2024.10.21
お互い疑心暗鬼になりがちな、経営企画と事業部の壁 組織に「分断」が生まれる要因と打開策
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小島英揮氏(以下、小島):みなさま、ただ今ご紹介いただきました小島と申します。
所属名はあまりなくて、「パラレルマーケターって何だ?」と思われるかもしれませんが、後ほど自己紹介させていただきます。
今日私からお話をさせていただきたいのは、クラウド以降非常に早くなった技術トレンドの俯瞰の仕方と、それをこれからみなさんが、スマートフォンアプリの技術にどう活かしていくか、というところです。私のこれまでの知見などを踏まえながら、シェアしていきたいと思っております。
だいたい40分ほどお時間をいただいてお話をさせていただきたいと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。
「パラレルマーケター」っていう言い方をしていたのは、実は1社でなかなか自分の仕事をご紹介できないから、ということなんです。6社ほど並行して、マーケティングとかエバンジェリストの仕事をさせていただいています。
直近は、AmazonでAWSっていうクラウド事業がありますけれども、そこのマーケティングの統括を7年ほどやっておりました。その前職はAdobeで、実はクリエイターの方とかデベロッパーの方が使っているようなツールやインフラに非常に長く関わって参りました。
そのテクノロジーがどういうふうに盛り上がってきて、どう廃れていくか、というところも見てまいりましたので、今日はその辺りの見極め方法も含めて、お話をさせていただければと思います。
今日のキーワードは、「エコシステム」という言葉です。どうしても技術トレンドを追いかける時には、最先端のテクノロジーとか新しい手法とかに目がいくんですけれども、すべてのものがメジャーになるわけではありません。新しいから良いものではない、ということになります。
じゃあその見極めのポイントは何かと言うと、この「エコシステム」という考え方なんですよね。これが連鎖して物事が大きくなっていく、ということを今日はお話をしていきたいと思います。最終的にみなさんがこれから進むべき、フォーカスするエリアを決める時に、1つの指標になればと思っております。
フィードバックをいただけないと結局私も、得るものが少なくなってしまいますので。ぜひフィードバックしていただきたいと思っています。
「App Ape Award」、今日(のイベント)はスマホアプリの方がけっこう多いので、お手元に必ずスマホがあるんじゃないかなと思います。みなさんスマートフォンを取り出してないですけども、取り出していただいて、(スライドを指して)このハッシュタグ、「#AppApeAward」を見ていただくと、私が「あー、テス、テス」とか言ってるのがあります(笑)。
あー、テステス。 #AppApeAward pic.twitter.com/9tLiq9vvGT
— Hideki Ojima (@hide69oz) 2018年2月7日
先ほどの話だと(公式アカウントに)リツイートされるはずなんですが、まだされてなかったんですけれども……ぜひこちらにコメントいただければ、と思います。では、参りたいと思います。
「クラウド以降のテクノロジートレンド」ですが、よく私がご紹介しているグラフが、(スライドを指して)こちらになります。この10年のテクノロジートレンドがどう変わって来たかを、私なりに俯瞰してご紹介しているものです。
このスライドの元になった考え方というのは、実はここに黄色い書籍を貼っていますけれども、これが私が最近非常に気に入っている書籍で、邦題ですと『<インターネット>の次に来るもの』。USの題だと『The Inevitable』。この直訳は、「不可避な」っていうことですね。この流れを止めることはできない、ということです。
この本が非常におもしろいのは、特定のテクノロジーと言うよりは、「どういうテクノロジーが出てきたから、次にこういうものが出てきた」という連鎖を非常にわかりやすく書いてる本なんですよね。たぶん会場にいらっしゃってる方も、何名かお読みになった方がいらっしゃるんじゃないかなと思います。
