2024.10.01
自社の社内情報を未来の“ゴミ”にしないための備え 「情報量が多すぎる」時代がもたらす課題とは?
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太田満久氏(以下、太田):先程も少し触れましたが、僕がベンチャー時代に入って一番よかったなと思ったのが、経営陣との距離感です。
今もブレインパッドの経営陣はフラットで、すごくしゃべりやすいんです。たださすがに300人いると、1対1でしゃべったり飲みに行ったりする機会は減ってしまうんですよね。当時60人だと、なんだかんだいって定期的に月に1回、それ以外にもイベントがあったりして飲みに行って話すこともできました。
またプロジェクトも、マネジメントする人が少ないので、場合によっては社長が自ら関わってくれることがあります。そういうプロジェクトを通じて、新卒一年目のころから社長から直接アドバイスをもらうことがあって、それはよかったなと思います。
規模が小さいと、経営陣との距離が縮まって何を考えているかを把握することができて、それが自分自身のモチベーションにつながっていく、そういう流れはよかったなと思います。
(スライド)今は、どうかというと、こう書くと今の距離感は遠いんじゃないかと思われるかもしれませんが、実は経営陣はけっこうがんばってコミュニケーションをとってくれています。
その経営陣に言われたことで僕がすごく印象に残っているものの1つ目が、「Quick & Dirty」という言葉です。入社して数年後ぐらいに、今の会長に言われた言葉で、今でもこれはすごく大事だなと思っています。
何かというと、QuickとDirtyなので、完璧じゃない状態でとにかくアウトプットだけ出しましょうという仕事のスタイルのことですね。「とりあえず作りました。エイ!」って出して、フィードバックをもらって改善してもう1回出す、それを繰り返していくような仕事の進め方です。
高学歴な人間ってけっこうプライドが高い人が多いので、これを嫌がるんですよね。どうしても完璧にしてから見せようとするのですが、それは多くの場合時間の無駄なんです。雑な状態で1回見せてフィードバックをもらって改善するというステップの癖をつけないといけない。これを教えてくれたのが今の会長です。
これによって僕は仕事の効率が相当上がったので、みなさんにも実践してほしいと思います。完璧である必要はないので、早くアウトプットを出しましょう。1回アウトプット出しておしまいじゃなくて、フィードバックをもらってもう1回出すことを繰り返すということですね。
僕もやっぱりプライドが高くて、それが邪魔をしてすぐに考え込んで完璧を目指そうとしてしまうので、今でも常に意識するようにしています。
入社から2年でリーダーになりました。4年で部長になって、リーダー1年目は2人の部隊でしたが、難しい内容は部下にほとんど任せないで自分で実装していました。なぜかというと、部下に任せないで自分でやったほうが実際早いし、質もコントロールできると思ったからです。
自分ができることを部下ができていないところをみると、すごくイライラしてしまうのでそうしてしまったのですが、結局そのときの部下は違う会社に転職してしまって、落ち込んだことがありました。
そんなときに上司に言われてすごく印象に残っているのが、「『株式会社おおたまん』だと思ってやってみな」という一言です。これはすごく抽象的なので、人によって解釈が違うかもしれませんが、個人的にはたぶんこれは「もっと自由に考えな」ということを言ってたのかなと思っています。
自分の会社だと思うと、最初にそもそも「何をしたいんだっけ?」というのを本気で考えます。その次に、やりたいことがわかったら「どうやったらそれできるんだっけ?」というのを本気で考えます。
マネージャーになると自分の権限が与えられます。責任も与えられます。そうなったとき、新人マネージャーがわかっていない「自由」がたくさんあります。例えば「部長はこれだけお金使っていいですよ」とか「この範囲の採用権限ありますよ」みたいな話があります。それをちゃんと活用できればよいのですが、今まで使ったことがないのでどういうふうに使ったらよいかわからないので使わない。
本当は自由が与えられているのに、今までと同じ範囲で考えている限りは、それを活かしきれないんです。それをちゃんと活かしきるということをやるためには、これは自分の会社なんだ、じぶんごとだと思って、変な制約、思考の壁を取り除いて、できるかぎり自由になんでもできると思ってやらないといけない。
それが「『株式会社おおたまん』だと思ってやってみな」ということだったかなと思っています。これもすごく心に残っていて、僕はもうずっとこれを意識しています。
