2024.12.19
システムの穴を運用でカバーしようとしてミス多発… バグが大量発生、決算が合わない状態から業務効率化を実現するまで
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大石良氏(以下、大石):では、名残惜しいんですけれども、そろそろ最後の質問に移りたいなと思います。みなさん立場もあるので、個人でも会社でももちろんけっこうです。今後の展望や野心、野望といったものがあれば、ぜひお聞かせいただきたいと思います。小野さんから、いかがですか?
小野和俊氏(以下、小野):これに答える前に、さっきの件でどうしてもちょっと……。
大石:どうぞ。
小野:テーマ的に1つ戻るんですけれど。
大石:戻りましょう。
小野:この後にちゃんとこれにつなぎますけれども、さっき玉川さんがおっしゃっていたことって大事なことだなぁと思って。どう言えばいいのかなぁと考えていたんですけれども。
僕、今回クレディセゾンに入って、自社開発のチームを作って、社内にエンジニアがいたわけじゃないから、外から採ったんですね。8人ぐらいじゃないとコミュニケーション比率が大きくなっちゃうから、基本的に「2ピザチーム」みたいなことで、8人採っているんです。それで今7人が集まった。
それで採った人って、やっぱりちょっと変わった人が多くて。1人は半年間エジプトに旅行に行っていたとかですね。1人は一時期「人生とは……」と考えて、インドに放浪に行って身ぐるみはがされて、そのまま帰れなくなったとかですね。
(会場笑)
玉川憲氏(以下、玉川):帰れなかったけど、今はいるんですよね?
小野:一時的に帰れない時期があったっていうことですよね(笑)。別に「身ぐるみ剥がされておもしろいね」といって採ったわけじゃなくて、ちゃんとエンジニアなんですけども。
(会場笑)
1人はロシアに行って、「シベリアの奥でもちゃんとVISA payWaveが使えました」みたいな。「謎の技術者の面談なのかな?」って。別にそこを見てるわけじゃないんだけど、結果的にそういう人が集まった部分があるんですよ。
それってなんでだろうなと考えると、やっぱり新しいものが起こるときって、合理的に論理的に説明できて、演繹的で、考えて、ということじゃない。なんだか「なんでその発想するのかな?」みたいなね。唐突に「そっちがおもしろいと思ったから」とか。「なんで突然ロシアに行くんだろう?」とか思うじゃないですか。
だから、感覚で動いている人っているわけですよね。そういう動き方をしている人が、「この技術をおもしろいと思った」と言う。記事で読んだりしたわけじゃなくて、なんだか技術者として感じるものがあって。だから、あんまり論理的じゃないんですよ。でも、たぶん、そういうもののレーダーチャートをチームで合わせていくと、すごくおもしろいチームができる。
さっきの(玉川氏の息子さんが出場したプログラミングの)コンテストでも、「素数しか友達がいなくて」というものって、すごくおもしろい感覚じゃないですか。そういう素数の人ばかりが集まっちゃったら、「素数の会」みたいになっちゃうかもしれない。
だけど、個性ってなんだろうと考えたら、勉強がいっぱいできて、偏差値が高いとかじゃなくて、その人の感覚がどっちの方向に伸びているのかという話だと思うんです。だから、何か独特の感覚を持つことはすごく大事だと思ったんですよね。
ということなんですが、いったんここで切ったほうがいいですかね?
大石:いやいや、このまま行っちゃってください。
小野:じゃあ、このままつなげると、僕が今一番やりたいことは、やっぱりベンチャーを……。僕は結局、18年間代表でやっていたんですよね。24歳からやっていたので。
それで思ったことが、ベンチャーはすごくスピード感があって、動けて楽しいし、それはそれでやりがいも意義もあると思っているんだけれども。ただやっぱり、今の日本の社会インフラみたいなものを支えていたり、シェアを持っていたりする大きな会社が変わることが、すごく意味があると思っていて。
今、クレディセゾンって取扱高が5兆円ぐらいあるんですよ。そういうところは、やっぱり背負っているものもあるから、変わりにくくて慎重さが必要な部分もある。そういう部分があって、しかも金融。それでも変わったという事例を作りたい。
僕は3月から入ったんですけれど、下期ぐらいにはドンドンドンと新しいものを出そうとしていて。そういう、大きな会社が変わった、という実例を作りたいというのが今の僕にとっての「独特な課題意識」です。
GAFAが怖いというような話もあるんだけれども、日本の伝統的な大きな会社がスピーディーに変わったっていう事例を作る。しかもやんちゃな部分だけじゃなくて、守るところは守って。それがすごく大事だなと思っているので、今やりたいのはそれを実現することです。
技術だけじゃなくて、自分の人生の方針などもあんまり長期のことは考えないポリシーなので、それ以上のことはなにも考えてないという感じですかね。
大石:なるほど。すばらしい。ありがとうございます。漆原さん、いかがですか?
