2024.10.01
自社の社内情報を未来の“ゴミ”にしないための備え 「情報量が多すぎる」時代がもたらす課題とは?
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菊地仁氏:ということで、これだけで20分以上話してしまいましたが、今日はシリコンバレーにも来たことのある岩上様(GIG代表取締役)から頼まれたので、シリコンバレーの駐在目線でIoTを考えます。
「シリコンバレーってそもそもどこなの?」ということで、アメリカ西海岸、サンフランシスコとサンノゼあたりの地域です。駐在していた場所というのが、ここの真ん中あたり、サンマテオってある街のちょっと横ぐらい。
ここからサンフランシスコ市街までが25マイル・40キロぐらいで、サンノゼまでが25マイル・40キロぐらい。なので、だいたい80キロちょっと、半径40キロぐらいの円の中にだいたい全部が収まっているんですけど、高速道路に乗って車で1時間ぐらいかかります。
それぐらい広い場所で、都会というよりけっこう田舎で辺鄙な感じのだだっ広い感じで、高速道路が通っていて、その脇に「ああ、あそこがGoogleだ。あそこはFacebookだ。Appleはここだ」って感じで、いろんなところに散らばっています。あとは、Qualcommとか、そういうチップベンダーもいたりします。
ただ重要なのは、アメリカのスタートアップ投資は、だいたい半分以上がシリコンバレーなんですね。ニューヨークとかボストンとか、それぞれいろんな地区で投資があるんですけれども。
その中でも主要ベンチャーキャピタル、あとはコーポレートベンチャーキャピタルといって、QualcommとかIntelとかGoogle、GEみたいな大手企業の中でスタートアップ投資を手がける部隊もいて、この人たちがどんどんスタートアップにお金を注入しているんですね。
そこが一番重要なところで、アメリカ人がアメリカの会社で起業するというよりも、世界中の起業家がここに集まってきて、投資家からお金をもらう場所と考えたほうがいいと思います。
スタンフォード大学ではデザイン思考の考え方を学んで起業に活かそうみたいな。この一番右側にあるR&Dっていうところにありますけれど、そういったものがあったり。社会人がAIが人間を凌駕する時代にどういう新ビジネスをやるべきか、自動運転の倫理はとか、法律関係はというのを学ぶような「Singularity University」もあります。
あとは、スタートアップを立ち上げて、投資家からどうやってお金をもらったらいいかわからないという人たちに対して、「KPIを設定して、それを実証して、こういう成長が見込まれるからこういう投資をしてもらえれば、これぐらい儲かります」というストーリーを徹底的に指導して、スタートアップを伸ばしていくみたいなスタートアップ・アクセラレータという、育成を専門とする会社もあります。
あとおもしろいのは、法律事務所とか会計事務所の人たちも出世払いみたいなことをやるんですね。「ストックオプションをくれればいいから、儲かったときにその分回収させてもらいます」って言って、はじめにまずお金をもらわないで、会計とか法律の相談やパテントとかのサービスをやっちゃうんですね。
あとはワークスペース。スタートアップは金がなくて、金が尽きたらその段階でもう会社は解散ですから、投資したお金をいかに大切に使うかを考えなくちゃいけないということで。WeWorkもそうなんですけれども、いわゆる保証金を払ってオフィスを借りるのではなくて、小さい段階で必要な人数分だけのオフィスを借りて、それを複数のスタートアップ同士でシェアをするみたいな仕組みも、ちゃんとできあがっていると。
それが一種のコミュニティみたいにもなって、スタートアップ同士でお互いに相互扶助しあったりとか、「ハードウェア系のエンジニアがいないんだけど、誰か手伝ってくれる人いない?」みたいな、そういうようなことをやったり、そういう場だったりもします。
シリコンバレーの場合はエンジニアが自分の会社を作ることが多いので、このように平均年収も高いし、まぁ生活費が高いので、GoogleやAppleの人たちの平均年収も高いんですけど、ぶっちゃけ1,000万円もらっても足りません。
だって毎月家賃が30万円ですよ、40万円ですよ。車も2台必要なんですよ。自分の通勤用があって、奥さんが学校に子どもを送り迎えする用の車とかも必要だったりするので。生活費も高い、家賃も高いっていうと、もう大変なんですね。1,000万円だと完全に共働きしないと生活できません。
