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Q&A(全1記事)

CIIDサマースクール参加者たちが語る、北欧で学んだデザインづくりの本質

2019年9月10日、クックパッド株式会社にて「Cookpad Product Kitchen #2」が開催されました。北欧、デンマーク/コペンハーゲンの新興デザインスクール、Copenhagen Institute of Interaction Design(CIID)にて毎年夏に開催される、サマースクール。今回は、そのサマースクールに参加したエンジニア、デザイナーたちが、そこで学んだことや得られた気づきを語りました。Q&Aには、プレゼンテーションで登壇した3名が登場。勉強会に参加したデンマーク大使館の上郡明子氏も交えて、CIIDでの学びや北欧での経験について語りました。

日本と北欧の文化の違い、デザインの違い

司会者:本日はあらかじめ質問をいただいております。みなさん、たくさんのご質問ありがとうございました。まずは全体的なところで「日本とデンマークの文化的差分によるデザインへの向かい方の違いはあるのでしょうか?」。実際に1週間デンマークに行って、そこにいらっしゃる方々とか街の人たちと、デザインの向かい方でなにか違いを感じたことはありますか?

春田雅貴氏(以下、春田):僕のチームにはコペンハーゲンに住んでいる方がいて「5日間でなにを学べるんや?」という話にはなるんですけど、その人はずっと「デンマークの教育は常にグループワークだ」と言っていました。すごく印象的だったのは「仕事など、なにかをやったとき個人は評価されない。グループとして評価される」ということでした。

今回のCIIDのワークショップはチームでやりましたが、日本だと個人で黙々とやったことを共有というパターンが多いので、そもそもチームで一緒にやっていくことが前提という進め方の違いは感じました。

司会者:ちょっとリンクしますが「デンマークというとデザインのセンスが良いイメージがあるのですが、文化的な背景とかあるのでしょうか?」という質問がきています。デンマーク大使館の上郡さんからお話していただけたらと。

上郡明子氏(以下、上郡):今仕事をしていて感じることから背景を簡単に説明させていただきますと、例えばフィンユールの椅子などミニマライズされていたり、材料も自然由来のものを使っていたり、シンプルで使いやすい、飽きが来ず長く使える。サステナビリティを大事にする考え方があって、今回3人とも、5日間でよくこんなに感じ取ってきてくださったなと、すごく感心しながら聞いていました。

デンマークは様々な国籍の人が住んでいたり、多様性を認め合う文化があります。人口が約580万人と日本に比べるととても少ないので、女性や子供も国民総動員で国を支える必要があります。

耳が聞こえない人、目が見えない人にも同じ環境を出来るだけ提供しようという考え方や様々なバックグラウンド人を巻き込んで、いかにいろんなリソースを活用するかは大事で、受け身で、流れてくるものを処理するのではなく、自分から積極的に社会に参加し、そのような環境の中で物事を考えたり、よい方向に事案をもっていくかという考え方が身についています。だから、いろんな人の意見を聞くことがすごく大事なんですね。それが、国民性や強みの1つになっているのだと思います。

今回も様々な人と一緒にワークショップをされたと思うんですが、例えば風力発電に関するのデザインとか、施設をデザインするときに、専門家だけ、例えば小型化のデザインに特化した人だけを呼ぶのではなくて、法律家を呼んだり実際に使っている人や使うであろうユーザーを呼んだり、大学の専門家を呼んで、みんなが同じテーブルについて議論し、決定します。実際に様々なところで様々な人を巻き込んでデザインすることは根付いています。

使いやすい良いデザインでかっこいいものはすごくミニマライズされていて、必要最低限なものしかない。そぎ落としてそういうものになっていくんだろうなと思います。

エコシステムを作っていく、という考え方も染みついていると思います。そういったエッセンスを5日間で感じ取ってきていただいたことは、私としてはうれしく思ってプレゼンを聞いていました。長くなってしまいましたが、デンマークの強みというところはそういうところにあるのかなと思います。

アウトプットにたどり着くまで

司会者:ありがとうございます。まさにワークショップの内容で多様性がキーワードとして出てきたところは実際に文化的な特徴で、それを大事にされているんだなとわかりました。

では、一番初めの「Intro to Interaction Design」で「具体的にスクールの中でどんなアウトプットにたどり着いたのか」という質問です。一番最後に触れられていたと思いますが、もう少し詳しくお願いします。

黒田健太 氏(以下、黒田):まず、そもそも僕たちのワークにおける課題、プロジェクションのブリーフィングがすごく疎かなんですけど「パブリックスペースについて考えろ」というすごく広いもので、「まずパブリックスペースってなんやねん?」という疑問が一番最初にありました。

質問にもありましたが多様性の考え方みたいなところで、僕はパブリックスペースというと公園みたいなものをイメージしていたんです。

でも、一緒のチームの人がコンサルタントとプロダクトデザイナーを専攻している学生の方で「パブリックスペースって駅じゃね?」と言われて「なるほど」と。そこから駅でどういう課題を人々は感じているかを考えたときに「みんなスマートフォンをめちゃくちゃ触ってるよね」という課題があって、その「列車の待ち時間をどうしたら楽しくできるか」という疑問に対して私たちのチームはアプローチしていきました。

最終的には、キャンプファイヤーをメタファとしました。人々が自然と会話しやすくなるし、知らない人同士でもすぐに仲良くなれる空間があるということで、キャンプファイヤーを設定しました。最終的には、人がたくさん集まってきたら色が変化したりするオブジェクトを駅に設置するアウトプットを目指していきました。

