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カヤックPMチームの変遷から考えるチームビルディング(全1記事)

カヤックのPMチームリーダーが振り返る、チーム崩壊から復活までの物語

面白法人カヤックと、フルリモートデザインチームGoodpatch Anywhereが開催するオンライン勉強会。第一回目のテーマは「PM(プロジェクトマネージメント)」。PMの仕事とはどんなものか、そしてPMとして成長するにはどうすればよいのか、面白法人カヤック入社7年目のPMチームリーダー高田一史氏が、自らの経験を元に語ります。

新卒7年目のPMリーダー

高田一史氏(以下、高田):カヤックのクライアント事業部のPMチームリーダーをやっています高田一史と申します。今日は「カヤックPMチームの変遷から考えるチームビルディング」というテーマでお話しします。

自己紹介です。中学・高校でカヌー部で、国体とかにも出ておりまして、あだ名が「カヌー」と言われております。奥さんからもカヌーと言われています。現在、新卒7年目です。今の事業部には6年いて、ディレクターやら制作進行やらプロジェクトマネージャーやらをやっています。

面白法人カヤックのクライアントワーク事業部のお仕事

弊社のクライアントワーク事業部の紹介を、さらっとします。このあとたくさん出てくるんですが、「CL」と私が言ったら、クライアントワーク事業部のことだと思ってください。

クライアントワーク事業部。これはWebサイトのキャプチャーなんですが、「まちづくりからうんこまで」ということで、幅広い分野でアイデアを出すことを武器に、いろいろな企画・制作をしています。「うんこまで」というのは、弊社の近年の代表作である「うんこミュージアム」から取っているわけですが、アイデアをもとにありふれたコンテンツとかありきたりのモチーフに新しい価値を生み出すことが得意な事業部です。

基本的にクライアントさんからの依頼でいろいろな制作物を作っているのですが、今表示させてもらっている制作物が代表的なところです。

もともとWebの制作からスタートしたので、SNSとかWebプロモーションは一番得意とする分野なのですが、最近ではR&Dの開発だとかXR・VR分野の開発、それから「うんこミュージアム」に代表されるようなイベントの企画・制作ですね。それから、コーポレートとか商品のブランディングだったり、地方創生の地域プロモーションにも力を入れて、幅広い分野で制作、おもしろいことをやっている事業部です。

PMチームリーダーとして悪戦苦闘した直近3年間を振り返る

ここから本題です。「カヤックのPMチームの変遷から考えるチームビルディング」。ここでいうチームとは、プロジェクトチームというよりは、PMという職能をもった人たちをまとめた1つのチームという意味です。今回は私がリーダーとして悪戦苦闘した直近の3年間を振り返ってお話ししたいと思います。

今から話すことは事実を元にした物語ですが、作者の主観で創作されているため、事実と異なる箇所がございます。ご了承ください。

今日お話しするのはこちら! 「PMチームリーダー伝カヌー!(全4話)」です。

(一同拍手)

ありがとうございます。

第1話「今日からお前がリーダーだっ!」

俺の名前はカヌー。面白法人カヤックの平社員さ。新卒4年目を迎えたある日、ひょんなことからPMチームのサブリーダーをやることに。「PMって何だ? リーダーってどうやるんだ? よくわからないけど、制作進行が得意な俺ならなんとかなるんじゃないか?」って飛び込んだんだ。

ところがどっこい、メインのリーダーが退職し、俺がチームを率いることに……。自分の案件もあるのに、未経験のリーダーが務まるのか? 不安が渦巻くなか、俺のリーダー生活が始まった!