エンジニアが自分の会社を起こすというのも非常に多いので、日本のようにエンジニアが一種の下請けっぽく働くというよりは、自分たちでビジネスを作っていくという発想で、エンジニアも仕事をしているのかなと思います。
IoTエンジニア、もしくは起業家が作った会社、ベンチャーキャピタルが投資をした会社をこうやって一覧でまとめているんですけど、イメージとしてはこんなにありますということです。
ただ、これら全部が成功するわけじゃないということは言われていて、IoT、ハードウェア系のスタートアップはなかなかしんどい状態であります。
スマートホームだけに絞ってみても、家の中のスマートロックからエネルギー系とかロボットみたいなものから、ホームセキュリティみたいなものから、キッチンものであるとか明かりであるとか、これだけの会社があります。
残念なのは、これだけすべてがそれぞれ別々のアプリでコントロールをしているとか、それぞれアプリはバラバラに作っていたりするんですね。プロトコルがバラバラであったり、そのセットアップが大変だったりということで、なかなか買われていません。というか、「本当にインテリジェントなんでしょうか?」みたいな。
私も、アメリカでこういうデバイスを買いまくるわけです。設定するじゃないですか。ある日Wi-Fiルーターが壊れて、新しいWi-Fiルーターの設定をするんですけど、「ちょっとセキュリティが心配だから、SSIDはやっぱり変えておこうかな」って段階で、全部のデバイスのSSIDを変えなくちゃいけないので、シャレにならない。なかなかこのあたりってスマートにできないね、とは思っているんですけど。
しかも、このハードウェアスタートアップの場合、けっこう生存競争が厳しくて。
2014年とか2016年ぐらいに投資が激しかったんですけど、もうだいぶダレてきました。
大企業にスタートアップが買収されるという流れがこの2年多くて、自力で上場するとか、生き残っていく会社というのがだいぶ少なくなってきました。四半期単位で見ても、だいたいピークは2016年の頭みたいな感じが出ていて。
シリコンバレーは技術だけを追いかけていても、正直なにがイケてるのかとか、なにが旬なのかってわかりにくいです。逆に、投資家のお金がどこに動いているかが先行指標っぽくなるので、こういうのを常に追いかけていたり、「この中で上場してうまくいっている会社ってどんなんだっけ?」というリサーチをしていたりします。
だいたい最初の世代、10年ぐらい前に出てきて4年ぐらい前に仕上がってきた会社というのは、ご覧のとおりです。Fitbitとか。
Nestというのは、スマートサーモスタットの会社。あとAugust、これはスマートロックの会社。Withingsはヘルススケール。体重計だったり、やっぱりウェアラブルだったり。あとGoProはご存じのGoPro。
なんですけど、もともと創業が、だいたい10年近く前。一番GoProが古くて2002年なんですけど。こういうのが第1世代のハードウェアスタートアップと言われています。
シリコンバレーの典型的なソフトウェア系スタートアップだと、だいたい4年ぐらいで、早ければIPOまでいくんですけれども。ハードウェア系の場合はそれ以上に時間がかかります。
開発して、プロトタイプを作って、もう1回プロトタイプをやって、量産をして、それをオンライン販売してチャネルを開拓しながら、今度は一般の流通網に載せたり、大手店舗で売ってもらって、それをグローバル展開してやっと上場。そこまで8年かかりますみたいな世界らしいので、なかなか大変です。
FitbitとGoProはがんばって上場したんですけれども、上場するまでに投資家から投資されたお金がだいたい$66 Million。これが上場したので時価総額が$4.1Bになりました。なので、最初に投資をした人からすると価値が、この場合だと60倍になりましたみたいな世界なので、100社投資しても2社3社が成功すればそれでOKなんですね。
あ、ちなみにBillionってことは、$1 Millionが1億円で、$1 Billionが1,000億円に相当するので4,000億円ぐらい。評価額$1 Billionを超えると「ユニコーン」って呼ばれるんですけど、この「一角獣」がなかなか見つからない。まぁ本当にたくさんある会社の中の一部なんですけどね。GoProはGoProで、時価総額$3 Billionで上場っていうところなんですけど。ただ、今ビジネスで苦戦していまして、時価総額が当時の3分の1以下に、なっています。
結局2016年、2017年は、GoogleとかNokiaとか……ASSA ABLOYというのはヨーロッパでナンバー1の鍵メーカー。こういう会社がスタートアップを買収して、自分たちの製品ラインに組み込むというような感じで、大企業の傘下で、IoTビジネスが盛り上がっているというのが現状であります。
