2024.10.01
自社の社内情報を未来の“ゴミ”にしないための備え 「情報量が多すぎる」時代がもたらす課題とは?
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司会者:それではパネルディスカッションを始めさせていただければと思います。「グッドデザインとは?」「グッドデザインの共通点」というテーマ、どちらが話しやすいとかありますか?
事前に「グッドデザインとは?」というテーマでディスカッションしますよ、とお伝えしていたので、もしかしたら、もう考えていらっしゃる登壇者の方もいるかなと思うのですが。もしあれば、その方からご発声いただこうかなと思いますが、いかがでしょうか?
本多達也氏(以下、本多):はい!
司会者:では、よろしくお願いします。
本多:富士通・Ontennaの本多です。この度は、呼んでいただいてありがとうございます。「グッドデザインとはなにか?」ということを、事前に考えておいてくださいと言われて、すごく考えたんですけど。
一番は、たくさんじゃなくてもいいんですけれど、誰か1人でもいいから笑顔にする、「これってすごくいいじゃん!」って言ってもらえる。そういったものを作り出すデザインが、グッドデザインなんじゃないかと考えました。
司会者:まさに今、Ontennaとしてやられていることみたいな感じですけど。
本多:そうですね。でも「誰か」というのが、他人じゃなくて自分でもいいな、ということを、先ほどの森田さんのプレゼンを聞いていて思いました。
森田考陽氏(以下、森田):ありがとうございます(笑)。自分も一応考えてきたんですけど、自分にとっていいデザインというものは、ユーザーインターフェースだと「使いやすい」「わかりやすい」ということが重要視されていて、それもすごく大事だとは思うんですけれど、それ以上に「使いたい」とか、自分の成長を促してくれるようなアプリケーション、サービスを提供できるのが、いいデザインじゃないかなと思っています。
例えば、自分が趣味でやってる自転車の話なんですけれど、自転車のなかでも、速い自転車ってあるんですけれど、速い自転車を作るよりも、乗りたい自転車、乗って練習したくなるような自転車をデザインしてあげることが、いいデザインなんじゃないかなと思います。
矢野直子氏(以下、矢野):いいデザインって、すごく難しくて。先ほどもお話したように、無印ってデザインをやり過ぎちゃってもダメなんですよね(笑)。
去年(2015年)、一番評価をいただいたのが、成田の第3ターミナルのデザインです。格安の飛行機が離発着する、まったく予算のない空港で(笑)。だから無印にオファーをいただけたんだろうなと思うんですけど、日建設計さんが建てた空間に、MUJIが家具をデザインして、それを全体でいただいたのが、一番評価が高かったです。
今年(2016年)、一番評価が高かったのが、890円のバケツです(笑)。でも社内では、第3ターミナルと同じくらい、みんなで野放しに喜んでいるんですよね。
規模感ということじゃなくて、さっきもおっしゃったように、本当に第3ターミナルに行って、気持ちいい空間なのか、ゴロゴロしたいソファなのか。今回バケツを評価してもらったのも、ものすごいディテールの部分だったんですね。細かい、どうってことのない部分(笑)。
そういうところもきちんと見ていただいて、それがユーザーの方から伝えてもらえることがすごくありがたいし、それがグッドデザインの存在かなと思うし、そういうことをやっていきたいなと思っています。
司会者:バケツのディテールの部分、もうちょっと聞くことってできますか?
矢野:聞きたいですか?(笑)。
これもすごくオブザベーションを、デザイナーとMDがチームを組んでやったんです。いろんなバケツの使い方があって、「学校のズックを洗うのに間口が狭い」「高いと蛇口のところに引っかかって水が入らない」「目盛りがほしい」「子供のおもちゃを入れるから蓋がいる」とか。そういうことをオブザベーションで、いろんな事例を出して、そのなかで。
あと「お水をいっぱい入れたときに手が痛いから、取っ手のところは重みに耐えられるように手厚くデザインする」とか。そういったところを細かくやったのが評価に繋がったと思っています。
司会者:ありがとうございます。
鬼石広海氏(以下、鬼石):僕が考える「グッドデザインとは」ですが、日常の生活のなかで困っているところを、いかにアイデアで課題を解決していくかということなのかなと思っています。
AbemaTVが、もともとどうして生まれたかというと、オンデマンドサービスってすごくたくさんあるんです。でも、オンデマンドサービスだと、自分で見たいものを探さなきゃいけないんです。探すのって、ストレスなんですよね。
自分で探すよりも、人って受け身でいるほうが非常にラクだし、そのほうがスッと入ってくる。オンデマンドサービスで「自分が探さなきゃいけない」というストレスをないものにして、逆の受け身にするサービスを作ってみたらどうなんだろう、というところからきています。
そういった日常のちょっとした不便、ストレスを解決できるところがグッドデザインなのかなと思いました。
司会者:ありがとうございます。みなさん、無印良品さん以外はITプロダクトに関わる部分だと思うんですけど、「日常」とか「生活」という言葉がみなさんから出てきたところがおもしろいと思いました。
