CLOSE

クックパッドと機械学習(全1記事)

クックパッド研究開発部門のチームビルディング

2019年3月28日、株式会社scouty、エムスリー株式会社、クックパッド株式会社、Repro株式会社の4社の共済によるイベント「Machine Learning Team Building Pitch」が開催されました。機械学習チームのチームビルディングについて、各社の取り組みを共有する本イベント。徐々に増え始めた機械学習組織の運営における知見を語ります。プレゼンテーション「クックパッドと機械学習 」に登壇したのは、クックパッド株式会社研究開発部部長の原島純氏。講演資料はこちら

クックパッドの研究開発部門について

原島純氏(以下、原島):よろしくお願いします。クックパッドの原島です。今日「何話そうかな?」ってギリギリまで考えたんですけど、ベタに自分の会社と僕の紹介にしようと思います。

まず簡単に自己紹介だけさせていただきますと、原島と申します。

2006年に京都大学の自然言語処理の研究室に配属されまして、そこから7年間は学生として研究していました。専門は自然言語処理と情報検索でした。その後クックパッドに新卒として入社しまして、そこではサービス開発部門に配属され、Ruby on Railsと機械学習を組み合わせたサービスをつくっていました。

そこから「ずっとエンジニアとして生きていくのかなぁ」と思っていたんですが、いろんなことがありまして、研究開発部門が2016年4月に新設され、こちらに異動になりました。そこからはマネージャーとして、今はとくに人事や広報、経理などのバックオフィスまわりを中心に働いています。

あんまりこういうリーダーをしているとしてると論文とか書く機会ないかなぁって思うんですけど、自分では意識して論文書くようにしています。クックパッドに研究開発部門ができた1年目はすごくいろいろがんばったんですが、研究室訪問しても、学会にブースを出しても、「クックパッドに入ったら論文書けないでしょ」って言われることがすごい多くて。「書けます!」ということを証明するために書いていたってわけです。今もがんばって書いています。

自分の紹介はこれくらいにして。クックパッドなんですが、知っていただけている方も知っていただけていない方もいらっしゃるかもしれません。インターネット上でレシピの投稿、検索等ができる日本最大の料理レシピサービスです。

実はけっこう古い会社でして、20年ぐらいの歴史がありまして、1997年からやっております。2017年に設立20周年を迎えました。2014年から海外展開を本格化しています。2014年まではクックパッドって日本にしかなくて、1言語1ヵ国だったんですけど、2019年3月末現在、29言語72ヵ国と爆発的にグローバル展開している企業であります。

サービスも伸びてまして、プレミアム会員数も200万人を突破し、わりと好調かなと思っています。やはり海外がすごく増えてまして、世界中からレシピがものすごい集まってきています。あとは検索ログもすごく集まっていて、「世界中の人が、今何を食べようとしているのか」みたいなデータがたくさん集まっています。

たぶん1年経ったら、海外の利用者数が国内の利用者数を超えて、合計1憶人を突破するんじゃないかと期待している感じです。

2016年に研究開発部門が新設

こういったサービスをやってきたんですけど、2016年4月に研究開発部門が新設されました。そもそもなんのために設立されたのかという話なんですが、すごく大まかに言うと、2015年ぐらいに機械学習がすごい流行りだしました。クックパッドでもそういったサービスを作り始めていました。

ただ、そういったサービスをつくって、そういう人を採用していきたいのに、そういった部門がなくて、ちゃんとした評価がまわっていませんでした。世の中で機械学習のブームが起こっていたのに、社内の評価がいびつなかたちになって来ていたので、2016年4月に研究開発部門ができて、赴任することになりました。

クックバッドの研究開発部門は、ものすごくサービス開発を意識しています。もともと自分がサービス開発部門にいたのもありますが、基本的にサービスの役に立つ研究開発しかしません。こういったいろいろなサービスに活かすことをやっています。

