2024.10.01
自社の社内情報を未来の“ゴミ”にしないための備え 「情報量が多すぎる」時代がもたらす課題とは?
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加藤エルテス聡志氏(以下、加藤):じゃあ僕のほうで。進化早いですよね。10年前、iPhoneぐらいでしたっけ。たぶんみなさんの平均寿命ってけっこう長くて。「ピリオド寿命」と「コーホート寿命」っていう話がよくありますけど。
北川拓也氏(以下、北川):なんですか、それ?
加藤:ピリオド平均寿命って「今この瞬間から一切医療進歩がないとして、はい、ここで死にます」という予測です。コーホート平均寿命というのは「過去こんな感じで医療水準が上がってきてて、まあまあ平均寿命が伸びるトレンドだから、たぶんこのくらいいくかな」っていう放物線で描いている。平均寿命は今でも伸び続けてるんです。
北川:へえ。
加藤:政府の統計とか年金の計算ってピリオドで見ることが多いので、だいたい87歳とかだと思うんですけど。コーホートでいうと、今この瞬間に生まれた日本人の子は、だいたい半分の確率で107歳ぐらいまで生きます。
北川:おおっ、まじですか。
加藤:けっこう長い。
北川:けっこう衝撃ですね、それ。
瀧俊雄氏(以下、瀧):『LIFE SHIFT』って、まさにそのピリオドで見てこなかったものを突きつけてるんですよね。
加藤:そう。それが暴き出した不都合な真実って、テクノロジーの進化が超激しいのに、思ったりより長く生きちゃうということなんです。
北川:ついていけないね(笑)。
加藤:たった10年でこの変化でしょ。
北川:そうですね。これやばいですよね。
瀧:(笑)。
加藤:そうでしょ。みなさん今30とか40とかですよね。たぶん65とかで辞めたらぜんぜん年金もらえない世界になってきて、「じゃあ、75から」「いや、それも無理。80、85」みたいなこともありえる。30、40から85までというと、まだこれから50年とかあるわけで。「やばいよね?」という。
これってどういうことなんだろう? 「データサイエンスが仕事を変える」というのは、プログラマーの雇用が増えるとか、働き方がリモートになるとか、こんなクリエイティブなワークができるというのもそうなんだけど。それだけなのか?
データサイエンスは、テクノロジーの進歩を後押しする超強力な武器なので、いろいろなものがわーっとドミノ状に倒れていって変わるわけですよ。
だから平均寿命の伸長とあいまって「大学出て、教育が終わったから、就労して、引退」というフェーズ分けではなくなる。まあ『LIFE SHIFT』そのままですよね。テクノロジーの進歩を見ていると、わりとすぐにそうなる。
加藤:どうやったら楽しく乗り切れるかというと、好奇心をもつことですよね。オープンに新しい技術を見て取り入れること。技術を無視したり、否定することもできるんですけど、そうすると技術のほうがあなたを避けていくだけで、あなたが取り残されるだけ。だから、「好奇心をもって新しいことを受け入れる」ということですね。これ『FinTech入門』という本の序章に書いてある言葉なんです。
瀧:まじですか。
北川:おお。きれいに。
瀧:ありがとうございます。
北川:僕もなんかこう、10代の人とか5歳の子どもとしゃべってると、「先生!」って思うことがあって。
最近、5歳ぐらいの男の子と遊んでたんですけれども。『キュウレンジャー』というのが最近流行ってるんですね。「今は9人になったんだ」と思ってたんです。
瀧:すごい(笑)。
北川:俺はゴレンジャーだったので、「キュウレンジャー!?」みたいな話をしてたら、「いや、キュウレンジャーは12人いて……」って話になって。
(会場笑)
北川:「キュウレンジャーが12人いるの!?」みたいな。
瀧:哲学的ですね。
北川:それをナチュラルに受け入れている子どもたちを見て、「あ、俺も年寄りだな」と。キュウレンジャーだから9人だと思ってた俺はバカだったと気付かされました。
加藤:すごいね。
(一同笑)
北川:すいません、どうでもいいんですけれども。ほかになにかしゃべりたいこと……。
瀧:あと4、5分ぐらい。
加藤:せっかくなので会場に聞きたいですね。こういうときに何か……。あ、どうぞどうぞ、マイクを。
参加者6:マネーフォワードさんが設立されてもう5年ぐらいで。たぶん北川さんも使われていて4、5年。
北川:よくご存じで。
参加者6:お二人ともご経験が長いと思うですけれども、その間にデータサイエンスでいろいろ変ったこととかご経験があると思うんです。自分たちの仕事で「これ一番インパクトあったな」という事例があれば、ぜひお願いします。
瀧:ありがとうございます。
北川:あっ、僕からですか。恥ずかしながら、めちゃめちゃイノベーションを起こしきったという事例というと……小さいのはいくつかあるんですけれども。
僕自身の学びでしかないかもしれないですけれども。大きかったのは、機械学習とかディープラーニングをやる上で、正解データというのがすごく大事で。エルテスさんもよく言ってますけど。その観点において、うちでも正解データをつくるためにオペレーションをすごく回してるんですね。けっこうな膨大な量を回してます。
結局、今からのデータサイエンスにおけるイノベーションというのは、オペレーションとディープラーニングとか、イノベーションの組み合わせでしか起こりえないんだなというのをすごく強烈に感じています。オペレーションの重要性というのを改めてデータサイエンスのコンテクストで気付かされているというのが、僕のなかで一番衝撃の事実でしたね。
