2024.12.19
システムの穴を運用でカバーしようとしてミス多発… バグが大量発生、決算が合わない状態から業務効率化を実現するまで
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及川卓也氏(以下、及川):私は先ほど自己紹介させていただきましたので、割愛いたします。澤さん、簡単に自己紹介をお願いいたします。
澤円氏(以下、澤):Microsoftの澤と申します。初めての方もいらっしゃると思うんですけれども、一応ちゃんとサラリーマンとして、マイクロソフトテクノロジーセンターというところに勤めています。これは全世界に五十数箇所あるんですが、そちらでMicrosoftだけではなくて、すべてのセグメントに対して、テクノロジー全般をご紹介していくといった仕事をしています。
また、サイバークライムセンターという、サイバー犯罪に関する情報をわかりやすくお客様にお伝えする仕事もしています。どうしても見た目がこんな(感じ)なので、サイバー犯罪をやる側と間違われちゃうんですけれど、完全に守る側として、みなさんにわかりやすく情報をお伝えしています。
(会場笑)
あともう1つ、今日もしかしたら役に立つかもしれない仕事として、データセンターの内部(にある)、クラウドそのものの中を見せる、「データセンターツアーガイド」をやっています。ツアーガイドというと、なんだか牧歌的な響きがしますが、実際には、さまざまな障害やアタックに物理的にどうやって対応しているのか、という話をみなさまにお伝えする役割をしています。
あと、プレゼンをよくやりますので、プレゼンの本を出したりしています。
及川:ありがとうございます。
澤:ありがとうございます。
及川:プレゼンの達人の前でプレゼンするのは、めちゃくちゃプレッシャーがありました(笑)。
澤:みんなすごく僕の後(にプレゼンするのを)嫌がるんですよね。あと、僕の前でやるのも嫌がるんですけど、僕は批評家ではないですからね。
及川:(笑)。
澤:ぜんぜん、プレゼンしているときは一生懸命聞いているんです(笑)。
及川:はい、ありがとうございます。
及川:では、藤井さんよろしくお願いします。
藤井彰人氏(以下、藤井):はい。KDDIの藤井です。名古屋大学でコンピューターサイエンスをやって、そのあと富士通、Sun Microsystems(以下、サンマイクロ)、ここまでは完璧にエンジニアですね。
富士通の時にはベタベタのフィールドのSEをやっていましたし、サン・マイクロのときにはずっとJavaのエンジニアをやっていました。そして、Googleで(働いていた時は)それこそ及川さんと重なっている時期もあって、ここではプロダクトマーケティングをやっていました。
そのあと、なぜかKDDIに転職しまして、今度は事業側をやるぞということで、今は法人向けの事業の事業企画責任者をやっています。そのほかには、Googleの前のサンマイクロ時代に、プログラミングコンテストを最初にやり始めたのも私です。もう引き渡していますけど、Mashup Awardとか、知ってる人いるかな。
それがきっかけになって、実はIPA(情報処理推進機構)で、「未踏プロジェクト」というものをやっています。若手のインキュベーションを10年近くずっとやっているんですね。はい、以上です。
及川:藤井さんがエンタープライズ担当で、私はどちらかというとコンシューマーだったりブラウザの担当で、あんまり仕事は絡まないはずだったんですけれど、なぜかエンタープライズのイベントに引っ張り出されたりしていました(笑)。
藤井:むりやり私が引っ張りだして(笑)。
及川:藤井さんはサンマイクロやGoogleなどの外資にいらっしゃいましたが、日本企業を応援したいということで転職されたじゃないですか。それにすごく刺激を受けて、(自分が)Googleを辞めたあとに日本企業の支援に行ったのは、そういった藤井さんのメッセージがあったからなんですよ。
藤井:ありがとうございます。
及川:はい!
藤井:「Nothing Ventured, Nothing Gained」とサインした本、まだ大事に持ってますからね。
及川:はい、すみません(笑)。
藤井:まだ持ってます。
及川:与太話はこのくらいにいたしまして、先ほどMicrosoftやGoogleの技術カンファレンスからの最新技術動向について話したんですけれど、具体的に各分野ごと(の話)に行く前に、それを聞いた感想はございますか?
澤:やっぱり、みなさんが(技術の進歩を)感じられているのはAIなんだなと思いました。そして、クラウドというキーワードはもはや当たり前すぎちゃって言わないですよね。
例えば、コンピュータとわざわざ言わなかったのと同じような感じで、クラウドというキーワードはもはや言わない。もっともっとディープに、それぞれのファンクションに落ちてきているフェーズになってきているんだなというのは強く感じますね。
及川:藤井さんはどう感じられました?
