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知られざる。AlibabaCloudのビッグデータテクノロジーを明かす(全1記事)

中国の巨大クラウドサービス、Alibaba Cloudの最新事情

2018年3月23日から24日にかけて、レバレジーズ株式会社が主催する国内最大級のエンジニア向け技術イベント「MANABIYA -teratail Developer Days-」が開催されました。同社が運営するITエンジニア向けのQ&Aフォーラム「teratail」の中で解決できない問題を解くため、一流エンジニアたちが一同に会して、プレゼンテーションやパネルディスカッションを行いました。トークセッション「知られざる。AlibabaCloudのビッグデータテクノロジーを明かす」では、SBクラウド株式会社の森真也氏が登壇。

世界に目を向ける

森真也氏(以下、森):よろしくお願いします。森と申します。今日ここに来ていただいたみなさんにとっては、もしかしたらこのセッションは、すごくギークな話ではないかもしれないですけども、今まであまり日本で語られなかったおもしろい話が聞けるんじゃないかなと思ってます。ぜひ貴重な機会にしていただけたらなと思っております。

それでは私から「知られざる、Alibaba Cloudを支えるテクノロジー」ということで、副題では、私の経験も含めて「世界に目を向ける」というところをお話しします。ここは1つのキーワードになってくるんじゃないかなと思っております。

私、インターネット上では「もーすけ(@mosuke5)」というアカウントでやってるので、こっちで呼ばれるほうが個人的には親近感わきますし、検索していただけたら、いろいろ出てくるかなと思ってます。

普段、仕事としては、Alibaba Cloudという中国のAlibabaがやってるパブリッククラウドがあって、それの日本のお客さんへの提供といったところで、ソリューションアーキテクトとしてやっております。

お客さんにソリューションを提供したり、こういったところでお話したり、あるいはブログを書いたりしています。昨年末には、日本人として初めてAlibaba CloudのMVPに選ばれました。

実は今日着ているこのトレーナーは、Alibaba Cloud MVPトレーナーで、ついこの間、先週ぐらいに送られてきたばかりで、実は着るのは初めてです。この日に間に合ってよかったなと思ってます。

以前は、普通にシステムとかインフラのソフトウェアエンジニアをやっていて、Rubyを書いたり、Infrastructure as Codeなんかを推進するようなことをやってました。

ちょっと緊張してるので、最初のネタとして。僕、旅行が好きなんですけど、旅行はこういう登壇ととても相性がいいんですね。

実は今月のはじめにもYAPC(Yet Another Perl Conference)というPerl系、Web系のカンファレンスが沖縄でありました。沖縄に行きたいがためだけにエントリーをして、なんとかセッションを取って、行って話してきたわけなんですけど。

まあ、ちゃんと話もしたんですけどね。ソーキそばも食べましたし、石垣島に行ったりですとか、あと竹富島に行って猫と一緒にじゃれついたり。古風な沖縄の風景を見に行ったりもして、もうとても登壇と旅行って相性がいいなと思ってます。teratail(テラテイル)さん、ぜひ次回のMANABIYAはどこか地方でやってくれるとうれしいなと思ってます。

ソリューションアーキテクトになった経緯

では本題に入っていきたいなと思っております。今日お伝えしたいことは、主に2つございます。

1つは、今日、私はクラウドプロバイダーという立ち位置でお話をするんですけど、宣伝をする気はさらさらありません。みなさん、あまり馴染みはないかなと思うんですけど、Alibabaという中国のテクノロジー企業が今何をしていて、どのように世界に出てきているのか、そのテクノロジーについてお話したいと思います。

そして、私自身の今に至る経緯でもありますが、ずっとITテクノロジーというとアメリカばっかり見ていた気もするんですけど、アメリカ以外の海外にも目を向けるきっかけにしていただけたらなと思っている次第でございます。

今日はまず昨今の中国のIT事情について軽く触れながら、Alibaba Cloudというところをお話します。そしてAlibaba CloudのAlibaba自身が得意な分野・特徴の部分を少しお伝えしていきたいなと思っております。

