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社会人1年目で地方フルリモートワークに挑戦してみて(全1記事)

新卒エンジニアが地方フルリモートワークに挑戦してみて感じたこと

2019年11月29日、Gaiax Technical Meetupsが主催するイベント「地元に貢献している(したい)ローカルエンジニア交流会 」が開催されました。地方で働いている、もしくは地方の仕事を東京でやっている“ローカルエンジニア”たちが一堂に会し、どのような活動を行っているか、活動を行ってきた中での苦労話など、さまざまな観点から自身の知見を語ります。プレゼンテーション「社会人1年目で地方フルリモートワークに挑戦してみて」に登壇したのは、株式会社ガイアックスの中村優氏。

社会人1年目で地方フルリモートに挑戦してみて

中村優 氏(以下、中村):社会人1年目なんですが、地方フルリモートワークにチャレンジしてみた話をしたいと思います。よろしくお願いします。

(会場拍手)

広島出身の人はいらっしゃいますか?

(会場挙手)

ありがとうございます。あまりいないということで、今日は広島のネタをふんだんに仕込んできました。

(会場笑)

今日のスライドの半分以上は広島の話になると思うので。よろしくお願いします。

今はガイアックスという、このイベントを主催している会社のソーシャルメディアマーケティングの事業部に所属しているエンジニアです。

いわゆるSNSのデータ解析の基盤構築をしたり、作ったものを運用したりしています。最近興味があるのはドメイン駆動設計で、仕事柄DjangoやPythonを使うことが多いのでその辺の研究をしたり、Pythonに型を入れてみよう、みたいなところを模索したりしています。

自己紹介を兼ねて学生時代の話をしたいと思います。

僕は高専出身で、もともと電気系の学科にいました。モーターを回したりVerilogHDLを書いたりしていました。ですがWeb系にも興味があったので独学でPHPやCakePHPを触ったりしていました。

当時、東京に行く機会があったので東京のイベントに参加してみたのですが、地元と比べて情報の量と質がぜんぜん違うと感じました。学生時代は僕の周りにたまたま強いエンジニアが多かったということもあり、どちらかと言うとその人たちと上手くコミュニケーションを取って「みんなで協力して1つのプロダクトを作れる」というビジネス職に興味がありました。

その延長で、高専で「プロジェクトベースの授業もやってみよう」みたいな動きがあり、僕は空き家がめちゃくちゃ増えているので、それを改修をして地域に還元するという活動をやりました。やってはみたものの、授業自体がめちゃくちゃ新しかったので、ステークホルダーが多すぎたり、環境がなかなか整っていないという状況がありました。

その空き家の所有者のNPOのこだわりが強くて学生のチャレンジ精神をかき消してしまっていたり、学校もそれをあまり把握しないままお願いしてしまって、「ちょっとね……」みたいな感じに言われたりしました。そういった思惑の違いに板挟みになって、その地域課題のリアルみたいな、そういったものに直面しました。地方で動かれている方にとってはあるあるな話なようでして、その泥沼感が逆に楽しかったみたいな、そんな感じでした。

そういったことを一通りやってみたものの、就職を考え出すタイミングで改めて自分の専門と向き合いまして、やっぱりテクノロジーはおもしろいなと思いました。学生時代は画像認識を応用してプログラミングの教材を作ってみたりとか、VerilogHDLの環境を作ってシンセを作ってみたり、そんなことをやっていました。この辺りからPythonやDjangoを触ってみた感じですね。

よくわかる広島のこと

今日話すことは広島なんですが、先ほども話したように今日は合法的に東京で広島のことが喋れるということなので、広島についてお話したいと思います。

(会場笑)

広島はこの赤いところにあります。

瀬戸内に面していますね。広島と言えば、みなさんお好み焼きを想像すると思いますが、広島県民はお好み焼きは好きだけどさすがに毎日は食べないです。

あとは「広島風」とか「広島焼」と言ったら、だいたいしかめっ面されます。

(会場笑)

絶対に言っちゃ駄目ですね。ちなみにお好み焼きをWikipediaで調べると「広島風」と書いてあります。

ここはグッと飲み込んで広島風お好み焼きの記事を見ると、中村善二郎という名前が出てきます。僕、中村なんですが、実は僕の曽祖父が広島のお好み焼きの元祖を創業した人です。

なので、今日この場にいる方々は、「広島風」と言わないように気をつけてください。

(会場笑)

