2024.10.01
自社の社内情報を未来の“ゴミ”にしないための備え 「情報量が多すぎる」時代がもたらす課題とは?
メルペイの取り組みとこれから (全1記事)
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曾川景介氏(以下、曾川):みなさん、こんばんは。メルペイのCTOの曾川です。よろしくお願いします。
今日は最初にメルカリのCTOの名村から、我々はどういう組織でやっていて今どんなことを感じているかという話をしました。でもメルペイは少し事業のステージが違って、今ちょうど立ち上げて半年経ったかなというところです。
先週もカンファレンスで事業戦略の発表会をさせていただいたんですけど、そこでお話しした内容にも少し触れながら、どんなことをやろうとしているのかについて。あとは、技術的な挑戦でもありながら事業的な挑戦でもある部分とかもあるので、それはどういう挑戦なのかについて、お話ししたいと思います。
最初に自己紹介します。
私は名村に比べるとまだこの会社に来てからぜんぜん浅くて、2年ちょっとしか経ってないです。その前はLINE Payを作っていて、その前はWebPayを自分たちで作っていて、3つ「〇〇Pay」を作っています。
最初ってそんな〇〇Payが流行っていたわけじゃないんですよね。やり始めたときはこんなふうになるとは思っていなくて。ただ、だんだん社会の要求というか盛り上がりというか、一種のムーブメントが起こって、〇〇Payがこれだけたくさんできました。
こういうことばかりやってるんですけど、たくさんPayがあるから、「その中でどうしてこのメルペイを作ったのか」みたいな話も重要だと思うので、あとで触れたいと思います。
私の自己紹介はさておき、メルペイの説明に入ります。
画像を見たらわかるんですけど、メルカリの中のウォレットタブがあって、その中で残高管理ができる機能を提供しています。
バーコード決済で支払うこともできるし、「iD」などの非接触決済で支払うこともできます。iPhoneをお持ちの方はApple Payで支払うことができるし、Pixelなどの端末をお持ちの方は「おサイフケータイ」で支払うことができます。
こういうウォレットサービスはほかの会社もけっこう出しているんですけど、メルペイの特徴は、メルカリでモノを売ったお金がそのまま入金されて、そのお金をさまざまなところで使うことができるというところです。
メルカリのお金の流れをざっくりおさらいしておきます。
メルカリは基本的にはC2Cのマーケットプレイスなので、モノを売って、そこでモノを買うこともできます。なので、メルカリ内で売上をあげてそのままメルカリ内で使うこともできます。
その売上がだいたい今、先ほど名村のスライドでもあったように、年間5,300億円ぐらいあるので、これだけでも1つのカード会社に匹敵するような大きいトランザクションボリュームがあります。
もちろんこれをそのままメルカリの中で使うこともできるんですけど、これをお店で使うことができます。なので、みなさまがモノを売っていただいたお金があれば、それを今日からでもお店で使うことができます。
メルカリのMAUが1,357万人ぐらいなので、これに相当する人数がウォレットを持つ可能性があるという状況になっています。
使える場所は、PayPayが最近すごい勢いなので、メルペイよりPayPayのほうがよく見るかなと思います。我々はまだお客様の見えるところにメルペイのアクセプタンスをしっかり貼りきれていないところもあるので、認知されていない部分もあるんですけど、実はもう170万箇所で利用できます。
「iD」というブランドもあるので、メルペイが使えると思っていない場所でも、iDのシールが貼ってあるところではもちろんメルペイが使えますし、Apple Payのステッカーを貼ってあるところでももちろん使えます。
それだけじゃなくて、「入金が面倒くさい」みたいなときのために、後払いの機能をリリースしています。
これはもともとメルカリの「後払い」として始めたサービスなんですけど、それをオフラインのお店、コンビニとかスーパーでも使えるようにした機能を提供しています。これを使うと、チャージレスでご利用いただいて、使った代金を翌月支払っていただくみたいな使い方ができるようになります。
銀行接続って、やったことある人は多いと思うんですけど、けっこう面倒くさいんですね。〇〇Payをこれまで作ってくるなかで課題に思っていたことの中に、チャージが面倒くさかったり、銀行にお金がなかったりという時に、すぐ使ってもらえるみたいな機能を提供しています。