ここでお話をしたいのは、例えば最近、AIとか……XRですね。VR、AR、MR、そしてIoTっていうのは、スマートフォンアプリとかいろんな仕組みを作っている方にとっては、キーワードになっている技術トレンドだと思います。
ただどうしてこれが今非常にトレンドになってるのか、という背景を知ると、目利きをする上で良いことになるんですよね。
例えばAIに関して言うと、AI業界では今「第3次AIブーム」って言われています。つまり現実的には、何回も過去にブームが来ては(ビジネス的には)失敗しているんですね。なぜこれが今回、うまくいこうとしているのか。
それからバーチャルリアリティ(VR)に関して言っても、例えば360度で画像を見せようっていうのは、それこそパリ万博の時代からみんなトライしてるわけです。それが結局花開かずに、なぜ今なのか。その理由はクラウド以降の流れを見ると、非常にわかりやすい、ということになります。
クラウド以降はそれまでのいろんなITの投資とか技術トレンドの潮目が、がらっと変わった時なんじゃないかなと思います。私がもともと所属していたAmazonのクラウド事業、AWSがストレージサービスを始めるのがまさにこの2006年なんですけれども、クラウドそのもののテクノロジーで見ると、実はあんまり実態がわからないんですよね。
IntelのCPUがあって、ハードディスクがあって、ネットワークがあって。つまり、みなさんのお手元にあったものと同じものが、(クラウドの)技術としては使われている。実はまったく新しくないんですよね。じゃあ何が新しかったかと言うと、提供の仕方だったわけです。
みなさんが欲しい時に、瞬時に手元にCPUとディスクがやって来て、仕組みを作って展開して、ダメだったら捨てられると。それで、捨てたらお金がかからない。これが破壊的だったわけですよね。
これがあるから、多くの会社がアイデアをすぐ形にして世に問い、うまくいけばそのまま成長軌道に乗る、っていうことができるようになったわけです。それまでは、新しいビジネスというのは必ず初期投資を必要とした。そして投資したものを維持しなきゃいけない、ということがあったので、大きい企業・大きい資本でしか、なかなかトライできなかったということがあります。
そして小さい組織がトライしても、失敗するとリカバリーができない。だから、打席に1回しか立てないという仕組みだったんですよね。これを変えたのがクラウドテクノロジーで……クラウドテクノロジーと言うよりは、クラウドエコノミーですよね。クラウドのエコノミーが、トライして失敗したら傷は最小限で次に行く、っていうことを可能にした。
その結果、非常に大きく花開いたのが、モバイルとビッグデータのビジネスということになります。モバイルはみなさんも今お手元にスマホをお持ちですけれども、たくさんアプリがあります。私がこの業界に入った頃には考えられない非常に安い値段で、もしくはタダでインストールして使えるサービスがたくさんあるわけです。
これができるようになったのは、クラウドの経済性があるからです。そして多くの方が端末を持つようになったので、データを手元ではなくてクラウドサイトに吸い上げるっていうことも普通になってきました。そうするとデータの集積が起こるんですよね。これもストレージのコストが非常に安くなって、扱いやすくなったからできるようになったわけです。
つまりテクノロジーとしてはぜんぜん変わってなくても、経済性が変わると、エコシステムを大きくできるわけです。そしてたくさんの人がモバイルを持って、データのやり取りをして集積されるようになったので、いちいちそれを人が判断するのは大変だよね、機械に判断させよう、っていうアプローチがAIです。人にいちいちデータを上げさせようと思うと不正確なので、自動で上げさせよう、というのがIoTの考え方。
次に、VRとかAR。後で話もしますけども、これはスマホが普及しないとビジネスとしては成り立たないわけです。こういうかたちで流れが来てるわけですよね。今日はスマホアプリのアワードですけども、(アプリビジネスをやっている)みなさんが今成り立っている経済圏は、この10万円もするカメラ(=ハードウェアとしてのスマホ)の上に成り立っているんじゃないんですよ。
