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めがね型ウェアラブルの現況と展望(全4記事)

スマホの「次」を作るのはどこか? 日本のものづくりが“覇権”を獲るために必要なこと

2018年2月22日、SENQ霞ヶ関にて、「電脳メガネサミット2018 in Tokyo」が開催されました。メガネの生産量日本一の街、福井県鯖江市で行われていた電脳メガネサミット初の東京開催となる今回は、実際にスマートグラスを販売しているメーカーや鯖江市長をゲストに招き、熱いトークセッションを繰り広げました。第1部「めがね型ウェアラブルの現況と展望」では、EPSONの津田敦也氏、テレパシージャパンの鈴木健一氏、経済産業省の津脇慈子氏をゲストが登場。モデレータにjig.jpの福野泰介氏を迎え、めがね型端末の現状について語ります。

光学製品はアジャイルできない問題

福野泰介氏(以下、福野):小ロット生産というのはハード屋さんとしては辛いところがありますね。鈴木さん、最近の工場の関係って変わってきていますか? 逆にロット出ないと高くなってしまうというところは、存在しているままなんじゃないかという気がするんですが。

鈴木健一氏(以下、鈴木):まあ、そうですね。電脳メガネって、もちろんエプソンさんのやつもそうですけど、コンピュータとディスプレイの2つの技術がミックスしないと作れないんです。

ですがラッキーなことに日本はドイツに並んで光学大国で、さまざまな素晴らしい部品がほかの国よりは手軽に買えたりするので。そこはすごく助かっています。

一方で、やっぱりいっぱい作らないと安くはならないですし。意外とベンチャーにとってキツイのは、光学の技術ってアジャイルが効かないんですよ。

福野:初期投資が……。

鈴木:例えばコンピュータって1個の小さいものを作って、それを積み立て積み立てで作っていって。「こんなものができるな」というプロトタイピングをするからこそ、もしくはアジャイル的にそこで改変をすることによって進歩があるわけですね。トライアンドエラーがやり放題です。

ですが光学というのは、ドンズバで計算をして、そこにピントが合ってなかったら光が光っているはずなのに「なんでなんにも見えないんだ?」とことはしょっちゅう起こります。それがベンチャー企業にとって始めにくいところですね。

そこを分担できるような、国のプロジェクトとベンチャーが分担できるようなことがあるといいだろうなよく思います。

私たちこれでもやっているんですが、NICT(情報通信研究機構)さんが作られたマルチ言語の音声翻訳ってありますね。でも、私は始めたころはコンピュータエンジニアとしてずいぶん国の色が付いた研究を推してやるという印象でした。

でもそれは私は当時エンジニアとして若くて、今考えれば、あれがオリンピックを迎えようとしているときに各社さんがそのテクノロジーを使ったアプリケーションを作り始めて、花開こうとしているわけです。

いいことは私たちもエプソンさんもほかの電脳メガネのメーカーさんも、まだ取った・取られたをやるようなところまでは来ておらず、みんな仲良く一緒に仕事ができていますので、そこで予算であるキーテクノロジーを作り、それを日本の大きな柱として産業を作って行くということはけっこう重要なんじゃないかなと思います。それは光学だったりAIの技術だったりするのかなと思ったりします。

ものづくりで儲けるのか、サービスで儲けるのか

津田敦也氏(以下、津田):僕らはベンチャーではないので、インフラ自体は今もエプソンのものを使っています。僕らみたいな会社がどうするか、1つジャッジしなければいけないのは、この先ものづくりで儲けるのか、サービスで儲けるのかということです。

僕らはいろいろ話している中で「ものづくりにこだわっていくんだ」と決めた瞬間に何をしなければいけないかと言うと、買ってきた部品で作れるものは作らない。要は自分たちでしか作れない部品を使って製品を作っていかないと勝ち続けられないので、買ってきてできるものは手を出さない。これは判断がいると思います。

でもそれがサービスで儲けるのであれば、最近いっぱい出ているスマートスピーカーのように買ってきたものを使ってバンバン安く出して、そのうえに乗っかるサービスで利益を取るという会社もあると思います。

もう1つ、じゃあ国がリファレンスの工場を作ったらいいかと言うと、これはよく考えたほうがいいと思っています。それでは結局韓国になっちゃうだけなんですね。大きな財閥企業に国が優遇して装置を買って作っても、結局そのテクノロジーがコモディティ化したらそれが中国に行って、その先フィリピンに行ってという時代の流れを繰り返すだけです。