まず、ちょっと自分のお話からさせていただきたいと思います。私はAlibaba Cloudというサービスのソリューションアーキテクトとして、クラウドプロバイダーの仕事をしてるわけなんですが、実は僕がここに来るまでにいくつかの経緯がありました。

エンジニアとしてキャリアをスタートしたのは、実は大学生の時です。大学3年生の時に、当時「電子書籍元年」なんて呼ばれていた時代だったので、その波に乗ろうと、自分でWebベースの電子書籍をつくるサービスをつくりたいと思って、プログラミングはまったくわかんなかったんですけど、やり始めたのがきっかけでした。

その時は、当たり前なんですけど学生のチームなので日本の学生でした。もちろんユーザーも知り合い経由が多かったので、日本の学生とか日本人の方がとても多かったです。

それで社会人になって、ソフトバンクに入りました。その時のソフトバンクは、ちょうど外注開発から内製開発に切り替えようとしている真っ最中で、携帯電話のネットワークの監視システムといったものの内製開発のソフトウェアエンジニアとして入ってですね。

その時にやったのが、ぜんぜんソフトウェアの開発に専念できる業務スタイルじゃなかったので、Infrastructure as Codeとかで、まずそういった働き方から変えていくみたいなことを3年ぐらいやっていました。

当時も、もちろん会社に入ったとはいえ、日本企業、そして日本人のチームですし、自分たちのつくったサービスは日本人が使っていました。まあ、そういう環境でした。

Alibaba Cloudの日本リージョンを立ち上げ

もちろんその中ではオープンソースもよく使っていて、その中にはアメリカ製のもの、海外のものもたくさんありましたけど、どちらかというと、そういったことはあまり気にしていませんでした。とにかく日本語ドキュメントが多いものとか、そういった観点で仕事をしてきて、それまで私は海外とは無縁の生活をしてきたんですけれども。

ある時、そういったソフトウェアの開発に専念するところに従事していたこともあり、パブリッククラウドも同じようなことを実現することから、ちょっと縁があって、新規事業の開発部門に行ってですね。

そこからちょうどAlibaba Cloudの日本リージョンの立ち上げを、ソフトバンクとAlibabaが一緒にやるという話があったので、その時にジョインしました。僕がジョインした時にはまだ日本リージョンもなかった頃の、本当に仕事は何もなかった時代なんですけれども、そんな時に携わりました。

外国企業とのジョイントベンチャーなので、当時は社員も半分ぐらいが外国の方でしたし、しょっちゅうAlibabaと交渉したり、サービスの話を聞いたり、そういった多国籍メンバーのチームだったので、初めて海外に目を向ける機会ができてですね。

そこで「これはおもしろいことが起きているな」と。日本のチーム、日本人だけのチームの中でずっとやってきた自分なんですけど、初めてそういった環境に行って、「少し見方が変わってきたな」というところがあるので、みなさん、そういったところも視野に入れてほしいというのは、実はあったりします。

それで実際にこういう仕事をしてると、中国に行く機会はたくさんあるわけなんですけども、(スライドを指して)これ実際に行った時の写真のいくつかです。

今日のこのMANABIYAのイベント会場の前にもシェアバイクが置いてありましたけど、日本でもようやくシェアバイクが少し普及し始めてきました。これ、中国では今当たり前のように普及していて、都市部では当たり前のように普及しています。

もうそのへんで乗り捨て、乗っていく。どこで乗り捨ててもいいみたいな感じで、当たり前のようにみんな使ってます。自転車もクラウドのサーバーと一緒に従量課金制で使っていく時代。

SF映画のような中国のIT事情

シェアバイクは日本でもちょろちょろ見るので、なんとなく「ああ、そんなもんか」という感じになると思うんですけど、おもしろいのが(スライドの)左側の傘なんですよね。これってそのへんのスタンドに置いてある傘なんですけど、実はロックがかかっていて、そのままだと取り外せないんですね。

