CLOSE

HLC定例会「働き方の多様性を実現するには」(全4記事)

テクノロジードリブンのイノベーションなら、たった1人で世界を変えられる

2018年6月22日、渋谷マークシティにて人事担当者向けコミュニティ HLC によるイベント「働き方の多様性を実現するには」が開催されました。主催する株式会社サイバーエージェントの曽山哲人氏がゲストとして招いたのは、IT評論家として著名な尾原和啓氏。本パートでは、インターネットによって変わる働き方の「3つの変化」を軸に、尾原氏がこれまで体験を振り返りつつ、これからの働き方について語りました。

尾原氏の知見から広がる「知」の交流会

尾原和啓氏(以下、尾原):今日はこんな僕に聞いてほしいことは……ごめんね。せっかく(飲み物を)キンキンに冷やして缶まで開けたのに。あともうちょっとだけね。

じゃあどんなことを僕が喋れるかっていう話なんですけれども、僕自身ドコモっていう大企業にいたんですね。やっぱり大手のなかでどうやって新規事業を作っていくんだ、みたいな話。古い会社vs.新規事業みたいな話もできます。先ほど言った、非常に企業文化が浸透している楽天。リクルートも企業文化が浸透していますね。

こういった企業文化の浸透している企業で、とくに店舗さんだったり、リクルートだったら社員さんだったりっていう、「個」を尊重する組織というものがどう動いてきたかっていうのを社内から見てきたし、外からもう1回見るっていうこともできるっていう、非常に特殊な人間です。あとマッキンゼーやGoogleみたいな、グローバルの(会社での経験も、お話ができます)。

一見すると、僕もここだけを経歴で書いておけばかっこいい人になれるんですけれども。そういった人材輩出企業の仕掛けみたいなものも見たりしています。あと、今日ご説明したように、僕の最初の経験っていうのが震災のボランティアってこともあってですね。

そのあと「TED」っていう、ひと言で言うと「知的なすべらない話を4日間する」っていう会があって(笑)。それのローカル版の「TEDx」っていうのがあるんですけど、「TEDx Tokyo」参加者のキュレーションのリーダーをさせていただいたりとか、社会起業家のアクセラレータープログラムのアンリーズナブルとか、いろんなボランティアの立ち上げですね。

そういったことをさせていただいているので、ボランティアっていうですね、人が「好き」だけで集まってきたのに、組織として動くっていうのをどうやっていくか、みたいなこともやったりしていて。

せっかくビールの乾杯を待たせてしまった以上は、そういった多種多様な経験という中からみなさんのお聞きしたいことにできるだけ(答えたいと思います)。

曽山哲人氏(以下、曽山):すみません。

尾原:濃く、濃く(回答を)返していきたいと思います。じゃあぜひ、乾杯ということで。はい、お待たせいたしました。ということで、このあとの濃い「知」の交流を記念してなのかな、なんかよくわかんないですけど(笑)。じゃあ乾杯ということで、よろしくお願いいたします。じゃあ、かんぱ~い!

質問はポストイットに書き込んでいく

曽山:いやあ、すばらしいトークでした。ありがとうございます。ということで、ここから5分間ディスカッションしてみましょう。よろしくお願いします。

尾原:はい。

曽山:ありがとうございます。じゃあ大きいポストイットをテーブルに置いていただいて。(貼り付け用のボードに)直接書いていただいてもいいですけど、小さいポストイットに書いて貼っていただくのが1番見やすいと思います。「こういうのを聞こう」っていう質問をどんどんやっていただければと思います。

尾原:ちなみに、あれですよね。サンドイッチとかも、お腹すいている方食べていただいて。

曽山:そうです。是非みなさん開けていただいて。

尾原:(サンドイッチの包装を見ながら)でもね、このPe'z magicって、まさに1職目のマッキンゼーがよく使っていたサンドイッチ屋さんですよ。

曽山:そうなんですか。

尾原:(笑)。ここのサンドイッチ、めちゃくちゃうまいですよ。

曽山:そうなんですか。いただきましょう。

尾原:はい。食べます。

曽山:ありがとうございます。

尾原:はい。どうぞ。

曽山:もしお飲み物がたりなくなったら、スタッフまでお声かけください。

尾原:ここでね。ここで質問が出てなかったらね。あと1分ぐらいですね。

曽山:みなさんが書いていただいているポストイットを、いったん貼り付けちゃってください。

尾原:そもそも、僕の存在を知っていた人ってどのぐらいいます?

