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東京にいながらできる小さな貢献(全1記事)

北海道出身のエンジニアが語る、東京にいながらできる地元への技術的貢献

2019年11月29日、Gaiax Technical Meetupsが主催するイベント「地元に貢献している(したい)ローカルエンジニア交流会 」が開催されました。地方で働いている、もしくは地方の仕事を東京でやっている“ローカルエンジニア”たちが一堂に会し、どのような活動を行っているか、活動を行ってきた中での苦労話など、さまざまな観点から自身の知見を語ります。プレゼンテーション「東京にいながらできる小さな貢献」に登壇したのは、株式会社ファームノートの竹内晟雅氏。

東京のエンジニアができる、地方への貢献

竹内晟雅 氏(以下、竹内):では「東京にいながらできる小さな貢献」と題しまして、株式会社ファームノートの竹内が発表させていただきます。よろしくお願いします。

(会場拍手)

自己紹介です。

株式会社ファームノートに所属していまして、職種はインフラ、AWS等のお世話をしています。半年に1回ぐらいは北海道に呼び出されます。

仕事的には酪農×ITという感じでザックリ把握してもらえればいいかなと思います。

本社所在地が北海道帯広市といって、最近だと朝ドラの『なつぞら』とか、あとは『銀の匙』という漫画の舞台になったりしている……田舎ですね。会社の説明はスライドをご覧いただければと思います。第5回日本ベンチャー大賞で農林水産大臣賞を受賞しました。

ではタイトルに戻りまして、とりあえずお聞きしたいのですが、現在地元で何かやっている人はいますか?

(会場挙手)

そうですよね、今日登壇されている方はそうですよね(笑)。

(会場笑)

では、今後地元で何かやりたい人は?

(会場挙手)

これもけっこう多いですね。ありがとうございます。最後に、とりあえずおもしろそうな話が聞けるから来たみたいな感じで来た方はいらっしゃいますか?

(会場挙手)

逆に手が上がらない人はどうして来たのか気になるので、あとで教えてください。

(会場笑)

北海道でやってきたこと

僕は仕事もコミュニティも北海道を拠点にしているというお話をさせていただきます。今度は沖縄の真逆ですね。

先に結論から言うと、僕が現在やっていることは学生時代からの延長でしかなくて、あまり「新しいチャレンジをした!」という話はとくにありませんが、聞いていただければと思います。

先ほど中央にあった点が帯広市なんですけど、他に釧路、北のほうにある赤い点が北見で、左側の点が札幌です。たまに東京の人が「車で函館から札幌に旅行に行こう!」みたいなすごい無茶なことを言っている人がいますが、端のあそこを通っていくので車で4時間ぐらい掛かるので、気軽に札幌と函館を旅行しようみたいなことを考えると結構しんどいです。

釧路にいた頃の話ですが、当時は釧路OSSコミュニティに参加していました。

立ち上げ当初は2人くらいでずっとやっていて、SoftwareDesignを読んでみんなで内容について話したりする、そんなコミュニティに顔を出すようになりました。

次に、道内でOSC Hokkaidoというオープンソースカンファレンスに参加しました。これは沖縄から北海道まで日本全国の各地で開催されているカンファレンスです。あとはLOCALという北海道内のITコミュニティで主催しているエンジニアイベントだったりとか、そこの学生部で北海道内の学生を集めて発表会や勉強会をやったりしました。

Ohotechという北見工業大学の学生達が主催していたコミュニティの勉強会で、月1ぐらいで大きい会をやろうということで、MAXで2~30人ぐらいは参加していました。その勉強会に遊びに行ったりしていました。

LOCAL学生部は当時のイベント参加登録者などを見ると全部で18人なので、わりと多いほうかなと思います。車で片道4時間とか6時間という、なかなか集まれないところから集まったりもしています。

飛び抜けた技術力がなくても貢献できる

途中で一般社団法人LOCALが出てきましたが、やっていることはコミュニティの支援と、勉強会に行きたい学生に対しては交通費を支援しています。また、イベントをそれぞれ独自で開催したりもしています。

学生時代から今の会社のサミットがあったので、それに参加したり、わりとアンテナを広げていろいろと動いていまいた。

あとは勉強会とかに参加すると、おじさんたちと交流する場がありました。学生同士の交流もそうですし、地元の帯広には学生時代は本当に帰省するぐらいだったので、あとはコミュニティの人たちと遊んでたりとか、そういう感じですね。

学生時代によくしてもらった経験があるので、社会人になってからも交流が続いていました。学生時代の同級生とは一緒に東京に出てきたら「今何してる?」といった情報交換もしましたが、逆に北海道にいるおじさんたちから「すごい楽しそうなことをやってるから北海道に来ない?」と言われて、それで北海道に帰っておじさんたちと一緒に遊ぶということをやったりしました。これはけっこう長い時間続いていました。