ということで、第1話は、私がPMチームのリーダーになった2016年ごろについて振り返ります。

突然のリーダーの退職で、自分がリーダーに

新卒4年目でプロジェクトマネージャーチームのサブリーダーになりました。当時のリーダーの主な業務は、リソース・アサイン管理、トラブル対応、育成などなどでした。自分の案件を担当しながらサブリーダーをこなす、プレイングマネージャーの状態だったのですが、1年半ほどでリーダーが退職して、私がリーダーになりました。

リーダーを引き継いだ段階で、業務は体系化されていたわけではなくて、私もリーダー未経験だし、PMとしても未経験。経験値がぜんぜんなかったので、手探りの状態がけっこう続きました。その結果として、トラブル対応とかアサイン対応をさばくのに必死な日々が2016年から続いてきました。

PMの役割定義がない

この当時の事業部におけるPM(プロジェクトマネージャー)の立ち位置を紹介します。PMチーム自体は2014年頃発足したらしいです。当時の詳細は不明なのですが、企画力はもちろん、もっと安定的な制作を目指して事業部として力を入れていきたいという意図だったように思います。

ただ、PMチームとして集められたメンバーのモチベーションとかスキル・キャリアはバラバラで、決してプロジェクトマネジメントに対して専門性をもつメンバーが集まったわけではありませんでした。事業部においては、プロジェクトマネージャーといっても人によって解釈がバラバラな状態で、立ち位置がすごくふわっとして、役割が定義されていない状態でした。

ちなみに当時、私もPMについてきちんと理解していなかったということは、ちょっとここで申し上げておきます。

圧倒的前途多難。はたしてカヌーにリーダーは務まるのか!? ということで、第2話にまいります。

PMチームリーダー伝カヌー第2話、「食い止めろ! チーム崩壊」

俺の名はカヌー。PMチームのリーダーさ。リーダーになってからは苦労の連続だった。疲弊するメンバー、相次ぐ退職、終わらないトラブル対応、詰められる会議。それでも1on1でメンバーとの心を通わせ、なんとかチームを保っていたんだ。頼りにしていたサブリーダーの退職までは……。

ということで、第2話は「食い止めろ! チーム崩壊」ということで、2017〜2018年ごろの2年間を振り返ります。

立ち位置が定義されないから、評価が曖昧でやりがいがない

まずこの頃の一番重要なトピックは、メンバーの疲弊と退職です。この頃は本当に今振り返っても退職がすごく多くて、私も何人見送ったことかと思って2017年のメンバーをひっぱり出してきたんですけど、当時16人いたメンバーの中で今残っているのが、私を含め3人ですね。今はそんなことはありませんが、当時は事業部の異動とかチームの異動とか、大部分が異動や退職してしまいました。

なんでこんなにメンバーが疲れてしまって、こんなに退職が多いのかなということを考えてみたのですが、先ほども申し上げたとおり、事業部の中でPMの立ち位置が定義されていないことで、今書いてあるような状況が起きてたかなと思います。

例えば「がんばっても成果が出たかわからずに、周りからも評価されにくい」だとか「やりがいがない」とか。あと「育成がうまくいかなくて非効率な進行とかトラブルが発生しがち」だったりとか。それから「成長が実感できない」。こうしたことが、役割が定義されていないことで、けっこう発生していたかなと思っています。

苦肉の策の1on1

ちょっとこれはなんとかせねばと思って、苦肉の策というか、直感的に始めたのが週1回30分の1on1でした。これを当時10人前後のメンバーに対して全員行いました。

1on1というのは、相手の対象者に対して、問いかけで気づきを与えて自発的な成長をうながすのが本来の役割だと思うのですが、この1on1に関しては、テンション的には飲み屋で先輩が後輩の愚痴を聞くのにけっこう近かったかなと思っています。この1on1によって、トラブル対応のときの詳細なヒアリングとか早期対応、それから本人のケア、そして私とメンバーやメンバー同士のリレーション強化が実現できたかなと思います。

ただ、先ほど申し上げた、本来の1on1の目的である自発的な気づきを促すとか成長促進には活用できなかったかなというのが正直なところです。

とどめのサブリーダー退職

そんなこんなで状況は悪くなるばかりって感じだったのですが、この1on1でなんとかチームのリレーションを維持していた状況だったんですが、ここにとどめが来まして、頼りにしていたサブリーダーが退職してしまいました。このときはガチで泣きましたね。

サブリーダーを指名して半年ぐらい経ったところで、私とサブリーダーで「PMチーム、もっとこうしたら強くなるよね」とか「こうしたらみんな成長できるよね」とかということを話して方向性が見えた矢先で、「実は退職したい」ということを聞いたので、すごくショックでした。