曽山:尾原さんのこと知っていた人。

尾原:手を挙げて。

(会場挙手)

尾原:ああ、けっこう。へえ……。じゃあ本を読んだことがあるっていう人は? 

(会場挙手)

尾原:おお……。じゃあ、僕はネットビジネス系の本と、人の心とか成長系の本の2種類を書いているんですけど、ビジネス系の本を読んだっていう人は?

曽山:プラットフォームとかですね。

尾原:ああ、やっぱりあれですね。今日はだから。

曽山:ビジネス系が多いですね。

尾原:はい。じゃあ残りは人の成長系ですね。ありがとうございます。

曽山:はい。ということでさっそく質問いいですかね。

尾原:もちろんでございます! 

「どこでも」「誰とでも」働ける、そのこだわりとは

曽山:じゃあさっそく、どんどん聞いていきたいと思います。はい、じゃあさっそく質問がある方、手を挙げていただいて質問していただければと思います。

尾原:なるほど、書かせたうえで手を挙げさせるんですね! なるほど。

曽山:はい。

質問者1:ありがとうございます。株式会社LのRと申します、よろしくお願いします。

尾原:1カメさんそっちですからね。2カメさんこっちで。

質問者1:申し訳ございません。3人で出てきたものなんですけれども、組織をたくさん移られているということで、移り続けていることに理由というか、何かご自身のこだわりみたいなところがあるのかなと思っています。一つひとつ、やり切ったから次へっていうかたちなのか、それとも何か人生の目的みたいな感じで移られているのか、ちょっとそのあたりに興味があって聞きたいと思いました。

尾原:はい。

曽山:まさに、今回の本にも書いてありますけれども。

尾原:そうですね。『どこでも誰とでも働ける』という本がありまして。

曽山:でもなぜ?

尾原:これって完全に一問一答で答えればいいんですか? 

曽山:いいですよ。

尾原:えっと……。強みの観点と自分の好きっていう観点で、僕は仕事を変わり続けているんです。さっき「何職目」って言ったんですけど、本当は正確に言うと僕からすると「プロジェクト」なんですよね。1つの立ち上げのプロジェクトがあったらそこに行って、プロジェクトの立ち上げが終わったら、また次に行く。

場合によっては、1つのプロジェクトが終わったぐらい(の時期)に、社内でたまたま、外に行くよりも中にいたほうがおもしろいプロジェクトがあれば残ることもあるということです。だからそもそも僕は、ずっと転職活動をしていますね。今は若干フリーな立場になっていて、エストニアの会社に就職の活動してみたりとか(しています)。

曽山:エストニアですか?

尾原:はい。やっぱり今、東欧が1番おもしろいので。

曽山:そうなんですね。

「0.001から1へ」が得意

尾原:はい。僕は基本的に、3年後におもしろくなるところに転職活動するっていうことをずっと決めています。じゃあさっき言った強みの観点と好きの観点って何かって言うと……。まず強みっていうのはですね、人間には速筋と遅筋ってあるじゃないですか。ダッシュが速いのかマラソンが速いのか。わかりますね? (僕は)マラソンができません。

(会場笑)

曽山:できない?

尾原:はい。同じことを繰り返す。無理です。だから今日もこうやって、アドリブ型で話していただけるのが本当にありがたい。でもその代わり、僕は誰よりも「0から1の立ち上げ」っていうのが強いし、もっと言うと、「0.001ぐらいから2とか3にする」っていうところが強い。僕は自分のことを……ああ、こんなに長く喋らないほうがいいですか?

