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Using a Google Sprint as a Superpower(全1記事)

Indeed流、UXデザインプロセスの舞台裏––様々なスプリントを用いて課題を解決する方法

2019年1月31日、Indeedが主催するイベント「UX Night」の第1回が開催されました。Indeed社内で活躍するデザイナーや一線で活躍するキーパーソンが一同に会し、デザイン手法を活用した取り組みやUXにまつわる様々な事例を語る本イベント。今回は、クックパッド、Indeed、楽天における知見を語ります。プレゼンテーション「Using a Google Sprint as a Superpower」に登壇したのは、Indeed, Inc. UXデザイナーのアーロン・コーバルクシク氏。IndeedにおけるGVスプリントの活用事例と、そのアレンジパターンについて解説します。

GVスプリントがもたらしたもの

アーロン・コーバルクシク氏(以下、アーロン):みなさんこんばんは。私はアーロン・コーバルクシクと申します。Indeedの東京オフィスでシニアUXデザイナーを務めさせていただいています。私は日本に来てから3年ほど経ちました。

以前はTripAdvisorで10年ほど仕事をさせていただいていました。なぜここに来たかと言うと、いろいろUXに関しての問題があるということで、これを解決しにこちらにまいりました。

なぜ本日UXプロセスについてお話をさせていただくかと言うと、UXプロセスに関しては各企業の中でいろんなチームにこの重要性を話す機会が非常に大切だと思っているからです。このGVスプリントに関しては5日間で実際にその価値がどういうものであるのかということを見出すことができるものであります。

このスプリントの良さは、1年から5年先どういうものができるのかということを、たった5日間で考えられる、予想できるということなんですね。決して1年間かけてエンジニアが考えたり、結果として一生懸命注力したのにも関わらずプロダクトとしては失敗してしまう、そういったことにならないのがこのスプリントの良さであります。

本日話をさせていただきたいのは、典型的なスプリントというのは何なのかということ。そしてIndeedの中ではこれもハックして、チーム、時間、コストに合わせてどのように変えていったかをお話させていただきます。

スプリントを採用するきっかけ

最初に、スプリントを使うきっかけです。

我々のチームはすばらしい成果を収めていて、ABテストもうまくいっていたんですが、そこにシニアリーダーから一言、「長期的な投資をするための価値を生み出せるサービスをどうやって作れるのか」。あるいは「今後も生き残っていくような機能、あるいはプロダクトをどうすれば作ることができるのかを考えてほしい」と言われたのです。

ここで見ていきたいのは、将来的な商品の中に新しいプロダクトの価値があるのか、そしてそのfeatureが活かせるのか。それを将来的にできるかどうかをGoogle Venturesスプリントを使って予測するという体験をしていったわけです。

(企業の紹介ページを指して)これはある企業のページでして、実際に求職者がこの企業の中でどのような役割を果たすのか、そしてそこで働く人たちの代表がどれだけすばらしい職場であるのかということを紹介できるページです。

ここでの課題には2つのアスペクトがあります。

まず求職者が企業を探すということですね。どういう仕事があるのかを探すということと同時に、どう見られているのかを学ぶこと。そしてそこに働く人たちがより良い環境で働くにはどうしたらいいのか。そういったことを探し出そうとしたわけです。

5日間のスプリントの内容

ここでやったのが立て続けのスプリントです。これは2つそれぞれでセットです。求職者、そして企業の人たちにそれぞれ1週間ずつ、4週間やっていきました。

スプリント1では企業を対象にして、スプリント2では求職者を対象にして、それぞれどんな商品ができるのか。どんな新しいfeatureが考えられるのかを考えたうえで、それをどのように企業のページに活かしていくのか結論を見出そうとしました。

典型的なスプリントの5日間についてお話しします。まずはプロブレム・マッピングですね。どういう問題があるのかを参加した人たちが学ぶというセッションがDay1です。

Day1に関してはグローバルな人たちの意見を聞くということで、サンフランシスコ、シアトル、ニューヨーク、オースティンの人たちもここに来て、どんな情報を持っているのか、どんなディレクションでいけばいいのかをお互いに共有します。

Day2の日はスケッチングを行なっていきます。

これもプロダクトやPM、PR、マーケティング、UX、エンジニアなど、そういった人たちがそれぞれ前日のDay1で学んだことをベースにしていろんな考えを出していきます。

このようにいろいろなバックグラウンドの人たちがいることがすばらしいことです。このスケッチングに関してまったくダメなのがUXデザイナーでして(笑)、また逆にすごくすばらしかったのがPMの人たちでした。こういったいろんな意見が集まったことがDay2の成果です。

Day3ではプロトタイプを作っていきます。

(注:スライド未掲載)先ほど赤いシールが付いてたと思うんですけれども、これは実際に投票していたわけです。様々なデザインコンセプトをそれぞれ作り、そこで投票を行います。