一番堪えたのが、チームの方向性を1人で考えなければならないことが未経験からスタートした私としては非常に……なんていうか、どうしていいかわからず、孤独でしかたないというような日々を過ごしていたのが2018年の後半ぐらいです。

崩壊の一途を辿るチーム。彼らに未来はあるのか? ということで第3話にまいります。

PMチームリーダー伝カヌー第3話、「起死回生の武器ピンボック」。

俺の名前はカヌー。PMチームのリーダーさ。サブリーダーの退職で完全にやられちまった俺は途方に暮れていた。そんな俺を見るに見かねた役員が2人の勇者を引き合わせてくれたんだ。彼らがもたらしたPMBOKを武器に、チームの起死回生が今始まる!

ということで、第3話は昨年、2019年を振り返ります。

PMについて話し合い、PMBOKをはじめる

本当にズタボロだったっぽくて、そんな私を見かねたカヤック代表の1人であるcapという、久場ですね、とても気のよいおじさんがいるのですが、彼が2人の人を引き合わせてくれました。

1人が今日も参加している事業部長の渡邉です。ういっちです。一応手を挙げてもらえますか? はい、ういっちさんです。

渡邉は、前職や弊社の中でも別の事業部でPMを経験していたということと、あとは外部アドバイザーでANTzという会社の敏蔭さんという方、こちら弊社と同じく鎌倉にある会社なんですけれども、こちらの敏蔭さんが外部アドバイザーとして参加してもらって、PMチームをどうしていこうかということを一緒に相談できるようになりました。

この2人に加えて、もともとチームの中にいた元エンジニアの松田さんというPMの人と、(未経験という意で)逆に新卒の湯川くんを加えて、この4人で毎週1時間、PMチームをどうしていくか、どういう取り組みをしていくかということを話し合うようになりました。

そこですごく初期に話していたこととしては、そもそもPMって役割の名前とかPMチームというチームが先にできただけであって、中にいる人たちがPMに関して、すごくよく理解しているわけではなかったので、まずはそこを自分たちで、一から知るところから始めようという話になり、ちょっとこれ恥ずかしいかぎりなんですけれども、PMBOKの学習をPMチーム全体で始めました。

ロフトワークさんが出している「Webプロジェクトマネジメント標準」というPMBOKの指南書みたいなものがあるんですけど、こちらを週1回、ページを決めて輪読していくことをやり、半年で読み切りました。

1つの方法論をチーム全体で学習したことで、客観的に体系化された知識でPMに関する共通認識がチーム内に生まれました。これが今後、今も続くいろいろなPMチームの活動の最も基礎的な取り組みになっています。

単純にチーム全体で1つのことに取り組んだので、すごく一体感が高まりました。そういう効果もありました。一応この場を借りて、全員やりきってくれたことに感謝の意を表したいと思います。

共通の計画ツールと報告ツールで、具体化が可能に

このPMBOKの学習が2019年前半の半年を使って行われたのですが、共通認識を作ったあとは具体的な行動にそれを落としていきましょうということで、共通の武器として、プロジェクトマネジメント用のツールを作りました。

それがこちらのプロジェクト計画ツールと報告ツールでして、プロジェクトマネジメントに必要なプロジェクト憲章とかWBSとかスケジュール、それからスコープの定義書だったり、もろもろの資料のフォーマットをスプレッド形式でまとめたものです。

学習したことをプロジェクトの中で、このツールを使ってメンバーが具体的に実行していけること。そして同じフォーマットを使うので、ほかの人がやっているプロジェクトに関しても同じフォーマットで理解できるとか、未来のメンバーに対して実績を残していけるというところで、こうしたフォーマットの共通化は、非常によかったかなと思っています。

PMBOKという共通認識で情報伝達がスムーズに

プロジェクト計画のレビューと報告を定例会でやり始めたというのが、ここに書いてある取り組みです。週1回の定例会で特定の案件に対してプロジェクト計画のレビューを行ったり、プロジェクトが終わったあとにプロジェクト報告をまとめてもらって、それをみなさんPMチームの全員に共有するということを始めました。