ただ、唯一$3.2BillionでGoogleで買われたNestは、やっぱりすごいなと思うわけですね。これがいったいなにかというと、スマートサーモスタットのメーカーです。
アメリカの場合はセントラルヒーティングみたいな集中制御で、アパートに1個温度計みたいなものをつけてあって、それで温度を上げたり下げたりしながら全部の部屋の空調をコントロールする。
今までは前時代的なやつで、月曜日の朝9時にオンして夕方17時に消してっていうのを、ちまちまボタンで設定するみたいな、こんなの誰も使わないぐらい面倒な感じなんですね。
Nestは、こういうダイヤルみたいなサーモスタットを後付けでくっつけて、温度設定をどんどん変えるんですね。そうすると、クラウドにデータが蓄積して、その人の好みであるとか、その気温であるとか、そのセンサーの前に何人いるかとか、そういうような情報を総合的に見て、温度を自動調節したりオンにしたりオフにしたりというのを、勝手にプログラムしてくれるというものです。
こうやってみると「便利だね。ちまちまやらなくていいね」ってレベルなんですけど、なんでGoogleが買収したかというと、実はアナリティクスの会社だからです。
全米中のデータが集まってきて、どの州でどんな人がどういうふうに、どんな温度調整をしたかというのがリアルタイムでかき集まってくるので、これを電力会社に売ればどうだろうというのが根っこにあって。ハードウェアは手段でしかないんですね。なので、データをかき集める手段としてやろうと。
それを、例えばユーザー向けのインセンティブプログラムで、「冷房温度を2度上げるとリーフを1枚稼げます」みたいなものが、一種のゲーム感覚でやってみたり、「あなた、今月の電気代これだけ得しましたよ」というのをやってみたりとか。
あとは電力会社と組んで、デマンドレスポンス。今日は暑い日になるので、できるだけ夕方の14時から17時までの間、電力量をちょっと減らしたいと。この間に2度上げてくれればディスカウントしますよ、そういうプログラムを電力会社からオファーとして出させる。
だから、ハードウェアをつなげてスマホでコントロールしておしまいというわけではないというのが、なんとなく勝ちパターンの会社からはわかってきたかなという感じがします。
今Nest自体は、火災報知器であるとか、ドアロックであるとか、Dropcamという会社を買収して、いわゆるWebカメラも統合しながら、今はホームセキュリティビジネスにGoogleブランドで参入するという感じになっています。
まぁある意味、創業チーム、「アメリカのエネルギー消費を変えたい」「世界のエネルギー消費を変えたい」って人たちから見ると、ちょっとつまらないんですね。だいたいのNest初期の人たちはどんどん辞めていきました。
彼らが今なにをやっているかというのが、我々として注目していることで、おもしろい会社が3社あるので、それをご紹介します。
「b8ta(ベータ)」。これはパロアルトにあるIoTガジェットのショールームなんですけど、もともとはNestのリードエンジニアだったり、コミュニケーションマネージャーだったり、プロジェクトマネージャーだったり、チャネルマーケット、営業をやっていたメンバーが作った、IoTデバイスのショールーム、ブティックみたいな会社です。「え、それ売るだけなの?」という感じですが。
重要なのは、IoTデバイスって大手の店舗とかに並んでいて、箱に入っていてもなにがなんだかわからないんですね。実際にいじってみないとわからないし、なにがメリットなのかって実物をみたり、ビデオを見たりしないとわからないので、普通の商流で売るのは難しいということで、それ専用のブティックを作りました。
b8taの店員は、全部の商品にどんなメリットがあるかを、頭の中に操作方法も含めて叩き込んでいて、1対1で接客をしてちゃんと売る。それをパロアルトで、まぁ金持ちの街なのでこういうものに抵抗感がないわけなんですね。それで、こんなショールームを作りました。ビデオをちょっとご覧ください。
(デモ映像が流れる)
こんな感じで、子ども用のおもちゃみたいなものもあれば、こういうガス・レンジ、あとでまたご説明しますけど、本当にネットでつながるいろんなデバイスが全部揃っているということで。
いつも日本に出張に来る人たちを、だいたいここに連れて行くようにしていたんですけど、連れていくとNestの店員からすごく喜ばれるんです。でも、別になにも買わないんですよ。見てて、「ああ、これはおもしろかったです」って、なんにも買わないのに店員から喜ばれる。なぜか?