ただ考えなきゃいけないのは、日本は発想がプアになっていくので、キックスターター的なベンチャーの発想を活かせるような資金調達はやっぱり日本は立ち遅れてるかなという気はします。

逆に僕ら大企業のいいところは、インフラを持っていて資金力がある。でも発想力は絶対ベンチャーのほうが勝っているわけです。でも企業もうかうかしてると同じことになるので、そのバランスをどれだけ取れるか。

アメリカがものづくりを辞めたので、キックスターター(クラウドファンディング)という仕組みで一晩で何億円を集める人がいっぱいいるんですよね。あれを日本はもっとやっていかなきゃいけないんじゃないかなという気はします。

日本とアメリカ、ものづくりの資金調達の違い

津脇:逆に質問なんですが、後半の話からいくとお金まわりというのはそんなに難しい部分ってあるんでしょうか? というのは、けっこうお金まわりの話はよく聞いています。いわゆるVC的な方々はどちらかと言うと投資をする先を探しているぐらいで。IT系が多いからじゃないかなと思うんですけれど。

まさにハードも付随する新しいものを作るとき、どんな部分が1番不足しているとおもわれますか? 確かにいくつかハードウェア系のスタートアップの方で「資金調達をしたいけれどもなかなかできないので、INCJが出してくれないなら中国に行ってもいいですか?」とかいう話をたまに聞いてちょっとがっかりすることもあるんですけど。けっこう資金面というものは難しいものなんでしょうか? というのが1つ。

もう1つは、おっしゃる通り大企業の方は技術も販路も含めていろいろなものを持っていらっしゃって、ここ最近のグローバルなトレンドって、先日のCESでもおそらく出ていたと思うんですが、大企業とスタートアップが組んで新しいものを作るというのはけっこう出てきていると思っています。

そういう意味で、今後大企業が持っているものとスタートアップが持っているものの組み合わせによって、日本がなんらかの新しいものを生み出す可能性についてどう思われますか? 

津田:資金面については、エプソンの人間としてではなくて僕の感覚ですが。日本の投資の考え方とアメリカでやっているキックスターターの考え方は、僕は違うと思っています。

日本の投資はリターンバックを常に意識してますね。でもアメリカのスタートアップは単にその商品が欲しいっていう個人ベースの投資なんですよ。これは意味合いがぜんぜん違うと思います。

津脇:エンジェル的な要素が強いと。

津田:同志として見るのか、投資先として見るのかという観点がまず1個違うんじゃないかと感じます。

大企業の壁を壊す覚悟

津田:もう1つ、大企業とスタートアップが組むというのはアリだと思うんですけど、スタートアップ側は相当覚悟していかないといけないと思ってます。それはなぜかと言うと、大企業の長い歴史で培われたルールってそんなに甘くないんです。

クオリティの担保の仕方、デザインレビューの回し方、明日これができたからもの作っていいよっていう会社は1社もないんですね。それは僕の苦しみを言い換えてるんですけど。

(会場笑)

その作られた長い歴史を破る覚悟で企業に入っていくんだったらアリだと思います。あとは受け入れる側がどれだけ柔軟に対応できるか。ただ、残念ながら日本企業はまだそこまでいけてないんじゃないかなという気はしています。

福野:そこの組み方ですが、行政のオープンデータと個人のアプリ作りみたいなもので。例えばエプソンさんが自由に使っていい、自由に作れるMOVERIOを出してくれたから個人でもスタートアップでもそれを使ってサービスを作って提供できるんですよね。

津田:それはありますね。

福野:スタートアップや個人が遊べる余地を残した状態、要は半完成品くらいのものをどんどん出してくれる状態になると、スタートアップとの自然な提携というか。わざわざ提携しなくてもコラボできるという。

「じゃあ宣伝するよ」というところであんまりリスクがないので、大企業もどんどんやってくれるわけですよね。そういういい組み方をベストプラクティスとして紹介してどんどんオープンになろうよ、というところを推してもらえるとおもしろいと思います。

津脇:確かにそうですね。

2018年の電脳メガネ界を予測する

福野:そろそろ時間も迫ってきておりますので、最後にそれぞれ今年の電脳メガネ界のハイライトを予言してください(笑)。今年はこれが変わるというホラを吹いていただければなと思うんですけど。

津田:まじめなのでホラがないんですけど。

福野:じゃあエプソン的な今年のコミットは何ですか?(笑)。目標とかでも。

津田:こうやって2011年からしゃべらされて、企業秘密がどんどん、どんどん漏れていくっていうのが福野さんのうまいところなんですけど(笑)。本当に、先ほど福野さんが言っていただいたように、大企業が作ったコアをもっと自由に使えるようにします。今年はさらにします!