さて、そうこうするうちにAIブームが来ました。AIブームが到来して競合が増えてきました。当時僕は、ブレインパッドの強みである総合力をもっと伸ばさねばと思いました。
開発と分析の両方ができる人材が少なかったので、両方ができる人材を育てるよりは、開発者、エンジニアとデータサイエンティストを連携できるような仕組みを作るのがいいんじゃないかなと考えました。
そのあたりから、ずっと思っているのが、人をつなぐことのおもしろさです。今実際にいろんなコミュニティをやっていますが、データサイエンティストとエンジニアとか、ビジネスサイドの人と研究者とか、専門性の違う人たちをつなげるのはかなりおもしろいなと思っています。もし興味があれば、みなさんもぜひやってみてください。
人をつなごうとすると、話をするのは自分とは違う分野の専門家になります。自分より詳しい人の価値観にたくさん触れることができるし、「そういうふうに思うんだ」とか「そう考えるんだ」というのを知ることができます。しかも、自分自身が専門家じゃないにも関わらず、そういう専門家のすごい人たちに価値を提供できるというのが、個人的にはとても嬉しいし、やっていて楽しいです。
そういうのもあって、ここ数年間、コミュニティ活動をやっています。具体的には、TensorFlow User Groupのオーガナイザーが一番最初でした。それをきっかけに、「あっ、これ、人と人をつなぐのおもしろいな」と思って、他のコミュニティ活動もやるようになりました。
TensorFlow User Groupの次はGDEですね。Google Developer Expertとしていろんなところで登壇して、その場の人たちとコミュニケーションをとる。他にはQCXという量子コンピュータ関係のイベントの開催をお手伝いしたりとか、そういうこともやりました。そういうコミュニティ活動をしていて思うんですが、好循環の自己強化ループに自分を巻き込むのがすごく大事です。
好循環の自己強化ループ、例えばそれを登壇という意味だとすると、まずは登壇してみます。そうすると、その場で20人とか30人、ここにいる人はたぶん50人ぐらいいると思いますが、その50人が名前を知ってくれるわけですよね。その中にほかのイベントをやっている人がいて声をかけてくれます。そうすると、次にそのイベントで登壇します。そこで聞いてくれてる人が名前を知ってくれて、また声をかけてくれます。こういう好循環のループを回すことができます。
1回このループに入っちゃうと、けっこう簡単にいろいろ声をかけてもらい、登壇して、というステップを踏むことができるんですけれども、やっぱり一番難しいのが最初にどうやって入るかという点なんですよね。そこは勇気を振り絞って、LTでもいいしすごく簡単なところでいいので、ホイッと入ってやってみる必要があります。はじめの一歩を踏み出すことがすごく大事です。
今はブレインパッドのChief Data Technology Officerになり、新米のCDTOとして何をすべきかを試行錯誤している最中です。役割の定義が明確じゃないので難しいなと思うんですけれども、さっき言ったみたいに、現場と経営をつなげるとか、技術サイドとビジネスサイドをつなげるとか、そういった「つなぐ仕事」を主にしていこうと考えています。そして、今の会社に足りないことを探し出して解決したり、目先の利益じゃなくて会社のミッションを体現するような仕事を推進することもやるつもりです。
まとめですが、就職して10年が経ちました。今までいくつかあったと思いますが、その中で自分に大きな影響を与えたくれたのは何かなと考えると、1つ目は「Quick & Dirty」。完璧を求めないで、とにかく早くアウトプットを出してフィードバックのループを回しましょうという話。
2つ目が「『株式会社おおたまん』だと思ってやってみな」。これは、本当に自分は自由なんだと思ってあらゆる選択肢をちゃんと試してみるとか、あとはちゃんと自分事化するということかなと思います。
最後に、「人とをつなぐおもしろさ」というのがあったかなと。この3つぐらいが今の自分を支えてくれていることかなと思っています。
短い時間だったので、サラッとお話させていただきましたが、みなさんの参考になる話がもしあったならよかったと思います。以上です。ありがとうございました。
(会場拍手)
司会者:太田さん、ありがとうございました。それでは、質問を受け付けます。
質問者1:はじめまして。今回LTに出させていただいたYasshieeeeと申します。LTでは、未来の機械学習エンジニアと僕しゃべったと思うんですけれども、僕が内定もらっているところは、ブレインパッドさんみたいに自社製品を持っていません。いわゆるベンダー企業といいますか。これから先、自社開発の製品を持っていないデータサイエンス系の企業に入る新卒の僕は、具体的にどうしたらいいかという提案があったらお聞きしたいです。
