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テクノベートが変える動画ビジネス(全5記事)

中国では「普通の子」の食事の動画に、数十万人が投げ銭 人口規模が動画ビジネスに与える影響

グロービスの経営理念である、能力開発、ネットワーク、志を培う場を継続的に提供することを目的とした招待制のカンファレンス「あすか会議2018」が、2018年7月7~8日に開催されました。日本でも発売されている「Oculus GO」は、ハイスペックなPCを必要としないスタンドアローン型VRヘッドセットで、2万円台という低価格を実現しています。今回は、「テクノベートが変える動画ビジネス」と題し、VR・動画ビジネスのトップランナー達が、動画ビジネスゆえの課題や日本と海外のマーケットの違いについて語りました。

動画ならではの課題を探る

間下直晃氏(以下、間下):あと今、動画の課題や動画の問題ってなにがあるんだろうと。まぁ、動画のダークサイドはなんなのか、ということを少し聞ければと思っています。もちろん、動画ならいいというわけではないじゃないですか。動画が持っている動画ならではの課題みたいなものがもしあれば。

例えば、Facebookで(動画を)開いたら、いきなり音が出てうるさいとかね。いろいろなことにはじまり、たぶんまだいろいろな課題があると思うんですけれど、なにかそういうもので感じていることはありますか。

上坂優太氏(以下、上坂):1つはやっぱり、さっき吉田さんからもありましたけど、制作工程で、テクノロジーが浸透して、データが浸透して、あるいはAIが浸透してみたいなことがあります。まぁ、とはいえ、まだまだなんですね。

とくにインターネットの動画は、まだビジネスとして売上がついてこない。これから少し遅れてついてくるところなので、(動画の)制作コストは、例えばテレビのコンテンツを1つ作るのに比べて、10分の1、あるいは50分の1ぐらいの制作費に圧縮される中で、どうビジネスしていくのかというところです。

広告ですとか、コンテンツ(の制作)ってやっぱり労働集約的だったりするので、労務の問題も一昨年ぐらいにいろいろ出ましたけれども、やっぱり供給ですね。コンテンツの供給のところに、どんなふうにもっとテクノロジーを組み込んでいけるか。

あとはやっぱりアートの部分もあるんですね。こういう企画でジャンプしていくとか、0から1を企画していくところで、人が創造性を持ってやらなきゃいけないところは、なかなか効率化しづらいんですけれども、そういうところにいかにテクノロジーの力を活用してやっていけるか。

うちも「Vync」というツールで、広告やコンテンツ業界の制作工程をもっと効率化しようと取り組んでいます。例えば、動画を1本撮りますと、それが完成するまでに関係各位に見ていただく試写をやるんです。これは今まで基本はFace to Faceでやっているんですね。試写のブースを借りたり、PCの画面で試写をやるというかたちで、みなさんが時間を取って同期してやる。これを(Vyncでは)全部非同期でチェックできたり。

そういったところで、クラウドで解決していける部分も大きいのですが、コンテンツビジネスの生産性というところは、やっぱりまだまだ課題や、ダークサイドはけっこうあるのかなと個人的には思っています。

コンテンツ作成の現場に残る古い体質

間下:コンテンツ作成のマーケット自体は、まだまだ古い体質が多いということなんですかね。

上坂:めちゃめちゃ古いですね。めちゃめちゃ古いです。

間下:なるほどね。

上坂:私はもともとテレビの仕事をしていたので、当時ほど労働環境は悪くないとは思うんですけれども、それでもやっぱり根本的にはまだまだ非効率な部分ってすごく残っています。ああいうところは、とくにインターネットの動画領域のときに、どんなふうに解決していけるかというところはまだ課題かなとは思っていますね。

