2024.10.21
お互い疑心暗鬼になりがちな、経営企画と事業部の壁 組織に「分断」が生まれる要因と打開策
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尾花佳代氏(以下、尾花):まだお揃いではないのですが、時間が過ぎましたので始めさせていただきます。本日はT-KIDSのトークイベントにお越しくださいまして、本当にありがとうございました。T-KIDS代表の尾花でございます。
今日は、ご予約いただいた方もいらっしゃると思いますが、松田雄馬先生による「人工知能はなぜ椅子に座れないのか: 情報化社会における「知」と「生命」」という書籍刊行を記念したトークイベントになります。
雄馬先生はこうした研究もなさっているのですが、子どもの教育についての話題も織り交ぜながらお話いただければと思っています。
このチラシをご覧いただいた方も多いと思いますが、今日はT-KIDS人気クラスである「親子で学ぶ冒険型教室ファミラボ」の森本先生にもお越しいただきまして、どういったところが面白いのかということを、トークイベントとして一緒にお話しいただく予定です。
最初は松田雄馬先生より本の内容に関して伝えたいことをお話しいただきまして、後半は森本先生と一緒にこの内容について、また最近気になることについて語り合っていただきたいと思います。
さらに、後半以降の時間で、みなさんからも聞いてみたいことなどをどんどん質問してください。全部で1時間くらいの予定なので、これから16時くらいまでお付き合いいただけますでしょうか。それでは、松田雄馬先生と森本先生をご紹介いたします。では、バトンタッチをどうぞ。お願いします。
松田雄馬氏(以下、松田):こんにちは、みなさん。やかましいヤツもいますが……。みなさーん、こーんにちはー!
(会場応答)
あれ、おかしいな? 今日はたくさんのお友だちが来ていると聞いていたのに、なんだかあまり声が聞こえないぞ? よし、もう1回聞いてみよう。みなさん! こーんにちはー!
(会場応答)
松田:はい、どうもありがとうございます! どうもどうも。今日はみなさんお集まりいただき、ありがとうございました。このたびは「人工知能はなぜ椅子に座れないのか」トークイベントということで、人工知能の研究をやらせていただいている松田雄馬と申します。よろしくお願いします。
今日のお話は難しいですよ、みなさん。めちゃくちゃ難しいので、もう目ん玉をこんな感じで見開きながら、耳をこんな感じにして聞いていただければ! まず僕が何者なのかということで、自己紹介のスライドを用意しましたので、それを見ていただきたいと思います。
(スライドを指して)はい、いきなり難しい単語が出てきました。数理生物学という分野の研究者です。それは何の研究かですけど、人工知能というと人間の知能ですね。知能をコンピュータで実現するということなので、では人間とはなんだろうという研究者なんですね。
人間といえば生き物なので、生き物を研究しているということです。生き物をどうやれば理解できるのかというと、数学を使って理解するんですね。ですから、数学を使って生き物を理解する、数理生物学という分野があるのです。
そんな数理生物学の研究者であり、具体的には人工知能を研究しています。という感じです。難しい単語が出てきましたね。どんどん難しくなりますよ。はい、いってみましょう!
こんな感じで難しそうに喋っているわけですよ。どこにでもいる普通の研究者でございます。
松田雄馬。覚え方は、飛ばない飛馬はただの雄馬だ、ということで。星飛馬です。飛ばない星飛馬でございます。はい、この空気感良いですね。どんどんいきます。
1982年9月3日生まれ。ほら、すげぇだろ、みんな大好きドラえもんと同じ誕生日だ、ハッハッハ! ドラえもんと同じ誕生日だということで、だからドラえもんを研究しているわけではありませんが、知能の研究をしています。どんどんいくよ?
徳島生まれの大阪育ち、高校が奈良で、大学が京都という1人三都物語です。そんな感じです、どんどんいくよ?