漆原茂氏(以下、漆原):私はエンジニアなので、日本のエンジニアの実力を信じています。日本だけじゃなくて、グローバルに。もっとクレイジーでいいと思いますし、そういう人たちがワクワクして、輝いて働けるような組織というものを、ずっと作っていきたいなと思っています。
僕は未来の社会を作るのは、確実に「優秀なエンジニアの高い志」だと思っています。そういう意味で、たぶん将来的なテーマで倫理観などがすごく気になるところなんですけど、それも含めたおもしろいチームを作れたらなと思っています。
大石:なるほど。ちょっと深掘りしていいですか?
漆原:あっ、そうなんですか?(笑)
(会場笑)
大石:私、倫理というキーワードにピンと来て……。
漆原:ethicsですね。英語でいうとethics。日本語で倫理と言って正しいのかどうか、漢字が微妙なんですけど。
大石:なんでそういう考えに至ったのか、ちょっと背景を教えていただいていいですか?
漆原:例えば、機械学習もそうですし、エンジニアのモラルというものがものすごく問われている時代だと思うんですよ。例えば「お客さんが言ったから」とか、「上司が言ったから」って、柱が1本ないままビルを建てるとか、ちょっとありえないじゃないですか。
大石:はい。
漆原:こういうのってダメじゃないですか。やはりモラルが高いエンジニアだからこそ、お互いに性善説でできるわけで。だから、あんまり深く細かいルールはいらなくて、お互いのプロトコルが合ってるよね、だから群を抜くようないいプロダクトができるよね、と思っているので。
その真逆だと、全員を性悪説で疑わなくちゃいけないし、ガッチガチにルールを決めなくちゃいけないんですよ。そんなのは無理じゃないですか。それはエンジニアを殺していますよね、と思うので。逆に性善説でやりたいからこそ、ベーシックなethicsの部分はこれからIT業界としても、重要視されるんじゃないかなと思っています。
大石:なるほど、おもしろいですね。ありがとうございます。今、共鳴する社会というんですかね。技術と倫理が共鳴するって、たぶんソラコムさんがイメージされている社会とすごく近いんじゃないかなと。最後に玉川さん、いかがですか?
玉川:そうですね。なんだか上手くつなげていただいて、ありがとうございます……。
(会場笑)
トリを回していただいて。まさに今日、尊敬する経営者のみなさんとパネルディスカッションができて、これだけたくさんの人に聞いていただいて、それだけで本当に感無量というか。非常にうれしく思っているんですけれども。
今のソラコムの野心というのは、日本発のグローバルプラットフォームになりたいと。それが僕らの創業の時からの夢であり野心なんですね。今日もトヨタの藤原さんに登壇いただいてますけども、トヨタさんはすごいと思っていて。世界の中で気を吐いている日本の会社さんなんですけれども、ITの世界ではまだ1社もそういう会社がないんですね。
これって僕らの世代が背負った宿業というか。私は76世代と言われて、大学1年生の時にMosaicを見て「なんかすげぇぞ」と言っていた世代なんですよね。この世代ががんばって、1社でも成功する会社を出さなきゃいけない。「出さなきゃいけない」というと楽しくないんですけど、なれたらうれしいなぁという感じでやっていて。
もしかしたら、メルカリさんがやってくれるかもしれないですし、スマートニュースさんがやってくれるかもしれないし、ソラコムが先にやるかもしれないですし(笑)。そこは楽しくチャレンジしていきたいなと思っています。
玉川:それで、僕らは「世界中のヒトとモノをつなげ共鳴する社会へ」というビジョンを、創業前に作ってやってきたんですけれども、創業して1年ぐらい経ったときに、むちゃくちゃ自分たちの腹に落ちたんですよ。
それはなぜかというと、やっぱり日本っていい意味でも悪い意味でも、例えば受験とかって、点数を取ればいい大学に入れるじゃないですか。ほとんどの社会がそうではないんですよね。生まれや経済的状況などがあって、フェアじゃない。日本も今ちょっと若干そういうふうになりつつあるんですけれども。
非常にフェアな社会で、みんなに機会を手にする可能性があって、がんばれば上がっていける。夢を実現できる。僕は自分の生まれなどの観点でも、そういう世界のほうがすごく好きで、ソラコムのプラットフォームはそうしたい。
今日も価格10分の1とか4分の1とかの新発表をしていて、「クレイジーじゃないか」と言われるんですけど、まずクレイジーじゃないです。それをやりたくてやっているので。
それを突き詰めた結果として、さっきも宇宙とかバッテリーの話が出ていましたけど、僕らはまだぜんぜんリソースがない会社なので、ぜんぜん夢物語なんですけど。Amazonだって20年前はそうだったんですよね。もともとは本から始まった会社だった。でも、成長を続けていければ、ソラコムもそうなれるんじゃないかと本当に思っているから、それを続けたい。
今回、100万回線突破というリリースを出したんですけど、これが毎年100パーセント成長していったら、10年後に何万枚になると思います? 僕、計算したんですよ。
大石:これすぐ出てくる方いらっしゃいますか? さぁ、答えは?