間下:なるほどね。(人が)集まってやっているんですね。

上坂:集まってやってますし、なんていうんですかね。日本のホワイトカラーの生産性って低いと言われるじゃないですか。データとしても出てると思うんですけれども。

その中で、クリエイティブって際限がないので、何時間かけてどこまでもいけるというところがあるので。そういうところでいうと、生産性の話がおざなりになってしまうというのはすごくあって。それを「解決できる部分は全部効率化しましょう」というところに、いかに切り分けて考えられるかは、まだ課題かなとは思いますけどね。

間下:なるほど。ありがとうございます。確認会はV-CUBEでやっていただいても構いませんので、よろしくお願いします。

上坂:あっ、いや。はい、使います。

間下:吉田さんのところは今300人いるんでしたっけ?

吉田大成氏(以下、吉田):300人ぐらいになりましたね。はい。

間下:この間お邪魔したら、すごいことになってましたよね。なんかミニキッチンがすごくいっぱい並んでて。

吉田:そうですね(笑)。うちは今、だいたい月間で1,500本ぐらいレシピ動画を作っていっているので。料理スタッフが30名ぐらい、編集スタッフも40名ぐらいいたりするので、確かに人はすごく多いですね。

間下:そこはやっぱり効率化を? さっきおっしゃってたように、統計データを使って編集スピードを上げていくというようなことがあるんですけれど、それ以上のことってなにか考えてたりするんですか?

吉田:やっぱりどんどん効率化は進めていきたいなと思ってはいるので、例えば、最終的には編集自体を自動化されるようにしたいな、とは思ってはいますね。

やっぱり、どこを効率的にやるかは常に考えていかないと。動画は1本を作るのがけっこう大変なので、そこのコストの効率化は闇ではないですけれども、絶対に課題にはなるところだなと思ってはいます。

16Kまで進化していく画質

間下:そうですよね。解像度が上がれば上がるほど、いろいろなコストが増えますもんね。

吉田:そうですね。

間下:4Kとかって撮っちゃったら大変なことになるじゃないですか。みなさん、自分たちのカメラで撮るじゃないですか。4Kデータなんか保存した日には、大変なことになるのも事実で、そういうのもありますよね。

吉田:そうですね。例えば社員のパソコンのスペックがめちゃめちゃ高いとか。そうじゃないと編集できないということも、もちろんあるので、やっぱり設備投資はどんどん積極的にしてはいますね。

間下:なるほどなるほど。芳賀さんはどうですか?

芳賀洋行氏(以下、芳賀):そうですね。うちはVRなので4Kから始まるというような。8Kとかになっちゃっているので、ひどいですよ。テックな話なんですけど、サイズがまず4倍だったりして、データの量も増えているので、ひどい話ですけど、1本で100Gみたいな。

吉田:いや、そうですよね。

芳賀:それをいかに今の現存のデバイスで再生させて、来たるべき5Gのときにまとめに再生できるようにするのかとなると、相当なR&Dというか技術投資が必要。

あとは制作工程で省けるところは(自動化)する。VRならではの現像というか、“スティッチ”と呼ばれるカメラの映像をくっつける作業があるんですけど、今はその自動化などをやってたりしますね。

間下:Oculus Goなどを見ても、画質はまだまだ満足がいく感じじゃないですよね。

芳賀:そうですね。

間下:あれはレベルがまだ追いついていない?

芳賀:まだ追いついてないです。4Kをギリギリ再生できるぐらいですかね。

間下:あれでもう4Kになってるんですね。

芳賀:あれで4Kなんですけど、立体を見るときは左眼と右眼で4K・4K必要なので、Oculusで見てしまうとのっぺりしてるか、4Kを半分に割ったものになっているので、だいたい解像度は半分になってしまって、2Kぐらいですかね。

間下:へえ。

上坂:8Kを見ると4Kになるってことですか?