なので、これからデータサイエンスを経営する人間は、オペレーションを回せる人間がおそらく差別化要因となると思います。普通、データサイエンスをされる人ってオペレーションを嫌って、全部自動化しようと思ってやらないので、逆にけっこう泥臭いオペレーションを嫌わずにやれる人とか。
ガバナンスも同じですよね。先ほどプライバシーのお話で、GDPRの話が出てましたけれども、GDPRって徹底したオペレーションでお客様の個人データを守るということなんです。それをやりきるのってけっこうなオペレーション力が必要なので、データサイエンティストってけっこう苦手とするはずなんですよね。そういうのを一緒に取り扱えることが重要だというのを気付かされたのが、僕は大きかったですね。
瀧:ありがとうございます。
僕は、5年間で一番意外だったのは、さっきどこかで述べたと思いますけど「フィジカルなものへの信頼」。当社だと、例えばさっき家計簿のサービスは「人海戦術で広めてます」って言ったんですけど、基本的にはWebとかApp Storeでユーザーが増えるんです。
だけど、会計ソフトはそうじゃないんですよね。なので、導入支援や営業のために全国に支店を6箇所設立してやってるんですよ。人が介在しないと習慣の変化が本当に起きないなと思います。あと、ヨドバシカメラに確定申告の時期の2、3月だけパッケージ商品を置いています。あの……。
加藤:商品パッケージの表紙、ベッキーでしたね。
瀧:そう。ベッキーの名前出てこなかった。
(一同笑)
瀧:ベッキーさんがパッケージで「確定申告できる」みたいな感じの箱だと人って買うんですよ。
「ソフトウェアの会社がハードをやると強い」というのがあって、例えばGoogleのAndroid。「ハードウェアの会社がソフトをやると強い」というのもあって、それがiTunes。なんかatomとbitsの間は、乗り越えることでいいことがあるなというのをよく思いますね。それがたぶん5年間で一番意外だったところですね。
北川:あともう1回しゃべっていいですか。もうちょっと地味じゃない話をすると、僕が昔から興味があったのは「ブランドとはなにか?」という疑問だったんですね。ブランディングとか言うじゃないですか。最近それの答えがけっこう見つかってきていて。
瀧:おおっ。
北川:まあ1つの仮説ですね。結局、ビジネスというのは、独占市場をつくり出すことが圧倒的な勝ち筋をつくる方法なんですね。
ウォーレン・バフェットの投資手法も基本的には独占市場をつくりうる市場を見つけるという観点です。でも、ウォーレン・バフェットはそれに加えてブランドというものをすごく大事にした。コカ・コーラに対してすごく投資をしてるんです。
そのなかで僕が気づいたのが、「じゃあマーケットとはなにか?」というと、マーケットは基本的にサプライヤーの側から定義することが多いんですけれども、実際は実はコンシューマの側から定義されているものだと。つまり、マーケットとは代替可能な商品のグループである、というのが僕のなかの定義なんですね。
例えば、余暇を過ごそうとしている人がマーケットとして見るのは、ニュースアプリでもあるし、ゲームアプリでもある。つまり、ニュースアプリ、ゲームアプリが同じマーケットに乗るのは、代替可能な商品であるからだ、ということなんですね。
そうなったときに、「ブランドとはなにか?」をもう1回考えると、「ブランドとは、ある商品とある商品を代替可能でないものにする力」なんじゃないかと。
つまり、その人にとって、例えばソニーだとかパナソニックだとか、そういったブランドというものはあまりにも影響力が強くて、その人の心の中で独占市場をつくるものであると定義できると思います。
これをしばらく考えていると、実はすごく分析に使えるなと思いました。マーケットをまずどうデータで定義できるか、かつ、どうブランド力を数値化できるか、というのにちょっと気づいたんですね。
今後そういった意味で、ブランドというものの理解がデータサイエンスから進む日はすごく近いなと思ったのが、僕のなかでは大きなイノベーションでしたね。
参加者6:ありがとうございます。
瀧:かっこいい。
加藤:決めた(笑)。
北川:言いたいこと言いました(笑)。
瀧:たぶんお時間が。
加藤:お時間。最後なければこれで閉じちゃいますが。あ、じゃあ最後。
参加者7:すいません。ちょっと事例ベースの話に変わっちゃうんですけど。なんとなく今、「データサイエンス」というものと「人工知能」というものが混ざっているようで混ざっていないような気がしていまして。そのあたりはどういう場面によってどう使い分けられているのか。
加藤:はい。マスコミに注目して欲しいときには人工知能って言うといいやという。
(会場笑)
北川:わかりやすいですね。
(会場笑)
参加者7:ニュースにして欲しいときは人工知能にする?
加藤:ですね。おっしゃるとおりご指摘はもっともで。サイエンス、科学って真実を追求するものであって、「どの顔が猫ちゃんか?」とかっていうのは技術、data processing technologyのデータ処理技術の話ですよね。科学と技術は違う。データサイエンスと人工知能も違うものですね。そのへんの定義を大切にしていきたいですねぇ。
(会場笑)
加藤:はい、ということですよね。
じゃあ今日は、もう1時間半経ってしまいました。ずいぶん長丁場でしたけれども、来ていただいて大変ありがとうございました。最後に、瀧さんと北川さんに大きな拍手をお願いします。
北川:いえいえ。エルテスさんにも大きな拍手をお願いします。
(会場拍手)
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