あと広島は「動く路面電車の博物館」と言われていて、路面電車は広島市民も使うし観光客も足として使っています。

どんなところが博物館かと言うと、最新の車両と旧型の車両が普通に動いています。これはけっこうレアで、世界中から古い車両を買ってきて直して使っています。神戸やドイツなどから買って、修復しながら使っています。なんなら原爆で被爆した電車も今も走っています。

この651は原爆の車両ですね。普通に通勤で乗っていますね。そしてその後ろでは最新車両が走っているという、その辺のカオス感が、僕は好きですね。

なぜこれほど路面電車が定着したというと、実は裏があります。広島には地下鉄がないんですね。仙台にはあって広島にはないのですが、広島は三角州で川に囲まれているので、地面を掘ると水が出てきて採算が合わないんですね。そんな背景で、地下鉄がありません。

路面電車はもともとあったのですが、1960年代当時、みんなが自動車を買い始めた時代にこんな標識ができ始めました。「軌道敷内通行可」という標識で、車が路面電車の線路をまたいで通行しても良いという標識です。これを京都で導入したのですが、その結果、京都では路面電車の定時性が失われて、どんどん電車に乗らなくなって廃線になってしまいました。

広島はそれを察知して、実は「軌道敷内通行可」の標識を置いていません。その結果、広島の路面電車は定時性がめちゃくちゃ高いので、時間通りに来てくれる。だから観光客も使うし、市民も朝の通勤にも使える。だから生き残っているという、そんな背景があります。

ちなみに都内では都電荒川線に「軌道敷内通行可」の標識があるらしいので、物好きな方は探しに行ってみてください。

それ以外だと、広島はレモンの国内生産量No1だったり牡蠣が有名ですね。

あとはハリウッドでも使われている化粧筆のシェア率が8割で、他にはバレーボールも作ったりしています。あとは『ぷよぷよ』の故郷ですね。やすりの国内シェア95パーセントのやすり団地があったりとか、ダイソーの本社も広島にあります。

そんな街に住んでいますということで、ここまでだいたいスライド44枚分お話ししました。

リモートワークまでの経緯

それではここからが本題です。リモートワークすることになりました! もともと高専の授業の中で長期インターンシップというのがあって、そこで3ヶ月ぐらい現職にガイアックスでインターンをしていました。働いた後にいろいろ経験させてもらって「リモートでもやってみない?」という話になって、広島に戻ってからも学生生活を送りつつ東京で働くというチャレンジさせてもらっていました。

就職を考えて就活もしてみたのですが、最初に話したように地域の課題に強く関心を持っていたので、広島にこのまま残って地域のことをやりたいなと思いつつも、エンジニアとして東京でキャリアを重ねたいという思いもあり、かなり悩みました。

一時は母校の職員で技術系の情シスみたいなポジションがちょうど空くという話もあったので、そこに行こうかなとも考えたのですが、インターン先の上長から「このままリモートで働いたらいいじゃん!」と言われて「なるほど! じゃあ、それで!」という流れでリモートワークをすることになりました。

どうしてこんなにうまく行ったのかと言うと、そもそもうちの部署全体でリモート化を進めていこうという流れがありました。

そもそもオフィス来ても固定席がほとんどなくて、1席しか空いていない。だからみんな好きにコワーキングスペースを契約しています。会社からリモートワークの補助金が月額1万円支給されるので「みんな自分の好きな場所で働きたいよね」ということで、秋葉原が近い人は秋葉原のコワーキングスペースを契約するし、僕は広島のコワーキングスペースと契約しているという、そんな感じです。

その流れに乗っかって関東圏から飛び出したのですが、とは言えインプットを含んで1.5ヶ月に1回上京しています。

地元のイベントに参加してみる

実際に広島に住んでみて、そもそもこれまで知らなかった地元のイベントに参加することができたなと思っています。東京にいると東京のイベントしかなかなか行けないのですが、地方のイベントをあえて探してみると、意外といろいろあります。先ほど話のあった沖縄のイベントもそうですし、北海道でも事例がありましたが、広島にもたくさんありました。

広島では、ハッカソンが比較的活発に開催されている印象で、そこでつながってハッカソン知り合いができたりということはよくあります。

余談なんですが、イベントの情報をキャッチするのも大変なので、connpassで6時間に1回ぐらいcronで取ってきてSlackに通知を送るGASを書いたりしたら、けっこう捗りました。たまに東京のイベントに広島大学の教授が出る、みたいな通知も来てしまうので、そこまで作り込んではいないのですが。