東京に出て来てからも北海道によく戻っていたのですが、社会人になって1年目、2年目くらいには地元で勉強会を開いたりしました。すごい悲しい思い出なのですが、最初は7人ぐらい集まったのに、次にタイトルを変えてやろうと思ったら2人ぐらいしか来なかった事があり、なかなか定着しないことをここで痛感しました。

他には、北海道から東京にイベントの輸入をやってみたりもしました。2017年と2019年の2回、LOCAL Community Summitを東京で開催しました。同時開催の他のイベントもあったので、一緒に共催というかたちでやらせていただいてました。

すごい技術がなくてもこういうかたちでの貢献もできるということで、例としてコミュニティの話を挙げさせていただきました。ちなみに今年の年末は「令和元年946OSS忘年会」という、今年唯一の釧路OSSのイベントがあります。

(会場笑)

最近は釧路OSSのメンバーがU-16プログラミングコンテストという小中学生から高校1年生までを対象にしたプログラミングコンテストをメインに活動していて、あまり活動ができてなかったので、年末はこういうイベントに行ってきます。

エンジニアが貢献できること

エンジニアが貢献できる課題領域とは何かなと、いろいろ考えてはみたのですが、僕はちょうど酪農×ITにいるので、こういう感じかなと思います。

多くの生産者の方に、自分の技術をつかってどんな貢献ができているか、自分のことを考えたときにこういったことはあるかなと思っています。ただ、僕はインフラなので何か触れるものを直接作っているわけではなく、生産者の方たちの業務フローに入ってから、安定した堅牢なインフラを提供したいということで、いろいろ見ています。

あとは生産者の方と直接コミュニケーションを取ることができることもすごく良い環境だなと思っています。

ファームノートサミットもそうですが、生産者の方やIT企業の方など、いろいろな方に来ていただいて、交流の場になっています。あとは僕はそれほど回数は行っていませんが、セールスの方に同行して生産者の方のところに直接訪問したりしています。

こういう感じで徹底的に防御した服で牛のところに行くと、牛にガン見されるという体験をしたり……。

(会場笑)

牛って人のことをすごい見てくるんですよ。

気になるのかジーッと見ていて。左側の写真は餌場ですね。餌場で草を食べています。あとは搾乳している場所にも連れていってもらって「こんな感じで絞ってますよ」というのを見せてもらって、これが自分たちの飲む牛乳になるということを体験してきました。本当にずっと搾乳されていて、大きい牧場は本当に工場みたいになるんだなと体験してきました。

興味があること・できることを地元でやる

いろいろやっているのですが、結局僕らが提供しているものは、紙で管理しているものをデータとして利用できるようにしてあげることです。牧場の場合では、紙のノートに何がどれくらい出たといったことをメモしていって、大きい牧場ではそれを事務方の人に渡して、データとして入力してもらったりという状況だったのですが、そのようにやっていた事を、技術を使うことで履歴を追えるようにしてあげる。

つまり紙でやりづらいことをデータにして使えるようにしてあげたり、目視確認で人が実施していた部分を機械や別の手段で解決してあげるのが、主なところです。

ただ、そもそもその業界や人によって参入障壁やリテラシーには差があるなとも感じました。素直に受け止めてやらせてくれるところもあれば、「今までもこうだからそのままにしたい」という話もあったりします。

あとは、絶対に貢献できるとは限らなくて、自分ができることややりたいことが地元で貢献できたのは、僕がラッキーだったところもあるのかなと思っています。

地元への貢献という意味では、興味があることやできることをやってみるだけで充分かなと思います。そんなに気張って「僕は・私は地元で絶対に貢献してやるんだ!」みたいにやるのではなく、学生時代からの延長と言ったとおり、無理せずに気楽にやってみるといいんじゃないかなと思ってます。

短いですが、発表はこれで終わりにしたいと思います。ありがとうございました。

(会場拍手)

酪農業界におけるITの壁

司会者:ありがとうございました。沖縄に続いて北海道の話をしていただきました。さて、竹内さんに質問をしたい方は挙手をお願いします。

質問者1:発表大変おもしろかったです。ありがとうございます。帯広の隣の音更町出身でして、ファームノートさんのお名前はよく聞いています。地方や酪農の業界ですと年齢の高い方などはITに壁がある方もかなり多いのではないかと思いますが、そういったところで何か工夫はされていますか?

竹内:そうですね。やはりサポートを手厚くすることが一番大事かなと思います。どうしても若い人が少ないと言われている業界なのですが、その中でも若い人でガンガンやっている人にまずは入れてもらっています。酪農は狭いコミュニティなので、その小さいコミュニティの中でどんどん広がっていって、5人、10人に使ってもらえるようになると全体的に「あれは良いものだ」と言って入れてもらえるようになります。

あとは、セールスの方たちにきめ細かなサポート対応をしていただくところでカバーしていただいたり、サポートチームの方に丁寧な対応をしていただくといったかたちで、根気強いサポートしないといけない場面もあります。ですので、「これが絶対だ!」みたいなものはありませんね。

質問者1:ありがとうございます。

酪農という仕事について

司会者:他に質問がある方はいらっしゃいますか?