「グッドデザインの共通点」という意味では、どうでしょうか? みなさん、今日、4者4様のお話があったんですけれど、すべてを網羅する共通点って、ちょっと難しいかなと思うんです。ですけれど、「ここの、これと、もしかしたら似てたんじゃないかな」みたいなところってあります? 今日、ほかの登壇者の方のお話を聞いているなかで。
鬼石:AbemaTVとWOWさんの話を聞いていて思ったのが、「自分が本当に使いたいかどうか」というところ。自分自身が、本当にそのサービスを使いたいかどうかというところ。それがあると、情熱を持って取り組める。そこに没頭できるというところが、すごく大きいのかなと思いました。
矢野:無印も、先ほど手法と言ったんですけれど、……別に自分が言うことを否定しているわけじゃないんですけど(笑)。「自分にマーケティングしろ」ってことのは、すごく言われるんですよね。
最近は言われなくなりましたけれど、サンプル検討会で「お前、これが本当にほしいのか?」「このソファに座りたいのか?」「だったら、お前の家のソファ、今、家にあるもの全部捨てて、ここにあるサンプル全部入れてみろ!」って言われるんですよね(笑)。今の名物会長なんですけど。
ユーザーと言ってマーケティングすることも大事なんだけれど、お2人がおっしゃっていたみたいに、自分が本当に納得しているのか、ほしいのかということは、すごく大事だと思います。
森田:もうお2人がしゃべられたので、あまり言うことがないんですけど(笑)。共通点というわけじゃないんですが、私の会社、CGをやっているメンバーがすごく多くて、国内でもなかなかいいCGを作る会社として認知されているんですけれど、そのコアになっているメンバーたちって、「仕事をしている」というより、自分が好きなものをただ作っている。誰からも望まれてないのに、勝手にやってるんですよね。
仕事として「やらされている」という感情で作ったものと、自分から主体的に「作りたい」と思って作っているものって、持っているパワーが違ったり、その人の成長具合がすごく変わってきたりするので。
“グッドデザインの共通点”というお題とはちょっと違うんですけれど、自分の仕事のなかで「これをずっとやり続けたい」と思えるようななにかを見つけて、それができると、きっといい、グッドデザインなものが作れていくんじゃないかなとは思います。
たぶん、今日ここに来ている(登壇者の)みなさんも、自分が作りたいもの、やりたいものを、情熱を持って、やらされているんじゃなくて主体的にやっているので、今回こうやってグッドデザイン賞をもらえたと思うんです。そういう感じで仕事をできればいいな、と思っています。
本多:僕は、今やっているプロダクトは、自分がどれだけ考えてもわからないことがあって、やはりユーザーと一緒に作っていかないといけない。
だからと言って、ユーザーの意見を全部取り入れるんじゃなくて、そのなかから「本当にいいものはなにか?」を考えることは、僕たちデザイナーの仕事だと思います。彼らと一緒にやっているし、自分が使いたい、かっこいいと思えるものも作っていきたい。
今回、グッドデザイン大賞って、地図だったじゃないですか!(注:世界地図図法[オーサグラフ世界地図]が大賞を受賞)。「え!?」ってなりませんでした、みなさん? 僕は「地図か!」みたいに(笑)。
昔のグッドデザインって、パッと見たらシンボリックなプロダクトだったりして、そこから大賞を取っていくものが、場のデザイン、空間のデザインみたいなものになっていって。そして、「地図か!」みたいな(笑)。今回、すごく衝撃だったんですよね。
UX、UIも関わってくると思うんですけど、体験とか視点をすごく重視されるようになってきて、「デザイン」という意味がどんどん広がってきているところで、今回地図だったのかな、と思っています。
そういった意味で、プロダクトと言っても、ただかっこいいプロダクトだけじゃなくて、いろんな考え抜かれた、体験もデザインしたものが、グッドデザインの共通点としてあるかなと思いました。
司会者:ありがとうございます。「グッドデザインの共通点」と言ったときに、落としどころが見つからないんじゃないかなって思ったんですけど(笑)。「自分たちの作りたいものが、とことん作れている世界」というのは、1つの要素としてあるのかなというところが、自分的に見えたのがよかったです。
リクルートでも、「圧倒的当事者意識」という単語があって、それをとにかくよく言われるんです。
「お前、なにしたいの?」と聞かれる単語があって、それに答えるだけではダメで、「なんで?」と言われるんですね。「お前なに作りたいの?」「◯◯です」「なんで作りたいの?」「◯◯だからです」「なんでそう思うの?」っていうことを2~3回は繰り返されて。
最初はそれに答えられないんですよね。まるっとした答えでしかないんだけど、それを続けていくことで、自分のなかの本当にやりたいものが、自分で振り返って見られる。そうすると、「実は自分ってこういうことやりたかったのか」みたいなことが見えてくるのが不思議で、ぜひそういったところも参考にしてもらえればと思います。
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