福野:それは嬉しいですね。

津田:私たちは今まで自分たちのハードウェアである程度市場の方向性を示したので、あとはそこから我々が提供するハードウェアでどんどんふくらませてもらえるような展開をもうじき発表します。

福野:お! ありがとうございます。

津田:ご期待ください。

(会場拍手)

福野:鈴木さんお願いします。

鈴木:帰ると会社の人たちに怒られそうな話(笑)。まあ、さっきのお金の話は裏でぜひお話をさせてください(笑)。でもやっぱりお金はとても必要でして、それを継続的に投資していただくのはけっこう難しいです。

テレパシーが始まったときも2014年でしたけれども、国内で私たちに投資してくれる投資家はゼロで。結果シリコンバレーに行ったというストーリーがありました。

変わって今年なんですけれども。やっぱりAIとの本当の融合かなと思います。まずはみなさんやられてますけど、ここでAlexaがふつうに使えることから始まって、それが音声だけじゃなくてビジュアライズされるところのステップが見えるだろうと期待をしていますし。私たちもそこに向けて大きくがんばらないといけないと。

やっぱり一気にはいけないですね。一気にいくためには本当にお金が必要になるので。お金がないとなると、ある程度を攻めていくわけですけれども。次の章としてAIと電脳メガネの新たな出会い、というのが今年のワードかなと思っています。

福野:ありがとうございます。

(会場拍手)

スマホの「次」は日本が作れるはず

福野:津脇さん、どうですか? 今年電脳メガネ、津脇さんの仕事で活かせそうな気がしてきませんか?

津脇:新しい産業という意味ではまさにそうだなと思っていますし、ぜひ私が応援できることはなんでもしたいと思っています。

私が個人的にやっているのが兼業副業を含めた人の移動をいかに……人の移動という表現がいいわけではないですね。人は自分が活躍するために1つのビークルに所属する必要はないと思いますので、いくつかのビークルに所属をする、もしくはいくつかの自己実現の場を設けるというのは大事だと思っていまして、今それを進めようとしています。

私自身もそれをやりたいと思っているところなので、そういう意味で今中小企業庁というところでの仕事と、それ以外も含めていろいろやろうと思っているところであります。

きっと電脳メガネという新しい産業を作っていくためには、先ほど大企業とスタートアップのコラボレーションの話でも少しあったと思うんですけれども、自分がこれをやりたいと思うものにみなさんがどれだけ集中して入っていけるか。大企業の中にいたままではスタートアップと一緒に協業というのはなかなか難しいこともあると思っていまして。

私としては間接的にしかつながりませんが、そこの壁を少し打ち破れるように新しい成功例を来年度は作ろうと思っていますので、それは来年度に出てきたらいいなと思っております。ありがとうございました。

(会場拍手)

福野:ありがとうございました。鈴木さんからもお話があったようにAppleもそろそろ狙ってくるぞと。それは前々から言われてますけど、ふつうに考えてスマホをわざわざこうやって持って使うって面倒くさいですよね。失くしたら困るし。というのがいずれ電脳メガネになるということは誰しも思っています。

スマートフォンは残念ながら大多数がアメリカに持っていかれましたけど、メガネに関しては日本だろうと僕は2011年から言い続けています。

正直言って2018年はまだ早いと思います(笑)。ただ、ちょうどエプソンさんが言ってくれたように、いろんな人が関わってあれこれ作っていくには非常にいい時期になってきたと思っています。

僕が作った点字メガネも、昨日電車の中で作ったものですから。すぐできるんですよ。本当にだれでもすぐできる新しい価値を、みんながいろんなもので作って試してということを、今年からそんな動きをエプソンさんと連動して盛り上げていければと思います。

津田:ぜひ。

福野:ぜひこういったミニミートアップをいろんなところで開催できればおもしろそうだなと思いました。最後に、パネリストの方に拍手をお願いします。

(会場拍手)

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