藤井:両方の会社がディベロッパーに対して徹底的にフォーカスを当てているところが、技術者にすごく有利な時代になってきたなと感じます。あと、お金がかからなくなりましたよね。
きっと及川さんとか私の世代は、いつもお金がかかっていたじゃないですか。ソフトを買ったりハードを買ったり、必ずFry'sに行って、ボードを買ってきちゃったりして。でも今は、パソコンにスペックもあんまりいらないし、だいぶ変わってきていますよね。
及川:(テーマが)ちょうどクラウドに移るので、そっちの話からしていきたいと思いますが、クラウドが出たことによって、ちょっと試すときのコストがめちゃくちゃ下がっていますよね。先ほど澤さんも「クラウドが当たり前に」と言ったところは、私もまったくその感覚です。
及川:実際、KDDIという立場、Microsoftという立場ですと、(世の中がクラウドへ移行しつつある)とはいえ、オンプレのお客様もまだたくさんいらっしゃいますね。今はどうなんでしょうか? オンプレからクラウドへ必然的に移行していっているのか、それともオンプレにはオンプレの意義があるのか、というところからお話していただいてもよろしいですか?
澤:ちなみに、Microsoft社内のインフラの話をすると、業務アプリケーションに関して言うと、93パーセント以上はもうクラウドなんですね。7パーセントだけは、やっぱりオンプレ製品を作って売っている会社もあって、まだオンプレミスのものを使わざるを得ない状態になっています。
ただ、Microsoftが1つの会社としてIT環境を考えた場合に、「クラウド以外はもはや使う必然性がない」というのは、完全にコンセンサスがあるんですね。そして、Microsoftは普通の会社で1つの企業体であると考えた場合、同じ理屈はほとんどの会社さんに当てはまるんじゃないかな、とは思います。
実際に私がお会いさせていただくのは、だいたいエグゼクティブの方が多いんですが、そういった方々もやっぱり、開発のリードタイムやオペレーションコストを考えた場合には、「クラウドはそれ(コスト)を抑えられるんだよね」という期待値は、当然のことながらあるんです。
コストという観点だけで見た場合、やっぱりこれもクラウドは当たり前の話なんですけれど、ちょっと極端に「コスト、コスト」と言い過ぎているきらいはあります。
本当にオンプレミスでなければいけないものまでクラウドでやろうとしていたり、あるいはクラウドの必然性がないものをわざわざ、場合によってはすごいお金をかけてやろうとしていたり。そういうリスクもあるのかな、というのをちょっと感じていますね。
及川:2つほど質問があって、その93パーセント、7パーセントというMicrosoftの例があって、Microsoftのお客様のその比率は明かせるんですか?
澤:我々がタッチしているところですよね(笑)。やっぱり個々にぜんぜん違いますね。ただ、本当にgut feeling(直感)ですけれど、僕がだいたい年間に少なくとも150社くらいのお客様とお会いしているなかで、本当にざっくりですけど、半分以上クラウドにいっているお客様は1社もないんです。
及川:まだそんな感じなんですね。
澤:ええ。少なくとも僕がお会いしているお客様はそうです。だからこそ、僕のところに相談に来てくださるということだと思います。
及川:なるほど。
澤:かなり名だたる企業の方がいらっしゃるんですが、「うちは半分以上、もうクラウドですよ」というのは、少なくともエンタープライズクラスのお客様に関して言うと、まだちょっといないんじゃないかなと思いますね。
及川:先ほどのもう1つのほうの質問です。クラウドに移す必然性のないものというのは、どういうものなんですか?