これQRコードが付いていて、ピッとやって従量課金で傘を使うやつで。そういうおもしろいことが実際に行われているという。実際に雨が降ると、(スライドの)左の下のようにもうすぐ(古い傘が)なくなって、みんな本当に(課金制の傘を)使っていっちゃう。傘を持ってなかったら借りますよね。クラウドサーバーと同じように従量課金傘っていう、そんなおもしろい話があるなと思ったりします。

あとは(スライドの)右上のやつ。これ地図なんですけれども、何かというと、ちょっと壮大な話になって。Alibabaの本社が中国の杭州にあるんですが、本社のある地域とその州は、密接にタッグを組んでいて、街中のあらゆるものをIT化しているんです。

信号機の青と赤の時間をITで制御していると。それによって交通渋滞をなくしたり、救急車が到達する時間を50パーセント短くしたり。SF映画みたいですけど、実際にこういうことが行われています。

今、この計画ごと別の国に売ったりしてるぐらいで、これは日本じゃあんまり考えられない。それは法的なものとかもいろいろあるとは思うんですけど。それぐらい応用事例は進んでいるのが、今の中国の現状で。おもしろいなと思っています。

今のは我々が行ってきた話なんですけれども、それ以外にも最近こういう仕事をしてるからかわからないですけど、Twitterなどネット上でも、けっこう中国に関するレポートや発表が多いなと思っていて。

2月にはソラコムの人が「行ってみたくなる深センの話」として取り上げたり。あるいは今月の頭ぐらいに、メルカリさんがテックリサーチということで、「中国のシリコンバレーである深センに行ってきた」という、前編と後編があるけっこういいレポートなんですけど、こういったものが上がってきていて。

本当に最近、他の会社の人たちも、けっこう中国のIT事情に熱気を帯びてきたのかなと、個人的には感じています。1年ぐらい前までは、そんなふうにはあんまり感じてなかったんですけど、ここ最近はけっこう感じてきてるなという次第でございます。

トップを独占するアメリカと中国

(スライドを指して)それもそのはずで、これ世界の時価総額です。1月末時点のものなんですが、トップ9まで載っていて、(その中に)アメリカと中国しかないんですね。

上から4つのApple、Google、Microsoft、Amazon。このへんはみなさんよくご存知かと思いますし、よく話に出てくるところだと思うんですけれども。よく見てみると、その下の5位や8位にTencent Holdings、Alibaba Group Holdingと中国の会社が続く。これは2つともIT企業なんですね。

今、世界のトップクラスに君臨しているIT企業が、こうして世界のトップになってるわけですけど、どんなテクノロジーを持ってるのか、どんなことをやってるのかって、やっぱり興味ありますよね。私自身も興味があるので、そういったところを常日頃から気にして仕事をしてますし、そういった知る機会があれば、積極的に話しかけていって掘り起こそうとしています。

みなさんも、そう言われると、だんだん「Alibabaとか、Tencentとか、中国のIT企業っておもしろいんじゃないか」と、もしかしたら思い始めてるかもしれないんですけど、今日は本当にその一部ではありますが、私が最近調べて知っているかぎりのことを、お伝えしていきたいなと思っております。

そういったお話をするにあたって、まずちょっと歴史的な背景からさかのぼっていきたいなと思います。時は20年ほど前のお話ですね。94年にAmazon.comが誕生して、98年にはGoogleがご存知のとおりに誕生したわけなんですけれども。(GoogleとAmazonは)今のインターネット業界、クラウド業界をけん引している2社ではないかなと思っております。

そういったところが、みなさんの知っているインターネットの世界かなと思うんですけれども、実はインターネットの世界にはもう1つの世界があるんですね。もう1つの世界って言うと、言いすぎですけれども。

もう1つのインターネットの世界

中国は政治柄、我々のよく知っているインターネットとは別のかたちで発展をとげているインターネットの世界があります。そこでは98年にTencentと呼ばれる会社が誕生して、99年にはAlibaba Groupが誕生しております。

これが今やどうなってるかといいますと、一例ではあるんですけれども、11月11日に1が並ぶので独身の日と呼ばれていて、「自分にプレゼントしよう」というカルチャーがあって、これたぶんAlibabaが勝手につくったんじゃないかなと思うんですけど、そこでAlibabaがeコマースのネットセールをやるんですね。

