2024.12.19
システムの穴を運用でカバーしようとしてミス多発… バグが大量発生、決算が合わない状態から業務効率化を実現するまで
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司会者:では質問をぜひお願い致します。
Rich Sheridan氏:ミスターQAさんですね。
質問者A:どうもありがとうございました。非常に感動しました。
質問したいことは、つい先日起こったことについてです。実は、今やっているプロジェクトで、私はソフトウェア作っているんですけれども、ハードウェアのベンダーと契約して、ベンダーにハードウェアを作ってもらっています。そのハードウェアベンダーがうまく期日を守れなくて、今やっているバックログがなかなか進まなくなっています。それで、品質にもすごく異議がある状態になってしまっていて。ベンダーに対して、すごく文句がある状態になっていると。だったら損害賠償、そんな風な話も出て来ました。
実は、そこへ人を送り込んだ時に、お互いのコラボレーションというのが全然無くて。向こうにも実は、やる気が無かったと。どうやったら、外のベンダーなどとうまく、「喜び」をシェアできるのか。そういった話を聞きたいと思います。
Sheridan:素晴らしい。ありがとうございます。まずここでお話をさせていただいたことは、何一つとして簡単なものは無いということです。要は、こういったことが大事だ、ということですね。
あなたの質問への私のアドバイスを申し上げますと、あなたは質問のなかで、あなたのハードウェアチームが「喜び」を失ってしまったのではないか、と恐れていますね。とても大事な疑問です。その答えを知るには、あなたはあなたのチームと良好な人間関係を構築する必要があります。
私たちが顧客と接する時の話ですが、私たちも、まったく同じような顧客と接することがよくあります。ハードウェアとソフトウェアであれ、ソフトウェアが2種類であれ、1つのチームで完遂できるプロジェクトなどというものは存在しません。私たちが1つのソフトウェアに、顧客が別のソフトウェアに携わっていて、その上で2つのピースのソフトウェアは一緒に動作する必要があったりします。
そういう時に私たちがどうするかと申しますと、できる限り客観的になるのです。つまり人について議論するのではなく、モノについて議論するのです。私たちがよく使う手は、写真のように、顧客が私たちに起こしたコミットメントについての列を(写真に表示されたドットシール進捗表上に)作るのです。「御社は、前回のミーティングで、金曜日までにこれを終わらせると明言しましたね。もし終わらせていなければ、ここにポストイットと赤いドットシールを貼ります」その2日後、顧客はここにいます。
Sheridan:(ショウ&テルのスライドが示される)我が社のチームは、終了しているはずの作業について、すべてのカードに目を通し、ポストイットと赤いドットシールを貼っています。顧客にカードに赤いドットシールを貼ることを求められても、作業が完了されていなければ断ります。顧客から「誰の責任だ」と迫られれば、私たちは非常に注意深く「御社の責任です」と伝えます。訴訟よりはましだと思われます。
なぜなら、我が社ではプロジェクトを壊すものは2つあると信じています。1つ目は、「恐れ」です。恐れても、悪いニュースは無くなりません。恐れは、悪いニュースを隠してしまいます。私たちは、恐れを克服するには、問題を進行させず、迅速に対処します。
プランが遅れ気味で、顧客がカード(注:プラン作成用の手書きカード)を吟味している時には、顧客はテーブルにカードを並べながら、直に個人的に参加しているのです。カードは壁に貼り出され、5日以内にディスカッションを始めます。すると顧客は、私たちが仕事をするためには、自分たちの仕事がどれだけ大切か理解し始めます。なぜなら、顧客が仕事を終わらせないと、私たちの仕事にも影響が出るからです。
要するに、シンプルに全体を見える化するのです。顧客との新たな関係を築くことができます。言うのは簡単ですが、実際にやるとなると、非常に難しいですよね。ありがとうございました。
司会者:ありがとうございます。他にご質問は。よろしくお願い致します。
質問者B:「実験してみよう」とお話されていましたが、やみくもに実験しても、ただ時間と手間が過ぎていくと思います。そこで、例えば誰かに相談をしながらやるんだけれど、相談をすると、必ず良い答えが返ってくるかもわかりません。どうやって実験をすれば良いかが知りたいんですけれど、何かありますか。
Sheridan:私がお勧めするのは、最初は小さくシンプルな実験を1つやってみることです。
赤ちゃんの実験は、小さな実験ではありませんでした。
(会場笑)
ここで1つ、例をお見せしましょう。メンローで行った、ごく小さな実験の一例です。
私たちがこのカードを壁に貼り出すプロセスを始めた時に、使ったのは黄色、赤、緑のドットシールだけでした。オレンジドットのシールは、使っていませんでした。使っていたのは、3色だけだったのです。