それで、世の中にたくさん〇〇Payがあって、僕も3つも作っているので偉そうなことは言えないんですけど、メルペイが解決したい世の中の課題って何なのかをいま一度整理したいと思います。
お金ってどこでも使えるからお金なんですね。強制通用力があるから。だから、もともと〇〇Payを作っているときって、どこでも使えるようにしたりとか、誰でも使えるようにしたりとか、お金のような便利なものを作りたいと思ってました。
ただ、キャッシュレスにするって、今でも大事だと思うんですけど、お金の問題の中でも表面的な問題だと思うんですね。やっぱり最も大きい問題は、お金がなくて何かを諦めてしまうことだと思うので、「お金がない」という問題をきちんと解決していきたいなと思いました。
それを言い換えると、お金が理由で諦めることをなくしていきたい。
それが僕がメルペイで解決したい課題です。僕らは給与所得者で、預金が少しあったりとか、クレジットカードで支払うことができたりとか、それはとても運がいいことだと思います。
でも、そうじゃない人もたくさんいるし、もっとフィナンシャルインクルージョンというか、すべての人がお金にまつわる問題を抱えていて、そういう人たちがお金がなくても自分のやりたいこととか欲しいものを諦めなくても済むような社会を創っていきたいと思っています。
お金は「やりたいことを実現したり欲しいものを得るために必要なリソース」なんですね。
だから、お金がないとやりたいこととか欲しいものが実現できなくて。そういう意味では、みんなお金というものがなにかよくわからなくて、なにか便利なツールとしか思っていないかもしれませんが、お金がないと自分の願いとか欲しいものって叶えられません。
すべてを解決するとは言えませんが、メルカリを使ってお金を稼いだり、メルペイを使って後払いをして、メルカリでものを売ってお金を返す、みたいなことができれば、少しでもそういったことが解決できるんじゃないかなと思っています。
僕が言った話をすると、「自分は関係ないかな」と思った人もいるかもしれないですけど、お金の問題って実は僕らにもすごく関係のある話です。みんな現金を貯金していると思うんです。ビットコインを買っている人は「投機をしている」と言うんですけど、僕らも実はけっこう現金に投機をしているんですね。将来も現金は今と同じように価値があるるということへの投機です。お金を貯めておく行為そのものが、やっぱり将来に対する、未来に対する投機だと僕は思うので。
将来に漠然とした不安があって、「なにかあったときにどうしよう」とか「将来お金を稼げなくなるかもしれない」「将来欲しいものができたらどうしよう」という、その思いがお金を貯めるという行為にみんなを向かわせているんですね。
だから、僕らがやりたいことは、お金を使ってしまっても大丈夫だし、お金を使っても価値の交換を通じて、また自分の持っているものがお金に換わる、みたいなことができれば、ここに書かれていることを解決できます。
これまでのクレジットカードやその他与信の供与は基本的に属性情報を聞いているんですね。例えば最近スコアリングをやっているところが出てきているんですけど、クレジットカードとかの与信と同様には「どこに勤めていますか?」とか「年収いくらですか?」とか「何歳ですか?」とか「男性ですか、女性ですか?」みたいな情報から与信を作っているんです。
でもそういうことじゃなくて、メルカリの中でお金を使える人は、きっとお金を稼ぐ新たな価値を生み出す力を持っていると思うので、そういう人たちの力を引き出すことでお金を、つまり信用を創造してあげることができるんじゃないかなと思っています。
「信用」というお金に代わる媒体を、価値を交換するために必要な媒体を創っていく。それがメルペイのミッションになっていることだと思います。そのミッションが「信用を創造して、なめらかな社会を創る」というミッションです。
これを聞いたときに「すごくふんわりしていて何のことを言ってるのかよくわからない」って言われるんですけど、今言ったみたいな、僕たち・私たちの困っている課題を解決することを通じて、一人ひとりがやりたいこととか欲しいものを実現できるようにしていきたい。それがメルペイの叶えたいミッションというか、やりたいこと、解決したい課題です。