その時に、たった1日で、2.8兆円の売上をあげてしまうんです。2.8兆円っていう数字がすごいのか、すごくないのかというと、よくわからないかなと思うので、例えを出すと、日本の大手ネットショッピングの会社が1年間で売り上げるのが、だいたい3兆円ぐらい。

そう考えると、やっぱりそれだけのユーザー数がいて、それを支えている。まあ、そういう状態なので、それは単なるeコマース企業じゃないなと。ただのeコマース企業だったら、もしかしたら、そこまでできないかもしれない。そういったところで、Alibabaはそれに耐えうるためだけに、いろんな研究や開発を日頃やっているというのが、このAlibabaの正体でございます。

そうやって見ていくと、実はぜんぜん知らなかったんですが、知らない世界のほうのインターネットで、なんかすごいテクノロジー企業が生まれてきてるらしいぞと、私も最近本当に感じてきています。最初にここにジョインした時には、そこまでは思ってなかったんですけど、いろいろ知っていくうちに、そういうふうに私自身も思ってきました。

さらに、そのAlibabaが今やろうとしていることは、中国国内でがんばることじゃなくて、彼らは海外に出ようとしている真っ最中で。ここ半年、1年ぐらいはやり始めた真っ最中でございます。それが今この瞬間じゃないかなと、私自身感じております。

そこでAlibabaという会社ですけど、どうしてもeコマースの会社というイメージが大きいんじゃないかなと思いますし、私もずっとそう思ってたんですけど、じゃあ、どんな会社なのかと。

彼らが中国でどんな取り組みをしているのか、ということから掘り起こしていくと、実はeコマースはもちろん、一番最初に始めた主力の事業なんですけど、今になってはSNSもやっていますし、YouTubeのようなYoukuと呼ばれる中国版のYouTubeをやっていたり。あと、おもしろいのはやっぱりAlipayと呼ばれる決済ですね。

AmazonもGoogleも持っていない決済をAlibabaが持っている。ここはかなり強い部分で、それらをTaobao IDと呼ばれるAlibabaの1つのIDで、すべて使えるようにプラットフォーム化していると。

極端な話、誰がeコマースで何を買って、オフラインでAlipayで何を決済し、どこで何を買って、家に帰ったらYoukuで何を見てるかという、そういった情報を持てるのがAlibabaですし、それを軸に戦っているのがAlibabaです。

eコマースの域を出てマーケティング会社に

Alibabaはeコマースの会社のように思われるんですけど、実は今やそういう域を出ていて、どちらかというと、そういったマーケティング会社として活動している、活躍している、というのが現状でございます。それだけのビッグデータの活用だったり、データ処理というところに、かなり力を入れているのが、彼らの今の状態でございます。

今ご説明したように、Alibabaは何十種類ものサービスを中国で展開してるわけなんですけども、それを支えるために自らがつくったインフラ基盤がAlibaba Cloudです。自らのビジネスを発展させるためにつくったAlibaba Cloud。そして今やそれをお客さんにも提供しているのがAlibaba Cloudです。

Alibaba Cloudって、たぶんほとんど知らない人が多いかなと思うんですけれども、実は今では世界に17もリージョンがあります。アジアを中心にしてはいるんですけれども、アメリカやヨーロッパも始めて、2016年12月には実は東京リージョンも開設しています。

リージョンとしておもしろいところで言うと、まず1つはやっぱり中国ですね。中国にこれだけのリージョンを持ってるクラウドベンダーは、他にはいないかなと思いますので、そこは当たり前ですが強い。

その他ですと、ジャカルタとか、ちょっとおもしろいですね。インドネシアですね。インドネシアにもリージョンを持ってるクラウドベンダーは、僕が知るかぎりはたぶんないんじゃないかなと思うんですけど。Alibabaはここ数年、アジアの領域にはかなり力を入れていこう、本腰を入れていこう、という戦略に見えます。