さて、メンローにはよく見学が訪れ、私が案内していました。ある日(進捗表の)ボードの前で、見学客にボードの機能について説明をしていました。黄色は開始、赤は停滞もしくは終了、緑はQA完了というドットシールの説明をしていた所、一人の見学客がボードを指して質問しました。「オレンジのドットは、何を意味しているのでしょうか」
私は「オレンジのドットは使っていません」と答えました。客は「でも、オレンジのドットがボードに貼られていますよ」と言いました。私はボードを見て「ああ、本当ですね。多分、赤ドットのシールの在庫が無くなってしまったので、代わりにオレンジドットを使っているのだと思いますよ」と言いました。
すると、傍に座っていた私のチームのメンバーたちが笑ったんです。そして、立ち上がってボードまで来て言いました。「リッチ、オレンジのドットが何を意味するか説明しましょうか」私は「ではオレンジのドットの説明をしてくれ」と頼みました。
すると彼らは言いました。「赤ドットには、『停滞』や、『完了したと思う・QA待ち』など、いろいろな意味がありすぎて、赤だけでは成り立たなくなってきたのです。しかもQAで問題が見つかれば、前のカードの指示まで戻ってやり直さなくてはなりません。そこで、チームが『オレンジのドットを使う』という実験をしたのです」今では、オレンジドットが「完了したと思う、QA待ち」という意味を持つようになりました。
委員会も、大きなミーティングもありませんでした。誰かが小さなオレンジドットのシールを持って来て「オレンジドットを使ってみよう」と言ったのです。10年ほど前のことです。以来、私たちはずっとオレンジのドットシールを使い続けています。
このことで学習した私は、案内している見学客がボードを見ている時には、目を皿のようにして、普段とは違う色のシールが使われていないか確かめるようにしています。チームは、紫のドット、ピンクのドットを使うかもしれません。
ここでみなさんにお勧めしたいのは、実験は、小さなシンプルなものでも良いということです。小さな実験を数多く行うことにより、みなさんの会社で、より大きな実験を行う眼が開かれるかもしれません。「実験をしよう」というのは、メンローでもっともよく聞かれる言葉です。
質問者C:Thank you for your interesting story. 質問は日本語で。良いカルチャーを作ったり、育てたり、それを良いものにし続けるためには、その組織、会社にいる人というのは、決してどんな人でも良いわけではなくて。一緒に良い文化を育てたりというのは、一緒に取り組める人である必要があるかなと思います。
メンローでは、この人と本当にうまくやっていけるのかどうかを判断したり、合わなくなってしまったら、「ごめんなさい、ちょっと別れようか」ということも、やってきたんじゃないかと思います。それを、どうやって判断しているのか、考えてきたのかを教えてください。
Sheridan:素晴らしい。とても良い質問ですね。今、2つの質問をいただきました。1つは、カルチャーについて。もう1つは人についてですね。この2つには、明らかに関連性がありますね。
まず、カルチャーについてお話をさせていただいて、その後に、自社のカルチャーの中でどのように人を洗練させていくかという話をさせていただきます。
私のような経歴のCEOの役割として、カルチャーを非常に意識するべきだと思っています。世界のカルチャー、ビジネスのカルチャーには、2つのカルチャーが存在すると考えています。1つは意図的なカルチャー、もう1つはあるがままカルチャーです。
すべての企業が、自社のカルチャーについて考察しているわけではないおと思います。たまたまそういったカルチャーが興り、浸透していったものと考えられます。
メンローでは、カルチャーについて非常に意図的です。メンローにおいては、「喜び」という言葉が日に何度も聞かれると思います。私たちにとっての「喜び」は、会社の外に対しても同じなのです。
メンローの目標は、世界に「喜び」をもたらすことです。自分たちの組織内部の働くカルチャーについて考えるべきことは、基本的に次の2つの疑問点です。
「私たちは誰に貢献するのか」ということと、「私たちに喜びをもたらすのはなんなのか」ということです。これらの疑問の答えが、みなさんの組織の目標を説明することができると思います。
さて、みなさんがこのカンファレンスで見てきたような環境で働く人々を、どのように見つけていけばよいでしょうか。この写真で説明しましょう。
この会社で、喜んで共に働いてくれる人材をどのように見つけるのか、とよく聞かれます。なぜならこの業界では、必ずしも自然に集まる人材でもなく、さらに、我が社の働き方が、すべての人に合うわけでは無いからです。しかしそれでいいのです。
みなさんがこのように働くべきだと言うつもりはありません。しかし、みなさんに社に来ていただいた場合は、私たちはこのように働いていることを覚えておいてくださいね。
さて、メンローでは、どのように採用面接のプロセスを作っているのでしょうか。このような環境で働きたいと応募してくる人材を、採用しているのでしょうか。ここでも実験が行われました。何年も前、私の前職から今日に至るまで、実施されている実験です。