松田:もともとNECの中央研究所というところの研究者で、いろんな大学や企業の共同研究をずっとやっていました。例えば、MITメディアラボで競争デザインプラットホームといって、ぜんぜん分野の違う研究者の人たちが、どうすれば一緒に議論をしたり、研究をしたりすることができるのだろうかというものを開発したり。
あとは、今の研究ですね。人工知能と近いところでいうと、東北大学と一緒に脳型コンピュータ、人間の脳のようなコンピュータをずっと研究していました。その流れの中で博士課程に進んで博士号を取りまして。そんなもんですから、博士といわれる人です。博士です。そんな感じです。
具体的にいうと、「脳はどうやって物を見るのだろう?」という研究をしています。そうした研究をすることによって、人工知能というものを作るということをずっとやってきました。脳とは何か、知能とは何かというような研究を、これまでずっと続けています。
今は旅をしたり、ボーリングをしたりといろいろなことをやっているのですが、実はNECから2年前に独立しまして、合同会社アイキュベータという会社をつくり、そこの代表をしています。こう見えても起業家です! という感じです。
そんな松田雄馬でございますが、もうちょっと僕のパーソナリティを知ってもらいたいなということで、いろんな写真を用意してみました。こんな活動をやっています。
(スライドを指して)巨大プリンを作るぞー、巨大マンゴープリンを作るぞー、巨大シャボン玉を作って中に入るぞー、といった研究もしたり、チベットに行って子どもたちと遊んだり、そんなこともやってきています。
そんな感じの、一言でいえば、どこにでもいる普通の研究者です。たぶん、ちゃんと研究もしています。
松田:そういうわけで、みなさん。人工知能というと、いろんなところで聞きますよね。これから仕事がなくなっちゃうんじゃないのか、人工知能に負けないためには勉強をすごくしなきゃいけないんじゃないのかなど、いろんな話を聞く機会があるかと思いますが、そこをみなさんと考える時間にしたいと思います。
普通の研究者が、今日は言いたいことがある。ということで、さっそく聞いていただきましょう。
AIブーム、人工知能ブームの昨今ではございますが。仕事が奪われる、人類が滅ぼされるなどとみなさん言うわけですよ。本当か?
はい、これを見ると人工知能とは何かが一瞬でわかってしまうという、すごい映像を今日は用意しました。映像の内容を今から映画のナレーション風に語るので、静かに耳をこっち側に向けて聞いてもらいたいと思います。
いきますよ。映像の内容はこちらです!
2XXX年、ついにゴミ収集の仕事まで奪ってしまうロボットが出現しました。やべぇ、人類はゴミ収集の仕事まで奪われてしまうのでありましょうか!?
このように、ゴミ箱を認識して自動で捨ててくれる。めちゃくちゃ便利ですよね、これ。ヨッコイショ〜という感じで勢いよく捨ててくれましたね……。
(ロボットが捨てたゴミがゴミ箱から溢れ出した映像?)これは一言でいうと、逆に仕事を増やしてくれやがってということですね。なにが仕事を奪ってしまうだよ、という話だと思うのですが。
僕が言いたいのは、ロボットが人間の仕事を奪うなどといろんなことがいわれていますが、実はそんなことはないんだよということです。
松田:情報化社会により、人間のやることがなくなってしまう、コンピュータが全部人間を超えてしまうなどと簡単にいわれていますが、そこのところ本当なの? ということを落ち着いて考えて見ようということが今日のテーマでございます。
この本は新潮社さんから出させていただいた「人工知能はなぜ椅子に座れないか」なのですが、なんのために書いたかと一言で言いますと、メディアのあおりに騙されることなく情報化社会を冷静に考えることを目的として、出版いたしました。これを読めば騙されることがなくなるよ、というような感じで書いています。
そんなわけで、さあ、どんどん難しくなりますよ。最後までついてこれるかな!?