プロダクトのラインナップも、みなさん初めて聞くようなクラウドなので「貧弱なんでしょ」と、もしかしたら思うかもしれないですけど、実はそんなことなくて、もう本国での実績がありますので、100を超えるサービスがあって、もうAWS級と言っても過言ではないかなと思うんですけれども(笑)。そのくらいの数はありますし、もうフルラインナップそろっている状態です。

Alibaba Cloud のいいところ、悪いところ

まあ、1個1個を説明する気はなくて、特徴的なところですと、やっぱりデータ周りが強いのが1つの特徴かなと思っています。例えばなんですけど、データベース系は種類がとても豊富です。使うかどうかは微妙としてもMongoDB As A Serviceみたいなものとか、Hbase As A Serviceみたいなものから、そういったものの分析をするためのビッグデータ関連の処理のものまである。

さっき見てきたように、Alibabaは本国でデータ分析にかなり力を入れてることもあって、そういった(データベース系の)商品ラインナップはけっこう増えている。増やしているというのが現実的なところでございます。

まあ、私が1年半ぐらいAlibaba Cloudにたずさわってきて勝手に考えてる、これ僕の個人的な意見ですけど、いいところ、悪いところをちょっと赤裸々にお話したいなと思います。

まず、Alibaba自身が本国で培ってきた、苦労してきて乗り越えてきた技術、ノウハウが詰まったプロダクトが多いなと思ってます。とくにビッグデータや機械学習の部分は、自信作だと本人たちも言っています。

とはいっても、Alibaba Cloudは、クラウド業界の中ではフォロワーであること、後発であることは十分承知していて、だからこそ今、ユーザー要望をとても真摯に聞いているのが現実の特徴です。開発のスピードも、中の人が驚くぐらいの早さで実装してきます。

一方で、まだまだ悪い部分もたくさんあってですね。日本リージョンを含めて、プロダクトがまだあんまりないとかですね。がんばってはいるんですけども、サーバレスなど新しい概念については、まだまだどちらかというと追いかける立場でして、独自の考え方というのは、まだまだプロダクトに反映しきれてないかなと。

彼らの中で培ったノウハウなどが絶対にあるはずなので、そのへんがプロダクトに反映されてきた時には、きっとこのAlibaba Cloudが化けてくるだろうなと、個人的に予想しております。個人的な意見ですよ、これは。

MaxComputeの分散データ処理

続きまして、特徴的なところをお話していきたいなと思っております。さきほどAlibaba Cloudはデータ周りが強いと言ったんですけど、他のクラウド事業者と同じようにデータ周り、そして、強みとしてデータソリューションはたくさん持ってます。

ストリームのデータを受け入れるものとか、データレイクとしているObject Storageはもちろんなんですけども、やっぱり一番強いところが、分散データ処理の部分ですね。

自分たちであれだけのデータを抱えている中でどうするかというところを、苦労している部分があるので、この分散データ処理のMaxComputeと呼ばれるこの商品は、Alibabaとして力を入れている商品の1つになってきています。

これはどういうものかといいますと、簡単に概要をご説明すると、まずデータの収集を、……分散データ処理なので、どこかからまずデータを持ってこなきゃいけないんですけど、Alibaba Cloudのあらゆるストレージ系の製品とは連携してますし、オンプレミスとかのSQLとかテキストデータからも、もちろん持ってくることができます。

1個前のセッションでデータ分析の話もありましたけども、データをETLで、加工して取り込むことが、実際の現場では必要になってきて、ここの部分がかなり苦しい場面じゃないかなと思います。そこも含めて、このMaxComputeは一緒にデータ提供することができます。

それで取り込んだデータに対する処理を、タスクスケジューリングというタスクを設定して、どういうふうに実行するかというものをGUI含めて設定できるのが、このMaxComputeの1つおもしろいところかなと思ってます。

(スライドを指して)こんなふうに自分でつくったタスクを、どういった順番で実行するかとか、こういったものをGUIからスケジュールすることが可能だったりするのが、けっこうユニークでおもしろいところかなと思ってます。

MaxComputeに力を入れているというお話をしたんですけれども、じゃあ、どのようにそれを実現しているのかとか、どういった結果を出してきているのかというところを、少しお伝えしていきたいなと思います。

