。そこから営業でIT系の会社に入って、2社目が先日上場したフィードフォースという会社なんですけども。
そこがスタートアップの10人くらいのときに、営業で入ったんですけど。すごく先進的なことをやる会社だったので、Googleがやってる20パーセントルールという「仕事に使っている(時間の)20パーセント、自分の好きな新規開発で使っていい」ということを試している会社で。いろんな新しい技術やテクノロジーの話が社内をバンバン飛び交う会社だったのがきっかけで、Webのおもしろさに目覚めてですね。
そのままフィードフォースで働きたかったんですけれども、ちょっと事情があって、当時いた東京から大阪に戻らなきゃいけなくなったんです。大阪に戻ってきたときに、営業ではなくてWebの仕事がしたいなと思って。Webデザイン、Web制作会社に就職したのが25歳のときで、そこではじめて、制作というかデザインのディレクションをする仕事になったんです。ここでデザインに出会ったので、美大とか出ているわけじゃないです。
成田:(笑)。みなさんまだぜんぜん間に合う。
土屋:25歳でも、ぜんぜん間に合うんですけども。ただ僕らの世代って、衝撃的なことが起こりまして。2008年に日本でiPhoneが出たときに、出る前ですかね? 今もYouTubeに上がってる、スティーブ・ジョブズのプレゼンを見たときに「これは世界が変わる」と思いまして。
iPhoneが最初に発売された頃から並んで、3Gを手にしてから、僕はどちらかというと、美大とかグラフィックとか広告のデザインのほうではなくて、最初から完全にデジタル、むしろUIに惚れ込んでいきました。こうしたことがデザインの道に進んでいくきっかけになりました。
成田:聞いてみたいんですけど。
土屋:何ですか?
成田:2019年。デザイナーって、どういうキャリアパスがあるんですか?
土屋:それはグッドパッチですか? どうですかね。そもそも新卒でうち(グッドパッチ)は10人くらい採用してるんですけど、美大出身の子は2人位です。クックパッドはどうですか?
成田:美大出身のデザイナーの方は、ちゃんと調べたわけじゃないですけど、(社内に)いるイメージです。
土屋:うちの場合はですね、とくにグッドパッチの会社の性質上なんですけども。わりとビジネス寄りの仕事をするというか、いわゆるデザインとビジネスのアイディアの隔たりをなくすというじゃないですけど、バランス感覚が求められるデザイナーがほしくて。
美大のデザイナーももちろん優秀な人が多いとは思うんですけれど。ただ、今の美大の教育ってどうしてもビジネス寄りのことはあんまり教えません。ある有名な美大の図書館って、すごく立派なんですけども、ビジネスの本が1冊もなかったりして、結果的に美大の人が(採用の)最終選考まで生き残ってくるというのは、実は多くなくて。
総合大学の、それこそスタートアップなどでインターンをしていた人が選考に残ってくる感じです。キャリアパスでいうと、けっこうジェネラルですけど、スペシャリスト側で上っていくパターンもあれば、マネジメント側で上っていくパターンもあるという感じなので。
普通にUIデザイナーからそのままシニアになり、スペシャリストとしてのトップに、ヘッドオブデザイン的なものだったりとか、途中でデザインマネージャーになるのもぜんぜんあるという感じですかね。クックパッドはどうですか?
成田:クックパッドは、デザイナーのキャリアについてエンジニアの僕が語るのちょっと難しいんですけど。エンジニアだと、大学で情報工学を学んできた人がマジョリティなんですけど。たまにぜんぜん違う文系のところから、心理学や哲学や管理栄養士の勉強してましたとか。ぜんぜん違うキャリアから、エンジニアとしてうちに入ってはじめる人もちょこっといて。
そういう人は、やっぱり視点がぜんぜん違う。ずっと情報をやってきた僕みたいな人間とは違うもの(視点)を持ってるので。うちの会社では、情報以外のところから入ってくる人はすごく伸びているので、重宝してますね。
土屋:次のテーマは、スペシャリストかマネジメントかというテーマなんですけども。成田さんのヤフーからクックパッドへの転職の仕方がおもしろいなと思ってですね。そこの話を1回はさみたいんですが、ヤフーはそんなに長くなかったんですね。
成田:僕はヤフー出身者の顔して生きているんですけど、実は2年間しかいなかったので(笑)。新卒で2年間働いて、当時の上司がクックパッドに転職したんです。もともと料理は好きだったし、クックパッドに採用されている言語も好きだったし。定時で上がって家に帰って料理する生活をしていたので、クックパッドという会社には漠然と憧れがあったんですね。
土屋:当時のクックパッドは、すでにもう大人気でしたよね。
成田:サービスとしてはすごく注目されていたし、マザーズ上場して少し経った頃で、注目されてたんですけど。まだそのときはエンジニアが10人ちょいくらいの規模の会社で。
土屋:そうなんですか?
成田:エンジニアを採用してることすら、知らなくて。
土屋:へ〜。
成田:応募してんだ、みたいな。だから入社する会社というよりは、漠然と好きなサービス、技術を使っている会社として認識してたんだけど、転職というものあるんだって。転職という概念すら意識していなかったので、新卒2年目だったから。
直属の上司が行ったからすごく気になって。その人の送別会をやったときに、僕はあわよくばクックパッドに行けたらいいなってちょっと思ってたので。上司の近くにトコトコ行って、顔を売るみたいな(笑)。
土屋:みなさん、聞いてます?
