2024.10.01
自社の社内情報を未来の“ゴミ”にしないための備え 「情報量が多すぎる」時代がもたらす課題とは?
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袴田武史氏(以下、袴田):ispaceの袴田です。我々は、民間から月を目指すことにチャレンジしているベンチャー企業です。月と地球の経済圏をつなげていこうと考えています。
今、日本を中心に70名ぐらいのエンジニアとスタッフが一緒になって、このチャレンジをしています。写真を見ていただくとわかるとおり、けっこう外国人も多いです。非常にインターナショナルなチームでやっております。
日本をベースにしながら、ヨーロッパのルクセンブルクとアメリカにもオフィスを持っていまして、活動領域を広げようとしています。
「Expand our planet. Expand our future.」というのが我々のビジョンでして、これは「宇宙に人間の生活圏を築いていく」という意味です。そのようなビジョンを表した動画がありますので、ご覧いただければと思います。
(動画再生)
ナレーター:この街は、世界で一番新しい街。1,000人が暮らし、年間10,000人が旅をする。
20年前、この街はなかった。ローバーが送り込まれ、水の探査が始まった。この地で、水が発見された。水から水素と酸素のエネルギーが生み出され、水資源のエネルギー基地が作られた。
この街への定期輸送便が始まった。人が定住するようになった。建設、鉄工、通信、エネルギー、運輸、農業、医療などのさまざまな仕事に就く人が、この街を作っていった。
この街への旅が許可された。世界中から旅行客がやってきた。この街の名は、ムーン・バレー。
月は、あなたのビジネスの新しい舞台になる。Expand our planet. Expand our future. ispace。
(動画再生終了)
袴田:という、非常に壮大なビジョンなんですが、そのビジョンをいきなり実現はできないと思っています。ですので、ステップを踏んでそのビジョンに近づこうということで、今は大きく3つのステップを考えています。
袴田:まず今は第1フェーズになるんですが、月に定期的な輸送システムを構築していきます。月に行きながら、確かな事業として輸送サービスを手掛けていく。そして、輸送だけではなく、月面で得られたデータのデータベースを作って提供していくことを行っていきます。
先ほども出ていましたが、そのデータの中には、もちろん水という貴重な資源のデータも入っています。我々はそのデータを活用して、次の資源開発に入るための分析をしていきます。
2つ目のフェーズが、その水資源を実際に採掘して、水素と酸素に分けて、ロケットの燃料にして販売をしていくことです。宇宙に燃料のガスステーションができると、宇宙の輸送インフラを大きく変えることができます。そうすることで、宇宙での活動がより多く可能になっていきます。
ある人は「20世紀は原油の時代だったけれど、21世紀は、とくに宇宙は水の時代になる」と言っています。そのようなエネルギー支援ができれば、その先にある我々のビジョン、人間が宇宙で生活できるような基盤ができていくだろう、と考えています。ビデオにもあったように、2040年ぐらいには1,000人の人が月に住み、数万人規模の人が宇宙を旅している世界を作りたいと思っています。
ちなみにこの数字感は、今の南極がだいたい同じような感じです。研究者やそれをサポートする方々が2,000人くらい定常的に住んでいて、(年間)数万人規模の人が旅行していると言われています。今から20年後には、そういった世界が月に作れるのではないかと思っています。
そのためには、まず輸送を作ることが必要で、しかも高頻度で月に行けるシステムを作っていくことが重要だと思っています。
袴田:我々は今、ミッション1・ミッション2という2つのミッションを公表しております。その後、我々は年に数回、月面に荷物を運んでいくというミッションを、事業として行っていこうと思っています。この回数が、今後の月の開発のスピードを上げるために重要だと考えています。
そのためには、小型・軽量で低コストの輸送インフラを作っていく必要があります。この「小型・軽量」というのは日本の得意技だと思いますので、我々は日本で小型の着陸船と、そして月面を走る探査ローバーを開発しています。
今、着陸船は約30キログラムの荷物を月面に運べるような宇宙船にしようとしています。ローバーのほうはモビリティだけですと4キログラム。ここにサイエンスのペイロード、いろんな計測機器などを載せますので、最終的にはもうちょっと大きくなります。そのような小型の輸送インフラを使って高頻度でミッションが実現できるようにしていきたいと考えています。
そして、我々はHAKUTO-Rというプログラムを立ち上げています。ここには今、日本航空さん、日本特殊陶業さん、そして三井住友海上さんがパートナーとして入っていただいています。まずは非宇宙のプレイヤーに、こういったプログラムを通して入っていただくことを試みているところです。
今後、宇宙産業が大きくなって、人間が宇宙で生活圏を築くようになると、人間の周りでいろいろなモノやサービスが必要になってきます。そういったときに宇宙産業だけではできないので、ほかの産業と一緒に産業を作っていこう、と。その方向性が重要だと思っていますので、こういった機会を活用いただいてより多くの企業さんが参加できる仕組みを作っています。
今は3社で公表していまして、JALさんは我々の着陸船の組み立てや溶接、または輸送を手伝っていただく。日本特殊陶業さんは、固体電池の月での実用を目指して技術開発をしています。三井住友海上さんは、月輸送の保険を将来的に作っていくために参加をしています。今後も複数社にこのプログラムに参加をしていただこうと考えています。
どのようなミッションがあるかを表した動画がありますので、少しご説明します。まず我々の着陸船をロケットで打ち上げていきます。我々はすでに、SpaceXのファルコン9と2回の打ち上げ契約をしております。このロケットの先端に我々の着陸船が搭載されていまして、宇宙に向かって打ち上げられます。
そして、地球の軌道で我々の宇宙船を、他の衛星などと一緒に切り離してもらいます。我々の着陸船には推進系が付いていますので、そのエンジンで独自で月に向かっていきます。月に近づいたら逆噴射をして、スピードを落として、月に着陸をしていきます。
着陸すると、我々の着陸船の中にローバーが入っています。基本的には、2台を同時に持っていけるような設計にしています。このローバーが月面に展開されて、探査をしていきます。月に縦穴があることがわかっていますので、将来的にはその中を探査できるようなロボットの開発も進めていきたいと思っています。もしかしたら、ここにも水があるかもしれません。
このプログラムもそうなんですけども、我々はやはり輸送ビジネスとして事業を成立させていく。その上で1つ非常に魅力的なのが、NASAが先日発表した通称「CLPS(クリプス)」と呼ばれる、月面への商業輸送サービスを公募するプログラムです。ここに9社が選ばれていまして、我々はアメリカのDraperという研究所などとチームを組んで参加をしています。
ちなみにDraper社はアポロ時代の、着陸誘導制御という月に降りるときのソフトウェアを作った研究所です。MITから出てきた研究所でして、そういった分野では世界トップクラスです。
我々はそういうところと組めたことは非常に大きいと思っていまして、このプログラムを通してNASAの今後のサイエンスに、そしてミッションに貢献をしていきたいと考えています。以上になります。
稲谷:ありがとうございました。それぞれのプレゼンテーションに、拍手をお願いしたいと思います。
(会場拍手)
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