もともと、このMaxComputeができる前は、AlibabaはOracleを使っててですね。ただ、そのライセンス費用とかも含めて、ちょっと厳しくなってきたこともあって自作を始めたんですけれども。

ソートベンチマーク大会なるものが世の中にあるらしくて、2015年のベンチマーク大会では、100テラバイトのデータのソートにかかる時間のコンペで(Alibabaが)優勝したりとか。

あるいは、2016年には、1テラバイトをソートするための効率性のコンペで優勝したりといった実績を残してきてます。

これを支えている技術というのが実はあります。支えているテクノロジーを自作しているところが、背景としてあります。

自社開発のApsara Cloud Platform

(スライドを指して)このECSとかRDSとかOSSというのが、1個1個のプロダクトの名前だと思ってください。

Amazonで言うEC2、S3みたいなものだと思ってください。その基盤で使われているものの名前をAlibabaはApsara Cloud Platformと呼んでるんですけど、ここを自社開発して、力を入れている。ここが強いポイントですし、おもしろいポイントです。

半分余談になるんですけど、このApsara Cloud Platformに使われているコンポーネントの名前は、すべて中国の神さまの名前になっています。

ちなみに、このApsaraというのは、川とか雲の中にいる妖精だということです。雲の中にいる、クラウドの中にいる妖精なので、全体総称ということでApsaraになっていると。まあ、そういうおもしろい話もあるんですけど(笑)。そういうかたちになっています。

その中でも、ビッグデータのところで言うと、分散ファイルシステムとジョブスケジューリング、リソースマネジメントで使う、FuxiとPanguと呼ばれている、ここのところがMaxComputeを支える一番の肝の技術になっています。

ここで言いたいのは、こういったものでやってるということではなくて、こういったところを自社で開発をして、論文とかを出していて、単なるeコマース企業ではなく、そこのテクノロジーに対して真摯に取り組んでいる企業である、ということです。

例えばジョブスケジューラーのFuxiついては、ちゃんと論文も書いていて、データベース系の学会のところで発表しています。

(スライドを指して)ここに書いてあることはけっこう難しいことが書いてあるんですけども。彼らが、リソースマネジメント、ジョブスケジューラーをやろうとした時に、最初はMesosとかで実装しようと考えたみたいです。

そうすると、Alibabaの要求するスケーラビリティに対応できなかったり、サーバーがクラウドプロバイダー級の量になると、常日頃壊れたりしますので、そこに対する対応が難しいということが書いてて。そこでFuxiを開発して、自ら出しましたといった例ですとか。

分散ファイルシステムのPanguも、ここはちょっと内容は非公開になっているので、詳しくはお伝えできないんですけれども、HDFSとかよりもマッチ・アドバンストな分散ファイルシステムとしてつくっていると。

この分散ファイルシステムとジョブスケジューリング、リソーススケジューリングがあるからこそ、ビッグデータ分析のMaxComputeを支えている、というところになっています。

知っていただきたいのは、このPangu(注:天地開闢の創世神)という名前もおもしろいよ、ということもあるんですけど(笑)。こういったところに真摯に取り組んで、アウトプットを出しているのが、Alibabaの現状でございます。

身近なところで活躍する中国テクノロジー

あとは今、裏側のお話をしたんですけれども、Alibaba Cloudには、プロダクトにもいくつか、自らがつくっているオープンソース技術が盛り込まれていますので、そのへんのお話をしていこうかなと思っております。

まず1つ目がTengineと呼ばれる、NginxベースのWebサーバーなんですけれども。

もともとNginxを使っていたんですけど、Alibabaの要求に耐えられなくなってきて、そこからフォークしてつくっていったのがTengineです。

実はAlibabaがつくっているのは、だいたいこのTengineをベースにつくっておりまして。みなさんも暇があったらcurlしてみるといいと思うんですけども、サーバーのところに「Tengine」と返ってきますので、実際に使われてることもちゃんと確認できています。