上の2つは機械学習の話です。レシピをタグ付けして分類する機能や、ユーザさんのスマートフォンの中にある料理の写真を抽出して整理してくれるものだとか。今日は紹介しませんが、下の2つはIoT向けの話でして、Alexaスキルを研究開発部門で開発しています。右下は変わったサービスなんですけど、クックパッドのレシピを調理器具メーカーさんが作っている調理器具に転送して、例えば「このレシピに必要な電子レンジの何ワット何分」みたいなデータを転送する、そういうサービスを作り上げようとしています。

機械学習エンジニアの採用について

今日はTeam Building Pitchということなので人数の紹介をしようと思うんですけど、こんな感じです。

2016年4月に当時のCEOを含めて3人。ML系1人と、あともう1人だったんですが、これがだいたい22人ぐらいまで半年ぐらい前になった感じです。また、今日はMachine Learning Team Building PitchということでML系の話なんですが、そんなにめちゃくちゃ多い訳ではなくて、9人です。減っているように見えますが、これは一部のハードウェア系のメンバーが、別の部門としてスピンアウトしたので、ちょっと減っていますが今でも9人でがんばっているっていうところです。

ちなみに、なんとなくなんですが、機械学習向けのメンバーって採用できる人数に限界があると個人的に思っていて。もちろん会社によって違うと思いますが、うちの会社の場合はおそらく全エンジニアのうち10パーセントか15パーセントが限界です。機械学習向けのメンバーを山ほど集めている会社もけっこうあると思いますが、そんなにパスはあっても、それをデプロイするところも一緒にできないと結局意味がないので、無理に集めてもあんまり変な歪みが出来てしまうのではないかと思っています。

人はほしいんですが、なかなか。会社の規模に合わせて成長していかないといけないと思っているので、現在は9人程度でがんばっています。9人なんですけど、やっていることは多岐に渡っています。

研究開発部門で取り組んでいること

これはトピックの一例なんですが、大まかに、自然言語処理、画像処理、MLOpsみたいなところをやっています。一つひとつ紹介するのはけっこう大変なんですが、いわゆるディープラーニング系のものを使って、サービスを良くしていく感じです。自然言語処理とか画像処理のところです。クックパッドはレシピがすごく多いんですが、レシピって言語と画像というマルチモーダルなデータなので、そこに対して技術を適用できるチャンスがいっぱいあります。

あと、Opsにもすごく力を入れていて、もともとクックパッドはサービス開発の場所だったので、アプリのデプロイやデータベースなど、すごく整っていたんです。われわれの成果ではなくて、もともといたエンジニアの方がすごくがんばってくださったんですけど、こういったものを使ってOpsみたいなこともすごくやっています。

あとはオープンサイエンスみたいなこともやっていまして、研究用レシピデータを公開するといったことや、各種コンペティションの実施。去年の人工知能学会のJSAI Cupのデータを提供したり、論文も3年で10本ぐらい出して、ほとんどが今のところショートペーパーだったり、ワークショップだったり。ロングペーパーはあまり出していませんが、こういった地道な活動をしているところです。詳しくは話さないので、クックパッド開発者ブログを見てください。

あと、『人工知能学会誌』という人工知能の雑誌ですね。先月号が「料理情報の知的処理」特集なので、もしよろしければご覧ください。

ご清聴ありがとうございました。

(会場拍手)

続きを読むには会員登録
(無料)が必要です。

会員登録していただくと、すべての記事が制限なく閲覧でき、
著者フォローや記事の保存機能など、便利な機能がご利用いただけます。

無料会員登録

会員の方はこちら

関連タグ:

この記事のスピーカー

同じログの記事

コミュニティ情報

Brand Topics

Brand Topics

  • 孫正義氏が「ノーベル賞もの」と評価する最新の生成AIとは “考える力”を初めて身につけた、博士号レベルを超えるAIの能力

人気の記事

新着イベント

ログミーBusinessに
記事掲載しませんか?

イベント・インタビュー・対談 etc.

“編集しない編集”で、
スピーカーの「意図をそのまま」お届け!