なぜソリューションをメルカリのサービスの中に創ったのか? もちろんメルカリはみなさんの中ですごく受け入れられて、たくさんご利用いただいていたことが最初にあると思います。
メルカリはモノをすごく流動化するというか、モノを循環させることができる。循環型の社会を創る1つの可能性だと思うんですけど、その循環をさせるためにはもっとお金があるといいなと思うわけですね。
どういうことかというと、それまでだったら、お金かモノを持っていないとメルカリって参加することはできなかったんです。でもお金がなくても始められるような、何も価値を持っていなかったとしても始められるようなメルカリを創る。
そうすることで、人が新たな価値を必要として、その人がやりたいと願うことによって新たな価値が生まれる。そういう人たちによって新しいモノの流動性が生まれる。
だから、その2つを組み合わせる。お金の流動性とモノの流動性を2つ組み合わせると、もっとモノの流動性も上がっていくだろうし、お金の流動性だって上がっていく。そうすると、一人ひとりがやりたいことを叶えられる機会とかチャンスも増えていくんじゃないかなと思っています。
スライドにも書いてるんですけど、お金に代わる媒体を作れたらもっとお金は循環するし、モノも循環する。そういうことができるんじゃないかなと思っています。
今言っただけでもたぶんメルカリがメルペイをやる理由はわりとわかっていただけたかなと思うんですけど、もっと明確に概念を伝えると、メルカリって時計の針を戻すような機能がついているんですね。
どういうことかというと、なにか意思決定をしてモノを買ったとするじゃないですか。そのときに、普通だったらそのモノって、もしこれ着て自分に合わなかったなと思ったら着なくなるというか「お金損した」で終わっちゃう。
でも、それを必要としてくれる誰かをメルカリの中で見つけることができて、もう1回お金に戻すことができるんですね。つまり、ある種の時計の針を戻すような機能がついている。
お金というのは時間を超えてなにかをすることができるツールでもあるんですけど、メルカリ自体がマーケットプレイスとして需給を持っているので、スポンジのようにそういう需給を吸収してくれるんですね。
それを使うことで、これまでだったら捨てられていたものがお金に換わったり、合わなかったなと思ったときのために買わないって選択していたんだけど、勇気を持って自分がやりたいこととか欲しいもののために、例えば服を買うとか楽器を買うとか、そういうことができるようになる。
それって逆に言うと、合わなかったら時間を戻してお金に換えることができる。だとしたら、信用でモノを買ったとして、お金というかたちで時間的な価値を顕在化させてあげる。もし信用で買っても、その信用で買ったお金を、メルカリでモノを売ったら返すことができる。
この2つのお金と時間の概念をうまく使い分けることで、メルカリとメルペイは相互に補完関係を築いています。メルカリが光だったらメルペイは影の部分になっていて、影の部分で余っているものとかいらなくなったものとかをうまく吸収してあげて、それで逆に光の部分に必要なお金を供給することができるということが言えます。
「メルペイが目指す社会は具体的になんですか?」というと、一人ひとりが好きなこととかやりたいことを実現できるようにしていきたいんですね。
これどういうことなんだろうと言ったら、最初の名村のプレゼンの中でも「組織的なダイバーシティは多様なほうがいいよね」って言ってたんですけど、社会も多様なほうがいいです。
それはみんな言ってるんだけど、なんでそうなのかというと、社会というのはいろんな人と価値を交換して成り立っているんです。僕は1人でお肉を獲ってきて生活することもできないし、野菜を育てることもできないんですね。価値の交換を通じて、僕のやりたいこととか得意なことを誰かと交換して生きているんです。
だからそういう意味では、いろんな人たちが得意なこととかやりたいことがあってよくて、それがあるからこそ価値の差が生まれて、それによって社会は成り立っている。だから、できるだけ多様な人たちが生きられるような社会を創っていきたい。
マーケットプレイスはそういういろんな人たちの利害を調整する役割をはたしていきたいと思っています。なので、それを通じてそういう人たちのやりたいこととか欲しいものを叶える。僕のやりたいことも叶えられるだろうし、おそらくここにいるみなさんのやりたいこととかも叶えていくことができるので、そういうものを僕らは創っていきたい。