(スライドを指して)ここに乗っているアプリケーションのエコシステムがあるから、このビジネスが回る。お金が入ってくるから、次のエコシステムができる、ということになるわけです。ちなみにこのアプリケーションの世界なんですけれども、Googleさんだけのデータでいくと2016年で、実際にお客様がダウンロードするというのが、820億回。(アプリを)入れるという行為だけで820億回あるんですよね。
新しいビジネスにタッチする機会が820億回ある、っていうことが1年で起こる。非常にスケーラブルなわけです。つまりこのクラウドの上の、スマホ(のエコシステム)に乗ったアプリのビジネスは、今すごくスケーラブルになっているということですね。
先ほどその上にVRの技術がまた来るんじゃないか、という絵をお見せしましたけれども、例えばVRと言っても、(映像を指して)みなさんこういうことをしたいわけじゃないと思うんですよね。
これは、去年のSXSW(サウス バイ サウスウエスト)でNHKさんが持ち込んだ、バーチャルリアリティの体験ブースです。この映像は本当は音が出ると良いんですけれども、サザンオールスターズさんの曲が流れていて、東京をバーチャルにツアーできる、というものです。
見ていただくとわかるんですが、すごく大掛かりなんですよね。私もこの会場にいたんですけれども、NHKさんが前の日からこれを搬入して、1日かけてセットアップして、とすごく時間がかかっていたのを覚えています。オペレータも一緒に付いてくるんですけど……後ろのアクチュエータとかを動かすのもオペレータの方がいて、これ1つ動かすためにも非常に手間がかかる、というものです。
このテクノロジー自体は非常に素晴らしい。そしてNHKさんも、このVRと言うよりは、8Kのテクノロジーのデモンストレーション用にこれを作ったんですけども、(この仕組みは、スケールするVRビジネスを)作り出すにはあんまり魅力的ではないはずなんですよね。下回りから機械から全部集めて、いくら最新のテクノロジーだからと言っても、全て自社調達でやってしまうとスケールが困難です。
じゃあどうすればスケールするか。それがまさにみなさんのやってらっしゃる、モバイルアプリの世界なんですよね。同じVR、XRの世界でも、モバイルの世界に行くとスケールする。まだMRは機材が十分エコシステムができていないので、トライしておられる方はあまりいないと思うんですけども。VR、AR、MRといろいろあって……一番記憶に新しいところだとARは既に、『ポケモンGo』という非常に大きなヒットを記録しています。
これは実はクラウド以降の、モバイル、ビッグデータに至るエコシステムがないと決して出てこなかったし、成功しなかったアプリである、ということになるわけです。
このあたりはもうみなさんにとってはおさらいの世界なんですけども、どうしてこういうことができるようになったかと言うと、スマホの普及なんですよね。これはやっぱり非常に素晴らしい。お手元にあるスマホは、Webに繋がっていて、アプリのダウンロードが可能です。そして場合によってはIDコントロールとか課金までできて、マネタイズもできる仕組みがもう入っています。
ジャイロセンサーが入っているのがやっぱり非常に素晴らしくて、そこにアプリを入れればVRとかARというものが非常に簡単にできるようになる。そのベースの部分はみなさんが揃えなくてもいい、ということなんですね。
さらに、VRとかAR的な技術が入ってくると、その周りにまたエコシステムが出てきます。最近非常に多いものは、スマホだけでVRの没入感を得るためのグラス、というものです。昔は段ボールみたいなのがあったんですけども、最近もっと簡易的なメガネみたいなタイプがあって。これけっこうバカにできなくて……「没入感ないだろ」と思うかもしれませんけども、人間良くできたもので、これを見ると周りのものは見えなくなるんですよね。すごく没入する、と。
非常に簡単にVR体験を世の中に展開できるようになった。なので今USなんかはとくに、VRに対して熱いマーケットが大きくなっている、ということになります。
お客さんがどんどん盛り上がってくると、この上位マーケットにもエコシステムが出てきます。スマホプラスアルファの専用機が出てきてるのは、まさにそういったトレンドじゃないかな、と思います。
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