芳賀:8Kを見ると4Kですね。

上坂:へえ。

芳賀:そうするとたぶん、人間の眼は両方8Kずつ必要らしいので、今後は16Kないとダメらしいですね。

間下:(笑)。8Kを超えると(人間の目は)ごまかせるんですよね。

芳賀:ごまかせるらしいですね。

間下:人間の眼はね。たしか(8K以上は)もう見えないんですよね。

芳賀:おっしゃるとおりです。

国内外の動画マーケットの差

間下:あと芳賀さんにもう1個聞きたかったのは、さっき(マーケットの)90パーセント以上が海外とおっしゃってたじゃないですか。国内のマーケットと海外のマーケットを見てて、動画やVRはなにか違いがあります? もしお二人も見解があれば教えていただきたいんですけど。国内外の違いみたいなもので、もし気づいた点があれば。

芳賀:いや、そんなにないかなと。

間下:そんなにない?

芳賀:はい。

間下:あっ、はい。10秒で終わっちゃいました。

芳賀:ええと、そんなにない。ええと……。

間下:いや、大丈夫ですよ。なければ無理しなくても(笑)。あるのかなと思って。

芳賀:言い方が難しいですけど、アメリカのほうもスピードが似てるというか、日本もそんなに遅れていないというイメージですかね。VRに関してはなんですけど、どちらかというと、アメリカってちょっとVRはゆっくり気味なんですよね。

間下:VRに関しては、日本の今のレベル感は、アメリカと比べても中国と比べてもあんまり変わらない?

芳賀:変わらないですね。けっこう国によって温度差があって。とくにVRって、先ほど人材研修のお話をしたじゃないですか。あれって、人を研修する気がある国はVRにいくんですよ。

人を研修しないって人たちは、VRよりもどちらかというとARやMRで、そもそもどんなに訓練されていない人であっても完璧なことができるように、コンピュータでガイドしちゃえという。エアバスさんなどはそちら側に向かっちゃってたりするので。

間下:諦めてるんですね。

芳賀:けっこう諦めている国はありますね。なので国によってけっこうはっきり分かれたり。これは検索ボリュームを見るとわかるんですけど、アメリカって、ARがVRの検索ボリュームの4倍あるんですよ。日本は逆でVRのボリュームがARの4倍あるんですよね。

間下:なるほど。それおもしろいですね。

芳賀:国によってそのへんの温度差はあります。国がどうしたいかとか、あとは移民が多い国なのか多くない国かなどで、けっこう分かれていますね。

吉田:それは、もう逆に日本が遅れているってことじゃないんですか? あとVR・ARはどう見るんですか?

芳賀:なんでしょうね。けっこう温度差はありますよ。イギリスも日本に似てるんですよね。VRのほうが熱いんですよね。

吉田:へえ。

芳賀:なので、ちょっと国によって違いがありますね。そういう意味だと。

間下:なるほどね。じゃあその研修とかをちゃんとやろうと思って、要は人材育成しようと思っているところはVR色が強くて。

芳賀:今はそういう理解ですね。

間下:そうじゃないところは諦めて、ARで遠隔で指導・指示するというようなリモート指示になる?

芳賀:おっしゃるとおりです。諦めて遠隔で指示するか、ARとかMRをやるには高すぎる現場というのがやっぱり存在していて。農務省さんの例だと、ベーコン工場だったりするんですけど、そういうところはVRを使うことが多いですけど、ちょっとなんか違いますね。確かにそこは国によって分かれているイメージがありますね。

間下:なるほどなるほど。わかりました。ありがとうございます。

人口規模が動画ビジネスに与える影響

間下:中国などでは、いわゆる投げ銭が非常に進んでいるじゃないですか。あのマーケットなどを含めてどう思います?