人工知能は今、いろんな話があって、すごいブームだと言われています。しかし実は、いろんなニュースなどを見ていくと、人工知能のブームの流れが変わってきているということを詳細に読み解くことができるんですね。まずはそのニュースの読み方のようなところを、みなさんとやってみましょう。
そのあと、先ほどのゴミ収集ロボットのようなところで、一体なにが学べるのかという、人工知能の真実について、みなさんと勉強してみたいと思います。
第3章では、人工知能ブームだと今は言われていますが、このあと一体どんなことが起こるのか。当然、それがわかれば、これから今の子どもたちがどんどん大きくなるというときに、どのように生きてい行けばいいのか。我々もそうですよね。どうやって生きていくのかということがたちどころにわかってしまいますよ。
最後にまとめとして“人工知能ブームの喧騒を超えて”ということについてお話させていただきたいと思います。
どうだ、難しそうだろう? ということで、やっていきますよ。どんどんいきますよ。
松田:では、1番最初は“人工知能ブームの熱狂とその真実”ということで、まずは最近のニュースをみなさんと一緒に見ていくことで、人工知能が今どうなっているのかについて理解して行きたいと思います。
ニュース記事なので文字が多いです。とりあえず、ポンポンポンポンいきますね。
2017年、最高の囲碁AI、アルファ碁全勝。つまり、どんな囲碁の棋士にも適わないロボットが出現したということですね。また、オックスフォード大学が認定、あと10年で消える仕事なくなる仕事ということで、僕らの仕事がどんどんなくなっちゃうなんてことも言われていると。
これは2014年のお話ですね。それから、AIが人類を超えてしまうということもよく言われています。1番最初に言い出したのは、レイ・カーツワイルさんというアメリカの予言者というか未来投資者の方ですね。この方が、コンピュータがどんどん進化していくと、人工知能が人間を超えてしまうとおっしゃったんです。
ここで、今日みなさんと考えていきたいのは、「なんかヤバイ」ということではなく「本当か?」ということなんですね。みんなで問いを考えてみようというのが、今日の問いでございます。
では、こんなふうにいろんなセンセーショナルな、ヤバイぞヤバイぞというニュースが出ている裏側では、どんなことが言われているのかということを、みなさんと一緒に見ていきたいと思います。
人工知能ブームへの素朴な疑問ということで、もう少しあおりニュースを出してみますね。こんなことを言う人が出てきました。究極の技術、汎用AIを10年で作る。これから、先ほど45年に人類を超えると言いましたが、うちの会社は10年で越えてしまう、なんてことを言い出した会社があります。これはまあチェコの会社ですが、Good AIというところです。
それで、今からみなさんで考えていきたい問いなのですが、究極の技術というものを10年で作ると言っていますが、本当にそんなことができるの? ということですよね。
もうすこし言うと、人類を超える知能なんてものが作れるのかということですね。人間の知能はそんなにバカなの? という話ですよ。そもそも知能って作れるの? ということです。そこまで考えていくと、10年で作るというのはなんかこう話が怪しくないのかという感じになっていくと思いますが。
今日ここから読み解きたいのは、うまい話には裏があるということです。人工知能ブームが実際のところどこに向かっているのかということについてズバッと切り込んでいきたいと思います。もうチャッチャッチャッとやっちゃいますね。
松田:人工知能に対する報道の急激な変化が、実はここ1年ですごく見られています。ご紹介しますと、「人工知能が人間の仕事を奪うというのは嘘だった」。もう言いきっちゃっていますね。それから、GoogleのAIのトップは「人工知能という言葉自体が間違っている。誇大広告を生む温床だ」なんていうことを言っています。
それから、今度はソフトバンクです。ソフトバンクは人工知能を使っていろんなサービスを作っていこうとしたのですが、実は、人工知能によるシステムを作ってみたら、営業さんは誰も使えないというように言いだしたんですね。
いろんなことをやっていった先になにがわかったかというと、別に人工知能なんてどうでもよくて、営業さんが困っていることを解決することが大事だったということ。これは実はビジネスの基本なのですが。実は、人工知能が何かをやってくれることはなかったといっています。
他にも、これもバシッと言いきっちゃっていますが、SXSWというソフトウェアの世界的な学会があります。この学会で人工知能ブームは終わったということを明確に言っていたということがあります。
このようにいろんなニュースを読み解いていくと、全部2017年の後半以降、つまりここ1年以内に起きたことなのですが、どうも、人工知能のブームを終わらせたがっている人がいる。終わったというよりも、終わらせたがっているということが重要なことだと思っています。
AIのみに夢を託す時代は終わりを迎え、どうもこの人たちは、この次の時代というところにシフトしようとしているということなのですね。ということは、重要なのはこの次の時代が一体どんな時代なのかということだと思います。
松田:さあ、どんどん難しくなりますよというか、次の時代というのはどんな時代なのよとお楽しみになってくるのではないでしょうか。それを話してみたいと思いますが。
その前に、大きな問いかけとしまして。人工知能ブームがどこかに向かっているのだとすると、一体どこに向かっているのでしょうか。それをみなさんと一緒に考えていきたいと思います。ブームの先を予測すれば、これからの生き方を考えることができる! ということですね。
“人工知能ブームの熱狂とその真実”は以上でございまして、ここからは、今度は人工知能というのはなんなの? “人工知能の真実”ということについて、みなさんと一緒に考えてから、人工知能ブームのあとに起こる動きについてお話をしたいと思います。
残り15分だ、がんばろう!