私たちは、エクストリーム・プログラミングをもじって「エクストリーム・インタビュー」と呼んでいました。プログラミングに関しては、通常の面談プロセスではうまくいかないだろうと考えたからです。
私は、採用面接に関しては、時にたいへんシニカルで疑い深くなります。採用面接とは、2時間の間、2人の人が向かい合って騙し合いをする場だとよく言っていました。
ですからメンローでは、面接では履歴書を見ません。質問もしません。想像してみてください。質問も履歴書も無い面談です。みなさんは、「ではメンローではいったい何をやるのだろう?」と疑問に思うに違いありません。
私たちは、オーディションを行うのです。30、40、50人ほどの人を一度に呼びます。時には、この会場にいるくらいのグループになります。午後4時に全員に来てもらいます。全員が、これが面談だということはわかっています。
まず、我が社のカルチャーについて少々説明してから、面談用のペアを組んでもらいます。(聴衆を指差しながら)あなたたとあなたと、あなたたちが2人1組になってください、といった風に、全ての人をペアにします。応募者2人ずつでペアを組んでもらうのです。
そして1つの課題を与えます。紙を1枚、鉛筆を1本渡して、恐らくは面接としては聞いたことのないような、奇妙な課題を出すのです。1人の応募者に「あなたの仕事は、もう1人が2次面接を通れるようにすることです。パートナーの印象が、よく見えるようにしてあげてください。もし相手が苦戦しているようであれば、手助けしてあげてください。もし相手が知らないことがあれば、教えてあげてください」と伝えます。
我が社のチームメンバーはここに座り、2人が一緒に働く様子をメモを取りながら見ています。およそ20分間経過すると、ストップをかけます。ペアには、お互いに感謝の言葉を述べてもらってから、別のペアに組み替えてもらいます。「今度はこの人とではなく、この人と組んでください」すると別の観察者がつき、別の課題が出て、さらに20分同様のことを行います。同様のことを3回繰り返します。これが、1次面接です。
私たちが求めているのは、技術的なスキルではありません。私たちが求めているのは……通訳さんは上手に訳してくださっていますでしょうか。私たちが求めているのは、お利口な幼稚園児です。
(会場笑)
他のお友達と上手に遊べているか。上手に分けっこができるか。
情報をうまく共有できるか。隣の人と協働できるか。議論できるか。もしくは無視しているか。我が社のカルチャーについて説明した日のメッセージをうまく汲み取って、何を求められているかを想像してもらうのです。
ここにいる50人であれば、我が社の25人が観察者となります。50人が退場した後、私たちは見たことを一つひとつ話し合います。そして投票を行います。まず直接見た3人に投票し、それ以外はあとです。
そして2次面談に進みます3人から「不可」をもらってしまった人には、丁重な不採用の書面を送ります。面接を受けてみてくれてありがとう。1人が「不可」、1人が「良」を出し、残りの1人が迷うことも多々あります。その場合は、3人が自分たちが見たことについて話し合います。25人全員がこの会話に基づいて、個々人への投票を行います。
このように、私たちは50人全員について決断を行います。
そして候補者に再度来社してもらいます。私たちはこれを「1デー・トライアル」と呼んでいます。今度は、応募者には、単独で来社してもらい、1日働いてもらいます。午前中に1人のメンロー社員と、午後にはもう1人のメンロー社員と一緒に働いてもらうのです。実際の仕事、実際のプロジェクトに参加してもらいます。応募者には、ここで仕事がしたいかどうか、この環境が好きかどうかを見てもらうのです。
1日の終わりに、「どうでしたか」と感想を聞きます。「私たちは、毎日このように仕事をしていますが、あなたはそれで大丈夫ですか。あなたはここで働きたいですか」さらに「メンロー側は、あなたと働きたいか」といったことを確認します。そうして採用となります。「1日トライアル」では、給料が出ます。たくさん仕事をしてもらうからです。
もし同意が得られれば、今度は「3週間トライアル」に参加してもらいます。なぜなら、私たちは、私たちが応募者を裁定するのと同じくらい、応募者側にも、カルチャーに合うかどうかの決断を下す最良の機会を持ってもらいたいからです。
ですから、あなたの質問に対する答えは――これは長い答えなので、あとで本に載っているリストをお渡しします――もし、意図的にカルチャーを作りたいのであれば、採用面接のプロセスを見直してみるべきです。私が行う面接とそっくり同じものにする必要はありません。しかし、面接の際に、応募者が入社について明確にイメージできるように、どのようなメッセージを伝えたいか、よく考えてください。
司会者:ありがとうございました。
Sheridan:これで終わりですか。
司会者:はい。ありがとうございました。これでRichさんの講演を終わりたいと思います。盛大な拍手をお願いいたします。
(会場拍手)
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