実際、我々のAlibaba Cloudのプロダクトの中でも、このTengineはよく使われています。代表的なところですと、Load BalancerとかCDNのサービスは、全部このTengineと呼ばれる自社でつくっているオープンソースをベースにつくってあるのが、特徴的なところです。そういったところがマネージドで使えるのが、おもしろいところかなと思っております。

あと、これは調べていった時におもしろいことを発見したんですけれども。OpenRestyってたぶん知ってる人は知ってるかなと思うんですけども、Nginxのフォークというか、Nginxベースのオープンソースで有名なOpenRestyっていうのがあるんです。

あれって、どこかのアメリカの人がつくったんだろうなと思ってたんですけど、よくよくたどると、OpenRestyをつくったのはもともとAlibabaの人で、Tengineのベースをつくった人で。TengineとOpenRestyはもともと同じ人がつくったということですね。

そういうのを知って、実は知らないところや身近なところにも、こういったAlibabaとか、中国のテクノロジーで活躍してる人が今は出てきて、何気ないですけど我々のほうで使っていると。こういったものもけっこう出てきているな、というふうに感じている次第です。

Alibaba自ら中国で養ってきた技術が詰まっている

あと、おもしろいところですと、AliSQLと呼ばれるもの。これはMySQLと100パーセント互換のオープンソースで、パフォーマンスを改善したMySQLなんですけど、これをマネージドで使えるのがAlibaba Cloudです。

さらにAlibaba Cloudのデータベースのサービスは、実は仮想化ベースのデータベースではなくて、ベアメタルベースで提供しているサービスですので、オーバーヘッドがなくて、パフォーマンスの改善を実現していて、そういったところがマネージドで使えるのがユニークなポイントかなと思っております。

あとはCache、Redisベースですね。これも30パーセント性能改善したもので。これもマネージドで使えるのがAlibaba Cloudです。これ、GitHubを見ていくとすごくおもしろいことが書いてあって、Redisなんですけど、「Memcacheプロトコルをサポート」と書いてあって。

「そんなことあるのか?」と思ったんですけど(笑)、これは本当で。魔改造されていて、Memcacheプロトコルをしゃべります。とはいっても全部しゃべれるわけじゃなくて、本当に基本的なものしかしゃべれないんですけども。

実はAlibaba CloudにMemcacheとRedis両方のサービスがあるので、もしかしてこれで動いてるのかなと思って、担当者をつかまえて、「RedisとMemcacheって、これでやってるんですか?」と聞いたら、「昔はやってたけど、さすがにやめた」と言ってました。

とはいえ、「Redisのパフォーマンスの改善の結果は、そのままプロダクトに反映されているので、そこは自慢のところです」という回答もいただきました。

最後になるんですけども、あとはRocketMQと呼ばれる、これApache Foundationプロダクトの1つなんですけれども、Kafkaに近い製品になってます。こういったところも、自社でつくっていて、我々のメッセージキューサービスの裏側で使われたりしているのが現状でございます。

このように、Alibaba Cloudは製品もさることながら、その裏側では、Alibabaが自ら中国で養ってきた技術が詰まっていますし、これからも探せばいろいろ出てくるかなと思っております。そしてなんといっても、まだまだ謎深い部分も多いのが現実でございます。

そんな中なので、実はそういった新しいテクノロジーに、今まで知ることがなかったけれども、最近表になってきているAlibaba Cloudにご興味を持ってくれた、元AWS関連の人などが、AliEatersというディベロッパーコミュニティを立ち上げてくれていまして。気が付いたら立ち上がっていまして。

ちょうど先週ですけれども、(AliEatersのミートアップの)第2回を噂のWeWorkでやったりしていました。実は第3回は4月11日に開催予定なので、もしよかったらみなさんも「もうちょっと深く知りたいよ」という方は、connpassで検索していただけたらなと思っております。

最後になるんですけれども、Alibaba Cloudのむちゃくちゃカッコいい転写ステッカーがあって。これ銀色に光るやつなんですけれども。先着10名さまぐらいですかね。持ってますので、もしよかったらこのセッションの後に私に声かけてください。以上、ご清聴ありがとうございました。

(会場拍手)

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