先ほどの動画をもう1度見ていただきたいんですね。ここで、人間と機械の違いというのはどういうところにあるのかという部分を確認してください。映像を今から再生しますので、これが人間であればどうするのだろうというようなことを考えながら見ていただきたいのです。では、もう1回再生します。
(動画が流れる)
機械というのはすごく正確ですから、このようにゴミをガチャンとキャッチして、華麗に捨ててくれます。すごく正確ですね。すごく正確にやってくれて、すごく正確に失敗してくれる。ここに書いてある通り、AIは正しいと。すごく正確なんですよ。だからこそ間違えてしまう。ある種皮肉なことでもありますが。
なんとなくこう見ていると、人間であればこうする、機械だからこうしちゃったのかというようなところを言葉にできるかどうかはわかりませんが、感覚的に読み取っていただけたのではないかと思います。学術的なというか、ちょっと小難しい言葉も含めて、次のページでまとめてみました。
松田:人間と機械の違いというと、実は昔あった人工知能ブームのときに偉い哲学者さんがこのようにまとめました。このときも今のように、人工知能がひょっとするといつか人間を超えてしまうのではないかと言われていました。
そのときにちょっと待てと、お前ら冷静になれと。冷静になったうえで、今いわれている人工知能を2つに分けようじゃないかということをジョン・サールさんという哲学者の人が言い出したんでね。
それで、その2つに分けた内の1つが、強い人工知能といわれるものです。もう1つは弱い人工知能といわれています。これはどういうことかというと、強い人工知能はそれ自体が知能を持ちます。それに比べて、弱い人工知能は弱いですからそれ自体は知能を持っておらず、知能を持つ人間の知的な作業をサポートしてくれるものです。
こんなふうにわけられます。知能を持つ者というのは、精神も持ちます。ですから、自分で意思決定をすることができます。体と環境の間で関係づけをすることができます。
一方で弱い人工知能は、それ自体は知能を持たないので、自分で意思決定をすることはできません。でも、誰かが意思決定をするときに、それを助けてあげることはできるんですね。あくまでも道具です。
そのうえでアルゴリズム、つまりプログラムやデータといったもので、情報処理を行います。データなどを加工したりすることが得意です。先ほどのゴミ収拾ロボットでいうと、人間が決めた手順に従って、彼らはそのゴミを処理します。でも、たまたまそのゴミが人間が思った以上に多かったとしても、関係なくその処理を実行してしまう。
もしこれが人間であれば、「これ普通よりちょっと重いぞ」「ちょっとこれヤダ!」といった感じで言うかもしれませんが、機械は道具なのでそこは忠実に実行しちゃいますね。ですから、これだけでなにかの意思決定をするというのは非常に難しく、そこにはやっぱり人間のサポートが必要だねということだと思います。
実は今、人工知能といわれている技術のすべては弱い人工知能なので、人間のサポートなしではなにもできません。当然、人間がいろんなデータを食わせるというと、そのデータで意思決定などもできるのですが、人間がなにもしないと機械はなにもできません。そういうことです。
今の人工知能に代替できることは、人間の仕事を奪うほどのことというわけじゃないんですね。人間の仕事の一部の作業を代替して、人間がそのぶん楽をできたり、よりかしこいことができるようになったりするために使っていく。あくまでも道具だと思っていただければいいというように思います。
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