太田:広いですね(笑)。まず、自社プロダクトがあるかないかってあまり気にしなくていいと思います。自社プロダクトがないと、なにが不安なのでしょうか? ブレインパッドも、データサイエンティストに関して言えば、自社プロダクトに関わっていない人が大半で、受託分析で仕事をしています。
うちの会社で受託分析をやっていることが、データサイエンティストにとってのメリットの一つになるのは、いろんなデータに触れることです。自社プロダクトだと1つのデータ、1種類のデータがあって……まぁ1種類ではないですが、それでも似たような種類のデータがあって、基本的には、それをどうやって解析しますかという話になります。それは1つの問題を深い背景知識を使ってとことん突き詰めていく人にはすごく向いていると思います。
一方でうちのブレインパッドのような受託分析をやっているところだと、いろんなデータに幅広く触れることができるのは、すごいメリットだなと思います。
就職説明会のときでも「うちの会社だとこういうデータを扱いますよ」って言います。例えば時系列データみたいなのがあれば、画像も当然あるし、動画を使うこともあるし、本当にいろんなデータがあるんですね。そういういろんなデータを使えることはメリットだと思うので、そういうところをちゃんと伸ばしていくとよいのかなと思います。
もう少し広くデータサイエンティストだからとか機械学習エンジニアだからというのを外して考えるのであれば、僕はたぶん、ここに書いてないんですけれども、一番重要なスキルって物事をちゃんと楽しめることかなと思うんですよね。おもしろいと思うのって、実際それはスキルだと思う……おもしろいことは見つけ出せばいい。
僕は何をするにしても、その中からおもしろさを見出して自分なりの解釈をつけてやっていく、というのができました。だから、1〜2年目とかは、けっこう大変な状況ではあったんですけど、ぜんぜん楽しめたし、そのおかげで、ちゃんと自分自身を育てることができたと思っています。
自分に合う仕事を見つけましょうみたいな話をよくされると思うんですけれども、今自分が考えている範囲でおもしろいことを見つけるのってけっこう難しいと思います。タイミングもあるし、自分のやりたいことをやらせてくれる可能性はそんなに高くない。なかなかマッチしないです。少し考え方を変えて、おもしろいことを自分から見つけ出すようにすると、マッチする確率が高くなるので、すごくいいと思います。
この回答で大丈夫ですか? なんかふわっとしてますけど。
質問者1 :大丈夫です。ありがとうございます。
質問者2:今回お話の中でブレインパッド社さんの中でのお話が多かったんですけど、外との関わりのところでちょっとお聞きしたくて。
例えば、この9年のなかで、会社としてどういう見られ方をしてきて上場を機に変わってきたとか。あとは受託で受ける案件として、いわゆるAIブームみたいのもあってどういうふうに変わってきたみたいなところを、お話しできる範囲でお聞きできるとうれしいです。
太田:まず創業期は、社長・会長がよく言っていたのは、予測分析みたいのを売りに行くと、「なんか占い師的なことを言っている人が来てるんですけど……」という対応されたって言ってましたね。15年ぐらい前。
僕がいたときにはもうそういう雰囲気はなくて。ただ、予測というよりは、基礎集計をして分析しますということが多かったです。だから、今でいうBIツール的な可視化みたいなこととか、あとはVBA使ってみたいなことが多かったんですね。
そのあと、AIブーム、データサイエンティストブームが来てからは、今みたいな見られ方をされています。
あとは、ブレインパッドを受けに来る人たちも変わっています。やっぱり今はわりと一部上場……一部って意識してるかわからないですけれども、わりと安定した会社であるブレインパッド、わりと分析業界では有名なブレインパッドに入ってこようとする人が多いという印象です。
僕のときはまだまだそんな、そもそもデータ分析業界なんかなかったので、いろんな人がいるなというような感じですね。なので、情報系の人とかほとんどいなくて、むしろ「心理学やってました」とか、そういったちょっと統計を使ったことがありますという人がデータサイエンティスト……当時は分析官とかデータマイニングする人とか呼ばれていたんですが、そういう方が多かったかなと思います。
質問者2:ありがとうございます。
司会者:太田さん、ありがとうございました。
(会場拍手)
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