曽山:いやいや、ぜひ喋ってください。大丈夫です。

尾原:はい。じゃあちょっとだけ喋ると(笑)。自分のことを、「応急処置する救急車」だったり、もっと言うと、消防署の中でも本当にひどい火事のときに動く「オレンジ部隊」っていうレスキュー部隊がいるんですけど、それみたいなものだと思っています。

曽山:自分自身を。

尾原:はい。というのは、火事って、普通の人の人生で一生に1回もあわないじゃないですか。でもこのオレンジ部隊だけは、毎日火事を消し続けるんですね。

曽山:なるほど。

尾原:そうすると、普通の人にとって火事は身が縮むぐらいの恐怖なんですけど、僕にとってみると毎日火事だから、ぜんぜん落ち着いて対応できる。さらに言うと、火事のときとか救急治療のときって何が人の生命を奪うかわからない。

ある火事はもう火元をすぐ消せばおさまる火事かもしれないし、あるときは、家は焼けてもいいから人命救助を急がなきゃいけないかもしれない。場合によってはその家は諦めて、まわりの家を壊すことによって延焼を防いだほうがいいかもしれないっていう、とっさの判断っていうことがものすごく大事になってくるんですよね。

僕は新規事業ばっかりをずっと見てきているから、その新規事業はまずテクノロジーの部分をちゃんとしないとだめなのか、営業提携をちゃんとしなきゃいけないのか、それとも出資を募ってやらなきゃだめなのかっていう、その事業をちゃんと命として育むために1番大事なものをどこからどう取ってくるかっていう初動が早いんですね。

というところで、その0(から)1をするのが得意だったし、こんな新規事業だけをずっとやり続けるなんて世の中にいないわけです。

「魂のごちそう」を求めて世界を渡り歩く日々

尾原:さっき見ましたね。iモードの立ち上げでインデックスが1兆円の企業になったりとか。もっと言うと、アンドロイドの立ち上げで言うとコロプラ。馬場さん(株式会社コロプラ創業者で代表取締役社長の馬場功淳氏)が2千億円のビリオネアになったりとか。そういうふうに僕は、人生の中で7回、バブルを逃してきているんですね。

曽山:逃している。

尾原:はい(笑)。なぜかって言うと、バブルをつくる側にいるから。

曽山:最初のね。

尾原:そうそう(笑)。でも僕からすると得意なことだし、今度は僕が好きなことになるわけです。僕が好きのは何かっていうと、人がまだ魅力に気付いていない段階で「これ、おもしろいぞ!」「実はこういうふうにやれば、このおもしろさってみんなも体験できるよ!」って、みんなが気付いてないことを最初に気付く存在になるっていうことなんですね。

曽山:なるほど。

尾原:本にも書いてあるんですけど、「ストレングスファインダー」って知っています? けっこう人事系の方だとやっている方も多いですけど。

曽山:やったことある方、いらっしゃいますか? ストレングスファインダー。ああ、やっぱり多いですね。

尾原:はい。あれ、人間の強みを34種類に分解して、その34種類に順番を付けるんですよね。しかもこれのいいのが、強い5つだけ(に着目する点)。とくに日本人って34種類もあると弱いほうを見ちゃうんですけど、そうじゃなくて強いほうだけに着目するっていうところがおもしろい。これ僕ね、都合4、5回受け直しているんですけど、ずーっと1位が「着想」なんですよ。

曽山:着想。思いつくっていう。

尾原:そう。だから僕にとっては、お金をもらうことよりも地位が上がることよりも、着想をもらえることが「報酬」であり「魂のごちそう」なので、その「魂のごちそう」にありつけるように世界中をフラフラしているということでございますね。

曽山:着想のヒントをもらうがゆえに、いろいろ転職をしたりプロジェクトを変えたりしているということですね。

尾原:そうですね。2個目の質問から、この半分ぐらいで喋りましょうね。

曽山:いやいや、とんでもないです。深みがあって(いいです)。ありがとうございます。1人目のご質問ありがとうございました、拍手。

(会場拍手)

ソヤマン質問タイム

曽山:そういう意味では尾原さん、(スライドを指しながら)せっかくだからこの4つの論点について、みんなで挙手してもらってどれを聞きたいか、聞いてもいいですか?