質問者2:あまりITに関係ないのですが、牛さんの搾乳ってどんな感じでやられているのですか?

竹内:おそらくみなさんが想像しているであろう手で絞るということはほぼありません。今の乳牛はお乳をたくさん出すように品種が厳選されていて、人の手で絞っても頭数が限られますね。

先日の北海道の停電のときも電気が止まって牛がお乳を搾れなくてお乳がパンパンになって乳房炎という病気の原因になってしまう恐れがあったので、それを解消するためにみんな必死に手で絞ったのですが、ぜんぜん解消できないということがありました。そういった人の手作業にも限界があるので、基本的には機械につないで自動で搾乳しています。

また、それもいろいろと段階を踏む必要があります。お乳に菌が付いてたら困るのでお乳を綺麗にしてあげて、ちょっと絞ってお乳が出ることを確認してから全部出してあげる。牛も生き物なのですべての乳から綺麗に牛乳が出るわけではなく、中にはお乳がちょっと詰まってしまって出ないお乳もあるので「これは獣医さんに見せようね」という確認だったり、絞り終わったら綺麗に消毒して牛舎に戻してあげるなど、最近の酪農関係は比較的システマチックですね。

酪農経営は設備投資に近いという話もあります。要するに、大きい機械で効率的にやらなければ、人の手で全部やっていくのはすごく大変です。一般的な8時間勤務の仕事の仕方もなかなか難しいので、そういったことを解消するために最新の機械を海外から導入している生産者もいらっしゃいますね。

質問者2:ありがとうございます。

司会者:ありがとうございました。もう1人ぐらいいける気がするんですけど、どなたかいらっしゃいませんか?

竹内:牛の話でもぜんぜん……。

(会場笑)

継続して登壇者を集める難しさ

質問者3:勉強会の部分でお聞きしたいのですが、形式としては今日のように有志でLTをやる感じなのでしょうか?

竹内:そうですね。基本的に誰かが講師になってずっと教えるというのではなく、有志で集まってLTをしている形式のほうが多いですね。

質問者3:その際、継続して登壇者を集めるというのは難しかったですか?

竹内:仲間内でなんとかネタをひねり出すというのはお互いつらいところがありましたね。仲間内でやっていても、なかなか新しいことが常に出てくるわけではないので、「新しい人に入ってもらうにはどうしたらいいだろうね」という話もあったり、北海道は広いので、どこに集まってやろうかという話もあったりしました。

Web動画でクリアに意思疎通ができたり、お互いにやりとりできるようになったのは結構最近じゃないですか。僕がやっていた2014年や2013年のときは「まだハングアウトは重いよね」という時期もあったりしたので、なるべくオフラインでやる方針でした。

質問者3:なるほど。仲間内でLTをしてしまうと、逆に外部の人に「仲間内感が強くては入れない」と言われてしまうこともあったのではと思うのですが、それについてはいかがですか?

竹内:そうなんですよね。どうしても内輪的になってしまうので、そこをどう解消していくかという問題はありました。参加していた釧路OSSのオープンなところで一番すごかったのは飲み会だけ参加する人がいるとか、飲み会しかやらないとか、勉強会という体で酒を飲むことしか考えていない会もありました。

そもそもやっていた方がIT企業の方ではなく、釧路の青果市場の方で、ITが専門業じゃないけれど、BSDの勉強会を始めてそこからずっと参加が2人とかでSoftwareDesignの読書会とかを勉強していました。ですので来るもの拒まずのオープンな空気感で僕みたいな学生が来ても「おう、来たか!」と言って一緒に話したり、本当にただお酒を飲ませてもらうだけ、ご飯をご馳走してもらうだけで終わりとか、形式に縛られないほうが良いのではないかと思います。

本当に「勉強会でLTやるぞ!」というよりは、ただみんなで集まってお酒を飲んで、技術の好きな話をして「じゃあ、今日はこれで」と言って、盛り上がってきたら「次回はその内容でLTやろうよ」というやり方でも僕はいいんじゃないかなと思います。

質問者3:ありがとうございます。

司会者:ありがとうございました。徐々に温めていくという感じですね。

竹内:そうですね。いきなり温め過ぎちゃうとすぐ「次はなんだ!?」と、謎のプレッシャーがかかってしまうので、そこもけっこうしんどいじゃないですか。「第2回はいつやるの!?」とか。

司会者:そうですね、わかります。

(会場笑)

そうですよね。例えば笑いが少なかったりすると心の中が「うぁ~!!」ってなりますもんね。

(会場笑)

竹内:自分の中で「もっと笑わせていくにはどうしたらいいんだろう」とか、よくわからない部分で頭を使っちゃったりしますもんね。

司会者:そうですね。焦れば焦るほどろくな言葉が出てこないですもんね。

(会場笑)

すみません。ちょっと脇道に逸れてしまいましたが、ありがとうございました。

竹内:ありがとうございました。

司会者:竹内さんでした! 拍手をお願いします。どうもありがとうございました。

(会場拍手)

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