他にもイベントの運営をちょっとお手伝いしていて、PyCon JPのローカル版、PyCon mini Hiroshimaの運営をやったりしました。

ちょうど先々月ぐらいですね。それに会社を巻き込んで、「協賛お願いできませんか!?」「いいよ!」みたいな感じで会社に協賛してもらったりしました。

逆に普段東京で開催している会社のイベントも、地方出張版みたいな感じで「広島でやりましょうよ!」と言って広島で開催したりとか。

そういう本当に小さなことですが、積み重ねでいろいろとチャレンジできたなと思っています。

あとは母校の高専から「新しい働き方をしているのでぜひ喋ってよ」みたいな感じで、高校1年生の年齢の、15、6歳の学生たちにいろいろ話をしたりしました。「自分の好きなことをやりなよ」とか「あまり先生の言いなりになるなよ」みたいな話をした覚えがあります。

(会場笑)

あとは県庁とも仲良くさせてもらっていて、今後AI人材を強化したいとか、僕がやっているような先進的な働き方をもっと発信したいということでお話する機会が度々ありまして、また取材させてほしいという話が来たりします。

あとはマイナビさんにも、どこからどう伺ったかわからないんですけど取材していただいたり、ローカルテレビに自分のインタビューのシーンがが流れて、友だちからDMが送られてきたりしています。

広島に住んでみて感じた課題

広島に住んでみてどんな課題があるのかというと、やはり情報格差を感じます。情報が関西や関東に集中するのは、もはやしょうがないなと思っています。どちらかと言うと情報があることをわかっている状態で、ここは絶対外せないよねというタイミングでそこに取りに行くことが大切かなと思います。

僕はPythonの情報は特に察知するようにしているのでPyCon JPは欠かさず参加したり、そういった心掛けが大事なんだろうなと思ってます。

あとは実際に住んでみるとわかるのですが、地方で自分と同じ年ぐらいの社会人1年目のエンジニアとはなかなか巡り会えないなと思いました。もしかしたらまだ出会えていないだけかもしれませんが、多いのは30代から40代でUターン的に戻ってきた方とか、情シスでやっていますという方が多い印象です。

逆に、僕よりもっと若い人、10代の学生さんはけっこう多いのですが、卒業した学生の多くは首都圏に行ってしまうという感じですね。

最近サイボウズさんが広島に拠点を構えたり、他にも広島に本社を移して開発部署を設けた会社さんもいらっしゃったり、そういった動きも出てきているので、今後は徐々に増えてくるのかなと思っています。

あとは学生と企業の接点が持ちにくいという状況があります。これは物理的な接点ですね。まず学生と企業の生活圏が違くて、例えると都心と筑波大学ぐらいの距離があります。筑波大学にしか学生がいない、都心にしかビジネスマンがいないという状態になってしまって、会おうと思ったら会えるけど、毎日会う感じではない。それぐらい微妙な距離感になっているので、定常的に付き合うというのはいまのところあまり聞きません。

あとは県内の企業でもインターンもあるものの、LINEさんのようにオープンに募集しているというよりは、結構リファラルな感じで紹介されることが多い印象です。

なので学生と現場のエンジニアが一緒に何か作るという機会は、ハッカソンを含めてけっこう限られているということを、半年ぐらい住んでみて感じました。

チャレンジしていること

それを踏まえて、最後にこんなチャレンジをしたいという宣言して終わりたいと思います。個人的にやりたいこととして、情報格差という話もしたんですけど、それ以上に経験の格差がすごいと僕も地方出身として思うところがあって、そういう若い人たちの経験できる場を作っていきたいなと思っています。

先ほど竹内さんの発表に僕もすごい共感したんですけど、学生と社会人が利害なくカジュアルに接することができる、どうでもいいと言えばどうでもいい居場所だけど、すごい大事な経験ができる場というのはけっこう鍵なんだろうなと思っていて、そういう場所を僕も広島で作りたいなと思っています。

広島に作ることがゴールではなくて、これを発端にもっと広げて行けるようにしたいなと思っています。そういった経験を武器に、東京や海外など、もっと濃い経験ができる場所につながっていってほしい。例えばPyCon mini Hiroshimaに行ってみて「あ、こういうのがあるんだな」「PyCon JPというのが来年東京で開催するから行ってみよう」とか、そういったワンクッションになる意味で、もっと濃い経験につながって行けたらなと思っています。