尾原:なるほど。さすが、おもしろいですね。

曽山:5つぐらいピックアップして、「ソヤマン質問」(ソヤマンは曽山氏の愛称)というのをたまにやるんですよ。みなさんこれを見てもらって、1個だけ聞きたいっていうものに、手挙げてもらってもいいですか? みなさんだいたい決めていただけましたか?。

1つ目が、iモードなど大手の会社の中でアイデアを発見し、新規事業が生まれる方法。2つ目が、濃い文化の中で(事業も)個人も成長し続ける。3つ目がグローバル人材輩出企業の仕掛け。4つ目は、ボランティアを含めたモチベーションマネジメント、というところになります。じゃあ、1、2、3、4、どれか1つ手を挙げていただければと思います。

じゃあ1つ目の、ドコモのような大手インフラ企業でどうやって新規事業が生まれたのかについて、聞きたい方。

(会場挙手)

曽山:人数。はい、6です。

尾原:6名ですね。

曽山:オッケー。次、2つ目いきましょう。リクルート、楽天といった企業文化が浸透している会社の中で事業も個人も急成長し続ける方法について聞きたい方。

(会場挙手)

尾原:ああ、やっぱりね~。今、こういう本がうれてますよね

曽山:凄い。たくさんいらっしゃいます。

尾原:はい。

曽山:ということで、これはもうたくさんですね。じゃあ3つ目。マッキンゼー、Googleとかのグローバル人材輩出企業の仕掛けは9名ですね。はい、では4つ目。やっぱりこれも多いですね。はい、7。

尾原:じゃあ、あれですね。リクルート、楽天とかっていうところが(要望が)1番強くて、その次がGoogleっていう感じですね。

曽山:そうですね。それも含めてですけど「事業も個人も急成長し続ける方法」というキーワードで。

尾原:はい。

曽山:これ、どういう感じなんですか? 急成長し続ける。これ書いてくださったのは、尾原さん?

尾原:そうですね。

曽山:はい。

尾原:そうか、僕に振るわけですね。

曽山:この文字は尾原さんに書いていただいたやつですね。

尾原:そうなんですよね、はい(笑)。

会社と人の成長がリンクしていること

尾原:事業も個人も成長するっていいますが、でも実は僕、こんなに転職活動しているんですけれども1社だけ、3回採用面接に落ちている会社があるんですね。

曽山:3回。

尾原:はい。それがサイバーエージェントっていう会社です。

(会場笑)

曽山:ええ!?

尾原:はい(笑)。僕、1回も面接までいったことがないんですよ。

曽山:あ、面接に!?

尾原:面接にも、いけてない。ぜんぶ書類で落ちている。

曽山:そうなんですか!? すごい。

尾原:うん(笑)。

曽山:ちなみに私は見たことないですよ。

尾原:実は何が言いたいかっていうとサイバーエージェントという企業も、組織と個人の成長というものがリンクした企業文化をつくっている会社です。単純に言うと何かって言うとですね。

時代っていうのが、今までの「めちゃくちゃいいプロダクトをつくったら勝てる」とか「めちゃくちゃいい営業組織をつくったら勝てる」みたいな「仕組みで勝つビジネス」(の時代)から「変化の時代」になってくると、何が起こるかわからないから多様な人がいて、その多様な人の中でやっていくっていうことで、ビジネスの中心が「プロダクトサービス」から「人」に移ってきているんですよね。

そうすると結局、「会社が成長する」ってことは、イコール「人が成長しないと会社が成長しない」っていう話になっているので、「会社と人の成長がリンクしている」っていうことがものすごく大事な時代になってきています。

やっぱり会社が、雇う人の一生を約束できない時代になっちゃったわけですよね。そうすると今のように、だいたい40パーセントぐらいの方が3年以内に転職するような時代になってくる。「自分の一生は会社が守ってくれるから、会社の中でぬくぬくやっていく」っていうことができないので、必然的に(就職先の企業で)魅力的っていうのは、「自分が成長できて、辞めたあともよりいいところに転職できる企業」となります。そういう観点でも、個人の成長がすごく大事ってなっています。