ここに、監視カメラが大量についています。それぞれタブレットの前にも人感センサーがついていて、どのデバイスの前に何人通ったかというデータを取っています。
というのを、各IoTガジェット・デバイスを作っているスタートアップやベンダーに情報として提供するんですね。人が来ていろんな質問をしてきたり反応を示すデータを、この作っている人たちにフィードバックするというビジネスでもあるということです。
だから、Nestをやっていた発想の人たちがショールームをやるとそうなるということなので、やっぱりこれもハードウェアを売るというビジネスから一歩突き抜けている感じがあるのかなと思います。
あともう1つ、この「Noon Home」。これもちょっとビデオを見ていただきたいんですけど、やっぱりNestのオペレーションのVPとセールス&マーケティングのVPの人が作った会社です。
(映像が流れる)
このスタートアップの人たち、スマートスイッチをやっているんです。親機と子機があって、親機がタッチパネルですね。親機が子機も含めて全体のコーディネートをするんですが、「そこの先につながっているライトバルブがどんな種類で、どういうlightingをするのか?」「場所はどういう場所なのか?」「それがダイニングルームなのかリビングルームなのか?」ってところを一通りセットをしていきながら、機械学習をしていきます。
そのあとで、そのデバイスを使ってタッチパネルを使って、「今から読書するんだけど」とか「今から料理をするんだけど」とか、「今からリラックスしたいんだけど」とか。アメリカの場合は蛍光灯で煌々と照らすことはしないで、間接照明で明かりをつくることが多いので、パーソナルライトデザイナーみたいな人がいればいいんですけど、それをIoTでやってしまいましょう、という発想です。
なので、そのためにどんなセンサーがいるか、どういう照明パターンを作るかというのは、クラウド側でインテリジェントにやろうって発想で、やっぱりハードウェアを売るんじゃなくて、それの明かりの空間をどう作るかと、UX的な発想でやっていると言えると思います。これもやっぱり「おお、Nestでやっていた人たちはすごいなぁ」って思うわけですね。
先ほどのElectric ImpのCEO、Hugoって男は、もともとAppleのiPhoneを開発していた人間で、iPhoneのハードウェア設計をしていました。その後、Nestのハードウェア設計も手伝いました。また次の製品を作るとき、「また一から作るのは面倒くさいから」ってことで、IoT機能をモジュール化して、クラウドでつながるところまでは半製品にしちゃったと。
クラウド側で一生懸命工夫しないと、IoTビジネスってうまくいかないよねと。さっきのNoonも、実はElectric Impを使っていたりするんですけど、そうやってNestをやっていた人たち同士が個人的にもつながっていて、同じような世界観・課題を認識して別々のことをやっている、というようなのが実はシリコンバレーなのかなと思ったりします。
(映像が流れる)
ご覧いただいてわかるとおり、IoTデバイスを作ったりサポートをするのはめちゃくちゃ大変なので、これはもう専門のクラウドサービスで楽をしましょう、みたいなコンセプトで、「IoTのプロがその部分をやります」というような説明の仕方をしています。
ということで、「IoT開発で楽をしましょう、楽をしたあとのUI/UXを一生懸命それぞれの会社でがんばりましょう。それで、このコネクティビティ、デバイス管理、セキュリティ、サーバ構築、ここらへんはもうプロにおまかせください。時間をお金で買いましょう」みたいな、そういう発想です。特にスタートアップビジネスの場合は時間が勝負なので、速くIoT開発をするためのバックエンドを専門にやる会社というのを、作ったわけですね。まぁ、これは賢いなと。
時間が少なくなってきたので、元Nestじゃない人でも、おもしろいものがあるので、これを最後に紹介させてください。
スタンフォードでトップクラスでAIを修めた博士号のAshutosh Saxenaと、David Cheriton というスタンフォードの大学の教授で作った会社。やろうとしているのは、さっきのfragmentしているスマートホームの家のオペレーションシステムを作りたいという発想で、家の全部のデバイスを制御するためのAIの仕組みを開発するというスタートアップです。
これがそのイメージです。
(映像が流れる)
解説します。今からビデオやビデオを見るという時に、「カーテンを閉めたほうがいいんじゃないか」ってAlexaにお願いするまでもなく、テレビをつけた段階で勝手にカーテンが閉まって映像が始まります。
なんですけれども、でもここで見ている最中で「やっぱりこの映画はつまらないな」と。「ちょっと飽きたのでいったんやめろ」というオーダーを出して、「カーテンを開けてくれ」って言いながら本を取り出すと、それに合わせてちゃんとカーテンが開きます。