1番チームが大きくなった時期にチーム全員、30人が参加してそれぞれがいいと思うデザインコンセプトに投票するというかたちを取りました。

Day4では実際にプロトタイピングをやっていきます。

プロトタイプを作るにあたってはパワーポイントやInVisionを使って作っていきます。そこでもいろいろな人たちが関わってきまして、例えばマーケターです。

ここでは実際にこれをローンチするという仮定で進めていくわけですから、マーケティングチームはどんなマーケティングの材料が使えるのか。PRチームはどういうプレスリリースをするのか、あるいはツイートをするのか。UXのチームはどういうInVisionを使ったプロトタイプを用意するのか。そういったことを具体的に挙げていきます。

5日目にはプロトタイプを実際にほかの人たちに使ってもらいました。

その現場として検証したのが日本でした。実際にそのプロダクトがどう使われているのかを見ました。

Day1から始まって問題を出して、スケッチを作ってどのようにすすめるのかを決めて、実際にプロトタイプまで作ってそれを評価する。これをたった5日間で行うわけです。

この結果、2つの成果が出てきました。それぞれ企業、求職者をターゲットにして行ったわけですが、結局は既存のサービスを新しい方向に持っていこう、新しいエントリーポイントを作って、求職者、そしてそこで働く人たちがお互いに関われるところを作ろうという結論に至ったわけです。

Indeedで学んだことは、もちろん理想的なプロダクトを作って、そのビジョンをきっちりと見出すということを、スプリントを使って行うことができるという結果わかったわけです。

もう1つ学んだことというのが、それを自分たちに合わせて適応させることができること。例えばチームのサイズ、あるいはコストや制約に合わせて修正すること、改良することができるということです。

スプリントをアレンジする

ここで申し上げたいのは、通常のスプリントをいろんなかたちに変えていくということです。1週間に渡るスプリントをハックしてどのように変えることができるのか、その例をお話ししたいと思います。

1つの例として挙げたいのがスプリントレス・スプリントという方法です。

これはUXチームが主導しているものです。ある場所に集まって行うのではなく、Eメールをステークホルダーに出して、UXチームでできるだけインフォメーションやアイデアを集めていく。それを1週間から3週間かけて行います。

つまりUXチームが進めていくのでローコストで、時間も1週間から4週間かけることができます。中程度レベルの問題を解決するにあたってはいいスプリントだと思います。

次に、ワンデー・スプリントはチームが事前に準備することが多いところですね。実際にユーザーが使っているプロダクトを見てどういうシナリオなのか、どういう問題なのかをまずは考えます。

午前中はそれを最初にシェアして、午後にはスケッチングを行います。1日の最後には実際のチームでこういうことをするということを決めます。次の週でスケッチング、そしてその次の週でプロトタイプを作ります。

ハーフデーのスプリントというものも考えられます。本当は1日かけたいんですが、9時~17時では時間が取れないときに、9時から12時にスプリントをやって、午後は通常の業務に戻るというものです。

ここでは何をしたかと言いますと、Indeedのプロダクトでまだ検討段階のものでどんなものができるのかアイデアを出して、このプロセスを経て実際のプロダクトまでたどり着いたものもあります。

ミニ・スプリントは3日間かけて行います。月曜から水曜にスプリントに関わる全部のメンバーが集まりまして、実際のものを作りテストをやっていく。そうすることで情報がこの時点で集まり知識を共有できるので、その後半の部分、あるいはその先に多くの時間を割くことができます。

様々なスプリントを用いて課題に立ち向かう

メガ・スプリントとは何かと言いますと、通常1日でやるところを1週間かけて進めていきます。そのため、全部合わせて1ヶ月くらいかかります。つまりより詳細に各ステージをやっていくことになります。

なので、1年先というより、5年先を見ていて、その先のビジョンがどうなのか、四半期ごと、翌年、再来年がどういうものになるのかということまで考えて作り込んでいきます。これは、やはりコストが多くかかります。メガ・スプリントは大きな問題に取り組む際に用います。

この60分のマイクロスプリントというのが1番楽しいものだと思います。ブレストのようなもので、時間、コスト、そして問題がそれほど大きくない場合に行います。

これは1枚のスライドに全部の内容を盛り込むようなイメージです。60分の最初にチーム全体で何が問題でありどういうことがあるのかということを共有して、そして60分の最後にはスケッチを作り上げてしまいます。

なので、そこでチームとしてプロダクトにするのか、あるいはどのようにこれを組み立てていくのかということを考えていくわけですが、60分のスプリントはすぐに解決しなければいけない、今、あるいは明日、あさってまでに解決しなければいけないような問題に取り組むのにいいスプリントです。

先ほど60分のスプリントはおもしろいと申し上げましたが、(注:スライド未掲載)写真を見てもメンバーの表情が笑っていて楽しそうですよね。1週間に渡るスプリントのときは、みんな「いつになったら終わるんだろう」という顔をして写真に写っていました。それと比較しても表情が楽しそうです。

Indeedでは多くのチャレンジがあり、その中には難しいものもたくさんあります。やはり規模感も違いますし、問題も違いますし、そこにかけられる時間とコストも違ってくるわけです。

短いプレゼンテーションではありますが、この時間内にどんな課題であってもスプリントを使っていただければなんらかの解決策を見出せるという1つの方法の提示とご理解いだければ幸いです。ありがとうございました。

(会場拍手)

最も大きなインパクトを生み出したスプリント

司会者:もし質問等ございましたら挙手をお願いします。

(会場挙手)

質問者1:スプリントに関しての素晴らしいプレゼンテーションをありがとうございました。それぞれのスプリントの方法を評価して、実際に1番インパクトのあったものはどれでしょうか?