だからリクルートなんか1番わかりやすいですね。35歳定年説っていうのがあって、35歳までにジェネラルマネージャー、世の中で言う部長にならなければ、もう二度と取締役にも、部長以上にはなれない。逆に言うと、そこまででがんばらなければ「外でスペシャリストとして生きてってください」ということです。

曽山:なるほど。

会社には人を成長させる仕組みが必要

尾原:うん。そうやって成長を加速するし、サイバーエージェントさんもそうですけれども、CA8(サイバーエージェント社独自のシステム「業務執行取締役交代制度」のこと)みたいな制度がありますよね。リクルートのすごいところは、明示的に制度的には謳ってないんですけれども、取締役の在任期間っていうのが8年を超えたことが、ほぼないってことですね。

曽山:そうなんですね。

尾原:つまり「ある程度の時が経ったら、次の若いやつにバトンを渡すことがかっこいい」っていう文化で、循環して次の人をどんどん育てていく。そうすることで、人がビジネスを作り続けるし、人自体もそのなかで成長し続けるから、外に出ても「やっぱリクルートいいよね」っていうふうになる。リクルートっていう企業文化が世の中に広まって、採用のランキングも上がるっていう、こういう良循環を作っている。そういう時代だと思うんですよね。

だから逆に言うと、会社と個人が両方成長するっていうことって、僕は単純に言ってしまえば「変化する時代の最大のブランディングですよ」と言ってもいいんじゃないかなと思っています。

曽山:なるほど。人を成長させるという、環境をちゃんと作るっているということですね。

尾原:そうですね。

曽山:それが結局、事業に繋がっている。

尾原:結局はそれが事業の成長に繋がりますよねっていうことですね。

曽山:サイバー(エージェント)も役員がぐるぐる入れ替わりますけどやっぱり新陳代謝、会社自体に変化の仕組みがあるっていうのは、大事なポイントになるんですかね。

尾原:そうですね。やっぱり、変な話ですけれども結局僕みたいに昇進気にしないって人ってあんまりいない。あともう1個は、上にあがるっていうことはやれることも増えるっていうこと。そうすると、上がふたをするってなってしまうと、どうしても新しいことをやろうっていうことが減りますよね。

あとはもうポジティブな面として、とくにインターネットはもう2年経てば環境が変わるわけです。ちょっとこの前まではGREEとDeNAがすごいって言っていたのが、気付けば単なるアプリのベンダーになっていて。先ほど言ったコロプラすら、ちょっと前まではずーっとアプリのトップ10ランキング入っていたのが、今はアプリのトップ50にも入ってない時がでてくる。

やっぱり時代の勝ちパターンは変わるので、パターンが変わったら前の成功体験を持ったままの方がいるっていうのは、やっぱり障害になる部分がありますよね。次の成功パターンにどうやって飛び移るかっていうことが大事っていうことだと思うんですよね。

曽山:確かに。

内部に競合相手がいる利点とは

曽山:そういう意味で、リクルートさんは社内競合を作っていらっしゃいますね。

尾原:そうですね。

曽山:サイバー(エージェント)もたまに子会社を作って競わせますが、社内競合っていうのも1つのやり方なんですかね。

尾原:そうですね。だから2つやり方があってですね。1つはボトムアップのアプローチとして、毎年毎年「ニューリング」っていう新規事業制度があって。

曽山:リクルートさんの制度ですね。

尾原:リクルートです。サイバーエージェントでは、「あした会議」っていうのがありますね。やっぱりそこからボトムアップに提案をしてきて、実は先週そのリングの募集のイベントに、「尾原さん、 講演に来てください」って言われて、(リクルートを)辞めたんですけど講演に行きました。「何を話せばいいんですか?」って言ったら、「リクルートの壊し方を言ってください」って言われました。

曽山:凄いですね。それ、どんな話しをされたんですか?