その結果として、就職や転職周りで納得感のあるキャリア選択ができる社会になったらなと思っています。

地域でOSSプロジェクトに貢献

ではそのためにどういう場所があったらいいかと考えた時、インターンはすごく良い経験ですしすごく伸びるんですが、むしろインターンと初学者の間の、誰でも参加可能な開発できる空間はあまりないなと思っています。勉強会とはまた違って、学生とエンジニアが一緒に開発できる経験が僕は大事なのではないかと思います。

誰でも参加可能ということで考えてみると、僕はOSSのプロジェクトがそうなのかなと思いました。地域で定期的にOSSのプロジェクトに貢献するってすごくいいなと思って、地域特化型のOSSをコンセプトとして持ってみるのも面白いのではないかと思っています。

こんなコンセプトで、学びの場としてOSSみたいなものも提案できるんじゃないかなと考えています。僕自身OSSの開発をバリバリ経験してきたわけではありませんが、とは言えうずうずしていてもしょうがないので、もともと僕が趣味で開発していた「本をテーマにしたSNS」のプロトタイプを作っていたのですが、それをOSSとして作り直そうとしています。

本のMastodon的な感じでみんなでインスタンスを立てて、本をシェアできるというか「この本持ってるぜ」と共有できるものなのですが、周りの学生たちに声を掛けてみたらけっこう反応が良くて4、5人ぐらいが集まってくれて「ぜひ一緒にやりましょう!」という感じでやっています。

そもそもそんな事例をあまり聞かないので、もし知っている人がいたら教えてください。本当に1ヶ月ぐらい前にキックオフして「やってみよう!」という感じで、週2時間ぐらい固定で時間を取って、それ以外は自由に作業する人は作業するし、しない人はしないしみたいな感じで、まさに来る人拒まず去る人追わずみたいな感じで演ってみています。

基本はオンラインでモブプログラミングをしたり、月1回はオフラインでわいわい開発できるといいなと考えています。

今後は、アプリケーションとしての骨格ができるまではクローズでやってみようと思っています。そして、回り出したら誰でも参加できるかたちにどんどん整えていきたいと思います。とは言えOSSとして意思決定を内々でやるのはそれはそれで良くないので、その辺はもう少し練り直してやっていきたいと思っています。

あとはうちが高専に呼ばれたりといったつながりがあるので、その辺を授業として「こういう取り組みをやってみない?」と打診してみるのも面白いのかなと最近考えています。

以上です。ありがとうございました。

(会場拍手)

広島のIT企業について

司会者:ありがとうございました。中村さんに質問をしたい方は挙手をお願いいたします。

質問者:ありがとうございました。もしかしたらお話にあったかもしれないんですけど、広島県だとどういう種類のIT企業があるんですか? 例えばSIerとか……。

中村:そうですね。SIerさんもいますし、受託をやっていたり、テストを専門にやっている会社もあったりします。また、先ほどの話でもありましたが、ぜんぜん関係ない印刷屋さんの情シスをやられている方とか、外部のエンジニアさんがコミュニティに顔を出してくれて話をしてくれたり、勉強会やコミュニティを運営しているということは結構ありますね。

質問者:テストの会社とかは東京の会社で支社が広島にあるとか……?

中村:いや、広島本社ですね。

質問者:そうなると、やはり開発をバリバリやりたい人はみんな東京に行ったり、いろんなところに散っていってしまう感じですかね?

中村:そうですね。実際そうなってますね。若い人はとくにです。

質問者:ありがとうございます。

司会者:ありがとうございました。もう1人ぐらいいけるかなと思うんですけど、いかがでしょう?

質問者2:発表ありがとうございました。僕自身もPythonを書いている身なので気になったのですが、例えばPyCon mini HiroshimaでPyCon JPと違っている、地域性の特色がある発表なんかはあったりしますか?

中村:ありました。めちゃくちゃおもしろい発表があって、広島はまさに製造業が強いんですが、一方でITが弱いところもあります。広島県内にとある家具屋さんがあって、めちゃくちゃ残業をやって大赤字で存続危機みたいな状態だったのですが、それを黒字化させたPythonのScriptを書いた人が登壇して、けっこうおもしろかったです。

Fusion 360という3Dモデリングソフトがあって、CADをPythonで読んでCSVを入れて自動で図面を書くということをやられていたり、やっていることはそれほど難しいことではないのですが、そこに取り入れてすごいうまくいったというすごく良い話がありました。この辺は広島じゃないと聞けなかったなと感じました。

質問者2:ありがとうございます。

司会者:ありがとうございました。質疑応答の時間は以上とさせていただきます。もう一度拍手のほど、よろしくお願いいたします。中村さん、ありがとうございました。

(会場拍手)

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