漆原:2の10乗だから、1024倍ですよね。
玉川:そうです。なので、10億枚なんですよ。
大石:おぉ~。
玉川:本当にその複利のパワーというのはすごいので。ただ着実にそれをやっていければ、ぜんぜん宇宙なんかにも行けるのかなと思っています。
大石:なるほど。
玉川:ですので、みなさん、ぜひチャレンジしていただきたいなと思っていて。まさに今AWSであったり、ソラコムもそうありたいと思ってますけども、誰もがいつでも触れる、誰でも試せるいいプラットフォームが揃っているから。
一方で課題意識は、さっきも話がありましたけど、それぞれの人の中にしかないんですよね。僕は残念ながら、ソラコムを使ってこの業界のこんなビジネスというのは考えられなくて。それはみなさんの中にあるので、ちょっとでもそういうかたちで使っていただけると、非常にうれしいと思っております。
大石:なるほど。今日、100万回線のリリースを出ましたけども、そのリリースが出た直後にニチガスさんが125万回線を……。
玉川:気づいちゃいました?
(会場笑)
大石:もう全部ソラコムでやるという発表があったので。すみません。目標をもう少し上げていただいていいですかね?
玉川:あっ、すみません。
(会場笑)
毎年「もうちょっと上げろ、上げていけ」と。ありがとうございます(笑)。
大石:はい、すばらしいですね。最後に玉川さん、宇宙の話だけもうちょっと深掘りしていいですか? 最後にせっかくですから。
玉川:宇宙ですか? 「宇宙が来る」というのはもうわかっているんですよ。それはなぜかというと、さっき漆原さんが「クレイジーなやつら」と言ったんですけど、世界のクレイジーなやつら、イーロン・マスクであり、ジェフ・ベゾスであり、日本でいうとホリエモンさんも、みんな宇宙をやってるんですよね。
来るのはもうわかっている。ただ、まだ僕らは舞台には立てない。それは悔しいんだけど、いつか立ちたいなと思っています。
大石:なるほど。『キングダム』でいうと今は?
玉川:今、百人将ですね。残念ながら。
(会場笑)
キングダムは今54巻ですけど、僕ら5巻ぐらい。最後にこの話をしちゃいます?
(会場笑)
大石:じゃあ、そのキングダムの話をどうぞ。
玉川:あっ、やります? あんまり本筋と関係ないと思うんですけど……。
大石:いいと思います。
玉川:この間、「キングダムについて聞きたい」って取材の依頼が来たんですよ。
(会場笑)
うちの広報は、当然のことながらこれを却下するかと思ったら受けてたんですよね。
(会場笑)
「俺、キングダムの話するの?」って言って。それで「玉川さん、キングダムとスタートアップの共通点を……」とか言われて(笑)。「そんなのないと思うけど」って思ったら、ふと神が降りて「実は、信はスタートアップの社長なんです」と。
なぜかというと、1人から始めて、100人、1,000人、10,000人となっているけど、あの設定だと10,000人が将軍なんですよね。会社のパワーって必ずしも従業員じゃないですけれど、高橋さんはKDDIの将軍だった。
大石:ははは(笑)。
玉川:「待てよ」と。トヨタさんは数十万。「じゃあ、豊田章男さんは大将軍だ」と。
(会場笑)
なんだかすごくピタッときたんですよね。僕たちはまだ百人将で、これからまだ道のりは長いぞ、と思ったんです。
もう1個おもしろい話があって、王騎将軍という将軍がいるんですよね。王騎も10,000人なのかな? 兵隊がいるんですけど、みんな「王」の旗を掲げてるんですよ。王騎将軍の下の百人将も「王」の旗を掲げてるんです。でも、飛信隊のシーンは、百人将なのに「飛」という旗を掲げてるんですよ。
大石:おぉ〜。
玉川:「これ、KDDIの中のソラコムだ」と。
大石:なるほど。
玉川:ただそれだけの話なんですけれど。
大石:ありがとうございます。
(会場笑)
(会場拍手)
じゃあ、オチとしては、ソラコムさんの社員が1,000人になったら「SORACOM Discovery」は「SORACOM KINGDOM」に変えると?
玉川:それ、ちょっと約束できないです!
(会場笑)
大石:ということで、お後がよろしいようで(笑)。ここで締めさせていただきたいと思います。みなさん、すばらしいパネリストのお三方に盛大な拍手をお送りください。ありがとうございました。
(会場拍手)
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