だから、多様な組織、多様な人たちがいる会社がいいだろうし、社会だって多様な人たちがいる社会がいいだろうなと思います。
ここに「未来はこういうことやりたいよね」みたいなことを書いているんですけど、正直今やれていることって、この灰色で書いたところです。
「不要になったものをお金に換えることができて、そのお金をどこでも使えるようにする」みたいなことができるんですけど、売ることを前提に買い物をする人がすでにもう現れ始めたりしています。
みなさんはまだAmazonはいっぱい使うけど、メルカリを使う回数ってもっと少ないと思うんですよね。だから、もっと売る回数を増やしてあげたり、自分のいらないものとかを誰かが使えるようになっていったりできるようになる。
それができたときには信用がそこに生まれているので、今お金が理由で諦めてしまっているいろんなことを叶えられるような、信用によって今までできなかったことを叶えられるようになる。
そういうことをしているうちに、僕らは一次流通の人たちと一緒にメルカリで二次流通をやってきたわけだけど、メルペイを通じて一次流通の人たちとつながっていくことで、今度は「一次流通でどういうものをどれだけ作ったらいいんだろう?」というデータが明確にわかるようになってくる。
そうすると、不要なものを作りすぎなくても、「必要な分だけ作ればいいよね」という社会になっていくし、もっと言うと二次流通で価値が高く出るものを、「もっと一次流通で作ったほうがいいよね」ということもわかってくると思います。
そうやって売ることを前提にしたような社会が創られて、そうすると自然とお金とか……、お金だけじゃないですよね。たぶんそのときって、社会にあるモノとかリソースとかがもっと有効に使えるようになっていて、僕らは少ない資源でより豊かに生きることができるようになっているんじゃないかなと思います。
その頃にはきっと僕らは、データや自分たちの可能性を解き放つこと、自分たち自身の持っている信用とかやりたいという願いとかを叶えられるようになっているので、きっと将来に対する漠然とした不安とかもなくなって、ちゃんと持続的な発展ができるような社会を見ることができるんじゃないかなと思っています。
そうしたら最初のメルカリのやりたいことの1つであった、日本でいらなくなったような車が、もしかしたらアフリカとかで使われるような、途上国とも価値の交換でつながっていけるみたいな、そういう社会が訪れるんじゃないかなと思っています。
いろいろしゃべったんですけど、言っていることはだいたい全部できてないんですよね。最初の名村の話で「メルカリはけっこう完成していて、メルペイもあって、がんばってるよね」ってあると思うんですけど、正直たぶん初日というか0日目だと思います。
リリースしたけど0日目ってどういうことだよっていうと、まだ僕らはこのあとたくさんのことをやっていかなきゃいけないし、それを通じて多くの人たちの課題を解決していきたいと思っています。なので、まだまだこれからやっていかなきゃいけないことが多いです。
価値の交換って、掘り下げるとすごくおもしろいテーマなんです。さっき言ったみたいに、一人ひとりが生きている理由とか、「なんでこんな価値の交換をしているんだろうな?」みたいな「誰が?何を?どうやって?なぜ?交換するのか」を掘り下げていくと、すごくおもしろいテーマです。
僕はメルカリに入る前の最初のところで、モノのやりとりをするC2Cのマーケットプレイスをつくりたいと思って、「未踏」に採択されてたことがあって。そういう時から、価値の交換とかを通じて、モノがもっとコンピュータのリソースのようにいろんな人の間でやりとりできたら、もっと便利になるだろうなと。
僕らの労働力だってそうじゃないですか。だって、僕の労働力って僕が今所有していても何の価値も持っていないけど、会社に渡すと初めて価値を発揮するじゃないですか。
そういうふうに、いろんなものが自分の手を離れることによって可能性を見出すというか、自分が持っていてもしょうがないというか。所有するだけじゃなくて利用しないと価値って発揮しないので、「それってどうやったらできるんだろう?」みたいなことをみなさんと一緒に考えていければいいなと思っています。
僕の話はここまでなんですけど、またあとで対談もするので、そのとき質問でもしてもらえたらいいなと思います。ありがとうございます。
(会場拍手)
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