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Living Anywhere(全5記事)

自律分散型で新しい「住」を構築する VUILD秋吉浩気氏が志向する、次世代のLiving Anywhere

2018年11月21日、テクノロジーによる「暮らし」の変革を志す、第一線の経営者・クリエイターが集う「LivingTechカンファレンス2018」が開催されました。2020年から5年後の社会のあり方を考える「POST2020」をテーマに、10以上のセッションを実施。その中のセッション「Living Anywhere」では、COMMONS、Next Commons Lab林篤志氏、VUILD秋吉浩気氏、WOTA北川力氏、LIFULL井上高志氏が登壇しました。

自律分散型で構築する、新しい「住」

井上高志氏(以下、井上):順番に次、秋吉さんいきましょうか。

秋吉浩気氏(以下、秋吉):主に今日の3社、このあと説明する人たちは、いわゆる自律分散型という、共通のテーマを持っておりまして。北川さんだと水のインフラから開放された、自律分散型の水のシステムと、林さんでいうと経済圏みたいな、大きくそういうところなんですけど。私たちは、どちらかというと住空間を作っていくという、人類に必要不可欠な「住」の部分を、自律分散型で変えていくことをメインでやっています。

今まである意味、高価で手が届かなかったものづくり木工加工機みたいなものが、だいたい500万円ぐらいで手に入るようになってきておりまして。

今までだったらどこかで集めた材料を、どこかの工場に集めて、大量に生産して供給するということが、住空間もしくは家具みたいなものの提供のされ方だったわけですけども、こういう技術を個人で持つのは難しくても、地域の中でみんなで共有して持つということができれば、自分たちが必要とする暮らしができる。

「こういう時にこういうものが欲しい」といったものを、自分たちの力で作ることができるかなと思っておりまして。ビジョンとして掲げているものは、こういう技術がみなさんがiPhoneとかパーソナルコンピューターを使われているみたいに、自分たちの手の延長として、大工さんや宮大工さんが刻んできた技術を、自分たちの手の中に取り戻す。

ある意味、自立した作る能力をもっている人として、地域の材料を使って、その場・その瞬間に必要なものを作っていく暮らしを目指しています。

富山県南砺市に入ったShopbot(ショップボット)で、現地の杉と欅(けやき)を使って2日間のワークショップをやったんですけど。「7人衆」と呼ばれる7人が集まって、それぞれ地域の絹織物をやっている人、造園家、山菜名人、和紙の職人といった家具の専門知識がまったくない人たちに、トライアルをやってみてもらいました。

絹織物の職人の方なんですけど、同じ規格の反物が常にストックされていて、「ちょうどいい容器がない」とおっしゃっていました。彼女はかなりファンシーな方なので、棒を北斗七星のように容器に差しておいて、天の川のような構造をそれで支えたいという、かなりメルヘンチックな話をされていて。そんなものは買えないじゃないですか(笑)。

なかでサクっとデータを作って、それを見せて組み立てちゃうみたいなことが……とくに職人のツールは職人のパートナー的存在なので、ものすごいこだわりがあるんですけど。そういうこだわりに合ったものを、自分の力でがんばって汚れずに作れるというところが、ここのおもしろいところかなと思っています。

地域分散型のものづくり

秋吉:まずはものづくりの仕組みを、セントラルのどこかに集めて作るのではなくて、地域分散で自律して生産することを考えていて。創業としてはちょうど昨日で1年目なんですけど。Shopbotの機械は今月までに30台入っておりまして、それぞれの地域で流通を最小限にするために、材料の調達からものづくりのプロセスを、最小限の範囲内で完結できる仕組みを作っています。

その先に、Value Chainのend to endで、森林所有者もしくは材料を持っている人たちとエンドユーザーが、直接やり取りできるような仕組みを作ることを今やっておりまして。

ある意味、インターネットでいうところのモデムみたいな受信基盤整備をしています。そういうものを繋げて、実際にサービス化するために、弊社では今アプリケーションを作っています。

それはどういうものかというと、実際に思い描いたものをその場で出力することは、実はかなり専門的なところで、データをどうやって作るのか、接合部はどうやって納めるのか、構造をどうやって解析するのか、マシンコードはどうやって作るのか、というところがかなり難しいですけど、そこを垂直統合したツールを今作っています。

それがあると、その場に来て、その材料を見て、そのツールを使うことでバンと、その場で自分が今必要なものが出せると。そういう、Web上で使えるアプリケーションを今作っていて、β版を2018年11月29日にローンチします。

12月13日にそのリリースイベントを開催して、プレ体験的にやってみるので、もしよろしければ参加していただきたいのですけども。

デザイナーはこれまでクライアントワークで一品生産物として、プロダクトを作ってきたものを、どうやってスケールさせていくかというところを苦労していまして。

それらをフォーマット化することで。例えば自分が部屋に引っ越してきて、LIFULLさんのARとかで測って、これは6メートルの間取りだからここにちょうど入る棚を、テンプレートにあるデザインから選んで、自分でスイッチをカチカチいじって出すことができてしまう、そういうツールを作っています。

Shopbotで自由自在に編集できる

井上:これはいつどこでやるんですか? 29日と13日にやるんですか?