澤:少なくとも技術者がいて、メンテナンスすることができて、それによってなにかのラーニングが得られるもの。あるいは、ハードウェアが目の前にあることによって知見が得られ、実際のサービスや製品に活かせるものであれば、これは別にあっても構わないと思うんですよね。
及川:それはつまり、今イチからつくる場合はクラウドかもしれないけれども、すでにオンプレが動いていて、メンテナンスもできているのであれば(クラウドにする必要はない)、という話ですね。
澤:そうですね、そういうことです。
及川:なるほど。わかりました。藤井さん、その「オンプレVSクラウド」というところはいかがですか。
藤井:まず現実を見ると、もっと惨憺(さんたん)たるものだと思うんですね。まず、何をもって「クラウド」と呼ぶのかというと、先ほど澤さんがおっしゃいましたが、「うち、けっこうクラウドにいってますよ」というところが、統合仮想サーバーだったりするわけですよね。
それを「クラウド」と呼ぶのか呼ばないのかは、まあ人の自由じゃないですか。強制することもできないですからね。だから、どこまでを本当のクラウド化と呼ぶのか。
本当に、スタイルまでクラウドネイティヴなアーキテクチャで作られていて、ちゃんと冗長性もとられているものだけ、というクラウド原理主義者だとしたら、おそらく「ほとんどクラウドじゃない」という話になってしまうかもしれないですね。
ただ、もしインフラの部分だけ、IaaSの部分だけをクラウドの議論にしているとしたら、私はちょっと違うと思っています。
逆にいわゆる情報系、コラボレーション系とか経費精算とかCRM(Customer Relationship Management/顧客管理)とか、そっち側はけっこう(クラウドに)いってますよね。それで、明らかにメールサーバーをわざわざ社内に立てる人というのは、さすがに特殊なケース……。
及川:今おっしゃっているのは、どちらかというとSaaSの利用が進んでいるということですね。
藤井:そう、SaaSの利用はもう確実に進んでいるから、そこはもうがんがんクラウドになっているかなとは思います。
及川:先ほどはMicrosoft社内の状況を赤裸々に語っていただいたんですけれども、KDDIの社内システムはどんな感じなんですか?
藤井:もういろんなかたちで存在しています。
及川:オンプレもまだたくさんある?
藤井:オンプレもたくさんあります。今日はGoogle、Microsoftのセッションだけれど、AWS(Amazon Web Services)がトップで、ガーッとインフラのところで走っているじゃないですか。だからAWSもめちゃくちゃあるし、もちろん(Microsoft)Azureもあるし、GCP(Google Cloud Platform)もあるし、本当にいろんなものが使われていますね。VMで立っているものもたくさんあります。
及川:例えば、流れとしては両社とも「じゃあクラウドを使おう」という方向だと思うんですが、そこで何を使うのか。
1つはベンダー選定的なところ。先ほど藤井さんがおっしゃったみたいに、AWSがトップランナーなのは明らかな事実なんですけれど、技術的な機能比較を見たときには、他のパブリッククラウドベンダーとそんなに差がないところもありました。
あと、IaaS(Infrastructure as a Service)を使うのか、PaaS(Platform as a Service)を使うのかというところで、「クラウドにいきましょう」と言ったときに、そこを含めてどのような技術戦略をしていくことが企業側としては望ましいのでしょうか?
藤井:それぞれの選択基準がそれぞれの部署にあると思っていますので、これ(私が話したこと)が完全にKDDIのポイントであるというふうには捉えてほしくないんですが。
ただ、少なくともそれぞれのクラウドのサービスには、実は中を見ていけばSLA(Service Level Agreement/品質保証の基準)があるはずなので、そのSLAで満足できるのかということがあります。
あとは、残念ながらクラウドサービスの一番こわいところは、やっぱりサービスがディスコン(discontinued)する可能性にありますよね。急にスパッと終わる可能性がある。例えばDartとか、すっごくいいなと思っていたんですけれど、アレだったし(笑)。
及川:一応復活しましたけどね(笑)。
藤井:ぜんぜん違う復活の仕方ですけどね(笑)。そういうものも含んで、いろんなクラウドのものが出てきているので、やっぱりどこまで移行できるかですよね。
別にPoC(Proof of Concept)とか、簡単なシステムでほかにパッと移行できるんならいいんだけれど、根幹を動かしていくとなると、やっぱりここらへんはコンサバティブになります。そう考えると、できるだけオープンなクラウドプレーヤー依存の部分というのは、確かに少し使いにくくなるというのはありますね。
及川:澤さんはどう考えますか?