成田:(笑)。その部ってすごくデカくて100人ぐらいいるんで、送別会もそれなりに大規模なんですよ。そういうところで、なんとか僕の存在を思い出してもらおうと思って。(退職する)上司の近くに行って「クックパッドってエンジニア採用してるんですね〜」ってすり寄っていくみたいな。
その後「そういえばこんなやついたな」って思い出してくれて、後々「今うちで採用してるんで、こない?」って言ってくれたんですね。あの飲み会で近くに行っておいてよかったな、みたいな。
土屋:これはわりと重要ですよ。今の若者は「飲み会出る意味ありますか?」ってあるじゃないですか。それがキャリアの重要な起点になるというか。
成田:そうですね。僕、思えばしたたかな生き方をしてたなと思って。
土屋:この話ですね、計画的偶発性。
成田:はい。そうですね(笑)。これを計画的偶発性って言うのけっこう怒られそうな気がするけど、要はそういうことなんですよ、計画的偶発性って。僕のキャリア選びって、今まで計画的偶発性がけっこうあったなと思っていて。例えば今の話みたいになるんだけど、将来起こることって不確実なんです。自分の行きたかった会社に上司が転職するのは、僕のコントロールが一切効かないことなんで。
だけど、そうなったときに自分がその上司の近くにたまたま居合わせるとか。偶然のチャンスが発生したときに、いかに自分がその近くに居られるのかは、ある程度計画できることなんじゃないかと思うんですよ。それが計画的偶発性というやつで。
僕がCTOになるときもそうでした。CTOになるためには、前任者がいなくなって役職が交代するタイミングで、指名されなくちゃいけないじゃないですか。
それって積み上げてきた信頼とか、今までやってきた仕事が評価されて、次のCTOに選ばれているわけで。やっぱり計画できることもあるんじゃないですかね。それをけっこう意識してやってきたなぁって思って、計画的偶発性という言葉を僕はよく使いますね。
土屋:本当にわりと重要な視点だなと思っていて。それから結果的に、今クックパッドのCTOへ昇りつめているところですからね。スペシャリストかマネジメントかは、成田さん自身はキャリアの中でどう思ってたんですか? やっぱりエンジニアとかデザイナーって、その選択に直面するときが必ずあるわけですけども。成田さんはスペシャリストで行くのか、マネジメントで行くのかはどこで決めた感じですか?
成田:僕はマネジメントに変わっちゃうのが、けっこう早めだったんです。クックパッドに入って4年目ぐらいに、もうインフラ部の部長になっているんです。
土屋:なんでそれが回ってきちゃう感じなんですか?
成田:(笑)。それは、当時は4〜5人とかの本当に小さい部だったんで。グループ長みたいな感じですけど、部長という役職が回ってきちゃうのは、もともとそんなに嫌じゃないなと思ってたんですよ。自分でコードを書くのも大好きだけど、自分よりコードを書ける人がわらわらいるチームなので。
そういう人たちがよりよく成果を出せるような環境を作ってあげると、全体のパフォーマンスが最大化するなというのが、おもしろいですよね。自分でコードを書くと、自分のコーディング能力がアウトプットの限界になってしまうけど。
土屋:そうですね。
成田:まわりの人をアクセラレートしたり組み合わせたりすると、その人数以上の力が出せたりするので、それはおもしろいなと思って。レバレッジが効くんです。
土屋:結局1人では何もできないということですね。
成田:そうですね。
土屋:チームの力を使った方が、自分1人で動くよりももっと大きなインパクトを出せるということです。
成田:そう思っちゃったんですよね、バックから。エンジニア、デザイナーの方もそうかもしれないですけど、マネージャーってみんなやりたがらないです。
土屋:そう。これね、みんなやりたがらなくて。それこそまだ3〜4年目って、スキル磨きたいじゃないですか。
成田:そうです、そうです。
土屋:なので、その順番が回ってきたとしても「いや、まだちょっとそっちに行くのは自分としては(嫌だ)。もうちょっとコードを書きたいし、まだデザインのポートフォリオたくさん作りたいし」ってときだと思うんですけど。だから、その早めのタイミングで決断しちゃったんですね。
成田:そうですね。たぶん嫌いじゃないというだけでも、自分に向いてるんだと思って。マネージャーは、みんなやっぱりやりたがらない。中途採用でうちに受けにきてくれるエンジニアの方と話すと、けっこうな割合で退職理由が「マネージャーとかをやらされるようになって、コードを書けなくなってきたんですけど、もう1回現場に戻って活躍したいんです」という人がうちを受けに来てくれたりとか。
やっぱりみんな嫌なんです。だけど「僕はそんなに嫌じゃないんだけど」って思うんだったら、向いていると思うし。あと、まわりが嫌がることをやったほうが、僕はいいと思うんですね。まわりが嫌がっていて、誰も拾ってない見向きもしないボールを拾って成果を出したほうが、なんかおもしろいですね。それだと「自分がやった感」がすごく出るので。それでやっぱり選んじゃいましたね。マネージャーやりますって。
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