吉田:日本でもSHOWROOMさんとかいらっしゃるので、たぶん一定の市場はあるとは思っています。ただ、あれはやっぱり、まともにビジネスとして考えると、人口規模が影響しそうだなと思っているので、1人に果たしてどれぐらいの(ファンがつくか)……。

ニッチだとしてもファンがつくかによって、けっこう収益源が違っちゃうと思うので。なので僕らとしては、どちらかというとマス側をひたすら狙い続けるというスタンスでいるというのが、けっこう違いですかね。

間下:普通の子が食事をしている動画に10万人がぶら下がっているみたいなのがね。

吉田:そうですね。

間下:あれ、本当にぶら下がってるんですかね。

吉田:ぶら下がっているんですね。

間下:いや、想像できます? 普通になんの……変なあれじゃないですよ。アダルトとかそういうのじゃなくて、普通に男の子と女の子がご飯食べているのをずっと流してて、そこをオンラインに何万人とか何十万人が同時に視聴してて、お金を投げる。

吉田:うんうん。

間下:僕にはまだなんで(お金を)投げたいか、まったく理解できないビジネスなんですけど。たぶんここにいる人たちの年齢的には、もう無理かもしれないですけどね。

吉田:でも、たぶん日本でもイチナナとかいろいろやっているなかで、やっぱり中国に比べると10分の1ぐらいの規模の人は見るんですよね。

間下:あっ、じゃあ、その人口比に応じたぐらいのサイズにはなってきている?

吉田:というのはあるだろうなと思っています。そういったときに10分の1だった場合に、発信者がそれだけでご飯を食べていけるかと言われると、食べられない。単価の部分で、ユーザーさんからの投げ銭が10倍にならないかぎりは、けっこう厳しいなとなってきたときに、人口規模の違いが出ちゃうので。

一定規模の人は絶対に儲かるし、トップレベルは儲かるんですけれども、中国みたいにそれが何千人というスターが出るかというと、僕はけっこうそこが1個課題になるんじゃないかなというのは思っているかたちですかね。

間下:なるほど。ありがとうございます。

プラットフォームはアメリカに駆逐された

間下:上坂さんなにかあります?

上坂:そうですね。ちょっと違う軸ですと、最近、アメリカでNetflixがドラマ視聴において、ケーブルテレビや放送を抜いたというデータがありました。

アメリカってテレビが弱いんですよ。もっと言うと、日本が強すぎて。もう向こうの20〜35歳のデータでは、Netflixがデファクトになっていて、オンライン、オンデマンドが抜いているということが、けっこう進んじゃっているというのがあって。

日本がどれぐらい遅れてくるのか、というところが勝負どころかなと思ってまして。今さっきテレビの広告市場は衰退していないとありましたけれど、あれはけっこう守ってる状態だったりするので。今はそれによって、イノベーションが阻害されだす時期だと思うんですね。

しっかりそこを解放して、新規参入を含めてもっとやっていかないと、もうプラットフォームレイヤーはアメリカに全部駆逐されちゃっていて、日本で残っているプラットフォームはほとんどないので。とくにコンテンツビジネスにおいて、日本が動画でどこまで戦っていけるかというところは、もうちょっと大局観で考えていかないと、全部飲み込まれていっちゃうんじゃないかな、というのはすごく危機感として持っていますね。

間下:ただ、このコンテンツも、チャネルが増えれば増えるほど投資が分散するじゃないですか。Netflixぐらい大きく統合できる、グローバルで統合できると、投資額が大きいですけど。そこの課題ってけっこうありますよね。

上坂:ありますね。なのでNetflixですらAmazonに、コンテンツ以外も含めてなかなか攻められてますけど。「日本はじゃあどういうふうに戦っていくんだ?」みたいなところは、すごく課題ですよね。

我々もやっぱりコンテンツレイヤーで戦っているので、使わざるを得ないので、どんどんNetflix含めて使うものを使っていくんですけど。実際、その胴元はやっぱりUSのグローバル企業が握っているという状況なので、どんなふうにその辺りと戦っていくかというのは、けっこう深い課題かなと思いますけどね。

間下:ありがとうございます。そこはぜひがんばっていだだいて。

上坂:がんばります。はい。

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