アーロン:ミニ・スプリントが1番効果が見られたと思います。なぜかと言いますとコストが低いわりにアウトプットがすごく大きかったからです。1日のうちにフィードバックをすべて行い、チームの中で何をやっていくのか、どんなテストを行っていくのかという方向性が示されました。

おそらくこれが1番効果的で、そして1番よく使われるスプリントだと思います。その次にくるのがワンデー・スプリントではないかなと思います。

質問者1:ありがとうございます。

司会者:ほかに質問のある方はいらっしゃいますか?

(会場挙手)

通常のデザインプロセスとの差別化について

質問者2:このGoogleのスプリントのお話を聞かせていただいて感じたのは、やはり問題を弾き出して、そしてどういう解決方法があるのか、どういうオプションがあるのか、それをほかの人にテストし、ユーザーにテストしていく。この工程というのはgood design processと似ていると思うのですが、それとの差別化はどのように考えればよいでしょうか?

アーロン:とてもいい質問だと思います。似ている点はもちろんありますが、スプリントのいいところは短い時間で大きなプロセス、全体感を見れるということだと思います。

もう1つは、早い段階でいろいろな人が関われるということだと思います。Day1でどういうコンセプトで、どういうインベストメントをして、どんなチームでどういう人が関わるのかがはっきりしてくるわけですから。

最終的な結果が見やすいので、途中から新たな人が関わってくるということを避けられるところが大きな違いではないかと考えます。

質問者2:ありがとうございます。

司会者:ほかに質問のある方はいらっしゃいますか?

(会場挙手)

質問者3:Googleスプリントを自分たちのチームの状況に合わせたかたちでカスタマイズしていくうえで、Tipsがあれば教えていただきたいです。

アーロン:カスタマイズという方法で考えるときには軸となるのは時間だと思います。チームの人数が少ない場合はやはり1日、あるいは半日の短い時間で済むとは思います。

ただチーム自体がすごく大きい場合、例えばプロダクトの人が関わったりマーケットの人が関わったり、いろんな人が関わって人数が多くいればいるほど、やはり時間がかかってしまいます。スプリントとしては1週間、あるいは1ヶ月ということで多くの投資が必要になるというふうなかたちでアジャストしていくということではないかと思います。

質問者3:ありがとうございます。

司会者:ほかに質問のある方はいらっしゃいますか?

(会場挙手)

Googleスプリントで解決できないこと

質問者4:アーロンさん、プレゼンテーションありがとうございます。Googleスプリントはすごく効果の高い手法だとは思いますが、これでは解決できない問題というのは何でしょうか?

アーロン:すごくいい質問をありがとうございます。実は時間の関係でそのスライドを飛ばしてしまったので、そこをお話しできて非常に嬉しいです。

スプリントのいいところは、やはりさまざまなすばらしいアイデアができあがるところだと思います。ただ、骨に肉付けができないのと同じように、詳しいところまで入れないというところが問題だと思います。

やっていく最中も、ユーザーに対してどんな影響があるのかという具体的なところまでいけませんでしたし、UXデザインに関してもプロダクトにどういう影響があるのかというところまで詳細に入っていくことができませんでした。

なので、スプリントが終わったあとにチームで考えなければいけないのはその詳細、ほかにもある問題をどのように解決するのかということを深掘りしていくというのが次のステップだというふうに考えます。

質問者4:ありがとうございます。

司会者:ほかに質問のある方はいらっしゃいますか?

(会場挙手)

ステークホルダーを納得させるには

質問者5:アーロンさん、すばらしいプレゼンテーションありがとうございます。前職での悪夢の体験をちょっとお話させていただきたいです。Googleスプリントを実際に使わせていただいて、最終的にはすばらしいアイデアに到達したわけですが、実際にそれを実現しようとなると、ステークホルダー、あるいはボスが受け入れてくれないという状況に直面しました。その人たちを納得させるにはどういう方法を取ればよろしいのでしょうか?

アーロン:実はそのスライドもカットしたんです(笑)。スプリントの良いところは、始める前にUX、そしてステークホルダーが関わってくることだと思うんですね。我々としてはガードレールという言い方をしていますけれども。それを実際に作っていく必要があります。

つまり、最初の段階からチームにステークホルダー、UXの人たちみんなが関わることで、どんなプレゼンテーションをしようという方向性がある程度見えてきました。

つまり、最初の段階からこういった方向性に行くことに同意しつつ進めていけところが、スプリントの強みではないかなというふうに思います。

質問者5:ありがとうございます。

司会者:それでは、ありがとうございました。

(会場拍手)

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