秋吉:29日は、WebサイトのURLを叩くと見られます。ちゃんとページもデザインされていて、最初に3拠点からスタートするんですけど。花巻と豊川と熊本の南小国の地域と材料を選べるようになります。

その次にテンプレートとしては棚があって、その次に机があって、ちょっと小屋が選べるようになって。つまり家具だけじゃなくて建築もできます。それらのフォーマットをを選んだ後にこの編集画面に入るという。

井上:なるほど。建築デザイナーがちゃんと構造とか強度を計算したようなものがベースとしてあったとして。例えば、僕の部屋のベッドルームに、横幅125センチメートルが「ぴったりはまるんだよな」ってやったら、このアプリ上でそのとおりに変更して、あとはポチってやれば、Shopbotで切り出せるという。

秋吉:切り出せるという。

井上:これは誰でもできますね。

秋吉:そうですね。それをやろうと思っていて、徐々に開発はしているので。例えば、間取りが複雑なモデルだったら、その柱のかたちに切り欠くとか、そういう話を今やっておりまして。つまりデザイナーとかアーキテクトが作った1が100になる。ある意味ではプラットフォームを作っているので、われわれ自身は何をしているかというと、ゼロイチの部分をけっこう開発していまして。

例えば、規格材。ものづくりの上で規格があるから、大量生産できるんですけど、逆に工場を使わないとなると、地域の材料ってかなりバラバラで。一つひとつ不均質なんですけど、そういうものを、ある意味センシングして、それをデータとして持ってきて作ろうとしていて。それを材料もそうですし、今古民家の改修で200平米のものをやっています。

スキャンした古民家の形状に合わせて、構造補強部材を作って取り付けて、ピッタリ合わせようとしていて。これは7月末に竣工するんですけどやっていて。

5月中に竣工する建築物は、現地の材料と現地の機械と現地の人たちの力で、建築物そのものをその場で作ってしまうということを今ちょうどやっておりまして。これはAirbnb的に使う簡易宿泊施設なんですけど、地域としては本当に何もない場所に対して、こういうものをポンと作ることができます。

つまり、家具から建築もしくは小物みたいなものは木製品です。もちろん、この後は鉄やコンクリートなど、どんどん入れていくんですけど、現状木製品であれば、現地の材料をどんどん使って、現地のニーズに合わせて、その場でオンデマンド出力ができる生態系を作っています。というところで、プレゼンテーションを終わりにしたいと思います。

今後、Shopbotをどう増やしていくか

井上:今、布石を打ちましたね。木工以外もやるよって(笑)。

(一同笑)

さっき控室で突っこもうと思ったんです。「木しかやらないの? 秋吉君」って(笑)。「いやー、最近他にも金属とかもやっているんです」って反応してきたので、そこを言ってくれました(笑)。これって非常におもしろいですよね。誰でもが自由に作りたい時に、その場で作れるということが、すごく開放的だなと思います。ちなみに、これはコスト面でいくとどうなんですか?

秋吉:コストはさっきのサービスを29日にクリックしてもらうと、誰に対していくら払われるのかというのが全部出てきます。基本的にはお客さん自身が仕上げるんですけど。

仕口とかは作られているので、組み立てやすくなっているんですけど、最後の選択でより安くなるのはあります。どちらかというと流通がかなり合理化されているので、限りなく原価に近い状態で手に入ります。

井上:中間マージンがないぶん安くなるんですね。輸送料とかも安くなるんですよね。

秋吉:誰が切った木で、誰が作ったというところが全部透明化された状態で決済をするという。そういう状態になります。

井上:なるほど。ちなみに構想としては、志としては、こういうShopbotって、今30台ぐらい全国に設置されていますけど、どのぐらいまで増やしていきたいですか?

秋吉:今、一応倍々で増えていっています。さっきのスライドでも2020年までに100で、倍々になっていくので、2023年には1,000台とかになってくるんですけど。そうすると中山間地域の自治体の数とほぼ同じぐらいになるので、それぐらいのスケールは考えていますね。

井上:じゃあ、その中山間地域で材木をすぐ製材できるようなところには、すべて設置されているという感じですか?

秋吉:というのが理想とされます。

井上:なるほど。わかりました。ありがとうございます。

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