澤:そうですね。サラリーマン的に言えば「いやあ、Microsoft最高ですね」と言うべきなんでしょうけど、これはもう本当にフラットに見て、何がしたいのかというところに対して、ちゃんと相談ができる相手がいるかいないかでだいぶ変わってくると思うんですね。
あと、ユーザー側を考えると、クラウドを使うことを目的にしてしまうと、結局ベンダーの餌食になるだけなんですよね。「とりあえずクラウドを使いたいんですね、わかりました!」と言って、ものすごく(いろいろ盛り込まれた)コンセプトで、絶対オンプレのほうが安いだろ、というものを提案しかねないんですよ。
なぜかというと、全部丸投げされているから、結局リスクを乗せてデザインすることになるので、「いつでも戻れるようにしよう」ということが大枠として入ってくるからなんですよね。
だけど、本当にやりたいことがあって、「ビジネスをこうやってグロースさせる。それをいつまでに、これくらいのものをもって、成功とみなすのである」というロードマップがちゃんと描けるのであれば、そのときに一番最良のパーツを揃えているところを選べばいいわけです。
あるいは既存のシステムとの相性とか、あるいはそれを作り出すディベロッパーのケイパビリティとか、そういったものとパズルのように組み合わせていくと、必然的に選ぶベンダーが決まってくるのかなと思います。
だから、「これさえ選んでおけばとりあえず大丈夫」というのは、もはや存在しないんですね。さっき言ったように、投資のレベルを考えると、MicrosoftもAWSさんもGoogleさんも、国家予算級のとんでもない投資をしているわけじゃないですか。
そう考えると、そこで差をつける云々ではなくて、やはり、コンピューティングを全体のデザインというふうに考えないといけないのかなと思います。
及川:正論だけれども、一企業としてはより判断が難しくなりますね。
澤:難しくなる。そういうことなんですよ。
及川:とくに、日本企業は正直に言うと、そういった部分を社内であまり考えずにお抱えのSI屋さん、まあパートナーの方々にかなり依存してた部分があり、「自社で判断しろ」と言われてもそのノウハウもない、というところがあるんじゃないでしょうか。
澤:そう。これからは、社内のアーキテクトや全体のシステムというのが何なのかを語れる語り部が、社内にどんどん必要になってくる時代かなと思いますね。たぶんKDDIさんには(そういう方が)いっぱいいらっしゃると思うんですけれど。
藤井:ただ同時に、非常に難しいところもあるなと思っています。ユーザー企業側でも「じゃあ、アーキテクトを持つべきです」という話になった場合に、確かにKDDIはユーザー企業でもあり、ICT、IT企業でもあるわけじゃないですか。
だからまあ、KDDIだったら(アーキテクトを)持っていて当然かな、持っていないほうが恥ずかしいな、今いないしな、とか、この分野はいるしな、とかいろいろ考えますね。
でも、その中堅の、例えば流通業のところにアーキテクトを置くべきかというのは非常に難しいと思うし、もしかしたら雇うこと自体が難しいかもしれない。そのときにはある程度(外部に)頼まなきゃいけないケースも当然出てくるのかなとは思います。
及川:ただ、すべての企業がIT企業になっていく、デジタルトランスフォーメーションというのはそういうものも含んでいるのかなと思うんですよね。例えば、AmazonのAWS以外の事業は、要は小売なわけですよね。でも、多くの人は彼らのことを小売とは見ないですよね。あれはIT企業だからと思ってしまうからなんですけれど、実は小売なんですよ。
スタートトゥデイだって、いわゆるアパレルなわけです。そう考えるけれど、ECに特化しているから、テクノロジー企業であるように見えるんですね。生い立ちが違うからそう見えるんだけれど、本来ならばデジタル化していなかった(ような)、アナログでビジネスをしていた人たちも、本当は社内にエンジニアやアーキテクトを抱えていかないといけないんじゃないかなとも思いますね。
藤井:もちろんそうは思っています。ただ、できるのかというところもありますからね。途中の過程などはいろいろあるかなとは思います。Amazonも小売だったと言っているけれども、実際にはまだまだ他の小売もたくさんあるわけなので、全部が全部じゃないから、その中間の過程をどうつくっていくのか。それが大事じゃないかなと思いますね。
及川:私はけっこうそこに極論を持っているので、そうしているとトイザらスみたいになってしまうのかなというのがあるんです。トイザらスは、自分たちのストアを全部、Amazonの上に乗っけるかたちにしていたんですよね。
だけど、Amazonが脅威であるということに気付いて自社でやろうとしたときにはもう手遅れで、潰れてしまったというかたちになっているんです。そのようなことがちょっとあるかなと思っています。
及川:次の話に移りたいと思います。先ほどベンダーロックインを避けるという話が出たと思うんですけれど、そうすると、パブリッククラウドを使えないことにもなってしまいかねないと思うんですね。
そこのバランスをどう取ればいいのか。とくに、このあと機械学習系の話にもいこうかと思うんですが、機械学習(は)、あれだけトレーニング済みの精度の高いモデルがあるにもかかわらず、それを使うとロックインされてしまう。じゃあ、それを作るのかと言ったときに、(自前で)作れて、かつメンテできる企業は数が限られている。そこはどう判断していけばいいでしょうか?