尾原:で、「いや、それ言ったらみんながはじめるから困るじゃないですか」っていうのはあるけれども、話した内容は

すごくうけていました。そもそもトップダウンでもリクルートがある程度繁栄してくると、そもそも社内の幹部合宿みたいなので「リクルートを壊すモデルはどういうモデルがあるか」みたいなことを次の幹部になる人たちがガンガン考えるっていう文化があります。

曽山:それもいいですね。幹部合宿で自分たちの壊し方を考える。もしくは若手の幹部に考えさせる。

尾原:そうです。実際にそういうことで、まだ執行役員になっていなかった「じゃらんオンライン」のトップが、求人の検索サイトを買いたいって言って、買って。それが5年後に成長して、今やリクルートの利益の3割を支える「Indeed」。この「Indeed」っていうのは、リクルートのなかでいうと「松本人志がコマーシャルやっているタウンワークの競合です。

曽山:まさに社内競合になるわけですか。

尾原:はい。そういうものを抱えてガチでやっています。

曽山:なるほど。まさに競合があるモデル。

尾原:そうですね。はい。そこもやっぱり、サバイブするためでして、ようは他人にやられるよりは自分のなかにあったほうがいいわけですよね。

曽山:なるほど。社内競合。

尾原:はい。

テクノロジードリブンのイノベーションなら、数人で世界を変えられる

曽山:実際そういうなかでも、マッキンゼーとGoogleでさっき、ぐるぐる入れ替わっていたりとか仕組みを作っているという話がありましたけど。やっぱり、リクルートや楽天とはまた違うんですか?

尾原:そうですね。

曽山:中を見ていた人。尾原さんはこの、リクルート、楽天、マッキンゼー、Google、4つを見ているだけで、もすごい裏事情をいろいろ知っていますよね。

尾原:はい。Googleのいいところはやっぱり、超ユーザーファーストで、超ボトムアップです。だから今でこそ有名になりましたけれども、20パーセントルールっていうのが本当にあります。

しかもあの20パーセントっていうのは、ミッションのなかの20パーセントなんですね。だから例えば僕とかって、自分のOKR(Objective and Key Result)の仕事って、ぜんぶの時間のなかで言うと20パーセントぐらいしか使ってないんです。だからOKRを達成したら残りの時間は何をやっていてもいいので、僕はほとんど80パーセントの時間をGoogleの社内でフラフラしながら、ちょっと自分で旅行費払うからって言ってスイスに行ったり、ほかのオフィスに行ったりしていました。

そうやってる内にいくつかのサービスに私のアイデアや紹介したパートナーのものがくみこまれていく、そんな感じで、OKRを達成した上であれば何していても大丈夫なんですよ。結局何が違うかっていうと、単純に言うとですね、テクノロジーによるイノベーションって、たった1人から作れるんですよね。

曽山:たった1人ですか。

尾原:だから「Ingress」っていうゲームも、ジョン・ハンケっていうGoogle Earthのプロダクトマネージャーが、1人でプロトタイプを作っています。

曽山:へえ!

尾原:それがいいねっていうことでセルゲイ(Googleの共同創業者であるセルゲイ・ミハイロヴィッチ・ブリン氏)に認められて「もうちょっとやればいいじゃん」ってなってできたプロダクトです。Gmailなんて有名ですよね。Gmailも(原型を作ったのは)2、3人です。

曽山:そうなんですか。

尾原:はい。プロトタイプではじめてやって「これいいじゃん」っていう話で広がったものです。だから本当に1人、2人が作ったアイデアで世界を変えることができるっていうのが、やっぱりテクノロジードリブンのおもしろいところですね。

曽山:なるほど。

続きを読むには会員登録
(無料)が必要です。

会員登録していただくと、すべての記事が制限なく閲覧でき、
著者フォローや記事の保存機能など、便利な機能がご利用いただけます。

無料会員登録

会員の方はこちら

関連タグ:

この記事のスピーカー

同じログの記事

コミュニティ情報

Brand Topics

Brand Topics

  • 大変な現場作業も「動画を撮るだけ」で一瞬で完了 労働者不足のインフラ管理を変える、急成長スタートアップの挑戦 

人気の記事

新着イベント

ログミーBusinessに
記事掲載しませんか?

イベント・インタビュー・対談 etc.

“編集しない編集”で、
スピーカーの「意図をそのまま」お届け!