司会者:私も「あれなんなんだろう」と気になっていて、今聞けて納得しました。メタファがキャンプファイヤー。

黒田:そうです。

司会者:ありがとうございます。

ユーザーとの向き合い方

司会者:じゃあ次は田中さんのところで「Design for Impact & Inclusion」。「ユーザインタビューでのユーザが本音を話しているかや、リアルなユーザかどうかという見極め方はありますか?」

田中理佐子 氏(以下、田中):対面なので、まず表情を見ます。というか、(相手が)入ってきたときからずっとみんな見てる。最初に自己紹介して「インタビューします」という前の、待機しているところからずっと見ています。

実際にその人が問題を話しているかどうかは、パッションな人が多かったので、そこから感じ取ることはできます。

でも重要なのは本音を話しているかではなくて、その人が言っていることを自分がどう取るか。その人の話がもし本音ではなくても、本音ではないという状況を自分がわかっていれば、本質を受け取れるという考え方です。

見極め方としては、本音かどうかは姿を見る。でも、本音かどうかは一番重要なことではない。そこの状況がわかっていることが重要だと思います。

司会者:ちなみに、写真では大人数で囲む感じだったので、ユーザさんが緊張しちゃうんじゃないかと思ったんですけど、そういうところの気づかいとかはあったんですか?

田中:最初はそれを気づかって、半分ずつ2つのグループに分けて少人数で聞くスタイルだったんです。でも、あまりに話が炸裂しすぎて、1つのグループにしてたっぷり時間を取ったほうがユーザにとっていいんじゃない? となったので、途中から全員でゆっくりたっぷり話をさせるという方向に変わりました。

司会者:ユーザさんがパッションがある人だったから。

田中:もしかしたら国民性かもしれないですが。

司会者:ありがとうございます。

アイディエーションにおける反省点

司会者:次に春田君にいきましょう。「アイディエーションで発散したアイディアをどう収束させたか、コツを教えてください」。

春田:1つは多数決で決めるというフレームワークがあったので、さっきのCrazy8sとかだと、各々3枚のシールをもらって、これがいいと思うアイディアに投票する。投票で全部ばらけたら、話し合いになります。

実は僕たちのチーム、は最初は4人だったんですけど、最終的に3人になりました。というのも、そこのシフトがうまくいかなかったんです。最初のワークで、ある人は「私はこう思う」と言うけど、あっちの人は「私はこう思う」と言って、まったく意見が合わなかったんです。たぶんこういうときにビジュアライズ化して、思っていることをどんどん紙に書き出していけばよかったんですが、そのときはまったくできなくて話だけで議論をして、同じ単語を使っていてもお互いに微妙な認識のズレがあって議論が進まなかった。

だからたぶんそのためのフレームワークとして、結局は話し合いになるんですけど、その話し合いを助けるためにビジュアライズ化して、どんどん自分のアイディアを生み出して紙に書き出すことが必要だったと思います。ただ、うまくいかなかったし、3人になって奇数だから話し合いで分かれてもどっちかに意見が決まるみたいになったんですけど、もしそれをしなかったら収束したかわからないので、そこはいる状態でどうやってできたのかが悩んでいるところです。

司会者:その残りの1名は?

春田:来なかったです。

司会者:へぇ。実は「脱落者はいましたか?」という質問も来ていました。

春田:来てたんですか?(笑)。初日のワークが終わったあと、僕たちは結局まとまらなかったんですよね。「明日どうする?」と聞いても、もう「わかんない」しか言わない。次の日から1人が来なくなっちゃったので、ずっと3人でやりました。リサーチも、2人1組で10人にインタビューして、合わせて20人に聞くはずだったんですけど、僕たちは3人になっちゃったので10人にしか聞けなくてやりづらかったということがありました。

司会者:5日間でいろいろありますね。ありがとうございます。

学んだ手法を日本でも使うために

司会者:じゃあもう1つだけ、1人ずつ答えてもらってから懇親会にいこうと思います。今回CIIDで学んでこられましたが「学んだ手法をそのまま日本の開発現場で使えますか?」という質問がきています。お一人ずつ簡単に。

春田:そのままで使うことは、僕は無理だと思います。さっき言った通り、今回のワークショップって多様な視点を取り入れていくことが一番重要だと思っています。実際に僕もCIIDに行く前に同じようなワークショップをやったんですが、どうしてもアイディアが似かよってしまって、結局、予想通りのアイディアしか出なかったという経験があります。

視点の発想の違いが重要なキーになるのかなと。同じようなアイディアを持ったチームでも、どうやったら視点の違いが出せるかはこれから考えていかないといけないと思います。

もしくはぜんぜん違うメンバーを入れてみると新しい取り組みが必要なのかと僕は感じました。

田中:ユーザインタビューに関しては、そのままでやることは絶対にできないと思います。さっきも言ったように、(今回は)ユーザが日本人ではあまり見ないような性格だったので、まず聞き方についても違うと思います。でもワークショップのやり方などは、日本でも取り入れることができると思います。

黒田:似たような話になりますが、ワークショップで使った手法や、フレームワークを取り入れることは日本でもできると思います。ただし、その手法がなにをしたいものなのかという本質をちゃんと理解した上で、そのフレームワークや手法を使う必要があると思っています。

春田さんもおっしゃっていましたが、フレームワークを使うことによって似たようなアイディアが出る可能性は上がると思うんですけど、結局はその人たちのバイアスが影響すると思うので、そのへんを考慮してメンバーも選定した上で調査とかも含めてやるべきじゃないかと思います。

司会者:ありがとうございます。他にもいろいろ質問をいただきましたが、答えられるものについてはハッシュタグのほうで後ほど呟いてもらうので、そちらを見てください。改めて、3人に拍手をお願いします。

(会場拍手)

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