澤:今日は、クライス&カンパニーさん(主催イベント)ということもあるので、最終的には人材のところに行き着くと思うんですね。では誰がやるのか、また、その人とどういう契約形態を結んで、そのプロセスを乗り切っていくのかということになります。
いわゆる助っ人みたいな人が、ある意味期間限定で(入ってくる)、あるいはそのフェーズごとに最適な人たちが、どんどんパートタイムで刺さっていくようなかたち。それがこれから必要になってくるのかなと思います。
シリコンバレーでは、これを当たり前のようにやっているわけですよね。シリコンバレーでは、1つの企業にがっつりコミットするのは1つのやり方なんだけれど、数時間ずついろんな企業にコミットしていって、自分の能力を最大限に発揮するという働き方がもうすでに定着しているんですね。
そういったものを受け入れられるような状態になってこないと、トランスフォームしていく途中にものすごく時間がかかってしまうんじゃないかなと思っているんです。「人とその能力をちゃんと発掘して当てはめていく」というフェーズがしばらくは続くというか、続けなきゃいけないんじゃないかなと思いますね。
及川:なるほど。
及川:藤井さんはどうでしょうか。
藤井:さっきの質問からちょっと考え込んじゃってました。
(一同笑)
私もどちらかというと、それこそサンマイクロとかGoogleにいたときのほうが、日本企業での勤務経験や時間より圧倒的に長いから、そっち(アメリカ企業)側に振れまくっていたんです。だけど、やっぱり現実もあったりしたんですよね。
及川:日本企業の人になっちゃったんですね(笑)。
(一同笑)
藤井:私は、日本企業をうまく変えることが大事だと思ってるんです。アメリカ企業になりたいんだったら、アメリカに行ったほうがいい(笑)。だけど、見れば見るほど、アメリカ(と日本)は、もう中高大学の教育のシステムから違うわけですよ。ディスカッションをしたり、どういうふうに意見するかとか。
だから、こういった新しいテクノロジーをばっと出して、「ディベロッパーでまだ生焼けだけど、いいものを作っていこう」というかたちでお互いに刺激し合って、いいものを作っていく。だからこそ、ディベロッパーカンファレンスになるんですね。
だけど、どちらかというと我々は、言われたものを「はい」でやって、「これってこういうふうに使うんですね、勉強させてもらいます」という文化の中で育ってきている。だから、ここの本当の意味でのディベロッパーカンファレンスを活かして、新しいイノベーションをつくる。
日本側のエンジニアも、その準備ができている人たちもたくさんいますよ。だけど、まだまだ文化的な背景もあって、なかなか難しい部分もあるのかな。もちろん言語の壁もありますし、そういうところはちょっと感じると思います。
及川:日本モデルとしては、パートナー化というのもいいんじゃないかという話や、ゆるやかな移行を進めていくのも必要かなという話ですね。
藤井:そうですね。
及川:確かに。
及川:その人材というところでいうと、先ほどのパートタイム的な働き方で、1日の中で何時間ずつ(コミットするのか)というのもあるし、もう1つは私の持論でもあるんですが、人材流動性を高めるということなんですよね。
澤:そうですね。
及川:フルタイムでコミットしていてもいいんですけど、0→1が得意な人が1→10や10→100のフェーズでずっとその企業に残っていてももったいない話だし、逆に0→1が不得意であったとしても、安定稼働させることに関してはめちゃくちゃ得意な人もいるわけですよね。
その人が企業の成長のステージとは無縁に、ずっとその企業にい続けること自体がおかしいので、例えば年単位でもいいと思うので、その人たちが自分の活躍できるところに移っていくことをやるだけでも、限られたタレントというリソースの活用にはなっていくと思うんです。
だから、藤井さんがおっしゃったとおり、日本はエンジニアのリソースが圧倒的に足りないというなかで、それをどう回せばよいかというところは考えていったほうがいいかなと思います。もちろん、それ(エンジニアの絶対数)を増やしていくという方向でね。
藤井:そうですね。ある意味、それが業務委託もしくは準委任だったならば、実はそれとまったく同じことを言っているんです。どこの会社に所属しているのかということを置いておけば、そこのCIOとして「これから2年間、このステージをここまで上げます」という。
こういうものをベンダー派遣型と呼ぶのか、それともアーキテクトやCIOと呼ぶのか、というのはおもしろいかなと思いますね。
ブラジルにCI&Tという、アジャイルのニアショアで同じタイムゾーンで(仕事を)受けるIT企業があって、Googleも外注していておもしろかったという話聞いたことがあるんです。そういう会社は、いわゆる情報システム部門をつくることができないから、その部分自体をニアショアで受けちゃうんですね。
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