これもPMBOKという1つの共通認識があるので、情報伝達が非常にスムーズになったと感じています。それから参加者が非常に定例の意味を感じることができる有意義なものになったと私は感じていて、2018年に比べて非常に参加率が向上しました。

今は人がたくさん増えているし、みんなすごく、発表に興味をもって聞いてくれたり、自発的な質問も非常に増えました。ということで、PMチーム定例は、こんな様子でやっていますという紹介でした。

PMチームリーダー伝カヌー最終話、「PMチームよ、永遠に……」。

それでは次が最後ですね。今では生まれ変わったPMチーム。彼らは今を、そしてこれからを、どう生きるのでしょうか? 最終話をご覧ください。

俺の名はカヌー。PMチームのリーダーさ。PMBOKを手にした俺たちは不死鳥のごとき生還を果たした。だが、油断は禁物だ。俺たちの行く手にはまだ見ぬ大型案件が待っている。いくぞ、俺たちの戦いはこれからだ!

ということで、最終話は一応今まで話したことのまとめとこれからの展望を話します。

今日のまとめ

まず、まとめです。状況・原因・対策ということでまとめました。案件を安定的に進行できず、トラブルが発生しがちでした。メンバーが疲弊したり、成長や活躍を実感できませんでした。それが退職や異動につながってました。という状況がありました。

いろいろな原因があるのですが、根本的な原因の最もコアなところは、役割の定義や共通認識がもててないことだったと今となっては思います。

そこに対する対応として具体的にやったことを4点まとめました。1つが1on1。これはメンバーへのケアやチームのリレーション維持ですね。2点目がPMBOKの学習。PMがやるべきことや職責について共通認識をつくることで学習をしました。

そしてツールの共通化ですね。これは知見を同じフォーマットで組織に貯める、共有することを目的にやりました。週1定例で事例の共有です。知見共有とスキルの底上げですね。チーム全体で成長していきましょうということで実行しています。

そしてこれから

最後に、これからです。

最初の1点目。これから、まずPMチーム以外にも共通認識を広げて……。あっ、今ですね。PMBOKの学習はPMチームだけでやったんですが、PMチームの中での認識は共通になったものの、これが事業部全体にちゃんと広がっているかというと決してそうではなくて……。

去年とか今年にかけて、「PMBOKというのを学習しましたよ。PMというものはこういう定義がありますよ。こういう定義に照らし合わせると今はこういう実力なので、今後こういうところを伸ばしますよ」というような報告とか共有は事業部全体でもやってはいるのですが、まだまだです。これを事業部全体に広げていきたいというのが、今後1つやりたいことです。

2点目は、「今なにができて、次はどこを伸ばすか?」ということが感覚的に管理されているので、これを本人も周囲もわかるようにスキルを可視化することを今年やっていこうかなと思っています。

またメンバー自身が担当した案件で、「自分はこういうことをやりました」という実績を説明できるように、案件の実績や蓄積・取りまとめていきたいなと思っています。知識のアップデートを常に行う仕組みというのもやりたいと思っています。

というのも、PMBOKって正直、目新しい手法ではないと思いますし、最近のトレンドというわけでもないと思うので、基礎的な入り口としては非常によかったと思うのですが、今後も新しい手法をどんどん取り入れていって、どんな現場でも弊社のPMのメンバーが活躍できるようにしていきたいなと思っています。

これらの取り組みが最終的に実を結んだときはどうなるかというと、面白法人ならではのプロジェクトマネージャーとかその強みが確立・言語化されるのではないかなぁと思って、そこを目指して、いろいろな取り組みをしています。

次のスライド、何だっけな。これ今言っていいのかな? お知らせとして、弊社のクライアントワーク事業部でPMとして働いてみたい方を募集します。今のふざけたプレゼンで興味をおもちいただいた方は、たぶんきっと弊社に合う方だと思いますので、ぜひ応募よろしくお願いいたします。

それから、これですね。ご清聴ありがとうございました! 次回作にご期待ください! ということで、以上でございます。ありがとうございました。

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