ここらへんを、AIが勝手に解釈してやってくれる世界観ができればということで、これはラボみたいなところで作っているんですけど、今、実際にアメリカのある一軒家にスマートホームのデバイスをつけて、そこで動かしています。
もう、1個1個のデバイスのスマホがどうのこうのとか、Alexaにボイスコマンドでどうのこうのというのは超えていて、家そのもののヒートマップを作るわけですね。そのヒートマップのどの位置で人がなにをしているか、さっきのNoon Homeの発想と若干かぶるんですけど、それによってコンテクストを確定させるところまでAIでやっちゃう、Deep Learningでやっちゃうという発想ですね。
最初の2〜3日間はまともに動かないんです。ただ、だんだんその人の生活を学習していくことで「これは違う」「これは正しい」というのをだんだんわからせていった上で、1週間、2週間いるうちにだんだんその家がその人に馴染んでくるみたいな、そういう作り方ですね。そういうことをやろうとしているということです。
ということで、ちょっと今までの発想ってなんか吹っ飛んでいるよなって思いますよね。なんでこんなことが発想できるんだろうというと、シリコンバレーのデザイン思考の人たちとか、スタンフォードの人たちはそうなんですけど、「まずやってみろ。作ってみろ」という発想でやっています。
これはどういうことかというと、過去の事例から帰納法的に「だいたいこういうパターンがこうだからこうだよね」って、みんなでコンセンサスを取るような製品作りをしていても、だいたい改善系のイノベーションしか起こらなくて。だいたいはブレークスルーするような、新しいイノベーションというのは作りにくい。そのときに重要なのは、「仮説を立てる」ということなんです。
なので、データからパターンを見出して、そのとおりになにかものづくりをするんじゃなくて、データそのものから大胆な仮説を立てて、「これがこう変わったら全体がこうなるんじゃないか?」って、一つ飛びの発想の転換を図ろうというような演繹法的な発想をするんですけど。だからこそ早く商品を出してお客さんからフィードバックを取るとか、小さくてもいいから始めてみる。
これって実は、「ハードウェアスタートアップだとめちゃくちゃ大変だよね」とか、「AIだと大変だよね」って思うんですけど、みなさん日常的にされていらっしゃると思うんですね。簡単に言えば、A/Bテストで「ここをこう変えたら、お客さんこうなるよね」「色使いを変えたらもっと買われるようになるかもしれないね」とか。
そういう、さっき言っていたUIとかUXとか、その1個1個のアプリを操作するとかそういう世界じゃなくて、人間をどう、IoTのいろんなセンサーとかデバイスとかAIとか、場合によってはロボットとか、人間をサポートするかみたいな話なので、やっぱり人間の気持ちに戻ってくるわけですね。
そうすると、デザイン思考でやっている人間中心の発想であったり、UX的に、「こういうふうにここを変えたら、お客さんはどういう反応をするだろう?」と、検証を繰り返しながらモノを磨き込んでいくみたいな、そういう発想が必要になるのかなと私は思いました。
今までのIoTデバイスは、つなげるのがめちゃくちゃ大変みたいな世界だったと思うんですけれども、もうつながって当たり前の中で、いったいどんな体験をデザインするのか? それをやるためには、もうユーザーの反応をどんどん引き出して、ユーザー体験をもとに検証を繰り返すということをやらなければいけないので、今こそIoTデバイスを作って世の中にビジネスをやっていくときに、Webエンジニアのみなさんの発想的なところ、デザイナーの発想みたいなものがより活きてくるようになってるんじゃないか。
要は、Webとかポータルとか、スマホのブラウザとかアプリとかっていうのと同じ感覚でIoTデバイスまで増えてくる、そのインターフェースがAIになるかもしれない。ユーザ目線で「どうやって生活をデザインするか?」みたいな発想になっているので、逆にいうと、そこはシリコンバレーじゃなくてもできるんじゃないのかな、という気がしたりしています。
なんかシリコンバレーってめちゃくちゃ遠い世界で、投資家のお金が飛び交っていて、スタートアップでとんでもないことをやっていて。ご覧いただいたとおり、人間同士が「じゃあ僕はこんなのをやる」「じゃあ僕はこんなの」と、けっこう泥臭く人間臭くやっているんですね。
そういう世界もあるなかで、別に日本だからそんなのやらなくていいってわけじゃなくて、身近な発想で、日本なりのローカライズとか日本なりのIoTというのを考えていけるんじゃないかなと感じながら、最近日本に帰ってきたという感じです。
私からは以上になります。
(会場拍手)
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